今俺は、少し長期的な仕事から帰ってきた師匠と対峙している。
「さて、ヨシヒロよ。お主がワシを驚かせてやると言ってから2週間、しっかりと修行をしたようだな。オーラがまた少し洗練されているぞ」
「ありがとうございます、師匠。今日はまた胸を借ります。けど、一矢報いてみせます!」
「うむ、楽しみにしよう」
俺たちは広い道場で互いに向かい合う。
俺は構えをとるが、師匠は自然体のままだ。当たり前だ。師匠と俺にはそれだけ、いやそれ以上の差があるのだから。
「まずはお主の基礎力から見てみよう。いつでも来い」
師匠が言うと同時に俺は飛び出す。俺はまだ体術をしっかり修めていない。師匠はそろそろ戦闘技術も教えてくれるそうだが、現段階では身体能力に任せた強引な動きしかできない。しかし、拙いながらも自らでどのような動きが有効か、何がより良い選択かを考えながら師匠に向かい蹴りを放つ。
「ふむ、何も教わっていない素人にしては筋のいい蹴りじゃ」
師匠はそう言いながらも、避けることはせず俺の蹴りをそのまま受ける。
「ぐっ!?」
痛みが走ったのは俺の足の方だった。
「ふむ。確かお主は四大行と『凝』までは覚えていたな。ここからはお主の成果を見ると同時に少し『念』の応用についても説明しよう」
師匠は全くのノーダメージな様子で、俺に話しかける。
『ありがとうございます!嬉しいです。けど、悔しい…!』
「ハッハッハ。向上心や負けん気を持つのはいいことだ。さて、今お主がワシに蹴りを放ったな。まだまだ未熟ながらも足に『凝』も出来ておった。しかし、傷を負ったのはお主。これはワシとお主に『念』の練度で差があるからだけではない。ワシが『纏』と『練』の応用技、『堅』をしていたからじゃ」
「『堅』ですか…」
「そうじゃ。『練』により練った多くの『オーラ』を『纏』と同じように体に纏わせる。これによって、より『オーラ』の防御力が上がるのじゃ。念能力者同士の戦いでは、これをずっと維持することになる」
「なるほど…。『オーラ』の量を増やすのは必須ということですね。俺の能力"生命力の樹(バンク・ツリー)"はオーラ量が大事になってきますし、俺にとって最も重要かもしれません」
「うむ。確かにお主の能力を考えると、『オーラ』の量は多ければ多いほどいいじゃろう。お主は資質があるが、『オーラ』の量は一朝一夕で増えるものでは無い。毎日の積み重ねじゃ」
「はい!」
「さて、次はこの防御、つまり『堅』をどうやって抜くかだが、お主には分かるか?」
「ええと…、まずは『念』の練度を高めることです。より上質な『堅』を纏うことで、相手の『堅』を突破してダメージを与えることが出来ると思います」
「そうじゃ。1つ目の答えは『相手より高い練度で念を修めること』。『オーラ』の量だけで勝ち負けが決まらんのはこの世界では常識だが、それでも相手を上回ることは非常に有利な点となるだろう。しかし、今ワシとお主の間では、その答えでは無理じゃな。」
「そうですよね。うーん……」
「お主は先程足に『凝』をしておったの。あれは発想としては良い。」
「あっ!なるほど!一点突破ですか??」
「当たりじゃ。これが2つ目の答え、『『オーラ』を集中させて部分的な『オーラ』の量を上回る』じゃ。具体的に言うと、『纏』『絶』『練』『発』の四体行と『凝』を同時に行い、他の部位を『絶』の状態、つまり『オーラ』を0にして一点に己の全ての『オーラ』を込める。これを『硬』という」
「『硬』…」
「これはかなり難しい。1つ目の答えほど現時点で不可能な訳ではないが、一日で出来る可能性は低いじゃろう」
「くっ…。分かりました。精進します」
「まあ焦らずとも良い。一つ一つ丁寧に習得するのじゃ。さて、お主にはまだ体捌きなどは教えておらぬし、身体能力がしっかりと上がっているのは確認できた。次は能力の向上を見せてもらおうか」
「はい!」
よし!切り替えて今回の成果を見てもらうぞ!今の俺の状態は
【特質系 残りオーラ16000/16000】
【強化系 残りオーラ4800/4800】
【放出系 残りオーラ4800/4800 】
【変化系 残りオーラ4800/4800】
【操作系 残りオーラ4800/4800】
【具現化系 残りオーラ4800/4800】
となっている。
オーラ量がまた少し修行によって増えたのと、修行では使ったが、2週間貯めたことで一応オーラは最大まで貯まっている。具現化系に関しては、特質系に割り振るオーラ量が少ないのか、まだちゃんとしたものを具現化するには至っていないため、隣の変化系への移動が主な使い道になるだろう。
(まずは…、【放出系】と【変化系】!)
