飛行船に乗っていると、前に大きな山がある。暗闇の中そこに向かって飛んでいるが、あの向こうなのだろうか?麓には明かりのついている街があり、暗殺一家が住めそうな場所はない気がするが…。
「シルバさん、あとどれ位かかりますかね?」
「もう少しだ。既に見えているだろう」
既に見えている。ということはやはりあの街に住んでいるのだろうか。一般に紛れているのか。
「へぇー。あそこなんですね。どの家ですか?」
「家はまだ見えん。あの山の山頂だ」
「えっ!?」
驚いた。あの山に家があるのか…。
「あの山に家があったんですねー」
話しているうちも飛行船は山に近づいていく。
「うわっ!すっごい大きい建物…、あれは門かな…。シルバさんの家の近くにある観光名所か何かですか?」
「いや、あれは俺の家の門だ」
「は…?」
この人、今なんて言った?俺の家の門?分かりにくいがギャグか?この顔でギャグをかましたのか?
「ははは…」
とりあえず笑っておく。
「お前はなにか勘違いしているようだが、冗談でもなんでもなくあれは家の門だ。『試しの門』と言う。あの門は内側から1、2…と7まで続く。1は2tずつ、合計4t。2は4tずつ、合計8tと門の数字が1増えるにつれ倍になっていく」
冗談より冗談な答えが返ってきた。つまりあれは256tまであるらしい。
「つくった人凄いですね…」
なにか感想を言わなければと思い、率直に思ったことを言ってみる。
「ククッ…。あの門を見て最初に出る感想がそれか。やはりなかなか面白い」
今の答えはどうやらお気に召したらしい。あの怖い顔で笑っている。
「あー、ちなみにシルバさんはいくつまで開くんですか?」
「6だな。まあ7もそれほど経たないうちに開けられそうにはなっている」
事も無げに言うがこの人やっぱ化け物だ。
「す、凄いですね…。」
「まあ、お前もやらなければならないんだ。存分に挑戦するといい」
は?今この人なんて言った?俺があれに挑戦する?
「ちょ、ちょっと!?無理ですよ!?俺は一般人なんですから」
「俺が一般人を家に招待すると思うか?それに、あの門から入らなければ敷地内に放たれているペットがお前を襲うぞ。スリルを楽しみたいというのなら止めはせんがな」
こ、こいつ…。一瞬殴りかかってやろうと思うが、『オーラ』のない状態で化け物と戦いなど自殺行為。そもそもあってそんなに経ってないから距離感掴みかねてるし…。
「別に開かなかったから殺すなんてことはしない。気楽にやれ」
全く気楽じゃない顔でシルバが声をかけてくる。
ぐっ…。くそぉ…。やるしかないのか…。
飛行船はわざわざもんの少し前で止まり、俺たちを降ろす。
「ではシルバ様、わたくしどもはヨシヒロ様の歓待の準備をして参ります」
「ああ、頼んだ」
ツボネさんとそんな会話を呑気に交わしながら、彼はじっとこちらを見る。
(やるしかないのか…)
仕方なく俺は門の前にたち、最大限の力を発揮できるよう筋肉を解しながらゆっくり息を吐く。
(しゃーない!覚悟決めろ、ヨシヒロ!)
「いきます」
俺は両手を門にあて、全身で力を込める。
「グギギギギッッ……!」
「……。」
力を緩めずに上を少しだけ見ると、2までの扉が開いている。
(うおおお!俺8t持ってるよ!俺もなかなか人間やめてんじゃん!師匠、感謝します…!)
修行をつけてくれた師匠に感謝をしながら、俺達は門を通る。
(つ、疲れた…)
何とか試練を突破した俺は、 門の中に入り一息つく。
すると、象と同じくらいの大きさでは無いかという狼のような生物がこちらに来た。
どうすればいいんだ、こういう時は目を反らさないんだっけ、いや、それはクマか?後ろにゆっくり、でも少しでも距離を稼いだ方が…。頭の中が混乱する。
すると、
「ミケか」
シルバが平然とを声をかけ、その生物はなんとシルバに体を擦り付けた。
(ペットってあれのこと…?あんな動物飼えんの…?餌代やばいだろ…)
驚きすぎてどうでもいい事が頭の中に浮かぶ。
その時、いきなりミケ?がこちらの匂いを嗅ぎに来た。
思わず身をすくめてしまう。
「安心しろ。喰われはしない。ミケには試しの門を通ってきたものは攻撃しないよう躾をしている。今もお前の匂いを覚えているだけだ」
シルバの言う通り、ミケは少しの間俺の匂いを嗅ぐと、どこかへ行ってしまった。俺は玄関にさえたどり着いていないのにげんなりとする。
(舐めてたわけじゃないけど、想像超えすぎじゃね?)
