黒と金のアヴェンジャー 作:主将
オラリオ南部の繁華街、第五区画と呼ばれる位置にフレイヤ・ファミリアの本拠達『
「さっさと終わらそうじゃねぇか」
「良いだろう。5分で終わらしてやる」
アレンが消えた。さっきまで2人の間にあった1メドル程の空間は6メドルまで開いていた。距離をとった向こう側でアレンは槍を構えて体勢を低くした。そしてその顔に不敵な笑みを浮かべるとまた消える。次に現れた時にはシグルスを槍の間合いに入れて高速の突きを放っていた。シグルスは槍から浴びせられる高速の連撃を剣で弾く。都市最速の名を欲しいままにするアレンの突きは先端が消えるほど速く、側から見ればシグルスの剣が火花を放っているように見えていた。出来る限り効率よくシグルスは回避するがそれでも避けきれなかった攻撃がシグルスの身体を掠めていった。
「避けるだけじゃ意味ねぇぞ!!」
アレンの突きはますます速くなる。確かに防ぐだけでは何にもならない、がこの状態でアレンに突っかかっていくのは博打にも程がある。シグルスは防ぎつつ攻撃を読んだ。アレンの突きの半分は間合いから抜けるのを防ぐための牽制、もう半分はシグルスの身体を狙ったものだがその殆どは構えを崩すためのフェイクだ。フェイクに紛れて正中線を狙った決定打にすべく攻撃があるのだ。アレンらしい戦法だろう。シグルスはあえて構えを解いた。すると身体の中心部を狙った槍が打たれた。今までで一番速い一撃、それの柄をシグルスが掴む。
「!!?」
博打には程があるとはよく言ったものだ。槍の嵐に身を投じるのも最速の一撃に胸を晒すのも変わらない。もしかするとこっちの方が危険だったのかもしれない。槍の柄を掴んだシグルスはアレンが混乱しているうちにそれを引っ張った。そうして引き寄せたアレンの鳩尾を思い切り殴り、怯ませたら両手剣を振り上げた。振られた剣が腹を抑えるアレンに向けられる。剣がアレンに触れられるギリギリのところでアレンは身体を動かした。
ケホケホと咽せながらアレンは痛む身体を無理矢理起こした。シグルスの身体もアレンの槍のおかげで傷跡だらけだ。2人はお互い笑みを浮かべた。オッタルのように手も足も出ないわけではない。実力としては丁度同じくらい。そんな2人の勝敗を分けるのは一瞬の気の緩み。2人はその状況が楽しくて仕方なかった。
シグルスはアレンに自分の間合いの外から攻撃されないために接近した。槍と剣の相性は悪い。シグルスの剣は両手剣でリーチはそこそこ長いがそれでも間合いの外から一方的に攻撃出来る槍との相性は悪い。しかし近づいてしまえば剣の方が有利になる。槍の構造上極端な接近戦は苦手なはず。
「チッ!!」
予測通りだ。アレンが下がればシグルスはそれに合わせて前に出る。都市最速に死に物狂いで追いつきながら剣を叩き込んだ。アレンの戦闘スタイルが槍を中心としたものから体術を中心としたものに変わる。アレンの蹴りは流石としか言いようがないくらい強力で、剣で受けると身体全身に振動が行き渡った。そしてその一瞬の隙でシグルスの顎を捉えたアレンの拳が放たれたがすんでのところでシグルスが顎を引いて額を突き出したことで気絶は免れた、がアレンに離脱のチャンスを与えてしまった。また槍の嵐が吹き荒れる。その前に終わらそう。アレンは距離を取った。そして腰を思い切り落として構えた槍の先端はシグルスの喉元へと向けた。終わらせたいのはアレンも同じらしい。シグルスは剣を両手で握った。腰を落として身体はやや前傾に。両手に握った剣は自分の正面に正眼に構える。
初めと同じアレンは消えた。シグルスの首元に一筋の血が流れた。そしてアレンの身体は重力に従った。アレンの身体の腹部に食い込むシグルスの剣、対してアレンの槍はシグルスの首元を掠めていた。
勝負あり。
シグルスは倒れたアレンに青い液体を掛けた。液体はアレンの傷口で沁みて蒸発し煙になる。瓶を投げ捨てたシグルスはアレンに感謝を伝えるとその場を後にした。