Re:ゼロから始める鬼狩りの異世界生活   作:タロ芋

13 / 15
13 食客として迎えて欲しい

 レムに先導され、食堂へと道を進むスバルと華代の2人。

 

「いやー、2日間飲まず食わずだったから腹が減ってるけど、いきなりガッツリとは流石に無理だよな?」

 

「お客様の体調に合わせた消化に良いものも用意していますので、心配は無用です」

 

「オッ、マジか。サンキューレム! 可愛い上に有能とか最強かよ。恐れ入ったぜ」

 

「恐縮ですお客様」

 

 スバルのそんな戯言をレムが流し、尚も戯言をしゃべり続けるスバルを華代が引き寄せ耳打ちする。

 

「(スバル、この後に私たちはこの地の領主と会うことになる)」

 

「(お、早速貴族と謁見ルートってやつか! 

 ひょっとして、この力を見込まれて懐刀として仕えるとか?)」

 

「(あんかくそ重い制約があって、力のことを知ってるやつがいるものかよ。

 コホン、とにかくその領主はエミリアのことを助けた礼としてなんでも願いを叶えてくれるはずだ)」

 

「(そ、マ? ということは……お父さん、お嬢さんを僕にください! って流れだよな。よし任せろ)」

 

「(んなわけあるか戯け。言っても速攻却下されるかパックのやつに氷漬けにされるわ。

 とにかく、提案だが。貴様はその場で此処で働かせてもらうように言うんだ。今の我々には何よりも拠点と権力者の後ろ盾が必要だからな。分かったか?)」

 

「(それもそうだな……

 さっすがハナヨセンセー。まじ勉強になるわ)」

 

「(むしろ何故そこまで考えが回らないのだ……)」

 

「こちらが食堂になります。皆さんがお集まりになるまで、少々お待ちください」

 

 そんな会話をしていると、目的の場所にたどり着きレムに声をかけられた2人は彼女に礼を述べる。

 

「おぉ、サンキュレム」

 

「案内感謝する」

 

 レムが扉を開き、部屋の全容を見せる。

 広い室内には長いテーブルが置かれ、シミひとつないテーブルクロスが敷いており料理はまだ用意されてはいない。

 その中には華代が知らない特徴的な髪型の少女が1人、席に座っており彼女がベアオリスという人物だろうか? 

 

 2人は中へと足を踏み込んでいき、2人の背を見つめるレムの目線はとても冷たいものであった。

 

 

 

 〇

 

 

「チッ、そのまま寝てればよかったのよ」

 

 巻き毛の少女が食堂へと入ってきたスバルに向けていきなりそんなことを言ってきた。

 スバルはそんな発言に顔を顰め、

 

「いきなり会って早々、何言い出しやがるこのロリ」

 

「なにかしらその単語。聞いたことないのに、不快な感覚だけはするのよ」

 

「攻略対象外に幼いって意味だ。俺、年下属性あんまりないし」

 

「……ベティーにここまで無礼な口を叩けるのも、かえって可哀想なのね」

 

「すまないお嬢さん、後でこいつには言っておく。

 君が──ベアトリスで合っているか?」

 

「その通りなのよ。フン、このしょうもないやつの連れって聞いてたから、どんなやつかと思ったらきちんと礼節は弁えてる所は評価してやるのよ」

 

「ハハハ、私はあくまでも客という立場だからな。ここの住人に対してはきちんと立場を考えるものさ」

 

 鼻を鳴らし、ベアトリスが椅子へとけてため息をつく。そのまま卓上にあるグラスを持つと、琥珀色の液体をすっと喉に通した。

 

 形状的にワイングラスに近い食器に、華代は中身が酒であると予測し、同じように予測していたスバルの疑惑の視線を受けて、少女は意味ありげに笑うとグラスをスバルの方へと向ける。

 

「なぁに、ひょっとして飲みたいのかしら」

 

「え、でも、間接キスになっちゃうし。ちょっとイベント進行早いかなって」

 

「腹いせにからかおうとしたら、この初心な感じはなんなのかしら! こっちの方が恥ずかしいのよ!」

 

「……ほんっとお前はブレないな。はぁ、あと私の目が黒いうちはお前に酒は飲ませないぞ」

 

「つまりは視線の届かないところなら飲んでもよろしいことですな!」

 

「戯け、そもそも20歳でもない餓鬼が酒を嗜むんじゃあない」

 

 今現在、食堂の中には3人しか居ないからかやりたい放題のスバルに華代はため息をこぼす。

 テーブルの上には食器が既に用意されており、その中のどれかが2人の席なのだろう。華代は下座のどれかに座ろうとしたが、当然のごとくスバルは。

 

「ここはあえて、上座のひとつに座ってみる」

 

「戯け、間違っておるわ」

 

「もの凄い選択肢なのよ。わかりきってるけど、間違いなのよ?」

 

「へっへっへ、ここが普段からエミリアたんが座ってる席だろ。今、俺の尻とあの子のお尻が間接シットダウンしてると思うとほのかな興奮が……」

 

「高度な変態かしら! 気色悪いというか胸糞悪いのよ! まったく、そこのやつを見習うのよ……」

 

 予想通り、敢えての選択肢を選び華代はその上座の席にスバルが座り、突っ込むベアトリスとの漫才を見て華代は「好きな子の自転車のサドルをパクるアレ」と似たようなもんだと思いつつ、下座の適当な席に座る。

 

 そして、ベオトリスのツッコミ属性を見抜いたスバルは彼女の反応を見るのを楽しくなってきたのか、益々変態行動を重ねていくのであった。

 

 そんなことで時間が流れていき、

 

「失礼いたしますわ、お客様。食事の配膳をいたします」

 

「失礼するわ、お客様。食器とお茶の配膳を済ませるわ」

 

