リクエストIF話の移転先   作:あぱしー

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「ワンパンマン」
「モンスターハンター」
「ベルセルク」
「刃牙」

の要素のある多重クロス話になっております。

そこに遊戯王二次創作「マインドクラッシュは勘弁な!」の主人公「神崎」を放り込む形です。




移転した「マインドクラッシュは勘弁な!」のクロスオーバー回
マインドクラッシュは勘弁な! × 多重クロス


 

 

~原作「ワンパンマン」編~

 

 

 人の気配のないビル群が立ち並ぶゴーストタウンにて、二つの影がぶつかり合う。

 

 

「マジ連続パンチ」

 

 

 その影一つ――拳を連続で振るう黄色いヒーロースーツを身にまとう男「サイタマ」は「プロヒーロー」という職業に就いている。

 

 仕事内容はシンプル――「怪人」と呼ばれる化け物を殺し、退治すること。

 

 そう、ちょうどサイタマの連続パンチの間を滑るように躱した黒い影のような物体を操る怪人を。

 

 

 

 そんなサイタマは強者との戦いを求めていた。どんな怪人もワンパンで倒してしまえ、過去はあった筈の心の熱量も冷え切り、何も変わらぬ日常に精神が麻痺していくことを避けるべく闘争を求めた。

 

 そう、サイタマはギリギリを追い求めるかのような戦いを求めていたのだ。

 

 

 そして、今回の相手は黒い影を操る怪人――彼は知らぬが、神崎と言う元人間――であり、自分の放つ拳をこともなげに躱し続け、反撃の拳を一方的に振るってくる。

 

 己の攻撃が一切当たらず、相手の攻撃は常に命中する――サイタマにとって厄介な相手であったが、相手の攻撃は残念ながらサイタマにダメージを与えていない。

 

 しかし厄介だった。

 

「マジ殴り」

 

 サイタマが渾身の一撃を大振りで放った時だけ、相手は「自ら」攻撃を受け、カウンターの拳を振るう。

 

 この一撃だけはサイタマの肉体に僅かながらもダメージを蓄積させていた。

 

 

――やっべぇな。オレの攻撃全然当たんねぇし、こっちがマジ殴りした時だけ当たりに来るけどカウンターの一撃を貰っちまう。アレ受け続けるの拙いよな。

 

 

 今まで数多の怪人をワンパンで屠ってきた一撃――よりも気合を入れて全力で殴った一撃がそのままサイタマの元へと帰ってくるのだ。ノーダメージとはいかない。

 

 蓄積され続けるダメージは、いつかはサイタマに膝をつかせるだろう。

 

――へへっ、やべぇな。

 

 だが、そんな己の敗北の可能性にサイタマは笑って見せる。

 

 そう、彼が求めていた強者との勝負――勝敗の見えぬギリギリの死線。

 

 今サイタマの心に火が点く音が聞こえた。

 

 

 

 しかし、そんなサイタマの期待とは裏腹に、己が繰り出す拳にカウンターを合わせ、サイタマにダメージを与える度、相手の怪人の動きは加速度的に弱っていく。

 

 無理もない。

 

 どんな怪人もワンパンで倒すサイタマの拳の威力を自身に通して相手に逃がす形でカウンターとして叩きつけていても、通り道となった身体が無傷で済む筈がないのだ。

 

 繰り返せば繰り返す程、通り道となった怪人の身体はズタボロになっていくだろう。

 

 文字通りの我慢比べ。それも特大に分の悪い賭けだ。

 

 己よりも肉体スペックが優れたサイタマを相手に、耐久勝負を仕掛けているも同然なのだから。

 

 

 

 

 やがて、最後の力を振り絞ったような拳がサイタマの頬を打ち付け、膝に来たダメージにたたらを踏むサイタマだが、倒れることはなく、来るであろう相手の追撃に拳を握る。

 

 

 だが、サイタマの期待の籠った表情とは裏腹に、その眼の前で怪人は力尽きたように倒れ伏していた。

 

 

 ピクリとも動かぬ怪人の姿に、サイタマの口から思わずポツリと零れた。

 

 

「………………なんか思ってたのと違うな」

 