【放出系を使用します。残りオーラ4800/4800】
【変化系を使用します。残りオーラ4800/4800】
俺は【念弾】を【斬撃】の性質に変化させながら師匠に放つ。
「『鎌鼬』!!」
1発にかかる『オーラ』の量はそれぞれ300ずつ。とりあえず俺はこれを5発放った。
「ほう。二系統同時に使えるようになったのか」
そう、師匠が前見た時、俺はまだ同時に違う系統を扱うことが出来なかった。しかし、特質系に『オーラ』を貯めていき、また能力を鍛えるうちにできるようになっていた。習熟度と特質系の貯められた『オーラ』の量によって、自由度が上がるのだろう。
「なるほど。じゃが甘いな」
師匠に当たった『鎌鼬』は全てダメージを与えることなく離散してしまう。
しかし、俺は『鎌鼬』を放ったと同時に師匠に接近していた。
【強化系を使用します。残りオーラ4800/4800】
先程師匠に教えられた『纏』と『練』の応用技、『堅』を意識しながら強化系を纏い師匠に殴りかかる。
「ふむ、陽動で相手の意識をそらす。王道だが、有効な手だ」
【変化系を使用します。残りオーラ3300/4800】
俺は殴る拳へ【硬さ】を変化させそれを更に【強化】する。
ガチーーンッ!!!
人が人の腹を殴ったとは思えないような音が鳴り響く。
(痛ぇぇぇ!!!)
簡単に越えられる訳はないと思ってはいたが、ここまでしてもダメージすら入らないのか!
俺はすぐに飛び退く。
「ほほう。今の攻撃は、強化系と変化系か?同時に使うことによって以前よりいい攻撃だった」
師匠が褒めてくれる。
「ありがとうございます。殴った腕が痛いです」
腕をプラプラと振り、少しでも痛みを逃がそうとする。
「まあそう簡単に抜かれては、師匠としての顔がたたん。ちなみにワシはまだ全力で『堅』しとらんぞ?」
しれっととんでもないことを言う師匠。
「なら、これで!」
【放出系を使用します。残りオーラ3300/4800】
【操作系を使用します。残りオーラ4800/4800】
俺は【念弾】を【操作】し、俺と師匠の間に10個浮かせる。
「『追操弾』!」
(1個につき放出系、操作系が300ずつ。放出系はこれで残り1発しか撃てないな…)
頭の中でそれぞれの系統の『オーラ』残量を計算しながら、師匠に向けできるだけ10個違う動きをさせて念弾を放つ。
「確かに放出系と操作系の組み合わせは効果的だが、この使い方は少しもったいないのではないか?それほど意味もないぞ」
師匠は微動だにせずその攻撃をうける。
その瞬間俺はまた飛び出す。師匠は少しだけガッカリした顔をしたが、俺のスピードが先程より速いことに気づいたようだ。
【強化系を使用します。残りオーラ2800/4800】
【放出系を使用します。残りオーラ300/4800】
放出系の『オーラ』を足裏から【ジェット噴射】のように出し、強化系でそれをまた【強化】する。
(俺はまだまだなんだ!長期戦なんて考えるな!一矢報いるために、全力を出せ!)
師匠の『堅』がとくに変化した様子はない。しかし、先程の攻防で師匠の『オーラ』が俺の攻撃する瞬間、当たるであろう場所に少しだけ移動することに俺気づいている。
恐らく取るに足らない俺の攻撃でも、師匠は念能力者との戦闘でやっていることを無意識にほんの僅かにしてしまっているのだろう。
(ここだ!)
この瞬間俺は、"切り替えた"。
【変化系を使用します。残りオーラ2800/4800】
無くなった放出系をやめ、ありったけの『オーラ』で拳を【鋭利】に変化させた。握りしめた拳がうっすらとナイフ状の『オーラ』を帯びる。そして今度は"筋力"を【強化】させて、より速い速度で殴りかかる。
「ふむ…」
先程と違う近接攻撃に師匠が僅かに反応するが、抜かれないと判断したのだろう。無意識な『オーラ』がまた僅かに移動するだけだった。
(十分だ!!)
このままなら俺はまた師匠にダメージを与えられないだろう。そう、『このまま』なら。
【操作系を使用します。残りオーラ1800/4800】
強化系をやめた。しかし、既に速まった俺の拳が速度を失うことはない。既に発生した物理法則が『オーラ』の使用をやめてもそのままなのは、修行で実証済みだ。
そして俺は、拳にうっすらと纏っているナイフ状のオーラの位置をできるだけ一瞬で【操作】した。
今、師匠は無意識のうちに僅かとはいえ『オーラ』を移動させている。そのほんの少しの綻びに、全てをかける!
「うおおお!!!」
全てがスローモーションになった気がする。その中で師匠は少し驚いた顔をした後、笑顔になった。
次の瞬間、俺は吹き飛ばされた。
「ぐげっっ!?」
壁に叩きつけられた俺は、気絶しかけながらも師匠を見る。師匠はほぼ姿勢が変わっていなかったが、少しだけ右足が前に出ていた。
(殴られたのか…?まったく見えなかった…)
師匠はこちらに向かって少し微笑みながら、
「驚いたわい」
と言った。
師匠のお褒めの言葉をいただいた俺は嬉しく思ったが、意識を失っていく。最後に思ったことは、
(師匠、最後以外1歩も動いてねぇじゃん…)
であった。
初めてのバトルシーンでした。数値は把握するの大変だな…と思いましたが、そこそこ気に入っているのでもうちょっと頑張ってみます。