「はぁ…!はぁ…!」
ああ、しんどい!
ボトバイさん、いや師匠の弟子になると決めてから1週間、俺はひたすら基礎体力や筋力をあげるため、トレーニングを積んでいた。師匠は俺に『念』の制御を教えてくれると言ったが、師匠はこの世界でトップクラスの地位を誇るシングルハンター。1人の念能力者(しかも初心者)を四六時中見てやれる程暇ではない。俺のためにかなり仕事を早くこなし、時間をつくってくれているのだ。文句などあるはずもないが。
「いいか、ヨシヒロよ。『念』は便利で強力なものだ。初歩を身につけるだけで一般人とはかけ離れた身体能力や頑丈さを手に入れることが出来る。しかし、結局使うのは己自身。自らを鍛えんものはいつかどこかでそのツケを払うこととなる。まずは土台をしっかりつくるのだ」
師匠のありがたい言葉を思い出し、俺はもう一度気合いを入れ直す。
「でもやっぱりしんどーい!!」
「ふむ。かなりハイペースなトレーニングを課したが、よくぞ耐えきったな、ヨシヒロよ」
1ヶ月間、俺は体力、時間の許す限り走り込みや筋トレを行った。その量はどこかの世界線の一撃で終わらせる最強も顔が真っ青になるほどだ。その結果、俺は前の世界では金メダルを狙えるのではないかという程の身体能力を手に入れた。
「師匠のおかげです。しかし、あまりにも順調過ぎて怖い気がします。自分自身は前の世界で特に運動面に才能があった訳では無いですし、こんな短期間で身体能力が上がるなんてこともなかったです。まあ、若返りっていうありえないことが起こっていますし、『この世界でありえないはありえない』んですけど」
そう、俺の体は若返っていた、正確に言うと16歳くらいまで。俺は成長期が早い方だったので、高校時代にそれほど身長は伸びなかった。そのためすぐには気づかなかったのだが、鏡を見た時は驚いたものだ。
「ふむ、それは恐らくこの世界に来て体質が変わったのだろう。この世界に来た時何もせずともヨシヒロは『念』に目覚めていた。こちらの凡人ではそれは起こり得ないことだ。そこら辺に理由があるのだろうな。しかし、才能があることは悪いことではない。」
師匠の言う通りだ。俺の身には既にありえないことが起こりまくっているのだ。これくらいでうろたえていてはやってられない。
「さて、これからももちろん基礎能力の向上のためのトレーニングは続けてもらうが、最低限『念』の訓練には耐えられるだろう。よって、『念』の修行にも入る」
「はい!」
師匠から告げられ、俺は大きく返事をしながら少し顔が緩んだ。男とはいくつになっても超人パワーに憧れるものなのだ。
「事前に渡した紙に、『念』の基礎を載せておいたが読んだか?」
「読みました!四大行『纏』『絶』『練』『発』についてはある程度わかっていると思います。『発』は自分だけの能力って感じなので、おいおいですよね?」
「その通りじゃ。まずは基礎の基礎、『纏』からじゃ。ヨシヒロは誰からも教えを受けていない初心者にしてはうまくできておるが、まだまだ未熟。『纏』は初歩じゃが、これをしっかりせんと『念』は扱えん。しっかりと修得するのだ」
「はい!」
師匠から少しだけ本格的な指導を受けられることが嬉しかった。
そして俺は師匠から1週間後に『纏』、更にその2週間後に『絶』の合格をもらった。
「うむ。今日から『練』に入ってもいいじゃろう」
「ようやくですね。かなりかかってしまった気がします」
「そんなことは無いぞ。比較対象がおらんから分かりにくいじゃろうが、お主の修得はかなり速い。資質は十分にあるぞ」
「師匠からそう言って貰えると自信になります。『練』は確か『纏』よりも多くの『オーラ』を一気に出すんでしたよね?」
「そうじゃ。最初のうちは『練』はごく短い時間しか維持出来んじゃろう。当面は『練』で『オーラ』を使い、限界が近づいたら『絶』で回復促進を図る。これを繰り返し、『オーラ』の量を増やすのが目標じゃな」
「わかりました!頑張ります!」
