黒と金のアヴェンジャー 作:主将
オラリオの地下に広大に広がるダンジョンの入り口を覆いかくす蓋の役割をしている天高く伸びる白亜の塔、バベル。オラリオ中に存在する全ての建物よりもオラリオを覆い隠す市壁よりも高いそれの最上階。地上の全てを見下すことのできる空間に彼女はいた。純白の肌に長く儚げな睫毛。幼さを残しつつ妖艶な顔立ちに腰まで届く長い髪と見事な身体。この世の美を集めて人の形に作り上げたような彼女、フレイヤはワインに口をつけるととある男の名前を読んだ。
「シグルス」
「はっ」
彼女の背後斜め後ろに男が立つ。その魂は出会った頃より深く淀んでぐにゃぐにゃと不規則に形を変えていた。
「ステイタスを更新しましょうか」
「承知」
一人分だと言うのに広くて大きなベッド。花のような豊かな匂いがシグルスを包む。フレイヤはベッドに座ると隣を2回程軽く叩いた。シグルスが隣に座るとフレイヤはシグルスの頬に口付けをする。
「食べちゃったら、【剣姫】に怒られちゃうわね」
微笑みながら逞しい上半身をむき出しにしたシグルスに話しかける。
「御心のままに」
「つれないわね。そこにうつ伏せになりなさい」
シグルスはそれに従ってうつ伏せになった。フレイヤはうつ伏せになったらシグルスに跨り、自らの手を傷つけて目の前に広がる逞しい背中に垂らした。
シグルスの背中が発光して刺青のように刻まれた文字が現れた。
「オッタルと戦ったのね」
「はい」
「強かったかしら?」
「…はい」
「あなたもまだ強くなれるわ」
短い会話の間にステイタスの更新は終わったらしくフレイヤがシグルスの背中から降りた。そして羊皮紙をシグルスに渡す。
シグルス=ヴォルスング
Lv 6
力 A:872
耐久 A:801
器用 B:780
俊敏 S:901
魔力 B:780
耐異常C
戦士 D
剣士 D
窮地 E
《魔法》
【
・武器召喚魔法
・投擲時照準対象を命中するまで自動追尾
【
《スキル》
【
・任意発動。怪物種に対して攻撃力高域強化。竜族に対し攻撃力超域強化。憎悪の丈により効果向上。
【憎悪】
・憎悪が続く限り成長速度上昇
「あなたは復讐を果たした後どうするつもり?」
唐突にフレイヤがそんなことを尋ねた。シグルスは少し考えるような仕草を見せた後に口を開いた。
「決まっていません」
「あら、神の前よ?」
見透かされることは分かっていたけどそれを口にしてしまうのは自分を見出して育てたフレイヤにあんまりだと思った。大きく息を吐いたシグルスは話出した。
「決まっていないのは事実ですが俺は復讐の為に生きてきました。それしか俺の生きる理由になり得ない。そんな男が普通に生きてゆけるとでも?」
「………ねぇシグルス、こっちを見て頂戴」
言われた通りに隣に座るフレイヤの方に顔を向けて目を合わせた。フレイヤはシグルスの頬を両手で掴むと彼の唇に自身の唇を重ねた。
「愛しているわ。おやすみなさい」
無言で立ち上がったシグルスは失礼しました、おやすみなさいと一言言うと部屋を後にした。
美の女神は悩んでいた。死に急ぐ自らの眷属に対して。普段は様々な子供で埋まるその頭は一人の冷たい青年に埋め尽くされていた。
物語内での時間が飛び飛びになるので短編という扱いにさせたいただきました。完全なる自己満です。それでもよければよろしくお願いします。