さぁ、放課後の特別授業だ   作:アルパカお兄さん

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あらすじを読んでいること前提で、いきなり話が進みます。
さすがにいないと思いますが、あらすじを読むことをおすすめします。


小説の最初によくある主人公の自分語りパートは無いのでここにステータス載せときます

名前︰国岡 翔吾(くにおか しょうご)
年齢︰29歳
担当科目︰化学
身長︰182cm
体重︰78Kg
性格︰バッサリしている上に適当、さらに人間関係に無頓着。氷川紗夜と根本的に合わないと思っている(なお彼女はそう思っていない模様)


1=2は成立するけど、よく考えなくてもインチキ

花咲川女子学園の化学準備室は殆ど俺専用の実験室だ。なぜなら隣の物理室、生物実験室には生徒やら他の先生方やらが来るのだが、花咲川唯一の化学教師である俺以外はここに全くと言って用がない。あ、化学室は授業回数も少ないので基本人は来ません。

 

そう、用がない……筈なんだがな。

 

「センセー!」

 

「………なんだ戸山、相変わらず騒々しいな。」

 

「酷い!」

 

「はぁ……」

 

うちのアホ主任が俺を放課後の特別授業の担任にしやがった。しかも指定した場所が化学室っていう……俺の安寧の地が占拠された。

 

「すみません国岡先生!香澄!先生困ってるだろ!」

 

「そうかな?いつも通りじゃない?」

 

「おう戸山、いつも通りお前に困っているぞ。」

 

「えっそうなの!?」

 

「そうだぞ。」

 

この煩いのは戸山香澄、うちの2年で良く補習に居残りで化学室に来る。普段から勉強しろよ。

そしてその隣で戸山を止めてるのが市ヶ谷有咲、表向きは清楚で落ち着いた優等生だが、俺の前で香澄に対する態度を見せてしまってからは態々隠そうとしなくなった。

 

「それより!今日も授業受けに来ました!」

 

「そうかい。お前も物好きだな、特別授業は自由参加なのに。」

 

「他の人は来ないから知らないかもしれませんけど、意外に面白いですよ。授業と言うより雑学クイズみたいな感じですけど。」

 

「仕方ないだろ、普通に授業したら大体のやつが寝るぞ。戸山とか。」

 

「ギクッ……そ、そんな事…ないですよ?」

 

「はぁ……しょうがねぇ。そろそろ開始の時間だしな。ほら、お前らも準備室じゃなくて化学室に移れ。」

 

「はーい!」

 

「ほら、行くぞ香澄。」

 

戸山は市ヶ谷に引き摺られながらも化学室に移動して行った。さて、俺もそろそろ授業するかな。

 

 

化学室に入ると室内にはさっきの戸山と市ヶ谷の2人………しか居ないな。俺の授業人気ないのか。

 

「よし、時間になったしそろそろ特別授業を始める。今日の内容は数学だな。」

 

「えっ数学!?」

 

「戸山、静かにしろ。」

 

「あっは〜い………」

 

「数学つってもまぁ少し面白いと思うぞ。」

 

俺は黒板にとある1つの数式を書いた。一見簡単そうに見えて良く考えると……いや、良く考えなくてもおかしいと分かる数式だ。

 

「じゃあ戸山、『1=2』これを証明してみろ。」

 

「センセー!どう見てもおかしいと思います!」

 

「おぉ、戸山でもおかしい事が分かるか。」

 

「えっへん!」

 

「褒められてないぞ………」

 

「戸山の言う通り、この数式は本来有り得ない。ここに1つのみかんがあるだろ?」

 

「はい………ってなんで化学室にみかん!?」

 

「俺のおやつだ。」

 

「化学室に置いといちゃ駄目でしょう………」

 

「バレてないから問題ない。それよりここに2つのみかんがある。このみかん達、数は同じか?」

 

「どう見ても違います!」

 

「お前いちいち元気がいいな………そうだなみかん1個が2個と同じだったら、ここにみかんが10個あろうと100個あろうと同じということになる。しかし数学的には計算すればできないことも無い。」

 

「えっ?そんな事できるんですか?」

 

「できる。見とけよ。」

 

俺は黒板に次々と数式と計算を書いていく。

 

「まずこれを『a=b』とする。問題ないな。そして両辺にaを掛ける。市ヶ谷、どうなる?」

 

「はい、『a²=ab』です。」

 

「そうだ。これぐらいなら2年なら余裕だろ。そしてさらに両辺から『−b²』する。すると……市ヶ谷」

 

「『a²−b²=ab−b²』になります。」

 

「そうだな。それを因数分解すると『(a+b)(a−b)=b(a−b)』となる。分かるか戸山?」

 

「うーん、分かるような……分からないような………」

 

「はぁ……まぁ因数分解のやり方は数学の教師に学べ。それよりこの式、『(a−b)』を取り除いても成り立つと思わないか?」

 

「えーと………はい、同じ数と記号なので出来ると思います。」

 

「だろ?てことで1回やってみよう。どうなる戸山。」

 

「えっと、『(a−b)』を取り除けばいいんだよね。」

 

「おう。」

 

「それくらい分かりますよ〜!『a+b=b』ですよね!」

 

「………あれ?この式……」

 

「市ヶ谷は気付いたようだな。さて、最初の式を思い出せ。」

 

「えっと1=2だっけ?」

 

「……………違う、その1個先だ。」

 

「あっ、a=bですか?」

 

「そう、その式に従うのであれば、aをbに変えることもできる。見た目が変わっても中身は同じなんだからな。」

 

「てことは『b+b=b』………あれ?」

 

「よし、じゃあbの中に入る数字は1と仮定しよう。どうなる市ヶ谷?」

 

「『1+1=1』、つまり『1=2』という事ですね。」

 

「正解だ。こうして『1=2』は証明出来るっつー訳だ。」

 

「えー!?すごーい!!」

 

この反応いいな。知識量で勝ってると高校生相手でも優越感があるな!

 

「へー、こんな数式あったんだ………」

 

「おっと市ヶ谷、1人で納得しているとこすまないが、この数式はイカサマをしている。」

 

「イカサマ?」

 

「そうだ。数学では【0で割ってはいけない】というルールがある。0で割ることを『ゼロ除算』と呼ぶのだが、これは現実で憲法を破っているようなものだ。」

 

「そんなに!?」

 

「あぁ、例えば『100÷0=1÷0』は計算すると『0=0』になる。さっきと同じように0は両辺にあるから取り除くと『100=1』が成立したことになってしまうのだ。」

 

「へー、確かにポテトが1本と100本だと全然違うもんね!」

 

「なぜそこでポテトが出てくる……確かに例えとしては分かりやすいが。」

 

ポテト好きなのか?そういやうちには他にもポテト好きなやつがいたな。今度紹介してやるか。

 

「さて、こんなもんかね。今日の授業はここまでだ。戸山も市ヶ谷も早く帰れよ。」

 

「はい!今日はバンドの練習があるので!」

 

「バンド?お前らバンドなんてやってたのか。」

 

「えぇ!?文化祭でもやってましたよ!?」

 

「文化祭なんざ興味ねぇから知らなかった。」

 

「ほんとに教師なのかこの人………」

 

辛辣だな。去年は色々忙しかったからな。文化祭を見る暇もなかった。興味もなかったが。

 

「とにかく!これから俺は明日の授業の準備とか次の特別授業の用意とか色々あんだよ。」

 

「はーい!さよーなら!」

 

「国岡先生、さようなら」

 

「おう、じゃあな。」

 

全く、高校生ってのはエネルギッシュだな。おっさんは1日終えただけで疲労困憊なのによ。

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