 

 自身が望んだワンパンで終わらぬ闘い。

 

 己の攻撃を躱し、いなし、受け止め、弾き返し、久しく忘れていた闘いというものを思い出させてくれた。

 

 相手の攻撃も自分に通じ、このまま数日戦い続ければ流石に危ないかもしれないと思い始めた矢先に倒れた相手。

 

 

 殴り合い始めた当初は感じていた筈の熱が、急速に冷えていく感覚に襲われるサイタマ。

 

 今のサイタマの胸中には今までになかった感情が鎌首をもたげ始めていた。

 

 

――オレ、強いヤツと戦いたかったんだよな?

 

 

 自分の望みは、本当に「これ(闘い)」だったのだろうか、と。

 

 

 ワンパンで終わる戦い。退屈を打ち払えぬ拳。震えぬ心。

 

 

 ワンパンで終わらない強大な敵との戦いがあれば心が震え、満たされると信じていた。

 

 

 今、目の前で倒れる相手は、そこそこ条件に見合っていた筈だ。だというのに、胸に広がるのは虚無感。

 

 

 もっと強い相手なら満たされる――今のサイタマは、そう、無根拠に信じられなくなっていた。

 

――昔はもっと……

 

 

 そんな中、まだ敵をワンパンで倒せなかった時期の「熱」を思い起こしたサイタマの脳裏にふと浮かぶ。

 

 

「……そっか。違ったんだ」

 

 

――オレは強いヤツと戦いたかったんじゃねぇんだ。

 

 

 そう、サイタマは「強い相手と戦いたい」なんて理由でトレーニングと怪人退治を始めたのではない。

 

 

 彼が闘う力もなかった過去、最初に戦った蟹の怪人を相手にしていた時、その心にあったのは――

 

 

「――ヒーローになりたかったんだ」

 

 襲われている子供を助けたかった――たった、それだけの想いだった。

 

 

 そんな初心を思い出したサイタマの足を神崎が掴んだ途端に、世界が弾けるような感覚に襲われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるで恐竜たちが生きた時代を思わせる鬱蒼としたジャングルで、死にかけの神崎は泥の中に転がりながら、二足歩行で歩く猫に木の枝でツンツンされながらも生への実感を噛み締めていた。

 

「なん……とか、別次元に跳ばせた……完全に無制御だったせいか、互いにどの次元に跳んだかは定かではないが……」

 

 紆余曲折あってサイタマと戦うことになった神崎は、当初は「どうにか拘束or制圧」などと舐めたことを考えていたのも束の間、相手の圧倒的な戦力にフルボッコにされならもカウンター狙いで頑張ったが敗北。

 

 しかし「死んでなるものか」と次元の扉を強引に開き、サイタマ諸共次元跳躍。

 

 神崎本人も含め「自分+相手共々、どの次元に飛ばされたか分からない」状態を生み出すことで、相手の追跡を躱す捨て身の作戦が功を奏した。

 

 

 

 

「お前、生きてたのかよ」

 

「――ッ!?」

 

 が、神崎のすぐ後ろにサイタマはいた。

 

――同じ次元に流れ着いた!? 一体、どんな低確率だと思ってる!?

 

 

 様々な次元世界がある中でのミラクルに、神崎は思わず絶望しながらも染み付いた性ゆえか飛び退いて拳を構える神崎。茂みの中に逃げる猫。

 

 

「あっ、いいよ。オレ、もうお前と戦う気ねぇし――これ洗剤でとれっかなぁ……」

 

 だが、対するサイタマは面倒臭そうに手を振り、マントについた泥を気にしていた。

 

「つーか、お前、なんでジェノスと戦ってたんだ?」

 

 やがてマントについた泥を払いながら、世間話を始めるサイタマ。彼なりに今回の衝突に思う所があるらしい。

 

「ジェノス?」

 

「そっからかよ……ほら、手から火出すヤツ。サイボーグで俺の弟子」

 

「ああ、あの時の彼のことですか。私が知らぬ土地をフラフラしていたら、彼に『焼却』と急に攻撃されまして――そこからは、なし崩し的に……」

 

「えっ!? お前、怪人じゃねぇの!?」

 

