何処かでみたような能力バトルに選ばれてしまった 作:緋色の全力疾走
そんな妄想をシンプルに書きたい、そんな気分。
例年通りの夏休み
いつもと変わらぬ午後、なんの脈絡もなく━━━視界がバグった。
いや、別に歪んだりモザイクがかったわけじゃあないのだけれど。
視界の左上に小さな封筒が見えただけで。
こう、ゲームによくあるメールボックス。お知らせが届いたりチャットが来たりするあれ、だいたいそんな感じを想像して欲しい。
正直、PCを見てる時に出てきて欲しくなかった。
ものすごく邪魔ではあるのだけれどしかし 当然目線はそちらに行くもので、こう、マウスでクリックするような感覚で目に力を込めると視界の中心に再生紙と似た背景と文字が浮かび上がってきた。
死ぬほど邪魔だった。
1分ほど目を閉じても消えないので文章をよく見てみると、次第に拡大されていく手紙にはこう書いてあった。
【バトルスキルが決定しました】
中学生がノートに書き連ねたような
死ぬほど頭が悪そうな文章だった。
それだけ伝えて幻覚は消えていき、次第に最近の創作でよくあるステータスメッセージが浮かび上がってきた。
邪魔だし早急に消えて欲しい。
VRのように手元に浮かんで固定されるのではなく、視界に直接張り付いてくるそれはいくら頭を降っても目を閉じても変わらない。
スキルの代償に視力を持っていくつもりなのだろうか。
【
【一回戦まであと 6 日 11 時間 4 分 51.4....】
この文章をみて心踊らぬ同年代はそういないだろう。
消し方さえ分かっていれば。
下に続く説明を読むとどうやら「ゲート」と「回収」の二つがメインらしい。
ふむふむ、と一通り読み終え、バトルとやらのルールも把握したところで、最後の文章が目に入った。
【...なお、バトルに敗北した場合はスキルとスキルに関する記憶を失い、
精神力、寿命、運命力を2割ほど回収したのちに蘇生させていただきます】
......
それを読んだ瞬間、僕は自宅を出て電車に乗り、オフシーズンなので滅多に人が来ない浜辺に到着して数分深呼吸したのちに━━━━━━━━叫んだ。
「どうあがいても一位以外大損じゃねーか!!!!!」
そう、この「バトル」とやら1VS1、64人による全6回戦の勝ち抜き戦とのこと。
この手のトーナメント系異能バトルというのは総じて━━━インフレが生きるのである。
その日、深夜に自宅に帰った僕は1週間分の食料と服を用意して布団に入り、これから始まる負けが確定したような戦いに絶望しながら頭を抱えた。
翌朝、僕は手持ちの異能バトル物のラノベを読み漁りながら異能系アニメを鑑賞しながら両手のスマホ二刀流で異能系バトルのSSを流し読みし、夕方からまた布団の中で頭を抱えた。
さらに翌日も、僕は布団の中でひたすらに頭を抱えた。
さらに翌日も、僕は布団の中でひたすらに頭を抱えた。
さらに翌日も、僕は布団の中でひたすらに頭を抱えた。
頭を━━━
目が眩む頭痛の中で、僕は凄まじい速度で上がる【スキルランク】を目の端で見ながら必死にスキルの説明を思い返していた。
「ゲート」はその名の通り「空間と空間を繋げる扉を生成するスキル」のことで、通過した物の中で
半径5メートルならば自在に、それ以上の距離ならば一度自力で行き、「ピン」をさしておく必要があるのだとか。
ただし、自分以外の生物は一部(例えば内臓)だけを通過させる、なんてことはできないようだ。
移動手段としてこの上ないだろう。バトルスキル、とあるからにはいずれ戦う機会が(嫌でも)訪れるのだろうが、むしろ日常生活で重宝しそうだ。
「回収」は厳密には「回収」と「取り出し」の2工程があるらしい。
自分のもつ異空間に繋がる扉を生成し、何かを「回収」して「取り出し」でこちらに戻すのだと。
なるほど、武器などをいれておき、戦闘時に取り出すためのものか。
どちらのスキルも「ランク」が設定されていて、ランクが上がるほど「ゲート」はピンの数が、「回収」は異空間の容量が、そして一定のランクごとに両方の射程距離が上がってゆく。
ならば
