黒と金のアヴェンジャー   作:主将

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ダンまちでオリジナルファミリアの作品を書きたいとは思うけど自分が出した神がこれからダンまちに出てくる可能性を考えちゃって中々手がつけられないでいる。


試練

 薄暗いダンジョン9階層に咆哮が響いた。対峙するのは白い髪の少年と赤いミノタウロス。ミノタウロスの片手には大剣が握られていて、ミノタウロスの咆哮に少年の顔は恐怖の一文字に座った。怒り狂ったミノタウロスが少年に振り下ろした大剣から自身の雇い主を助けるべくサポーターのリリルカはベルの身体を突き飛ばした。

 土煙の立つ中、ベルは正気を取り戻した。そしてその身体には力なく覆い被さるリリルカの姿があった。

 ベルは迷う。ここを逃げるか立ち向かうか。そして後者を選んだのだ。覆い被さる彼女に謝罪を口にして安全な場所に出来るだけ傷つかないように優しく投げると、手を出して魔法の名を唱えた。

 

「ファイアボルト!!」

 

ベルの腕から雷を纏った火球が打ち出されてミノタウロスに直撃した。しかしミノタウロスは狼狽える様子もなくベルへと迫る。

 

「ファイアボルト!ファイアボルト!」

 

2発3発と浴びせるが結果は同じ。息を切らしたベルに今度は自分の番だと言わんばかりのミノタウロスの拳がベルに打ち込まれ、ミノタウロスの力をそのまま受けたベルは勢いのまま真っ直ぐと後ろに吹き飛んでダンジョンの壁にぶつかった。

 鈍い衝撃がベルを襲い、ベルを守っていた鎧は壊れて外れフラフラと力無い足でベルは立ち上がった。ハッキリとしない頭をなんとか冴えさせてベルはミノタウロスに向き合った。ベルはミノタウロスによって振られる大剣を間一髪のところで避けながら考える。

 

「(隙を見て逃げないと…。このままじゃいずれやられる…!)」

 

 ミノタウロスの大剣とベルのナイフがぶつかり合う音を聞いてリリルカの瞼が久方ぶりに開いた。開いた視界には対峙するミノタウロスとベル。

 

「…ル様!ベル様!!」

 

その声に反応したやいなやベルは叫ぶ。

 

「リリ!?リリ!逃げて!」

 

「いや…!」

 

「逃げろよ!!」

 

「ダメです!!」

 

「ッッ!速く行け!!!」

 

リリルカは目に涙を浮かべ、泣き叫びながらその場を後にした。

 リリルカを逃したベルは安堵しつつ目の前の強敵に向き合った。

 

「(これでいい。これで僕も安心して逃げられる……わけないだろっ!!)」

 

今ここでミノタウロスを放置して逃げたから逃したリリだって殺されるし他の冒険者に被害が及ぶことだって自明だった。

 

「畜生!!」

 

ベルは叫んで必死にミノタウロスと向き合った。両手に持ったナイフを器用に使いながら攻撃が当たらないように避ける。避けるだけなら、速さだけならミノタウロスに張り合えた。無様でも惨めでも時間さえ稼げればそれで良かった。

 その時、ベルの右腕をミノタウロスの太い角が貫いた。ミノタウロスがそのまま身体をそるとベルの足は地面から離れる。ミノタウロスがこのまましようとしていることは理解できたがどうにも出来なかった。身体を大きく反ったミノタウロスは勢いよく頭を振り下ろした。ベルの身体は地面に叩きつけられる。頭の中身が全て振動してもはや痛みは感じなかった。気持ち悪さが全身を包み込んだ。立とうとしても立てなかった。

 次の瞬間、心まで洗われるような心地よい疾風とともに1人の少女が現れ、跪いたベルを守るようにミノタウロスに立ちはだかった。

 

「大丈夫。頑張ったね。今助けるから」

 