 だが、此処で常に憮然とした態度だったサイタマが、慌てた様子を見せた。

 

 怪人を退治することが生業のヒーローが「その辺フラフラしていたおっさん」をぶちのめしちゃ駄目なのだ。

 

「いや、待て! お前、あの変な影みたいなの……は、フブキみたいな超能力みたいなヤツなのか? ヤベェ、このままじゃ警察のお世話になっちまうじゃねぇか!!」

 

 しかし神崎とて人間離れしている部分が多かったのも、また事実。

 

 やがて、チョイチョイ人間離れした力を持つ知り合いがいない訳でもないサイタマの脳裏を「何の罪もないおっさんをぶちのめしたヒーロー」という朝刊の見出しが過り、滝のような汗が流れる。

 

「あの……私に『怪人』のカテゴリーは分かりませんが、人間ではないことは確かになります」

 

「マジで!? よっしゃ――って、よくねぇ!! 暴れてない怪人……こういう場合、どうすりゃ良いんだ? くっそ~、協会の決まりみてぇのもう覚えてねぇよ……」

 

 だが、神崎の「人間じゃない」発言にガッツポーズを取るも、即座に崩して膝を叩くサイタマ。

 

 基本怪人は人死にが出るレベルで暴れている相手が大半な為、即座に殺処分と言わんばかりの対応が成される。

 

 なお、サイタマは特に暴れていない怪人はスルーするが、今回は勘違いが始まりとはいえ、戦闘を行った後だ。しかも「相手を殺しかけた」となれば、「はい、さようなら」は拙いことはサイタマにも分かる。

 

 この手の頭脳労働はサイタマにとって、苦手分野だった。異世界迷子の神崎も状況的に同上である。

 

 

 そうして頭を抱えるサイタマの首筋へ、巨大な大剣が牽制するように添えられる。

 

「おい、アンタ――今回のことと無関係って訳じゃなさそうだな」

 

 その大剣の持ち主である黒い甲冑に身を包んだ隻眼の大柄な男が、義手の左手に仕込んだギミックをいつでも作動可能な状態にしつつ、警戒するようにサイタマと神崎を交互に見やった。

 

 

 

「中々、面白そうなヤツがいるじゃねぇか」

 

 だが、そんな大剣の男とは対照的に「警戒など不要」とばかりに堂々たる姿で逆立てた獅子のたてがみの如き髪をオールバックにしたカンフー着の筋骨隆々な日に焼けた肌の男――いや、(オス)が歩み出た。

 

 その猛獣すら裸足で逃げだす眼光は、サイタマを射抜いて話さない。

 

 

「誰だお前ら?」

 

 しかし、当のサイタマのあっけらかんとした様子がありありと見えた声が周囲に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな一触即発な状況の中、「おい」や「お前」では不便であろうと自己紹介を提案した神崎。バリバリの闘気に当てられ引け腰だったが許して上げて欲しい。

 

 

 

「へぇ~、『徳川』って爺さんのせいで次元飛んじまった勇次郎に、変なヤツに飛ばされたガッツか! オレ、サイタマ! よろしくな!」

 

「神崎と言います」

 

 やがて睨み合っていてもらちが明かないと自己紹介を終えた一同。

 

 そして大剣を持つガタイの良い青年ガッツと、地上最強生物感溢れる男、範馬 勇次郎とフレンドリーに握手を求めるサイタマと、お辞儀に留める神崎。

 

 だが、そんな挨拶も早々に、早く元の世界に戻らねばならない理由を持つガッツは神崎へと視線を向ける。

 

「お前らなら、俺たちを元の世界に戻せるんだろ」

 

 次元がどうとか言っていた神崎の発言から、相手の力の方向性を見定めたガッツ――彼の首筋に刻まれた刻印の呪いにより、異形の化け物たちと戦う日々を送っている彼の異能への観察眼が成せる業だ。

 

 とはいえ、完全に針の筵状態の神崎は気が気でない心を必死に隠しながらも、現段階で可能な相手の要求に沿った答えを並べ始めた。

 

「元の世界――次元に戻る手段は此方に用意がありますので、後はエネルギーの問題になります」

 