初陣前にやるべきことは一つ。
そう、ライトノベルやゲームでこの手の空間使いに割と共通する弱点。
「能力行使直後の隙」と「容量不足による自爆」
その二つを僕は━━━━━━━━圧倒的ランク差によって克服する。
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当日。
初っ端から飛ばした作品なら、相手は序盤でも重力操作か飛行能力でも使ってくるだろうと、身構えて。
一向に何も起こらない。
【バトル開始の場所、合図は当日までに端末にて対戦相手とご相談の上、同意を示すことで決定されます】
いい加減に見慣れてきたステータス画面(仮)に書いてある当日のルールはこれだけ。今日になるとともに開いた画面を凝視し続けてもう正午になる。
やはりこれは幻覚でしかなく、この頭を覆う氷塊も妄想なのか。
そうだ、病院へ行こう
しびれを切らして立ち上がり、玄関で靴紐を結ぶと
まだ自分は幻覚に苛まされているのか。妄想もいい加減にしたらどうだ。一度動き出した羞恥心と自己嫌悪は止まらない。
視覚はイカれても触覚はそうは行かない。いざ触った2代目のスマホは高熱を発しているだけで、光はそれを見間違えただけだった。
過充電かはたまた寿命か。なんの変哲も無いスマホを開いてみれば━━━━━━━━
L○NEの通知がパンクしていた。いや現在進行形でし続けていた。
いや、おま、まさか,,,
おおお落ち着き払って開いたLI○Eの友達には見たことも無い相手が登録されていて、
「『句腸 将武』 から着信がありました」
「『句腸 将武』 から着信がありました」
「『句腸 将武』 から着信がありました」
「『句腸 将武』 から着信がありました」
「『句腸 将武』 から着信がありました」
「『句腸 将武』 から着信がありました」..........
ヒェッ....
「あの、もしも『お前お前お前さお前さんさあ!ここ1週間未読無視しといてなんだよお前さんさあ!ここまできたらもう不戦勝させてくださいよぉ!』
ヒッ
「すみません、携帯開いてなくて。...あの、時間とか場所とかは...」
『いやお前ここで時間変えたら俺ただの下見じゃないですか。場所ももう指定するんで今から来てもらえません?来てもらって、あっでもそん時は疲れてるでしょうしじゃあ五分経ってから始めってことで』
「アッハイ」
『...いや、自分で聞いといてなんですけどいいんすか?そんな簡単に同意しちゃって』
えっ
彼がそういった瞬間、目の間にステータス画面が広がる。
【双方同意を確認。ルールを確定します】
【フィールド、南果野植物園】
【対面にて開始】
【開始まであと:特殊ルール、会合後5分】
....
いつの間にか通話が終了したスマホを異空間に仕舞う。
あまり使わなかった型落ちだが、今後は大きな意味をもつのだろう。
L○NEが本名ならばおそらく将武という名の彼は名前の通り公平なルールを用意してくれた。幸いなことにそこは駅から五分、乗り換え無しのここから30分の場所にある見知った場所だ。
今日日聞かない植物園を指定するのだ。
相手の能力はおそらく━━━━━━━植物使いだろう。
だとすると今の手持ちでは相性が最悪に等しい。
並みの貯水タンクをはるかに凌ぐ程度の量の海水と、そこから分解し収納した純水と塩。
もちろんゲートを使えば十分に戦えるだろう。直接の殺傷能力はないが今のランクなら植物園の区画ごと上空から落下させることもできる。
しかし、これは異能バトル。
いずれ起きるインフレに怯える戦いでもある。
そんな時、隠した手札があるのとないのではあまりに違う。それが空間転移ならなおさら。
「しかし植物、初陣が草属性(仮)かあ...」
ないものねだりはここまでにして。
スキルをくれた何者かには悪いが、しばらくは盛り上がりにかける戦いをすることになるだろう。
僕はこれから可能ならば最後まで、最短でも準決勝まで
━━━━━━━水、あるいは氷使いとして戦わせてもらう。
読者のみなさまは今までどんな能力を妄想しました?
自分は反引力バリアでした。