Re:ゼロから始める鬼狩りの異世界生活   作:タロ芋

12 / 15
えー、更新するの1週間に1回になりますね。
待っててネ!


12 ───お前は何が目的だ?

「……ふむ、この調子なら直ぐに糸は溶けて消えそうだな。傷跡は残るが、名誉の勲章と思えばいい」

 

「あー、やっぱし残っちまうか。でも、名誉の勲章ってなんかカッコイイな!」

 

「ハッ、それくらい軽口を叩けるならいいだろう。さて……」

 

「わっぷ!?」

 

 スバルがベッドに腰かけ、イソイソと捲りあげた寝巻きを戻し、華代は診察を終えた所でその体を押してベッドに倒す。

 

「あ、あのハナヨさん? ワタクシ、女の子に押し倒されたいとは思ったことはあっても、殿方に押し倒されるような趣味がある訳じゃあ……」

 

「馬鹿言え、私だって好きでやってる訳じゃない。むしろ私は楓しか押し倒したくないわ」

 

 何が悲しくて野郎を押し倒さねばならんのだ、華代はスバルの軽口に反応していては進まないと思い、さっさと本題に入ることにした。

 

「さて、スバル。お前はどこから来た?」

 

「どこって……、日本からだよ。お前も知ってるだろ?」

 

「ああ、そうだ。私も同じ日本からだ」

 

 ここは4度目の時、盗品蔵のまえでやった会話の繰り返しだ。

 さらに続け、華代はひとつずつ口に出していく。

 

「お前と私はこの世界に来てそれほど時間も経っていない」

 

「知人も、友人も、コネも、通貨や何一つない。

 だが、何故かこの世界の言語を喋ることができるが読めはしない。ちがわないな?」

 

 華代の質問し、スバルが力強く頷く。

 

「だが、同じ日本でも時間軸が違う。お前は私より先の時代。私はお前より過去の時代」

 

「まさか、異世界転移に加えて過去人と遭遇とは俺も予想外だ」

 

「茶化すな。コホン、とにかく私は転移するまではとある『鬼』と戦い、辛くも相打ちには持っていった」

 

「相打ち……? の割にはきちんと足付いてるけどよ。

 あ、そうそう俺はコンビニ……つう店出買い物して外に出た、気がついたらあの広場にいたんだよ。

 夜だったのが真昼間になってたんだから驚いたぜ! 

 にしても、幕末の時代にそんな怪異が日本にいたなんてワクワクすんなぁ! 後でその話聞かせてくんね?」

 

「あんなのにワクワクもくそもあるか。いつ死ぬかもわからん地獄だぞ? 

 ンンッ、とりあえずはどちらもほぼ同じ時刻にこの世界に放り込まれたというわけだ。では、次にいくぞ」

 

「おう。同郷のよしみだし、命の恩人のハナヨには色々と助けられたからな。

 なんでも聞いてくれよ」

 

「そうか。なら、嘘偽りなく答えてくれるな?」

 

「おう!」

 

 それは良かった、そんな華代の声が聞こえ質問に答えようとスバルは体を起こそうとしたが、気がつけば肺から空気を全て押し出されるほどの強さで膝が載せられ、ベッドに縫い付けられた。

 

 漏れ出た空気がゴヒュ、と喉から詰まった音を立て突然の出来事と痛みに目を丸くしてスバルは押し倒したく華代を見た。

 

 少し動けが鼻先が触れ合う程の距離、深紅の瞳と目線が合う。だが、その瞳には優しはなくどこまでも鋭く、冷たい底冷えするほどの眼だった。

 

 

「───お前は何が目的だ?」

 

 両腕を左手で拘束し、空いた手には髪色と同色の刀を抜き放ち、その刃を首筋へと皮膚を切るか切らないか絶妙な力加減で押し付けられ、反射した光がスバルの顔を照らす。

 

 突然の出来事と、刀という刃物の光に何かの悪い冗談かと思うが、そんな気配は微塵もなく、何か間違えれば即首を跳ねられる。そんな雰囲気を感じた。

 スバルは困惑と恐怖に引きつった喉を無理やり動かし、震わせながらも口を開く。

 

「な、なんの目的もねぇよ。

 ただ、気がついたらこの世界に放り込まれて、ただ、宛もなく────」

 

「おいおいおい、さっき言ったよなお前は? 