「そのエネルギーってのは、なんだ?」

 

「はい、化石燃料のようなエネルギーではなく、肉体エネルギーを精神エネルギーに変換し、魔力と呼ばれる概念に変化させてから、魔術を行使する形になる為、必要なエネルギー収集は――」

 

「いや、長い。二十文字以内に簡潔にまとめてくれ」

 

 詳細を求められ、語り始める神崎だが、その説明は噛み砕くことを放棄したサイタマがキメ顔でバッサリ両断。やがて暫し神崎が悩んだ後――

 

 

 

「お腹いっぱいになれば行けます」

 

「よし! なんかメシ探すか!!」

 

 分かり易い答えが返って来た為、サイタマは周囲を見渡し、食べられそうなものを目で探すが、生憎彼にサバイバルの知識はない。

 

 

「狩りは趣味じゃねぇんだがな」

 

 そんな緩んだ空気の中、今まで沈黙を守っていた勇次郎だが、気乗りしないようにため息を吐く。

 

 範馬 勇次郎は逃げる弱者を執拗に追い回すような真似(狩り)は本分ではない。彼の根にあるのは純然たる闘争のみ。

 

 

 戻らねばならない理由(息子)が彼にもあるとはいえ、そのポリシーを捻じ曲げる気などさらさらない。

 

 

 とはいえ、彼の次元でも、最強の生物と呼ばれた彼から逃げないような野生生物は早々いなかった為、この別世界に都合よくいる可能性も定かではない。

 

 

 だが、そんな中、自身の縄張りに踏み込んだ不届き者を喰らうべく、ティラノサウルスを思わせる頭部にドラゴンのような姿をした飛竜――ティガレックスの怒りの咆哮が天を裂く。

 

 

 

 

 やがて飛ぶことよりも跳ぶことに進化した翼膜の残る前足のバネの力で、青い縞模様の見える巨躯を唸らせ小粒の4匹のエサ(人間)に向けて己の凶暴性のままに跳びかかる。

 

 

 

 いた。

 

 

 己を前に一切怯む様子を見せぬ「強大な敵」の存在に、勇次郎は頬が裂けんばかりの凄惨な笑みが浮かぶと共に、その鬼の形相の如き背筋も高笑いするように歪む中――

 

 確かめるように赤いグローブ越しの拳を握ったサイタマ、

 

 その背より大剣を引き抜き、構えるガッツ、

 

 脱兎の如き素早さで岩陰に隠れ、影を伸ばす神崎。

 

 

 それら4つの思わぬ反応を余所にティガレックスがエサの足掻きなど歯牙にもかけず、己が本能のままに牙を剥き、その顎からエサの悲鳴ではなく、己の断末魔が響いていた。

 

 

 

 

 

 

~多重(キャラ)クロス――「モンスターハンター」編、開幕~

 

 

 ティガレックスを速攻でぶちのめし、その血に誘われた大型モンスターたちもぶちのめした一同は、腹ごしらえの為に一先ず近場の人里へ向かい、レストランと思しき場所で食事をとっていた。

 

「つーか、なんで俺の攻撃が当たらねぇんだよ……あのデカいゴリラみたいなのもヒョイヒョイ避けやがるし――あっ、これおかわり!」

 

 サイタマの注文に、二足歩行の猫が大慌てで料理を作っていくが、その全てが恐ろしい速さで食されて行く。

 

 その食している一人、勇次郎はサイタマの悩みを鼻で嗤った。

 

「お前は予備動作がデカ過ぎだ。あんなもん目を瞑っても避けられる」

 

「予備動作かー、そういや、勇次郎は武術の達人なんだよな! だったら、俺に武術教えてくんねぇか? 神崎と戦った時もパンチ当たった筈なのに、手応え全然なかった時あったんだよ! アレもゴリラの時と同じ感じなのか!?」

 

 だが、そんな煽り交じりの勇次郎の言葉に、サイタマは別の意味で喰いつき、頭――もとい目をキラキラさせるが、対する勇次郎は素っ気なく返す。

 

消力(シャオリー)か。戦う気概がねぇ割に、器用なヤツだ」

 

