火力こそ正義!   作:小狗丸

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第八話

「おはよう」

 

 朝。魔法省に出勤して、すでに出勤をして研究をしている皆に挨拶をすると周りから挨拶が帰ってきた。

 

 一ヶ月前にフールーダに連れてこられたばかりの頃は得体の知れない者(実際にそうなのだが)を見る目を向けられていた。しかし俺がパワードスーツ関係、シャルロットが探知系、シャインが回復関係の魔法に長けているとこの一ヶ月で知られるようになると、魔法省の職員達は歓迎と尊敬の目で見てくるようになって、こうして挨拶を返してくれるようになった。

 

 そして魔法省の職員達に挨拶をしながら今日は何をしようかなと考えていると……。

 

「やっと来たか、ロボ・バイロートォッ!」

 

 ……朝から元気な老人の大声が聞こえてきた。

 

 俺が内心でうんざりしながら声が聞こえてきた方を見ると、俺達をこの魔法省にスカウトした白いローブを着た老人、フールーダが血相を変えてこちらに向かって全力で走ってくるところであった。

 

 あー……。何だか朝から面倒臭そうな気配がするな……。後ろにいるシャルロットにシャインも俺と同じ気持ちなのか苦笑いも浮かべているぞ。

 

「おはようございます。フールーダ様。そんなに急いでどうしたのですか?」

 

 一応こんなのでも俺達の雇い主なので敬語でフールーダに挨拶をする俺だが、フールーダはそんなのを気にする事なく、俺達の前に来ると大声を出した。

 

「どうしたもこうしたもないわ! 早くお主らが持つパワードスーツを儂に見せるのじゃ!」

 

 フールーダの言葉は予想した通りのもので、それを聞いた俺は正直うんざりとした。

 

 フールーダが俺達を魔法省にスカウトした最大の理由は、俺達のパワードスーツを間近で見て研究をする為だ。パワードスーツはこの世界にとって……いや、ユグドラシルでもすでに失われたとされる高度な魔法工学の粋を集めて作られた兵器なので研究したい気持ちは分かるが、毎日顔を合わせる度にパワードスーツを見せろ見せろと同じことを言われるといい加減うんざりしてくる。

 

「何をしている!? さあ、早く『魔力コソ正義八号』を儂の前に!」

 

「火力コソ正義八号だって! 何、人の愛機を改名してんだこのジジイ!?」

 

 フールーダの言葉に俺は思わず敬語を忘れてフールーダに怒鳴り返すが、フールーダはそれに怯む事なく言い返してきた。

 

「パワードスーツが魔法工学によって作られ、魔力で動くのなら別に『魔力コソ正義八号』でもいいじゃろう! むしろ火力コソ正義八号なんて無骨な名前よりずっといいわい!」

 

「はっ倒すぞこのジジイ! そもそも! 別に火力コソ正義八号を出さなくても、すでに火力コソ正義一号を貸しているんだから、そっちで研究しろよ!」

 

 そう俺は一ヶ月前、魔法省にスカウトされたばかりの頃、あんまりにもフールーダが火力コソ正義八号を見せろとうるさかったので、俺が最初に製作したパワードスーツ「火力コソ正義一号」をフールーダに貸したのだ。当然フールーダはそのことにこちらが引くくらいのハイテンションで喜び、今も火力コソ正義一号を研究している。しかしそれでもフールーダは、今のように火力コソ正義八号を見せろと言うのをやめなかった。

 

 ……本当にどれだけ魔法に対して貪欲なんだよこの爺さん?

 

「〜〜〜! 嫌じゃ嫌じゃ! 魔力コソ正義八号も見せてくれんと嫌じゃ!」

 

 俺の言葉にフールーダは床に倒れて手足をバタつかせ子供のような駄々をこね出した。

 

「こんのジジイはぁ……!」

 

 駄々をこねるフールーダに対して俺は握り拳を作って怒りに震え、その様子を離れて見ていたシャルロットとシャイン、そして魔法省の職員達が苦笑いを浮かべる。

 

 これが俺のこの一ヶ月でほぼ毎日繰り広げられる朝の光景であった。


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