黒と金のアヴェンジャー 作:主将
「私がみた中で
「そうでしょうか?」
シグルスの頭の中に
1秒たりとも安心できず、気を抜けば命を落としてしまうかもしれない、傷を負うのは当たり前のことで強い者だけが生きていける弱肉強食の世界。それはフレイヤ・ファミリアの本拠地、
当時のシグルスは父親を殺されたばかりで心は荒み、強くなるためだったらなんでもしていた。
小さく弱い身体で必死に剣を振った。立ちはだかる者を様々な方法で倒した。たまに殺すこともあった。フレイヤの寵愛を受ける為にと団員達が命を賭ける中、シグルスは復讐の為に命を賭けた。そうして強くなり食べられる側から食べる側に変わり、ある日気付いた時に目の前にオッタルがいた。
アレン・フローメルとは5歳以上歳が離れていて、アレンの方が歳上だったけれどお互い沢山の憎まれ口を叩き合った。たまに殴り合いや酷い時には武器を使っての殺し合いにまでなることがあった。それでも今もお互いが生きているということはどちらもそこまで嫌ってもいないんだろう。実際アレンとシグルスはなんだかんだ仲が良かったりする。
シグルスの今の冒険者としの技術の根底は生まれ持った父親譲りの剣の才能と
シグルスが手も足も出ず叩き潰されたのはオッタルが初めてだった。それから訓練し、オッタルに挑み、また叩き潰され、訓練し、また挑み、叩き潰され。未だオッタルに勝つことは叶っていない。
「オッタルはあなたのこと結構可愛がってたわよ?」
「あの方にそのような感情があるようには」
「ふふ。いつか分かるわ」
フレイヤの部屋を後にしたシグルスはバベルの最上階から中腹まで下ってヘファイトス・ファミリアの武具店に足を踏み入れた。
豪華絢爛な武器がショーケースに並び、そのどれもに驚愕の値札が付いている。シグルスはそれらに目を取られながら歩いていると後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「シグルス、久しぶりじゃない」
振り返るとそこには燃えるような赤髪をまとめて眼帯を付けた女神がいた。
「お久しぶりですヘファイトス様。丁度探していたところです」
ヘファイトスの後をシグルスがついていき、広い部屋に通されると座り心地の良いソファにヘファイトスと向かって座った。ヘファイトスは足を組んで、紅茶を飲みながら溜め息をついた。
「二ヶ月ごとに見せにきなさいって言ったじゃない」
「すみません。忙しかったので」
シグルスはそういうと腰に佩びていた両手剣をヘファイトスとシグルスに挟まれている机に置いた。鞘も刃も黒くて一切の装飾もないそれをヘファイトスが頑張って持ち上げる。
「相変わらず異常な重さね…っ!よく片手で振るわ…」
ヘファイトスは持った剣の鞘を見てから剣をシグルスに渡して抜けと指示をした。シグルスはそれに従って抜くとヘファイトスに手渡した。
剣を見たヘファイトスは驚嘆の息をもらす。丸くなった目で隅々まで観察すると剣を置いた。
「恐ろしいわね」
席についたヘファイトスは開口一番そう口にした。
「神造武器のようにも思えるわ。最初に見た時よりももっと強くなっているわ、剣自体が。毎回聞くけれどこの武器は魔剣ではないのよね?」
「はい」
「そして
ヘファイトスはしばらく小声で何かを呟きながら考えていたが何も考えられなかったようで苦悶の声を上げた。
「ますます分からないわ!」
シグルスはヘファイトスから渡された剣を片手でブンブンと空振りしてから鞘に仕舞った。
「凄まじい筋力ね」
「どうも」
「やっぱり見るたびにその剣は分かりやすく明らかに変化しているわ。外見は何も変わっていないのけれどね。強くなっているわ」
そう言いかけたところでヘファイトスは何かを思い出したようで声を上げた。
「そういえば私の神友の眷属にあなたのその剣みたいな短剣を作って上げてみたわ」
「俺の剣みたいな短剣?」
「ええ。使い手に合わせて強くなる短剣よ」
「そうですか…それで?」
「剣と一緒に成長できるって素敵だと思うわ。きっとその剣を渡したあなたの父も…」
ヘファイトスは言葉にはしなかったがシグルスには言いたいことは分かった。礼をするとシグルスはそこを立ち去った。腰の黒い両手剣が微かに光った。