「シャオリー? 誰だ、それ?」

 

「多分、技の名前だと思うぜ? 俺からすればサイタマの力の秘訣の方が気になるんだが……」

 

 いまいち理解していないサイタマに、ガッツが注釈を入れながら、理外の斥力を持つサイタマの力に興味を示すが――

 

「なら、オレの力の秘訣、教える代わりにお前らもオレに武術教えてくれよ! なっ!」

 

「悪いが、俺は『武術』って言えるようなもんは修めてない」

 

 ガッツは剣士であり、教えは受けたことがあれど実戦の中で積み上げた部分が大きく、我流の面が大きい。さらに武器・武装も用いる為、素手専門のサイタマの力にはなれなかった。

 

「そっかー、俺は――腕立て伏せ100回! 上体起こし100回! スクワット100回! そしてランニング10km! これを毎日やる! はい、オレ教えた! だから教えてくれ! なっ!」

 

 ならば、と勇次郎を頼ったサイタマは、先に自身の強さの秘訣を語り、なし崩し的に相手の協力を得ようとするが――

 

「冗談はその頭だけにしな」

 

 サイタマの語ったトレーニング内容を「冗談」と信じる気を見せない勇次郎。

 

 確かに大変なトレーニングではあるが、これだけで理外の斥力が手に入るとは、普通は信じられない。

 

 

「いや、んなこと言われても、オレはこれしかやってねぇぞ? そういや前も似たようなこと言われたなぁ」

 

 しかし、サイタマは、怪人と戦いながら、毎日このトレーニングを続けることで、今の力を手に入れたのだ。他に語り様がない。

 

 だが、此処で料理を持って来た神崎が、テーブルに並べながら自分の考えを述べる。

 

「同じだと思っていたものでも、次元ごとに差異があるのかもしれませんね。ちなみに、私の次元のスクワットは『こう』です」

 

 そう、彼らはそれぞれ別の「世界」の人間なのだ。同じ名称のトレーニングでも、微妙な差異があってもおかしくない。

 

 ゆえに料理を並べ終えた後に、屈伸運動するように1度、スクワットをしてみせる神崎だが――

 

「それ以外に何があるってんだ? 馬鹿馬鹿しい」

 

 勇次郎がいた世界でも、ガッツがいた世界でも同じであった。そして無論、サイタマがいた世界でも――

 

「あー、成程! ちゃんとやってねぇのか!」

 

 同じ筈だというのに、サイタマは合点がいったとばかりに手を叩く。

 

「……どういうことだ? 俺には間違っているようには見えないんだが……」

 

「確かに100回はしんどいけど、1回1回を手抜きしちゃダメだろ」

 

 ピンとこないガッツの様子にサイタマは腕を組みながらうんうんと頷きながら零す。

 

「と、いうと?」

 

「1回を全力でやるんだよ! 全力全開で1回ずつやんの! そう! 『もう2度とスクワット伏せ出来なくても良い』くらいの勢いで1回ずつしっかりやんねぇと!」

 

「こんな感じですか?」

 

「地面壊しちゃダメだろ。壊さずに100回やらなきゃ」

 

 先を促した神崎が、己が理解できた範囲で実演するが、サイタマの視点では問題がある様子。

 

 やがて考え込む仕草を見せた神崎が、サイタマの主張を纏めれば――

 

「……つまり、所謂『己の死力すらも尽くした一撃』を放つ領域で、尚且つその際のエネルギーを体外に一切排出することなく、1回スクワットを行う――それを100回。そして他のトレーニングも同様に、と」

 

「………………あー、えー、ああ! それでいいんじゃね?」

 

 しかし、いざ纏められると、サイタマは目線を逸らしながら頷くばかり。当人も自身の力のメカニズムをよく理解していないのだろう。

 

 

「普通に死ぬんじゃねぇか?」

 

「私もそう思います」

 

 だが、ガッツの言に神崎が同意を示すように、サイタマのトレーニングは狂気の沙汰である。

 

 

 もう二度とスクワットが出来なくなってもいい1回――これを実行した段階で、「2回目は不可能」な筈なのに、その限界を超えつつ同上の条件で99回続ける。

 

 しかもスクワットが終わった後も、腕立て伏せ100回、上体起こし100回、ランニング10kmが残っているのだ。普通に死ぬ。

 

 

 そんな中、圧倒的気迫――まさに「もう二度とスクワットが出来なくなってもいい」とばかりの雰囲気が、すぐ隣で起こった。そこには――

 

 

 

「これを後99回――か」

 

 

 全身から流れた汗が当人の体温によって蒸気と化し、霧のように立ち上る中でスクワットを1度熟した勇次郎の姿。

 

 

 圧倒的……! 圧倒的強者……!!

