健康で文化的な最低限度の生活   作:佐賀のためのサーガ

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主人公が旅立ってからの半年間を描いていきたいと思います。


7話

俺は師匠の元を旅立った後、公共の交通機関と徒歩でパドキア共和国に向かった。何故その国に決めたかと言うと、ある程度発展していて大きな国だからだ。少しだけ調べたところ、伝説の暗殺一家の住居があるらしいが、暗殺者が自分から場所を明かすわけないし、もし居たとしてもこんなに大きな国だ。『暗殺一家』と言うくらいだから家族単位だろうし、まず会わないだろう。

 

 

「うっわぁー!すげぇな…」

 

とりあえず『大きな街』と呼べるくらいのところには来た俺。

周りの人が、「ああ、田舎者か」とどこか優しい目をしている気がするが、気にしたら負けだ。

ビルが建て並ぶ日本で生活してきたから、街なんて見ても…と少し前の自分は思っていた。

しかし、やはりここは異国(異界?)。日本とは少し違った街並みだ。俺自身は海外旅行などあまりしなかったが、ヨーロッパの方の街並みに近いのだろうか。

 

 

「おい、邪魔だ!どけ!」

 

急に大声で怒鳴られる。

 

「すいません、すぐにどきます」

道のど真ん中に立っていたわけではなかったが、どうやら邪魔になってしまっていたらしい。すぐに道路の端による。ついでに声の主の方に振り返ると、そこにはまさにチンピラといった風貌の男3人。

 

「ちっ!てめぇよぉ。田舎モンかなんか知らねぇが、ナメてんのか?他人様に迷惑かけちゃいけねぇってママに習わなかったのかよ!ああん!?」

 

先頭に立つ金髪、耳や鼻にピアスをつけた男がこちらに対してやたら威圧的な態度をとる。

 

(うーん、それほど悪いことをしていたとは思わないけど、ことを荒立てたくないしなぁ…)

 

前の世界であったら出くわしたら終わりの災害のように感じたであろう彼らも、今の自分からするとそれほど脅威ではない。

しかし元が一般人。

師匠から「驕るでないぞ」とも言い聞かせられてきた俺は、俺TUEEEEをする気がもうない。「目立ちたくねぇー」と連呼する気もないが。

 

「本当すいません、見たことない街並みに驚いちゃって。都会はこんなにすごいんですね」

 

相手はこちらを田舎者だと思っているようだし、俺の見た目はよく言えば純朴、悪くいえば冴えない平凡な日本人顔らしいからちょうどいいだろう。

 

「ちょっと俺ら困ってんだよ。ついてこいや。向こうで話しようぜ」

 

まさかのカツアゲであった。なるほど、先程田舎者ということを否定しなかったのと、俺の平凡な顔が災いして彼らにカモだと思われてしまったようだ。

 

「いやー、それはちょっと…」

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに俺はこちらの世界で戸籍がないため、銀行口座をつくれない。しかし、俺は自分の銀行口座を持っている。これは師匠が用意してくれたものだ。

 

「お主は戸籍がない。これは非常に不便だろう。ワシ、いやハンターならば戸籍の偽造の一つや二つは容易い。やろうと思えばワシはお主にすぐにでも戸籍を用意してやれるじゃろう。しかし、ワシはそれをせん。ワシはテロリストハンターを名乗っているが、要はハンターの地位を使って犯罪者を捕縛、場合によっては殺害すら許される立場にある。だからこそ、ワシは社会の法に関して人一倍気をつけねばならん。ハンターライセンスをとるまでお主は苦労してしまうだろう。すまんな」

 

「いや、そんな!師匠が謝ることなんてないですよ!ハンターライセンスを取れば済む話ですし、師匠にはご迷惑をたくさんかけてしまっています」

 

「戸籍はつくってやれん。しかし、戸籍がなければ銀行口座がつくれん。だから、これを用意した。持っていけ」

 

そう言って師匠は俺にひとつの通帳を渡してくれた。

 

「これは…?」

 

「ワシの名義で1つ新しい口座をつくっておいた。その銀行口座はお主の自由にしていい。報酬の振り込みなどもそこにしてもらうといいだろう。」

 

「ええ!?そんな!申し訳ないですよ!ってしかも口座に500万も入ってるじゃないですか!こんなの貰えませんよ!」

 

