さぁ、放課後の特別授業だ   作:アルパカお兄さん

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今は冬真っ只中ですが、夏です。
クラゲは怖いですね。海上からだと同化しすぎて見えないし。


夏だ!海だ!クラゲ大量発生だ!

「今日の授業はクラゲについてだ。」

 

そう言って俺は、机の上にそこそこデカい(縦2m、横3m、奥行2m)水槽を降ろす。中には数匹のクラゲが入っており、全てアンドンクラゲだ。

 

「わぁ!可愛い………アンドンクラゲですよね!」

 

「お、おう。」

 

そして俺の目の前だ水槽に張り付いて(比喩だ)アンドンクラゲをキラキラした目で眺めているのはうちの3年生である松原花音だ。後ろにはその松原を微笑ましそうに見つめる………

 

「えーと、誰だっけ?」

 

「あ、松原花音です。」

 

「いや、君じゃなくて………そこの金髪の………誰だっけか。」

 

「失礼ですね。教師としてその発言はどうなんですか?」

 

「すまんな。さすがに担当してないクラスのやつの名前までは覚えていられなかった。」

 

「花音は覚えていたのに?」

 

「こいつはさっき名乗ってたからな。後ろでムスッとしてたお前は名乗らなかったじゃねぇか。」

 

「てっきり知っているかと。」

 

「知らん。名乗れ。」

 

「はぁ……白鷺千聖です。」

 

「あ、知ってるわ。最近テレビで何回か見る。」

 

白鷺千聖って言うとあれだ。女優兼アイドルやってる有名人だ。アイドル始めてからさらに知名度上がって、最近だとバラエティでも見るようになったな。

 

「なんで顔と名前で一致しないんですか。」

 

「見たことあるなぁとは思ったが、まさか本人とは。いやぁうちの高校は有名人が多いな。」

 

白鷺の他にも『異空間』や『アイドル×2』とかいる。この学校やべぇな。

 

「あの…!この子達ってどこで買ったんですか!」

 

「いや、買ってない。」

 

「え?」

 

「海に小せぇ蟹捕まえに行ったらアホみたいにいた。だから数匹捕まえてきた。やっぱ夏の終わりの海はカオスだな。」

 

「それはおかしいと思うわ………」

 

「今回の授業は蟹の体色変化についてやろうと思ってな。せっかくだからお盆中に岩手へ蟹を捕まえに行ったんだよ。でも大量に泳ぐクラゲを見て、B級パニック映画を見てる時みたいな興奮を感じた。」

 

「見たかったなぁ……」

 

「花音?流石に危ないと思うわよ?」

 

「堤防の上だから問題ない。」

 

「そもそもどうやって捕まえるんですか?」

 

「タモで優しくヒョイっと。簡単だった。」

 

実際動きも遅いしぷかぷか浮かんでいるだけなので、余裕ですくい上げて水槽にぶち込んで終わりだった。一応蟹も岩場を片っ端から探して6匹捕まえた。

 

「じゃあそろそろ授業を始めるか。と言っても松原には退屈かもしれんがな。」

 

どう見てもクラゲマニアである。今更クラゲの基本的知識なんて退屈だろう。

 

「いえ!クラゲの事なら何時間でも聞けます!」

 

「お、おう………」

 

「花音……?今日は何か調子がおかしいわよ?」

 

「やっぱりデフォルトでこうじゃないのか。」

 

「いつもはオドオドしてて可愛い子なんですけど……」

 

「やっぱり好きなものを前にするとテンション上がるのか。」

 

若者はこうあるべきなのか、それとももっと落ち着くべきなのか。おっさんには分からんなぁ………

 

「えーアンドンクラゲについてなんだが、一応説明しておこう。こいつは行灯みたいな形状とお盆過ぎに大量発生する事からこの名前がつけられたとされている。が、最近は温暖化の影響で暖海性のこいつは年々増加の一途を辿っている。俺が見た時だと数百匹はいたな。」

 

「先生!しゃ、写真とかってありますか?」

 

「お、おう。あるぞ………ほら。」

 

そう言って俺は大型ディスプレイにスマホを接続して写真データを写す。写ったのは海面どころか海中にまで見るからに異常発生しているアンドンクラゲだった。

俺も最初は気持ち悪いと思ったんだが………

 

「うわぁ………すごい…………」

 

横にいる松原は目をキラキラさせながら画面に写るアンドンクラゲを眺めている。そんなに好きなのか………白鷺はアンドンクラゲを見て一瞬たじろいでたぞ。

 

「堤防の上から撮ったやつなんだが、引き潮になったら砂浜にも大量に浮いてたぞ。」

 

「わ、可愛い………」

 

「ホントに……?ジェルが落ちてるようにしか見えないわ………」

 

「それは分かる。ジェルと言うよりゼリーみたいな感じじゃないか?」

 

「それです。」

 

「そうだ、アンドンクラゲって割と危険なクラゲでな。その長い触手に刺されると蚯蚓脹れみたいになるから海行く時は気をつけろよ。こんな風にな。」

 

俺は右袖を捲り、腕を露出する。すると手首から関節にかけて蚯蚓が這った様な腫れ物ができていた。3日も経ったのにまだ治らんか。

 

「こ、これって……」

 

「大丈夫なんですか……?」

 

2人が心配そうにこちらを見てくる。

 

「大丈夫だ。大事にはならない。精々刺された瞬間痺れるだけだ。カツオノエボシだったらヤバかったかもしれんがな。」

 

これはタモですくい上げたアンドンクラゲの触手がはみ出ており、それに気づかずに動かしたはチクッといかれてしまった結果だ。

 

「まぁ後3日もすれば治るだろ。一応病院で治療もしたしな。」

 

「無事なら良かったですけど……」

 

「痛かったです……よね?」

 

「割とな。刺された瞬間は右腕全体が動かなくなったが、すぐに元に戻る。俺は大人だから良かったが、2人はなるべく近付かないように。」

 

とは言ったものの、松原は絶対に触りに行くだろうな。

 

「以上で授業は終わりだ。解散!」

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