 

 

 不可能などと誰が言ったとばかりに実現してみせた光景が広がる。

 

「 「 ――!? 」 」

 

「そうそう! そんな感じだよ、勇次郎!」

 

 そんな勇次郎を二度見するガッツと神崎を余所に、サイタマは自身のトレーニング法を初めて信じ、実践してくれた相手に、同士を見つけたようにハイタッチを求める――が、無視された。

 

 今の勇次郎はそれどころではない。

 

 

「戦う相手が、こんなにも身近にいたとはなぁ……おもしれぇ」

 

 

 彼の内にあるのは歓喜。

 

 強者を求める彼を満足させる相手が現れたのだ。

 

 そう、地上最強の生物であった彼を上回る、己ッ!! 己という好敵手を得たのだッ!!!!!

 

 

 

 

「なんだ、俺の方法間違ってねぇじゃん――帰ったらジェノスにも教えてやるか!」

 

 そうして凄まじい圧力を以て空間を歪ませる勢いでスクワットを熟す勇次郎を余所に、サイタマは元の世界で帰りを待つであろう弟子の修行方針が固まったことに満足気だ。

 

「腹ごなしに、もう一個クエスト行こうぜ! えーと、これはミラボ――ンズ?」

 

 ゆえに帰郷の気持ちの昂りからか、クエストボードを指さすサイタマ、

 

「次はもっと歯ごたえのある奴にしな」

 

 そしてスクワットから腕立て伏せに移行しながら、まだ見ぬ強者を求めて獰猛に嗤う勇次郎、

 

「ガッツさんは、どのクエストが良いと思いますか? 私はこの手の方面はからきしでして……」

 

 後、二足歩行の猫に支払いを済ませながら、ガッツを頼る神崎。

 

「なんで俺が――」

 

 そうして自身に丸投げされている状況にガッツが苦言を漏らそうとするが――

 

 

 楽天家のサイタマを見やり、

 

 我が道を行く勇次郎を見やり、

 

 どう見ても事務方の神崎を見やり、

 

 

「…………ちょっと待ってろ」

 

 ガッツはクエストボードの前に立ち、依頼を選別し始めた。

 

 全てはキミの肩にかかっている、負けるな、ガッツ! 戦え、ガッツ! 己がいた世界に戻るその時まで!

 

 

「なー、なー! ガッツ! この依頼にしようぜ! ラオなんとか! スッゲーデカいヤツ!」

 

「デカいだけのウスノロを殴ってどうなる――こっちの依頼にしな」

 

「あの、古龍種を狩るのは問題が大きそうですし、止めて置いた方が……」

 

「――ちょっと待ってろ!!」

 

 

 

 逃げてモンスターたち!

 

 

 

 

~多重(キャラ)クロス――「モンスター・ハンター」編、完~

 

 

 

 

 

 

~原作「ベルセルク編」~

 

 

 ガッツの奮闘の甲斐あって、比較的穏便にハンターライフを終えた一同は、功労者のガッツの「一刻も早く戻りたい」との要望もあって、彼が元いた世界――所謂「ベルセルク世界」に渡っていた。

 

 生物の栄華を感じさせぬ岩盤地帯に加えて空は暗く、どこか暗雲とした重苦しい空気が流れている。

 

「へ~、此処がガッツのいた世界かぁ――なんか雰囲気暗いな!」

 

 そんな中、あちこちをキョロキョロみながら若干失礼なことを言うサイタマを余所に――

 

「おい、なにへばってる。さっさと次の次元の扉とやらを開きな」

 