「弟子が遠慮などするな。ワシは一応シングルハンターだ。それなりに稼いでおる。ワシの矜恃によってお主の戸籍はつくらん。その判断に全くの反省も後悔もないが、やはり師匠として弟子にはできる限りの事はしてやりたい。」

 

「でも…。迷惑がかかってしまったら…」

 

「なんじゃ、金遣いが荒い自覚でもあるのか?」

 

「いえ!そんなことは決してないですけど…」

 

「なら何も問題あるまい。それをやるのもワシからお主への信頼の表れだと思えばいい」

 

「ずるい言い方だ…。ありがとうございます、大切に使わせていただきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん、渡すのは絶対に有り得ないな。けど、どうすればこれを切り抜けられるか…。

 

その時、

 

バーーーーン!!!!!

 

少し離れた所から大きな騒音が聞こえた。

 

「きゃああ!」

「なんだ!?」

「今の音、爆発か!?」

「逃げた方がいいんじゃないか!?」

 

近くにいた街の人々がパニックに陥る。

 

「うおっ!?」

「なんだよこれ!?」

「知るかよ!」

 

目の前の3人もその例に漏れなかったようだ。

 

(『絶』)

 

俺は『絶』を使って気配を消して、その場から立ち去ることにした。

 

「おい!あいついねぇぞ!?」

「どこ行きやがった!!!」

「探せ!!」

 

あの3人も俺がいないことに気付き騒ぎ始めたようだが、もう見つかることはないだろう。俺はホッと胸をなでおろした。

 

「でもさっきの騒ぎ、なんだったんだろうなぁ?」

 

そこそこのランクの宿を確保した俺は、その宿の1階にある食堂で食事をとりながら、おかみさんと雑談を交わす。

 

「なんかさっきちょっと大きな騒ぎがあったっぽいですね」

 

「そうなのよ。最近よくあるの。ここら辺はマフィアが多いわけじゃないけど、それほど治安は良くないし、なにか抗争でもあるんじゃないかって噂よ。一般人はいないみたいだけど、チンピラは何人か死んでしまってるみたい」

 

おかみさんは、大きな声では言えないであろう内容を小声で俺に伝えてくる。

 

「へぇ、それは物騒ですね。警察とかは動いてないんですか?」

 

「それがね、1度チンピラがやられてる暴行の現場を警察官が目撃して、犯人を逮捕しようとしたら返り討ちにあったんですって。警察官は2人いて、結構優秀だったみたいなのに、1人の犯人に手も足も出ず重症を負わされたみたいよ。応援に駆けつけた警察官が犯人に発砲したみたいだけど、当たらなかったみたい。撃った警察官は『当たったけど効かなかった』って言ってるみたいだけど」

 

怖いわよねぇ…とおかみさんはこの話を締めくくった。

荒事に慣れており、少しは武を修めているであろう警察官2人を一方的に倒し、発砲されてもその場から立ち去れた。

 

俺は思った。

 

(この騒動の犯人、念能力者じゃね?)

 

考えてみると辻褄が合う。どうやらとんでもなく面倒な時期に来てしまったようだ。とりあえず、少しだけ観光したら街出ようかな…。そうしよう、それがいい。そうと決まればさっさと見てこよう。俺はおかみさんにお礼を言って宿を出た。

 

(とりあえずブラブラしよう。なんか掘り出し物とかあったらその土地ならではっぽいよな)

 

そんなことを考えながら歩いていると、嫌な気配だ。

(いやいや、そんなまさか)

 

近づいてくる。

 

(たまたまだよ、たまたま)

 

俺の後ろに1人男が立つ。

 

「ヒッヒヒッ!お、お前『使える』な?お、俺についてこい。こ、ここで暴れられたくなかったらな!ヒヒッ!」

 

俺の願いは届かなかったようだ。後ろにたつ男は念能力者。薄気味悪いオーラを放っていて、正直気持ち悪い。

ついて行きたくないが、こいつの念能力がもし広範囲なものだったら、多くの犠牲者が出てしまう。ここは従うしかないだろう。

 

「わかった。どこに行くんだ?」

 

振り向いてみると黒い髪がボサボサと寝癖のままになっており、服装もホームレスではないが清潔感がない。体格は少し背が高く、ガリガリ。口元はニヤついているが、目は全く笑っておらず血走っている。