思わず心の中で愚痴をこぼす。
「行くか」
シルバはそういうとスタスタと歩いていってしまう。離れてしまったら何が起こるかわからない。きっと罠なんかも仕掛けられてるに決まってる。こんな真っ暗闇の中置いてかれてたまるか。俺は慌ててその背を追いかけた。
「でか……」
シルバの家を見て出てきた感想がそれだった。いや本当にでかい。その言葉に尽きる。庶民の俺が考える豪邸を更に2ランク上にした感じだ。
「入るぞ」
シルバはなんの反応を示さず玄関に入っていく。まあ自宅なのだから当たり前か。
「お、お邪魔します…」
気後れしながらシルバに続く。すると、
「まあまあまあ!!あなた!おかえりなさい!!不注意で怪我を負ったんですって!!?大丈夫!!?次期当主なのだからしっかりしてちょうだいね!!?ああ!でも心配だわ!!」
奥からキンキンとした大声を張り上げながら黒髪の美女が現れる。
「ああ…」
シルバの声もなんだかげんなりしている気がする。これ、怪我してる時よりダメージくらってないか…?
「あら!!あなたがうちの主人を助けてくれたのね!!お礼を言いますわ!!とても面白い念を持っているそうで!!!詳しくはわからないようですけど!!」
「こ、これはご丁寧にどうも。初めまして、私の名前はヨシヒ…」
「でも本当に良かったわ!!イルミちゃんもまだ小さいし、あなたに何かあれば大変だもの!!!あ、そうだわ!イルミちゃんにも挨拶させましょう!!イルミちゃん!いらっしゃい!!イルミちゃん!!」
と最後まで言わせてくれず、マシンガンのように話した後どこかに走り去ってしまった。足音はほとんど立てずに。
「あの…、えーと…」
「……」
シルバとの間に気まずい空気が流れる。
「…。妻だ」
「あ、それはわかります、はい」
逆にあれで妻じゃなかったら怖い。というより嵐のような人だったな。暗殺する時はさすがに静かなのだろうか。
「…父さん」
2人で玄関にたたずんでいると、小さな子供の声が聞こえてきた。振り向くと、そこには長い黒髪の男の子が立っていた。この子がさっき奥さんの言っていたイルミだろうか。
「イルミか。今帰った。修行はどうだ」
「うん、まあいつも通り。ミケたちと鬼ごっこしたりじいちゃんにきたえてもらったり」
イルミはシルバの問いに答えながら、こちらをあまり感情の読めない目で見てくる。
(母親に似たみたいだな…。)
「…誰?」
「俺を助けたやつだ。そこそこ面白い奴だぞ」
「ふーん」
感情が少し希薄なようだが、ない訳では無いようだ。微かな興味と警戒を感じとれる。
「こんにちは、イルミ。ヨシヒロ=マンダって言うんだ。よろしくね」
「………。よろしく」
何か心の中で葛藤があったようだが、何とか挨拶をして貰えた。しかし、暗殺一家の息子とはいえまだ幼い。もう既に夜もかなり遅いし、イルミも眠たそうにしている。シルバも、自室に帰るよう促していた。
「うちの倅が世話になったようだな」
イルミと挨拶を済ませた直後、後ろから声をかけられる。全く気づかなかったが、有名な暗殺一家の家にいるのだ。一流の暗殺術を身につけた彼らには俺に気づかれず近づくなど簡単だろう。が、それはターゲットになった時、簡単に殺されることを意味する。少し気を抜きすぎていたかもしれない。そう思い、気合いを入れ直しながら振り向くと、そこにはシルバと似た壮年の男性がいた。
「ゼノ=ゾルディックだ。ゾルディック家の現当主をしている。ゾルディック家の跡取りを助けて貰ったこと、当主として、また親としてお礼を言わせてもらおう」
シルバも伝説の暗殺一家次期当主として恥じない、いやむしろ既に当主になれそうな力量であると思っていたが、ゼノさんは今のシルバの上をいっている。体から迸る『オーラ』、完璧な『纏』から伺える実力は、俺の師匠と同等、いや、もしかしたら師匠すら超えてるかもしれない。
(やっぱとんでもない化け物の巣窟だな…)
思わず少し冷や汗をかく。その時、1人の執事が
「歓待の準備が整いました」
と知らせに来てくれた。
「ならば行くとしようか。着いてきなさい」
ゼノさんに言われるがままついて行く。というより飛行船のときから思っていたが、執事も当然のように念能力者か…。何人いるかは分からないが、少なくとも既に10人は見た。この家から戦って逃げるのは現実的では無さそうだ…。俺はまだまだ続く暗殺一家の『お礼』を思い浮かべて、ため息をつきたくなった。
ようやく到着しました。あまり話が進みませんでした。イルミ、ゼノに関しては原作より幼い、若いため感情の制御がまだ完璧でないイルミと、少し口調が若いゼノが登場しました。ゼノの奥さんっていつまでいたんでしょうね…?あんまりオリキャラに頼りたくは無いのですが、悩んでいます。