 完全にぶっ倒れている神崎を足蹴にしつつ、先を急かす勇次郎。

 

 

 だが、胸をかきむしる仕草と共に息を荒くする神崎にガッツが心配気に膝をついて駆け寄った。

 

「おい、大丈夫か? アンタ、顔色悪いぞ?」

 

「この世界、治安、悪くないですか?」

 

 しかし、苦し気な神崎から零れたのは此方も失礼な発言。

 

「…………良くはないな」

 

「心の闇に満ちた世界……私の力の根源に近しい負の感情の蓄積が、精神的抑圧を突き破らんと荒れ狂って――」

 

「長ぇ、二十文字以内で頼む」

 

 神妙な表情のガッツを余所に、自身の状態の詳細を語る神崎だが、それはサイタマにまたしてもぶった切られた。

 

 

「力有り余ってて細かな制御が不安です」

 

 

「そんな次元の話なのかよ……」

 

 ゆえに端的に返した神崎の説明に、ガッツは困ったように頭をかく。

 

 なんだかんだで旅路を共にした仲というのも相まって、放置する選択肢は根っこが「人の好い兄ちゃん」のガッツには取れなかった。

 

「そういや、ガッツも昔のダチに復讐とか言ってたな……まぁ、治安良くすりゃいいんだろ? つまり、あれだ! 悪いヤツぶっ飛ばせば、良いパターンだな!」

 

「いや、アンタたちにそこまで――」

 

 そんな中、「治安が悪い」のが問題ならば「治安を改善すれば良い」とサイタマが拳を握って見せる姿に、ガッツは「そこまで巻き込む気はない」と返そうとするが――

 

 

「ガッツ――此処に強いヤツはいるか?」

 

 勇次郎の端的な発言に、ガッツは諦めたように息を吐きながら答える。

 

「……ああ、いるぜ」

 

 

 そう、この世界は剣と魔法、そして悪意が蔓延る世界。「使徒」と呼ばれる化け物たちに加え、ガッツの復讐相手でもある「ゴッドハンド」と呼ばれる人の理を超えた超越者たちの存在。

 

 端的に「治安が悪い」どころではない事情を抱えている世界だ。

 

 

「よっしゃ! いっちょ世直しと行くか! ヒーローとして!!」

 

 だが、そんなことを知らぬサイタマは己の「ヒーロー像」を見つめ直し、手探りながらも一先ず定めたスタンスでヒーロー活動を志す。

 

「ついでにガッツのダチんとこに話、聞きに行こうぜ!」

 

「アイツは、もう――」

 

 しかし続いたサイタマの言葉にガッツは沈痛な表情を見せるが――

 

「本音を聞いた訳ではないんでしょう?」

 

「――テメェらに何が!! ……いや、それは……そうかもしれねぇが……」

 

 続いた神崎の言葉にガッツは思わず相手の胸倉を掴んだ。だが、その後が続かない。

 

 確かにガッツの仲間を殺し、愛する人を辱め、ガッツに地獄を味わわせた彼の親友だった男――グリフィスの本意など知りはしない。

 

 いや、ガッツたちが受けた仕打ちを思えば、どんな理由があろうとも許せるものではなかった。

 

 だが、サイタマや勇次郎、そして神崎とモンスターをハントする日常の中で「譲れない一線」を見せつけられたことも事実。

 

 サイタマは「ヒーロー」。

 

 勇次郎は「闘争」。

 

 神崎は「自己生存」。

 

 

 それらの望みの為なら、何処までも狂気的に進む彼らの姿に、ガッツは考えてしまう――グリフィスが凶行に奔る程の「譲れぬ一線」は何だったのかと。

 

 グリフィスが凶行に奔る切っ掛けを生んでしまったのは、ひょっとしたら自分なのかもしれない――そんな可能性が脳裏を過る。

 

 我武者羅に復讐の道を進んで来たガッツに訪れた「別次元」での「空白期間」が、彼に「己を見つめ直す時間を与えてしまった」。もう、過去のように見て見ぬ振りは出来ない。

 

 

 グリフィスが友であった己にすら明かさず、何に苦悩していたのかと。

 

 

 