 嘘偽りなく答えるってなぁ。いいか、ナツキ・スバル。お前はあんな力を使い、俺をあんな目(・・・・)に合わせておいて、それを知らないって言うつもりか? あ?」

 

「あ、あんな力? あんな目ってど、どういう……」

 

「お前はこの世界に来て、計3回もあの力を使っているんだ。

 1回目は夜に。2回目は夕方に。3度目は昼だ。

 たしかにアレはまさに理不尽とも言える力だ。鬼舞辻の野郎が知れば狂喜乱舞するようなデタラメの力だ。

 だがなぁ、何故俺を巻き込む? 何故、俺をこの世界へと放り込んだ? 

 貴様の目的は一体なんだ? 何を企んでいる?」

 

「お、落ち着けよハナヨ! お前、何言ってるんだよ!」

 

 華代が畳み掛ける声にスバルにはどれも訳が分からず、叫ぶしかできない。

 

「わ、分かった! 言う! 何がなんだがわかんねぇけど、隠し事はしねぇよ!!」

 

 刃の冷たい感触に恐怖しながら必死に懇願する。

 スバルのその叫びを聞き、数瞬した後に華代は膝をどかすと刀を収めてスバルの上から降りる。

 息を整え、スバルは恐怖を噛み殺しながら語り出した。

 

「ゲホッ、……とに、かく俺はなんの前触れもなく唐突にこの世界に転移した。

 そこになんの説明もないし、本当に唐突に、だ……」

 

「なら、お前の持っているその異能の力はなんだ?」

 

「それは俺だって聞きてぇよ。本当にこの世界に飛ばされて、死んで初めて気がついたんだ。

 最初は……、俺のいた時代に流行っていた物語とかの異世界転移だと思ってたよ。

 内容は異世界に飛ばされて超常的な存在にデタラメなチート能力とかを貰って飛ばされた先で無双してハーレムだとか自分の国を築くんだけどさ……」

 

「そうか。お前は意図せずして俺を巻き込んだ……そう言いたいんだな」

 

「だから、俺は別に巻き込むつもりだなんて……

 ───あの時、盗品蔵での会話でもしかしてって思ったけど、お前は俺と同じ力を持ってるんじゃないのか?」

 

「ハンッ、俺がただのチンピラ風情に遅れをとると思うか?」

 

 スバルはこう勘違いしていた。目の前の剣士が自分と同じく『死に戻りする能力を持っている』と。

 だが、事実は『自分の死に戻りに巻き込まれた』が正しい。

 華代はスバルの話を聞き、今度は自分のことを話す。

 

「俺のは。端的に言えば時間の巻戻りだ。そう、コマをひとつずつ巻き戻していくアレだ。

 そうさ、別に巻きもどるくらい構わねぇよ。なんていったって、もう一度同じことをすりゃあいいんだしな。

 だけどよ、それ以上に俺がイラついてんのはむざむざ目の前で自分のやったことが巻きもどるさまを何も出来ず見せられる事なんだよ。

 わかるか? 流れた汗が肌に吸収される感覚を、食った、出したものが戻っていく不快感を? 

 答えはどこまでいっても気持ち悪いだッ! 1度味わえば理解するだろうさ。二度と味わいたくもないってな」

 

 その端正な顔立ちを嫌悪と憤怒に歪め、殺意の込められた視線に射抜かれたスバルはその眼差しに怯えることしか出来ない。

 

「もう一度聞くぞ。ナツキ・スバル。お前は何が目的だ? 何のためにエミリアを助け、過程でなぜ3度も死んだ? あの黒い手はなんだ? 

 記憶になくても、知らなくてもお前にはそれに関係することがあるはずだ。いいか、些細なことでも思い出せ。今、すぐにだ」

 

「だから……、俺は何も知らねぇしわかんねぇよ! 

