リクエストIF話の移転先   作:あぱしー

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「WORKING!!」の世界に、特殊な条件のループ能力持ちの転生者がいるお話です。




マインドクラッシュは勘弁な! × WORKING!!

 

――ループしてるぅ!!

 

 神崎は困惑の中で理解した。

 

 北海道に生まれ、原作の舞台がいわゆる「日常物」であったことから両親の死もなく、すくすく成長し、中学入学――した段階で神崎は1年前にループした。

 

 この説明では、訳が分からないであろう。当然だ。神崎も訳が分からない。

 

 ゆえにループ条件を調査した結果――

 

 ループの3つの条件を把握。これに関しては「緋糾のアリア」編「ハンター×ハンター」編と同じ部分は割愛させて貰おう。

 

 その中で一番の問題は、原作「WORKING!!」の舞台であるファミレスの「ワグナリア」のとある1店舗で働かなければループする点にある。

 

 中学生――事情さえあれば、労働が可能になりえるギリギリの年代。それに加え、シフト少な目・休みがちはNGの鬼畜難易度である。

 

 それが何を意味するかご理解頂けるだろうか?

 

 そう、神崎は生涯「北海道にある一店舗のファミレスでの仕事する人」として生きていかなければならないのだ。長く勤めて働きを評価され、出世して栄転とか論外である――酷ぇ。

 

 

 死を病的に恐れる不気味な己を愛してくれた両親に楽をさせてあげよう――その為に、ひとまず学歴を求めた神崎の心は死んだ。

 

 

 だが、神崎は諦めない。「大切な両親の為に」と猛勉強し、在宅の仕事で稼ぐことで強引に解決! 親孝行に全力を注ぐ。無論、ファミレスでの労働も継続してである。

 

 

 もはやワグナリアスタッフから「なんでこの人、いまだに此処で働いているんだろう?」とか思われているかもしれないが、今の神崎には両親の幸福さえあればOKだった。

 

 

 他には何もいらない。

 

 

 おお、神よ――なぜ、神崎にこのような試練をお与えになったのですか。

 

 

 

 

 

 

 

 ところ変わって4つのコーナーが立ち並ぶリングにて、シューズが滑る音と、ミットをグローブが殴打する音が響く。

 

「いいぞ、まひる! もっとだ、まひる!!」

 

 その戦いの舞台たるリングの中でくすんだ黒髪の壮年の男「伊波」は実の娘「伊波 まひる」がオレンジのショートカットを揺らしながら繰り出す拳をミットで捌いていく。

 

「ジャブ、ジャブ!! ほら、ガードが浮いた! フィニッシュだ!!」

 

 やがて連打からのフィニッシュブローのアッパーカットを求めた伊波に、まひるは相手のミットを突き破る勢いで拳を勝ち上げ――

 

――馬鹿な、此方のガードを超えて!?

 

 リング上の伊波の身体が宙に浮き、ヘッドギアが宙を舞う中、暫しの滞空の後に小さく数回バウンドした伊波の身体はリングに倒れた。

 

「……ナ、ナイス……パンチ……」

 

――お父さん、新しい扉を開きそうだよ……

 

 やがて最後にグッと親指を立てた伊波を余所に、まひるはさっそうとリングを降りて行く。

 

 その姿は、まさに己が拳に宿る力を御しきった拳士そのものだった。

 

 

 

 

 

 とあるファミレス「ワグナリア」にて、本日のシフト表を眺めていた働き始めて日の浅い眼鏡の高校生の青年、小鳥遊(たかなし) 宗太(そうた)はなんとなしにポツリと零す。

 

「今日、伊波さんは休みで、他は――ん? 店長ー、見ない名前があるんですけど、この神崎って人、どんな人ですか?」

 

 大体の面々と顔を合わせた小鳥遊だが、「神崎」と記された相手とは未だ面識がなかったゆえに、脱力して椅子に座るこのワグナリアの店長である黒のボブカットの白藤 杏子(きょうこ)に視線と共に問いかけるが――

 

 

「んー? そういえばお前、会ったことないのか。でも、アイツかー……おっさんだな」

 

「人類のそれなりの数がおっさんですよ」

 

 返ってきた凄い雑な説明に小鳥遊は脱力しながら呆れた声を漏らす。しかし、そんな小鳥遊の前に、青髪の糸目の青年「相馬(そうま) 博臣(ひろおみ)」がキッチンから顔を覗かせる。