金色の美しい髪を靡かせながら彼女はベルにそう言った。

 ベルの脳内に黒髪のヒューマンの青年と金髪のヒューマンの少女と先日の記憶が蘇る。また助けられるのか。同じようにまた助けられるのか。

 

「三下には興味ない」

 

今の自分にシグルスの言葉は反骨心に火をつけた。

 

「成すべきことがあるなら。手を伸ばし続けろ。死ぬ気で手を伸ばし続けるんだ。他の無駄なものは全て削ぎ落として手を伸ばし続けろ。そうすればいつの日か叶うかもしれないんだ」

 

あの冷たくも優しい青年の言葉がベルの火を大きく燃え上がらせた。

 

「(ここで立ち上がらなくて、ここで高みに手を伸ばさなくて…!いつ届くって言うんだ!)

…かないんだ。もう、アイズ・ヴァレンシュタインに助けられるわけにはいかないんだ!!」

 

ベルはナイフを持ってアイズを避けてミノタウロスに立ちはだかった。

満身創痍だった。

角に貫かれた片手だって使えない。

鎧は壊れた。

でも心は轟々と燃え盛っていた。

僕は今日初めて冒険をする。

 ミノタウロスのずっと奥に人影が見えた。ああ、見てくれているんだ、シグルスさん。

 

 

 

 ベルが駆け出す。ミノタウロスの大剣とベルの短剣がぶつかって火花が散る。

 

「まぁダンジョンで獲物を取るのはルール違反だわな」

 

 そんなベルの様子を見てアイズに追いついたベートは言った。

 

「アン?あれあの時のトマト野郎かぁ!?つくづくミノタウロスに縁があるみてぇだな!」

 

「それってアイズが助けた?」

 

ティオナはベートに言った。気づけば遠征中のロキ・ファミリアが集まりベルを見ていた。

 

「ミノのやつ、トマト野郎が恋しくてはるばる中層から来たんじゃねぇのか?」

 

「ふざけないでベート」

 

からかうベートをアイズが叱責した。ベートは罰の悪そうな顔をする。

 

「いいの?アイズ、あの子レベル1でしょ?絶対やられちゃうよ?」

 

ティオナはアイズにそう聞いたがアイズは助ける素振りを見せなかった。

 

「ほっといてやれってティオナ!あのガキ男しようとしてるんだぜ?また助けられたら俺なら死にたくなるねえ!」

 

そんなベートの足に瀕死のリリルカがしがみつく。

 

「お願いします!冒険者様!ベル様を助けて下さい!!お願いします!」

 

「おい!離せって!」

 

「お願いします!」

 

舌打ちをしたベートはやれやれという様子で動き出した。

 

「行くのか?」

 

「勘違いさんじゃねぇ。雑魚なんて助けるのはごめんだ。だが自分より弱ぇ奴をいたぶる雑魚に成り下がるのはもっとごめんだ。どけ、アイズ」

 

助けようと動き出したベートの目にベルの様子が映り込む。ミノタウロスの攻撃を避けつつ的確に攻撃を加えていく。見事な体術を使い、ナイフを器用に使いミノタウロスに傷を与えていく様子はレベル1には見えなかった。

 

「一月前、ベートの目にはあの少年がいかにも駆け出しに見えた。違ったかい?」

 

「何が起きやがった……?」

 

ベートとフィンがそう言う間にもベルは奮闘している。フィンはベルの中に小さい頃からよく知る剣の天才とベルを眺める少女の姿を見た。その2人によって磨かれたベルの技の上に想いが乗っかり、呼応しあって見事な戦いを描き出しているのだ。

 ミノタウロスの打撃を衝撃を逃すように飛び上がったベルが着地し、ナイフを構え直した。これが僕の冒険。僕はなりたいんだ。英雄に!

