黒と金のアヴェンジャー   作:主将

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まだ本編ではないかも


少女

 生まれは良い方だった。裕福かは分からないけど幸せだった。

 母は優しかった。綺麗な母だった。美しくて優しくて良い匂いがする母だった。

 父は冒険者だった。そんな父をカッコ良いと思っていた。最強のファミリアの団員で、御伽噺が好きな私は父が物語の中の英雄のように見えた。

 幼馴染がいた。名前はシグルス。私より三歳年上でよく一緒に遊んだ。シグって呼んでいた。シグの父と私の父は同じファミリアの団員で二人とも仲が良かったから私達が仲良くなるのも無理はなかった。シグは強い。昔いじめられた私を助けてくれたことがあった。そんな彼は私だけの英雄だった。

 世界で一番強くて恐ろしい奴を倒してくるんだ。そう言って家を出て行ったきり父は帰ってこなかった。遺体も無かった。でも何があったかは私には分かった。枯れて出なくなるまで涙を流した。そして復讐を誓った。

 

 

 

 

 その少女を見たとき、ウチは柄にもなくビビったのをよう覚えとる。白い肌、金の髪、大きくてつぶらな金の瞳、ものごっつい可愛え少女で将来も美人になるんやろくと思った。細剣の扱いに長けていて冒険者の資質も十二分にあった。しかしその少女からは抜け落ちたように感情がなく、まるで精巧につくられた人形のようでもあった。ただ己を強くすることにしか興味を示さぬ人形。ウチはその少女が心配になった。興味も湧いたけどただ心配だった。だからその少女をほしいと思った。

 

 

 

 

 

 遠征帰りのロキファミリアにはどこか残念な空気が流れていた。遠征前、未到達階層への進出をあれほどまでに意気込んで来たと言うのに遠征途中で新種のモンスターに襲われ中止を余儀なくされた。なんでも溶かす体液を持つそのモンスターは殺しても体液をぶちまけ放っておけど体液をぶちまけるというなんとも面倒くさい性質を持ち、不壊属性を持つ武器以外は全てボロボロに溶かされ鎧や盾もボロボロに溶かされたわけで撤退しか方法はなかった。熱量にそぐわぬ結果の不完全燃焼感を晴らすに晴らせずため息ばかりが聞こえていたその時現れた目の前を埋め尽くさんばかりのミノタウロスの群れ。

 通常であれば第一級冒険者達はより下の冒険者に経験値を稼がせるために戦線には加わらないものだが今回は数が数だった。アイズやベートやヒリュテ姉妹などの第一級冒険者達の働きもありミノタウロスの群れが半分程になった時、冒険者の圧倒的な力に恐れをなしたのか一体のミノタウロスが背を向けた。そして恐怖はミノタウロスに伝染するように広がり一体の逃走が引き金となりあろうことか集団逃走を開始した。唖然とする冒険者達。

 

「追え!お前達!」 

 

なんとか動揺を抑えたリヴァリアが指示を上げると唖然としていた冒険者達がはじけるように動き出した。

 

「…そっちは!」

 

 ミノタウロスの逃げる方向、それはより上の階層で身の丈に合った階層で身の丈に合ったモンスターを狩っている冒険者達にとってミノタウロスの群れなど悪魔でしかなかった。もし冒険者に被害でも出たらきっと各派閥各方面からロキファミリアへの非難が向けられるに違いないし自分達の寝起きも悪くなるのは当然だった。

 上の階層、その上の階層と逃げていくミノタウロスの集団は各階層にバラけていきそれを討伐するために冒険者達もバラけていきミノタウロスが上層に到達して、第6階層に足を踏み入れる頃にはミノタウロスを追うのはアイズとベートだけになっていた。

 6階層に逃げたミノタウロスをアイズとベートで一体ずつ討伐する。しかしあともう一体いた筈だった。アイズは見失ったと絶望しながら辺りを見回す。

 

「アイズ!こっちだ!」

 

 ベートの声が聞こえてアイズは走る。狼人のベートは鼻がきくから匂いを辿ったのだろう。ベートの後ろをアイズが駆け、6階層からもう一つ上の5階層へと抜け、ミノタウロスを探しているときに咆哮と絶叫が聞こえた。

 

「ヴォアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「ホォアアアアアアアアアアアアアアアア!??」

 

 アイズはベートを追い越し音の方向へと全速力で駆ける。複雑な道を何度か曲がるとそこは行き止まりで壁にうずくまる少年とミノタウロスとその後ろから剣を抜いて歩く身長の高いヒューマンの冒険者。彼はミノタウロスの背中に後ろから剣を振った。斜めに振われた剣がミノタウロスの肩から腹部の横まで斜めに真っ直ぐな線を入れ、胴体が擦り落ちた。少年にミノタウロスの血が飛び彼は片手剣についた血を振り払った。そして鞘に納めながら振り返るとアイズと目が合った。

 

「…シグ」

 

「アイズか。そいつをなんとかしてやれ」

 

シグルスは壁にうずくまる少年のことを顎で指す。そして歩き去った。

 

「ったく。一番逢いたくねぇ奴じゃねぇか」

 

「三下には興味ない」

 

彼はベートの挑発を軽く受け流して歩き去った。通路の奥にミノタウロスと見紛うような人影があり、その人影の後ろをシグルスが歩く。【猛者(おうじゃ)】と【戦鬼(せんき)】。三下には興味がないと言う言葉はこの場にいた少年にも向けられていたのだろう。アイズは心配そうな眼差しでオッタルの後ろを歩くシグルスを見つめた。

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