 

「なになに? 小鳥遊くん、神崎さんに興味あるの?」

 

「いや、そこまでは――相馬さんは詳しいんですか?」

 

「まぁね。あの人、面白い人だから見てて飽きないんだよ」

 

「面白い人?」

 

 からかい癖のある相馬のニコニコ笑顔に、小鳥遊は身構えつつも先を促せば――

 

「うーん、そうだな……伊波さん、昔は男性恐怖症でね」

 

「えっ!? 伊波さんって男性恐怖症だったんですか!?」

 

「まぁね。男であれば子供老人問わずに殴っちゃう衝動があったんだけど――」

 

「だけど?」

 

 そして相馬から飛び出た話題は、此処にはいないワグナリアのメンバーの1人伊波 まひるの過去に移る。

 

 まひるは、超過保護な父からの「男は狼」といった具合な刷り込み染みた教えにより、過度の男性恐怖症を患っており、男であれば少年・老人問わず、恐怖のあまり殴りかかってしまう程だ。

 

 更に超過保護な父から「荷物に鉄板仕込み」な具合で、知らぬ間に鍛えさせられていた結果、店の壁にヒビを入れる程の怪力を有していることも相まって、周辺被害はかなりのものである。

 

 

 そして、当然神崎もその被害にあった――が、皆さんご存知の通り、神崎は無駄にマッスル――もとい戦闘技能に秀でていたお陰で、実害はない。

 

 しかし「このまま放っておく訳にも……」となった為――

 

「いやさ、聞いてよ、小鳥遊くん。あの人ったら『暴力性を制御できるようになれば良い』って、伊波さんを逆に鍛え始めたんだよ」

 

「……それ、還って被害が大きくなりませんか?」

 

 まひるの「男性恐怖症克服」計画を打ち立てたのだ。とはいえ、小鳥遊の言う様に「火に油を注いでどうする」な有様だが。

 

 だが神崎とてノープランではない。

 

 人が感じる「恐れ」それは「不安」により、生じる感情だ。まひるの場合は「襲われるかもしれない」「ならば殺られる前に殺れ」――と。

 

 

 ゆえに神崎は考えた。「己が強さに自負を持てるようになれば恐るるに足らず」と。

 

 そう、「相手が襲ってきた後に反撃(カウンター)して勝てるレベルの強さと自信」をまひるに与えたのだ――脳筋か。いや、脳筋だった。

 

「うん、ボクもそう思ったんだけどさ――色々あって『男性をぶっ飛ばせる自信がついたから怖くなくなりました』って」

 

「え、えぇ…………えぇ……」

 

 結果、まひる――開眼。

 

 己より弱い生き物をどうして恐れる必要があるのか。いや、ない(反語)

 

 

 又聞きした小鳥遊がドン引きするのも無理からぬ話。当時の相馬も似た気分になった。

 

「アハハ! そんな顔になっちゃうよね!」

 

 ゆえに小鳥遊のなんとも表情を相馬は笑う。無事解決したからこそ笑い話に出来るのだ。

 

 しかし、そうして爆笑する相馬の肩をゴツンと肘でつついた金髪のどこか無愛想な青年「佐藤 (じゅん)」は口数少なく諫める。

 

「その辺にしとけ。アイツの問題に匙を投げた俺たちが、なにか言えた義理じゃないだろ」

 

「え~、佐藤くんだって面食らってたじゃ~ん」

 

 だが佐藤の言に、昔の佐藤の表情を思い出し、もう一度クスリと笑う相馬だが、直ぐに両手を合わせて小さく謝罪を入れつつ、話を戻す。

 

「ごめんごめん、って――まっ、そんな感じでなにかと面倒見が良い人なんだよ。マネージャーの音夫さんの奥さん探したり、轟さんの刀折ったり――そう言えば、店長とは付き合い長いんでしたっけ?」

 

――刀折っ!?

