黒と金のアヴェンジャー   作:主将

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 刃牙で言うところの範馬勇次郎みたいな位置取りのキャラにしたいけど難しい。


怪物祭

 常日頃から冒険者のお陰で街は賑やかで活気づいているオラリオだが、本日の活気は異常なものとなっていた。冒険者ではない一般人の多くも街に出て、冒険者はこの日はダンジョンに潜らない。そう、今日は怪物祭(モンスター・フィリア)である。

 怪物祭はオラリオでは非常にオーソドックスな祭りで多くの人間がこの日を楽しみにしていることは言うまでもない。街の路地には様々な出店が出店され、メインのイベントである闘技場でおこなわれるショーは満席になり、立って観る客が出るくらい人気だ。 

 そんな怪物祭、シグルスはフードで顔を隠したフレイヤの左斜め後ろを歩いていた。右斜め後ろはオッタルが歩いている。3人は無言のまま街を歩くと一つの店に入った。2階に進み通りが見える窓際の席にフレイヤが座るとオッタルとシグルスはその後ろに静かに立った。そしてやがて目当ての神物が来る。赤い髪で細い目、エセ関西弁を話すロキとその後ろにいるのはアイズ。

 

「シグ…!」 

 

「…あぁ」

 

「なんや…あんたアイズの幼馴染やってな」

 

ロキに小さく頭を下げて口を閉じた。

 

「【剣姫】と顔を合わせるのは初めてね。初めまして」

 

「初めまして。アイズ・ヴァレンシュタインです」

 

フレイヤとアイズも挨拶を交わす。そしてロキが切り出した。

 

「あんた最近チョロチョロ動き回っとるらしいやないか。男か?」

 

フレイヤが笑みを浮かべた。肯定の意味なのだろう。

 

「アホくさ。またどこぞのファミリアの子供を気に入ったっちゅうわけか。この色ボケが。で、どんなやつや。今度自分の目に止まった子供いうんのは?」

 

フレイヤはそうね、と間を置いて話した。

 

「強くはないわ。今はまだ頼りない。少しのことで傷つき、泣いてしまうような、そんな子。見つけたのは本当に偶然。たまたま視界に入っただけなのよ。ちょうど…こんなふうに……」

 

フレイヤがそう言った時、窓から見える通路の人の波を縫って走るベルが見えた。

 

「ごめんなさい。急用を思い出したわ、また会いましょう」

 

フレイヤが立ち上がった。オッタルとシグルスもフレイヤの後に着いていく。シグルスは足を止めると振り返ってアイズを見た。

 

「またな」

 

それだけ言うと去っていった。

 フレイヤ達が去った後をロキは見つめる。

 

「シグルス=ヴォルスングかぁ」

 

「…どうしたの?」

 

「いや、気になる子供やなあって」 

 

あれは長生きできない。ロキは率直にそう思った。今までロキ・ファミリアの主神としてやってきて失った仲間も少なくはなかった。ダンジョンというモンスターの巣窟に身を投じるわけだから当然と言えば当然だが。そんなロキはシグルスを見て長生きは出来ないと思った。根拠はなく完全な勘だけど自信はあった。ロキはアイズの為にも勘も自信も外れることを祈るのだった。

 

 

 

 

 

 怪物祭の最中シグルスは薄暗い道で、大きな鉄の扉の前で座っていた。シグルスの後ろには4人程の人間が倒れているけど血も流れていなければどこかを打った痕もない。その時開け放たれた扉から様々なモンスターが出てきた。その一番最後に出てくるのは我らが主神フレイヤとオッタル。

 獰猛なモンスターを調教師(テイマー)がテイムしてみせる怪物祭の目玉のショーに使われるモンスターをフレイヤが流したことで街は混乱に陥った。

 その様子を3人が高所で眺める。見回すと逃げ惑う人々と対峙に動く冒険者。その中にシルバーファングに追いかけ回されているベルを見つける。そして見知らぬ蛇のような花のようなモンスターと戦うロキ・ファミリア。あんなモンスターは逃がした覚えは無かった。シグルスは高所から飛び降りて、そこへと向かった。

 

 

 

 

 

 アイズの剣は折れ、素手で戦っていたティオネとティオナのヒリュテ姉妹はその新種のモンスターに捕らえられた。残るレフィーヤは魔法を詠唱しようとした時モンスターが高速でレフィーヤに突っ込んでくる。レフィーヤは目を閉じて身体をモンスターの攻撃が貫いた、と思ったがそうならなかった。目を開くと漆黒の両手剣を振り下ろすヒューマンと断たれたモンスターの首。

 

「…シグ…!!」

 

アイズがシグルスを見て反応した。フレイヤ・ファミリアのLv6の冒険者【戦鬼(せんき)】シグルス・ヴォルスング。首を絶たれたモンスターは死んだかと思われたがその根本から新しいモンスターが生えてきた。シグルスはレフィーヤを見て言う。

 

「魔導士だろう?早く詠唱しろ」

 

 レフィーヤは一瞬恐怖する。その青年の冷ややかさに。しかしそれは直ぐに反骨精神に火をつけた。

 

「【ウィーシェの名のもとに願う】」

 

 レフィーヤが詠唱を開始すると全てのモンスターがレフィーヤに集中した。しかしレフィーヤの前に立ちはだかるシグルスが全てを叩き切った。モンスターとてただの馬鹿ではなくなけなしの学習能力を使って地下から飛び出てきたりもしたがそれさえ躱され切られた。圧倒的な強さ。もうレベル7に近いという噂も本当なのだろう。

 

「撃ちます!【ウィン・フィンブルヴェトル】!!!」 

 

 レフィーヤが放たれた氷がモンスターを根本から凍らせて絶命させた。アイズとヒリュテ姉妹は氷になったモンスターを砕いて抜け出す。シグルスは全員が無事なことを確認したら無言で立ち去った。その光景を影で見ていたロキが出てくる。

 

「しっかしアイツえぐい強いなー。モンスターが豆腐みたいやったわ」

 

アイズは内心焦っていた。シグルスは剣を持っていたとは言えあの硬い鱗を難なく断ち切り殺した。レフィーヤが詠唱している間顔色一つ変えずに守り抜いた。最近はフレイヤ・ファミリアの副団長の【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】を差し置いてレベル7に近づいているという噂もあるが、実際戦っているところを見れば納得だった。強すぎるほど強い。立ち回り、力、技術が一等級だ。アイズはシグルスの後を追った。頼みたいことがあった。

 

 

 

 

 

 シグルスは戦闘の場を抜けるとすぐにフレイヤを辿った。その時、シルバーファングと戦っているベルに出くわした。一般人がベルを囲むようにして観て

いる。シルバーファングにもベルにも傷が刻まれていて戦闘が始まってから時間が経っていることは誰が観ても分かった。そしてベルの一閃がシルバーファングに入った。シルバーファングは動きを止める。そして黒い灰になって魔石を落とした。歓声が上がる。確かにフレイヤがこの少年に興味を示す理由が分かった。どこまでも純粋で誠実。今は少しのことで傷つき涙を流すほど弱い。けれどやがて強くなるのだろう。復讐への執心で無理矢理強くなっているシグルスとは違ってベルは正しく強くなる。そして英雄となるのだろう。シグルスはベルの将来に少しの興味が湧いた。

 

「……シグ」

 

 シグルスは突如隣から声をかけられて驚いた。隣にはアイズが居た。いつから居たのだろうか。少年に夢中になっていて気づかなかった。

 

「どうした?」

 

「私を強くして」

 

 

 シグルスは何も言わずに頷いた。




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