(まさにTHE不審者って感じだな…)

 

「お、俺の言う通りに歩いていけ…。従わなかったら、どうなってもし、知らねえぞ?」

男の言われるがまま歩いていくと、人が少なくなり、最後には誰もいないような裏路地を通り、ゴミが大量にある少し広い場所に出た。

 

「こ、ここまで来ればいいだろう。ヒヒッ」

 

「なあ、ここまで俺を連れてきて、どうするつもりなんだ?」

俺は男に真意を尋ねる。

 

「か、簡単だ。お前を、俺が、こ、ここ殺すんだ」

 

なんだか滑舌が怪しくなってきた口調で言う。

「おいおい、なんでそんなことするんだよ?」

とりあえずできるだけ落ち着いた声で尋ねてみる。

 

「き、きまってるだろ!神に捧げるんだよっ!殺しの神に!」

なんだこいつは…。クスリがキマってるような感じだ。

 

「こ、この街はわ、渡り歩いて4つ目だ。神に供物を捧げて、うるさくなったら移動するんだ」

 

こいつ、連続殺人犯か!しかも口ぶりからして、かなりの数を犯しているはず…。その時、俺は大量に捨てられているゴミがおかしいことに気づく。

 

「こ、この街は、お、大きくはなかったが、消えても騒ぎにならねぇカス共が沢山いたぜ。ヒッヒヒッ」

 

よくよく見ると、そこには10を超える死体があった。中にはかなり期間が経っているであろうものもあり、思わず顔をしかめる。

 

(おい、あれは…)

 

ひとつ見覚えのある死体があった。今日俺をカツアゲしようとしたチンピラだ。別に仲良くともなんともない。どちらかといえば嫌いな奴だったが、それでも全く知らない死体を見るのとは少し訳が違った。

「お、俺は選ばれたんだ!この神から授かった力を使って、もっと神に供物を捧げるんだ!」

 

こちらの事などお構い無しに、狂った男は1人話し続ける。

「お前も多少は神に目をかけられているようだが、俺ほどじゃない!お前も神に捧げるんだ!」

 

男は俺に向かって血走った目を向けると、そのままどこからかナイフを取り出し、こちらへ走ってきた。

 

「死ねぇぇぇぇ!!!」

 

スピードはかなりのものだ。更にナイフも禍々しい感じがする。俺は男の攻撃を避ける。するとそのナイフが壁に突き刺さり、シュウシュウと音を立てながら一部溶けた。あたりに焦げ臭いようなにおいが漂う。

 

 

「す、少しはやるようだな。けど、俺の"酸の強制配達人"(サンタクロース)の威力を見ただろう。お前では対処不可能なレベルだ!絶望を味わえ!」

 

男はこちらにもう一度突進を仕掛けてくる。そのこちらに向けたナイフに対して、俺は『オーラ』を纏いながら拳を放った。

 

ギンッッ!

 

折れたナイフの切っ先がクルクルと宙に舞い、ゴミの中に消えていく。

 

「は…?」

 

男は理解が追いついていないようだ。

 

「そんな不思議なことか?俺に念能力が破られたのは」

 

だんだんと何が起こったか把握した男は、こちらに対して狂気に満ちた顔で叫んでくる。

 

「な、何故だ!お前の力じゃ、俺に勝てるわけねぇ!何をした!お前程度に折れるもんじゃねぇぞ!」

 

「ひとつ、言っておくことがある」

 

俺は、男の方を向きながら言った。

「俺は自分の能力によって、普段表に出ている『オーラ』の量が少ないそうだ。俺の実際の練度より、かなり格下に見られるだろうと俺の師匠が言っていた」

 

そう、俺は"生命力の樹(バンク・ツリー)"によって『オーラ』を貯めているが、その分の『オーラ』は他人には知覚できないらしい。唯一、俺が能力を使う時、使用する系統の『オーラ』の量は分かるみたいだが……。

 

更に、毎日『オーラ』を貯めているため、残った『オーラ』が貯めるだけどんどん減り、更に弱く見られるという訳だ。

 