 俺はただ、エミリアに受けた恩を返したくって必死にがむしゃらに動いてただけだ!! それで俺は"死に戻り"を────」

 

 ──瞬間、 世 界 が、止、ま る

 

 

 世界の色が褪せ、世界に二人の意識だけを残し全ての時間が停止した。

 華代は見た。スバルの背後の空間が歪み、その中から甘ったるい腐臭とおぞましい気配と共に黒い手が現れるのが。

 

「………………ッ!!」

 

 声を貼り出そうとしても、何も出来ずその手が時間を掛けてスバルの内部へと入り込む。

 不思議と、その感覚はスバルだけではなく華代にもわかった。

 自分が最愛の妻にやるように、その手は心臓を愛おしげに撫で────掴む。

 

 力の込められた指が離れ、今度はその標的を華代へとむける。だが、その手にはスバルにやったような感情はなく、ひたすらにこちらの心臓を握り潰さんという意思がありありと感じ取ることが出来る。

 手は華代へと伸びていき、そして────

 

「ガッ……ハァッ!? アッ、グゥウッ!!」

 

 ───世界は歩みだし、スバルは自分の心臓を握られた感覚に悶え、激しく咳き込む。

 尋常ではない感覚に華代は僅かに顔色を悪くしながらも、酷い有様のスバルへと駆け寄る。

 

「おい、無事かスバル……?」

 

「ゲホッ……ゴホッ! す……くなく、とも…………、腹ァかっさばかれるのと、ハートキャッチどちらがいいって、聞かれたら甲乙付け難いくらいクソッタレで二度と味わいたくない気分だ……!!」

 

「それだけ悪態付けるってことは平気ということだ。いいか、ゆっくりと深呼吸しろ。とにかく、今は落ち着かせろ」

 

 喘ぐスバルの背中をさすり、とりあえずは落ち着かせるようにする華代。

 言われたとおり、深呼吸を繰り返したお陰で顔色は少しずつマシになっていくとスバルは強ばった声色で口を開く。

 

「あれが……ハナヨのいってた黒い手ってやつか?」

 

「ああ。……その言い方だとお前は初見ということか?」

 

「少なくとも、俺の短い人生の中であんな禍々しいものを見た記憶なんてこれっぽっちもねぇ……。

 なんであいつは俺の心臓をハートキャッチしたんだ?」

 

「さて、な。だが、予測できることはある。

 お前は心臓を掴まれる直前になんて言おうとした?」

 

「えーと、確か死にも───アダァ!? ちょっと奥さん、怪我人に暴力はダメって知らないのかしら!? 

 あんまり強い力で頭ぶったたかれると、残念なワタクシの頭がさらに残念なことになりますってよ!」

 

「戯けェ! もう1回心臓をアレに掴まれたいのか貴様はァ!?」

 

 こいつ色んな意味で頭が残念すぎるぞ。

 危うく、あの黒いのををもう一度出現させそうになった馬鹿の頭をすんでのところでぶっ叩き、華代は苛立ち混じりに説明をした。

 

「いいか、よく聞け。恐らくだアレは”警告”だ。

 私を除く、他の誰にもあの力のことを話させないためのな」

 

「おいおい……、アレで警告なのかよ」

 

「はぁ、全くもって理解が及ばないが、いくつか言えることはある。

 まずひとつ、お前を呼んだ存在は何かをさせるためにその力を与えた。

 ふたつ、その力は私以外の他人には話すことを許さない。こんなところだ」

 

 指を2本立て、華代の言ったことにスバルはうげぇと顔を顰める。

 

「そして、こんなことをした奴は死にかけの私を体のいい駒としてこの世界へ送り込んだ。

 ハッ、舐められたものだ。必ず私がその首を叩ききってやるわ」

 

「俺としちゃ、その元凶をとっちめてくれるなら万々歳だ……」

 

 青筋を浮かべ、凄みのある笑みを浮かべる華代を見てその矛先が自分に向いていないことに心底ほっとするスバルであった。

 

 

 

「さて、スバル。もうお前に問い詰めるのはやめとしよう。何がダメなのかわからないからな。

 だが、一つだけ私に教えてくれ。お前はこの世界で何を目的とするんだ? 

 おいおい、怯えるな。もうお前が関係なく、ただ巻き込まれたってだけなのは理解している。だからだ。お前はこの世界でどんな目的で生きていくんだ?」

 

「俺の目的、か……」

 

「まだ決まってないのなら、私が先に言おう。

 私は元いた場所に帰ることだ。そう、幕末の時代にな。

 あそこには私の大切な妻と子供たちがいる。あそこには私を必要とする存在がいるからこそ、私はこの世界でのうのうと過ごすという選択肢はない」

 

「…………」

 

 華代の目的は至極当然だ。自分の知らない異世界に放り出され、自分の故郷へ帰る。

 だが、スバルがその目的を肯定するかは、否だ。

 

 また、自分の部屋にこもり、無意味に時間を浪費し生産性のない暮らしへと戻るのか? 