 

「まぁなー、昔っから問題投げときゃなんとかするヤツだった」

 

「どう? 参考になった?」

 

 やがて店長からの情報も加味した相馬は、小鳥遊を見やるが――

 

「……むしろ、余計に人物像があやふやになった気がします」

 

 彼の中ではいまいち神崎のイメージが定着しない。ちなみに、今の一番強い印象は世紀末感溢れる人である。

 

 そうして頭を悩ませる小鳥遊に佐藤は、相馬を押しのけながら前に出た。

 

「まぁ、相馬の言葉は殆ど忘れろ。ワグナリアの中では、普通に真っ当な人だ」

 

「佐藤くん、酷くない!?」

 

 そう、からかい癖のある相馬とは違い、佐藤は恋愛事に奥手なこと以外は極めて一般的な常識人だ。ゆえに小鳥遊も「最初からこの人に聞けば良かった」と顔を上げて問うが――

 

「佐藤さんから見れば、どんな人ですか?」

 

「フィジカルモンスター」

 

「ぇ?」

 

「フィジカルモンスター」

 

「普通……普通って……」

 

 脳筋であることを含め、悪い意味で一切間違っていない簡潔な説明が佐藤からなされるが、小鳥遊からすれば、「普通」の定義が壊れそうだった。

 

 最初に佐藤が告げた「普通に真っ当な人」との評価はなんだったのだろうか。

 

「小っちゃけりゃミジンコだろうが可愛がるお前よりは、普通にまともだと思うぞ」

 

「なんてこと言うんですか!! ミジンコ、可愛いじゃないですか!!」

 

「うん、どの口が言うんだ――って話だね」

 

 佐藤へ向けて、拳を握って熱弁する小鳥遊に呆れた視線を向ける相馬。

 

 そう、小鳥遊は無類の小さい物好きだった。とはいえ、幼子に手をかけるような危ない人ではない――小さければミジンコですら「可愛い」と頬を緩ませる別の意味で危ない人なだけだ。

 

「……まぁ、大体どんな人かは――」

 

 そんな中、なんとか神崎のイメージを纏めようとしていた小鳥遊だったが――

 

「後、喧嘩メッチャ強いぞ」

 

「店長、その情報はどこから仕入れたんですか……」

 

――駄目だ。世紀末なイメージしか浮かばない……どうして、この職場は癖の強い人ばかりなんだ!!

 

 店長からの追加の情報によって、筋骨隆々な男がドデカい馬に乗っているイメージが小鳥遊の脳内を占め、己が働く職場への不安が募る。

 

 

 ワグナリアで働く面々は、一癖も二癖もある面々ばかりなのだ。無論、小鳥遊もその中に含まれているが。

 

 

 そんな中、扉の開く音に店長は座ったまま軽く手を上げ、挨拶を飛ばす。

 

「おー、来たか、神崎」

 

「おはようございます、白藤店長。おや、そちらの彼は初めてお会いする方ですね。私は――」

 

 やがて店長に小さく会釈して挨拶する穏やかそうな笑顔を浮かべた神崎は、小鳥遊の姿に「初見」だとお辞儀して自己紹介を交えるが――

 

――事前情報と違って凄い普通ッ!?

 

 眼前の小鳥遊は、ガタイの良い体格だが、物腰柔らかで極めて常識的な受け答えをする神崎の姿に、彼は誰の話を信じて良いのやら分からなくなった。

 

 

 多少のズレはあれど、凡そ真実しか語られていない現実に気付くのは何時になることやら定かではない。

 

 

~原作「WORKING!!」編 完~

 

 




~制作秘話など~

完結済みだったので書きやすかったです。

しかし「特定のファミレスに関わり続けないと人生リセットされる」という条件が中々の所業な気が……

とはいえ、日常系だと平時の最低限の付き合い以外、ガチ何もしなさそうな神崎のスタンスェ……

なので、放っておくのがアウトっぽい部分へフォローする立ち位置となりました。

なお、それに伴い、小鳥遊くんの伊波ちゃんフラグが木端微塵になった模様。
種島さん! チャンスっすよ!!(恋愛脳)

神崎への恋愛フラグ? (ヾノ・∀・`)ナイナイ


Q:まひるちゃんに、なんてことさせてんだ!!

A:脳筋な神崎らしい解決手段にしてみました――これに関しては、普通にすみません<(_ _)>


Q:この先はどんな感じで進んでいくの?

A:山も谷もあんまりないです。ワグナリアでの恋模様の横で、神崎が仕事しているだけになるかと思われます。
神崎のお相手? (ヾノ・∀・`)ナイナイ

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