「すまないな。別に騙すつもりはなかったんだ。元々あんたが少し変わったヤツなだけなんだったら、俺に戦う意思はなかったしな。けど、知ってしまったからにはもうダメだ。俺を殺すことはなくとも、あんたは俺の『平和』を脅かす存在だ」

 

「う、うるせぇ…。こんなことあるはずねぇんだ…。うるせぇぇ!!」

 

男は折れたナイフの柄を持ったまま、同じように突っ込んでくる。俺はそれ対し、師匠から学んだ体術の構えをとる。

【強化系を使用しますか? 残りオーラ15000/15000】

【放出系を使用しますか? 残りオーラ15000/15000】

【変化系を使用しますか? 残りオーラ15000/15000】

 

俺は正拳突きを突き出し、発生した衝撃を【強化】する。そしてそれを【球状】に変化させ、【砲弾】として放つ。

 

「『拳砲』!」

 

俺から放たれた砲弾は、男の腹を捉え、一気に衝撃を拡散させた。

 

「ぶへらっ!」

 

男は吹き飛び、奥の壁に叩きつけられる。

 

「悪いな。お前が思ってるほど、俺は弱くなかったんだ」

【特質系 残りオーラ50000/50000】

【強化系 残りオーラ14500/15000】

【放出系 残りオーラ14500/15000】

【変化系 残りオーラ14500/15000】

【操作系 残りオーラ15000/15000】

【具現化系 残りオーラ15000/15000】

【オーラ量 50000/50000】

 

これが、今の俺の力である。

 

 

 

 

 

 

無事男を撃退した俺だったが、この後の処理に困った。警察にこいつを突き出すと、念能力者であるこいつは周りの警察官を殺して逃げてしまうかもしれない。だから俺は、最も頼れる人に連絡をとった。

 

「まさかこんなに早く連絡があるとはの」

 

「すいません師匠。お手を煩わせてしまって」

 

「構わぬ。お主の捕らえた男はジャッカル=リッペル。判明しているだけでも48件の殺人があるB級賞金首じゃ。念能力者であったため一般では対応できなくての。しかし、臆病な性格のため自分より格上のハンターが来るとすぐ逃げ出してしまうから、なかなか捕らえることができなかったんじゃ。ヨシヒロよ、お手柄じゃったぞ」

 

師匠から話を聞くと、どうやら男は想像以上に罪を重ねていたらしい。俺を舐めていたのも幸いし、捕縛することが出来た。こいつは念能力者専用の監獄に送られ、二度と出てくることはないだろう。

 

「賞金首を捕らえたからの。お主には賞金が出るはずじゃ。お主の口座に入れるよう手配しておこう」

 

「何から何まですいません。ありがとうございます、師匠」

 

「うむ、これからも無理はするでないぞ。このことは自信にして良いが、過信には繋げるな。この経験はお主を成長させる薬にもお主を死に至らせる毒にもなるでな」

 

「はい。肝に銘じます」

 

師匠に色々と助けてもらい、なんとかひと段落つけることが出来た。これでこの街からすぐ出る必要もなくなったわけだ。師匠と別れた俺は、軽い足取りで宿へともどる。

 

(結構遅いな…。今何時だ?)

 

師匠が来てからはハンターライセンスとシングルハンターという肩書きのおかげでスムーズに進んだが、それでも相手は世間を騒がせた連続殺人犯。警察の調書に付き合ってたりしたら、結構遅くなってしまった。

 

(こっちを通るとショートカットできそうだな。あの高い建物には見覚えあるし)

 

少し気が緩んでいたのだろう。今日巻き込まれたにも関わらず、俺は裏路地を通ることにした。

 

(あれ?思ったより長いな。まあもうすくだr…!?)

 

俺は咄嗟にその場から飛び退く。

 

ズドンっ!

 

何かが上から落ちてきたようだ。そして俺はその落下物を見て驚く。それはなんと、鍛え抜かれた肉体に銀の長髪を持つ、尋常ではない『オーラ』を纏っている男だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ようやく主人公の成長を見せられました。しかし書いているうちに予期しないサイコパスが生まれてしまいました。まあもう出てくる予定は無いのですが。
最後の登場人物は原作キャラです。場所と主人公の挙げた特徴でわかってしまうかなぁ。ここから結構関わる予定です。6話で出たビスk…、麗しい女性との出会いはまだ少し先となります。
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