 やり直せるなら最初から全てをやり直したい。だが、やり直すと言っても自分には何が出来る? 

 こうして、死に戻りの力を手に入れても自分には何ができた? 

 ほとんどが目の前の剣士のおかげではないか。与えられただけで、自分のものは何一つない。

 そもそも、挫折した自分に何が出来る? 

 自分の中で問答が続き、悪い方へと変わっていく。

 薄っぺらい、簡単に壊れるほど脆い虚勢で蓋をしていた不安や恐怖が溢れ出し、視界がグルグルと回る。

 

「おい、スバル?」

 

 怖い、嫌だ。もう一度あんなふうに戻るなんて……

 

「聞いてるのか? …………チッ」

 

 バチン! 

 

「イッテェ!?」

 

 突然の痛みに目を見開き、顔を上げると憮然とした顔の華代が自分を見下ろしていた。どうやら、自分の額にデコピンをしたようで、スバルがドン底のような濁ったところから意識が戻ったことを確認した華代は息を吐いて口を開く。

 

「はぁ、スバル。酷い顔をしてるお前に助言をしてやる。

 目的が決まらないなら、お前自身がやりたいこと。できる、出来ないじゃない。お前が本当にやりたいことを取り敢えずは目先の目的にするんだ。わかったな?」

 

「俺の、やりたいこと……」

 

「あぁ。最後までやって、お前が心からやってよかったって思えることだ。

 ……私が元いた場所に戻るには、お前のことを手伝わなければならない。だから、ひっじょうに遺憾だがお前を助けてやる」

 

 取り繕ってはいるが、親身になってくれている華代の姿にスバルは自分の親の姿を重ねる。

 かすかに笑い、スバルは言う。

 

「わかった……。ヤレるかどうかわかんねぇけど、やってみるよ俺」

 

「あぁ。お前はまだ若いんだ。いつでも挑戦してみろ」

 

「そういうハナヨも20代だろ? ふと思ったけど、ちょくちょくジジくさいこと言うよな……」

 

「ん、あぁ伊達に生きてないからな。他よりは中身が老けてるのさ」

 

 言葉を濁すが、実際は前世含めて精神年齢が50超えてる立派な中年な華代であった。

 

「さえ、では話も終わった事だしさっさと昼食を食べに行くとするか」

 

「おっ、いいな。2日間も飲まず食わずで寝てたからすっげぇ腹減ってんだよ。

 タダ飯にありつけるなら遠慮せずにお代わりしちまうか」

 

「発言がとことん穀潰しだなお前……」

 

「ヘッ! 伊達に親のスネかじってニー活してたスバルさんを舐めないでくれましてよ!」

 

「胸を張って言うことか戯けェ。

 うーむ、茜と葵がこんな風になるのは勘弁願いたいぞ。あと近づくな。なんか臭うぞお前」

 

「いきたり貴方様は何言い出してるのかしら!? 

 思春期男子にその言葉はすっごい突き刺さるんですけど!」

 

 そそくさと距離をとる華代にスバルが突っ込み、その内容に怪訝な顔をした。

 

「お前、気が付かないのか? その匂いに……」

 

「いや、まったく。特に汗くさくもねぇけど」

 

「……こんなにも臭うのにか?」

 

「どんな匂いなんだよ……」

 

「なんというか、果実が腐ったかのような気持ちの悪い甘ったるい匂いだ。それがあの黒い手が出てきた時から出てきてる」

 

「……あー、うん。なんか理解出来たわ」

 

「控えめに言って臭い。そんな匂いがお前の全身からするぞ」

 

 鼻をつまみ、パタパタと片手を扇ぎ華代が顔を顰めながら言うとスバルは叫ぶ。

 

「ファ〇ク! 他人に話したらデメリットがハートキャッチに加えて悪臭付きってどんな罰ゲームだよッッ!!!」

 

「すまん、ちょっと厠いきたい。オエッ……」

 

「そういう反応すごく傷つくんだぞ!? あー、昼飯食う前にシャワー浴びたい! 誰かお風呂連れてってぇ!?」




異世界こそこそ噂話
華代が髪を結うのに使っている紐は奥さんの手作りのプレゼント。藤の花の匂いが付けられてるぞ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。