 

「アルゴノゥトみたい…!」

 

「英雄に憧れる少年の物語だね」

 

「あたしもあの童話好きだったなぁ」

 

 叫びながらミノタウロスに斬撃を叩き込むその姿はまるで英雄だった。

業物のナイフにミノタウロスの攻撃を凌ぎ切る技。しかし攻め手にかけている。速攻詠唱の魔法は素晴らしいが軽すぎた。手詰まりなのか。

 ベルは振り上げた大剣を持つミノタウロスの手首にナイフを突き刺してそのまま地面まで持っていった。そして力強く刺したナイフを捻ってミノタウロスの手首を抉った。苦痛を訴える咆哮が響き、ミノタウロスは大剣を落とした。ベルはそれを拾って片手で構えてミノタウロスに切り掛かった。

 

「やっぱり彼に技術を与えたのはアイズとそれからシグルスか。よく似ている」

 

「アイズそれ本当!?」

 

「…うん」

 

ベルの大剣による斬撃でミノタウロスの胴体に蛇行した傷が出来る。距離を取った2人は向かい合った。得物を失ったミノタウロスは体勢を低くして後ろ足で地面を蹴って土煙をあげる。そして咆哮を上げながらベルへと駆ける。ベルはミノタウロスの正面へと同じく駆ける。走りながら大剣の剣先をミノタウロスに向けるようにして構えて、やがてミノタウロスが自分の間合いに入った時に大剣をミノタウロスに角に振り下ろした。衝撃に耐えられずに大剣が砕け散る。頭に受けた衝撃に狼狽えるミノタウロス。その隙を逃すまいとベルはミノタウロスの頭の下に潜り込むと大剣でつけたミノタウロスの傷の始点にナイフを突き刺してすぐさま魔法を唱える。

 

「ファイアボルト」

 

ナイフを伝ってミノタウロスの身体へと移った炎は蛇行している傷を綺麗に辿った。ミノタウロスの口から血が溢れる。最後の力とばかりに自分の懐にいるベルに向けてミノタウロスは拳を上げた。

 

「ファイアボルト!!」

 

振り上げた拳を下ろすことは叶わずミノタウロスはその身体を焼かれた。そしてベルは止めをさす。

 

「ファイアボルト!!!」

 

傷口から業火を注ぎ込まれたミノタウロスの上半身は風船のように広がり、一瞬動きを止めると破裂し、ミノタウロスの身体から出た火柱は天井をも焦がした。

 ミノタウロスは肺になり、その中に自身の上着も焼いたベルが立ったまま気絶をしていた。

 

「…勝ちやがった…」

 

ドロップアイテムが落ち、リリルカがベルに駆け寄る。

 

「リヴァリア!アイツのステイタスは?」

 

「私に盗み見をしろというのか?」

 

「あの状態じゃ見て下さいって言ってるようなもんだろ!」

 

ため息をついたリヴァリアはベルの背中に近寄るとクスッと笑った。そんなリヴァリアを見てベートが急かす。

 

「アビリティオールSだ」

 

ロキ・ファミリアのメンバーに驚嘆の表情が浮かぶ。

 

「彼の名は?」

 

フィンがアイズに尋ねるとアイズは微笑みを浮かべながら答えた。

 

「ベル。ベル・クラネル」

 

 そんなダンジョン内にこちらに向かう足音が響く。ロキ・ファミリアのメンバーとリリルカは足音の主を見る。

 黒い毛素材のコートに身を包み、胴体には簡素な鎧を付けていて、黒い髪を額の真ん中で分けた端正な顔立ちのヒューマン。

 

「彼に剣技を与えたのは君かな?」

 

「ああ」

 

 シグルスはロキ・ファミリアのメンバーを一瞥するとベルを見た。

 

「よくやった」

 

静かにそう呟くとベルを担いだ。

 

「私も手伝う」

 

アイズがそう言う。

 

「遠征中だろう?」

 

「その点は大丈夫だ」

 

リヴェリアはシグルスにそう言った。シグルスは辺りを見回してベルのサポーターのリリルカを見つけるとアイズにはリリルカを上まで運ぶように指示してシグルスは闇の中に消えた。

 

 




戦闘描写むっず
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