師匠から受けた教え通り、俺は『練』を行い、疲れたら『絶』、回復したらまた『練』を繰り返した。そうすることで、最初は1分程しか続かなかった『練』が1週間後には10分になり、1ヶ月たった今では1時間は出来るようになった。
「これならば次のステップに行っても良いだろう。」
「『発』の水見式ですね!」
「そうじゃ。お主の念系統を確かめよう。水を入れたグラスと紙を持ってきなさい」
俺は師匠に言われた通りすぐに準備をした。
「ついにこの時が来ましたね!ワクワクします!」
「うむ、ではヨシヒロよ、『練』をするのじゃ」
俺は紙を浮かべたグラスに両手を近付け、『練』を行った。が、しかし、何も起こらない。変化系の証である味の変化もない。
「ぐぐぐっ…!」
どれだけ力を込めて『練』をしても、どの念系統の変化もない。もしかして俺才能ないのか…?と焦ったが
「ふむ…。ヨシヒロよ、『凝』をしてみよ」
師匠にそう言われ、俺は『練』の『オーラ』を目に集め、『凝』を行った。
「これは…、紙にオーラが集まってる…?」
「うむ、『念』の応用に物質へ『オーラ』を纏わせる『周』というものがあるが、この紙に起こっているのは『周』ではないな。どの念系統でもない反応。お主は特質系じゃな」
「え!?特質系ですか!?」
まさかそんな主人公のような感じの系統じゃなくても…。
「うむ、珍しいがな。」
「ぐぬぬ、どうせなら強化系でスーパーマン的なことやりたかったのに…!」
そう愚痴をこぼすと、頭の中にいきなり
【強化系に『オーラ』を貯めますか?】
という声が響いた。
「おわっ!?」
「ん?どうしたんじゃ。ヨシヒロよ」
「師匠、なんか声が…」
俺は不審がりながらも、もう一度強化系と念じてみる。すると、
【強化系に『オーラ』を貯めますか?】
まただ!誰の声なのかは分からないが、俺の能力なのだろうか?しかし、俺は能力などつくった覚えはない。
「師匠、先程から頭の中に声が聞こえるのですが、俺の能力なのでしょうか?つくった覚えは無いのですが…」
「ふむ、これまた珍しいな。稀に意図せず『念』に目覚めた者には、いつの間にか能力まで作成されている例があると聞く。本能で望んでいるものか、はたまた環境によって必要なものだったのか…。いずれにせよ、そのような能力は強力なものが多いと聞くぞ」
師匠からそう言われた俺は、とりあえずあの声に返事をしてみることにした。
【強化系に『オーラ』を貯めますか?】
はい。
【貯める量を決めてください。残りオーラ15000/15000現在100%】
ええと、じゃあとりあえず1000で。
【『オーラ』を1000貯めました。残りオーラ14000/15000 現在残り93%】
うお!なんか貯められた。これはもしかして、他のものもいけるのだろうか…?
【変化系に『オーラ』を貯めますか?】
【放出系に『オーラ』を貯めますか?】
【具現化系に『オーラ』を貯めますか?】
【操作系に『オーラ』を貯めますか?】
いけるみたいだ!とりあえず1000ずつ貯めてみることにした。
【『オーラ』を計4000貯めました。残りオーラ10000/15000 現在残り66%】
なんか全部に貯めてみたけど、これどうなるんだ?
「どうしたヨシヒロよ。黙ってしまったが。確かに特質系はあまり直接戦闘に向かんが、使い方次第では強力なものになるのじゃ。気を落とすことは無いぞ」
「すいません師匠、少し組手してもらっていいですか?」
「…ん?構わんが…」
【強化系を使用します。残りオーラ1000/1000】
頭に声が流れたあと、師匠と組手を行ったが、師匠が言うには俺と同じくらいの念能力者だとしたら、強化系に属するレベルだったそうだ。少し俺の能力がわかった気がする。
まあ師匠には手加減された上でボコボコにされたがな!
1話とは結構印象変わりましたね。怖い+訳が分からないでほとんど自分を出せていなかった主人公ですが、元はこんな感じだと思ってください。(作者の実力不足です)