「はっ、馬鹿馬鹿しい。御託並べてる暇があるんなら、拳の一つでも振るうんだな」

 

「おぉ~、あれだな! 拳で語り合うって奴だな!」

 

「程度はどうあれ、ぶつかってみて初めて分かることもありますからね」

 

 だが、その苦悩を「既に答えは出ている筈だ」と鼻で嗤う勇次郎と、緊張感のないサイタマの声、そして自身の経験を語る神崎に、ガッツは小さく溜息を吐く。

 

 

「………………はぁ、アンタらといると悩んでる自分が馬鹿らしくなってくるぜ」

 

 そう、此処でどれだけ悩んだところで、天啓が降りてくる訳でもないのだ。

 

 かつての親友の心は、当人にしか分からない。なれば今、ガッツがすべきことは一つ。

 

 

――まずは一発ぶん殴ってからだ!!

 

 

 新たな覚悟を決めるだけ。

 

 

 

 かくして、なんとも我の強い面々を引き連れ、ガッツは一先ず仲間たちと合流するべく進みだす。

 

 

 これから彼らが進む先にどれ程の強敵が、苦難が、障害が待ち受けているかなど考えたくもない程だろう。

 

 

 だが、ガッツの歩みに迷いなど欠片も見当たらなかった。

 

 

 

~クロスオーバー編+「ベルセルク」編、完~

 

 




~制作秘話など~

~ベルセルク編~
未完結であること+「ガッツに幸せになって欲しい」との事情から、
「神崎だけじゃ無理だわ」との結論に至り、「勇次郎なら!」「サイタマなら!」との希望を持って多重クロス化。

グリフィスとガッツの拳(剣)の語り合いの場をみんなで作るムーヴ。

グリフィスのしたことは到底許されることではありませんが、良い落とし所があれば良いな……と作者は思います(原作ベルセルクの続きを楽しみに待ちつつ)


Q:この先、どんな感じで進んでいくの?

A:異形たちにカチコミした後の事後処理は、完全にスルーされるかと思われます。勇次郎もサイタマも、その辺りに手を出さなそうですので、神崎もそれに倣うかと。


~ワンパンマン編~
サイタマの望みにスポットを当ててみました。
あくまで私見ですが、サイタマの根っこの部分はどんな闘争でも満たされないように思います。

当人も誰を倒そうとも「何も変わらない虚しさ」が一番堪えているようですし。

そして神崎は「遊戯王ワールドからの転移」にさせて頂きました。

「ワンパンマン世界に直接転生」では身体を鍛えても、安全を考えて身を隠しそうだったので。

Q:ジェ、ジェノス……

A:ジェノスくんは「焼却砲」が効かない相手には基本、無力だから……


Q:サイタマが元の世界に帰還した後はどんな話になるの?

A:勇次郎から教わった武術の基礎的な部分を頑張って練習する感じになるかと。

キング辺りを誘って、バングの道場に行ったりしそうです。大成するかは不明(キングは大成しそうですが)

ジェノスはサイボーグなので、サイタマ式筋トレの真意(今作での解釈)を聞いても、どうしようもない悲劇。


~刃牙編~
神崎の根っこの部分の「戦いたくない」がある限り、あんまり話が膨らみそうになかったので、範馬 勇次郎のクロスに留めました。

刃牙世界の人たちは、その辺を軽く見抜いて神崎への興味失いそうですし

Q:範馬 勇次郎がこんな筋トレする訳ないだろ! いい加減にしろ!!

A:範馬 勇次郎を超えた範馬 勇次郎を見たかったんや……


Q:勇次郎が帰った後はどうなるの?

A:とりあえず息子の刃牙にサイタマ式筋トレを伝授。自身はサイタマが語っていた「宇宙でも結構平気だぞ」との発言に対抗し、生身での宇宙活動を目指す感じになるかと。

これからの勇次郎の敵は「常識」です。



~モンスターハンター編~
モンスターハンターはシリーズも多く、各シリーズ毎の関連性も不透明だったことから
あくまで「世界観」のみに留めさせて頂きました。

神崎単品で送りこんでも、普通に村や町で生活して冒険しないでしょうし
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