 扉が開かれ、ラムとレムが台車を押して入ってくる。

 2人はテーブルを挟んで二つに分かれ、それぞれが分担して料理と食器類をテキパキと配膳していく。食卓が彩られ空きっ腹を刺激する匂いにスバルと華代の2人は頬をほころばせる。

 

「おほー、いいねいいね。いかにも貴族的な食卓だ。……これで異世界チックなゲテモノばっか並んだらどうしようかと思ってたぜ」

 

「だが、そういうのもあっても意外と一興とも言えよう。私的には寧ろ歓迎したがな」

 

 割と虫食など平気な華代の言葉にスバルはまじかよ、思いつつもスバルは口を開く。

 

「ホント、虫だけはマジで無理。あいつらなんで存在すんの? わっけわっかんねぇよ、あの形と生き様。あいつらの存在意義って、幼児時代に殺しまくって命の大切さを学ばせるとかぐらいしかなくね?」

 

「弱者を虐げれば、己が弱者となったときに強者に同じように虐げられる。それを学ぶことに意義があるのよ。静かにするかしら、弱者」

 

「虫は確かに見てて気持ちのいいものでは無いが、中には益虫といえる奴らも存在する。

 それに、奴らのうちの種類どれかが絶滅してしまえば、環境はすぐ滅んでしまうさ。どの命にも無駄はないさ。……鬼舞辻の野郎は生きててはならない汚物だがな」

 

「お、おう。なんかハナノさんってば最後らへんの声のトーンすげぇ怖いな」

 

「ハハハ、ちょっと生きているだけで存在の許せない漬物石……ぬか床……肥溜め、おが屑……いや、■■■■以下のやつのことを思い出してな。

 本当にやつだけは許さん。私の手で殺してやりたかったが、それすら叶わずここに来てしまったからなぁ」

 

 華代が段々と目のハイライトが消えていく様はなかなか恐怖を感じるスバル。しかし、空腹とベアトリスの言葉からくるイライラには勝てずフォークとナイフをガチャガチャ鳴らして騒ぎ出す。

 

「はらへったー。メーシー!」

 

「雅さに欠けるのよ。もっと優雅に典雅に待てないのかしら」

 

「酒飲んでる幼女に言われたくねぇよ! ほら、メーシ! メーシ!」

 

「喧しい! これをやるから黙ってろ戯けが」

 

 華代は懐から小さな袋に入れられたナニかをスバルに投げつける。難なく受け取ったスバルは袋の封を解くと、中からソレを取り出した。

 橙黄色の干からびた手頃な大きさのナニか。ほのかに懐かしさを感じる甘い匂いがしたスバルは素直に尋ねる。

 

「お、サンキュー。何これ?」

 

「干し柿だ。小腹を満たすくらいは出来よう。本来なら私の糖分摂取に使うものだがな」

 

「へっへっへ、遠慮なく貰うわ」

 

 スバルは手に持った干し柿を口に放り込み、モキュモキュと頬張る。乾燥させたことによる濃い甘さが口いっぱいに広がり、なかなかに美味だった。

 

 その様子にベアトリスと華代と二人は疲れたように肩をすくめると、

 

「あはぁ、元気なもんだねぇ。いーぃことだよ、いーぃこと」

 

「私としては少しは落ち着きを持って欲しいのだがね」

 

 嬉しそうな顔をした変人……ロズワールが顔を出してきた。

 

 干し柿を頬張るスバルを見た後に、ロズワールはベアトリスに気がつくと、眉を上げる。

 

「おややぁ、ベアトリスがいるなんて珍しい。久々に私と食卓を囲む気ぃになってくれたのかなん?」

 

「頭が幸せなのはそこの奴だけで十分なのよ。ベティーはにーちゃと食事しに顔を出しただけかしら」

 

 ロズワールの言葉にそう返すと、ベアトリスは彼の背後にいたエミリアに視線を向ける。いや、詳しく見ればその銀の髪の内側にいる存在に向けているようだ。

 

「にーちゃ!」

 

 先程までの仏頂面からは一点、見た目相応の笑顔を浮かべてスカートを揺らして駆け寄る。

 

 そして、エミリアの髪の毛の中から顔を出したパックは表情を緩めて彼女の掌へと舞い降りた。

 ベアトリスがパックを抱きしめ、くるくると回ってはしゃぐ様は微笑ましく見える。

 

「びっくりしたでしょ? ベアトリスがパックにべったりで」

 

「なんとも、まぁ……うーむ」

 

「猫の前で猫かぶってるとこ狙いすぎじゃねあのロリ? びっくりしたわ」

 

「ごめん、ちょっと何言ってるのかわかんない」

 

 エミリアがスパッと切り捨てた後、スバルのこと気がつくと首を傾げる。

 

「そこって……」

 

「ああ! そう、椅子も冷たいと心まで冷え込んじゃう、みたいなことってよくあるじゃん? そんな隙間風吹き込む心を癒す、君の毛布になりたいキャンペーンを実施中。なわけで、俺が自ら席を温めておいたよ! 別に間接シットダウン狙いとかじゃないよ!」

 

「ごめん、なに言ってるのかわかんないし……そこ、ロズワールの席よ? 

 あと、ハナヨが座ってるのが私の席ね」

 

「クフッ……」

 

 エミリアからの言葉に膝から崩れ落ちるスバル。そしてそれを見て吹き出す華代。

 そんな彼を見て歯を食いしばり、恨めしそうにスバルは睨みつけた。

 

「だが、俺は転んでもタダでは起きない男。かくなる上は……そう、かくなる上は明日に賭ける!! ということで────」

 

「別に私の席はやらなくていいから。ちょっとヤだから」

 

「神は死んだ──!」

 

「ハハハ、すまないエミリア。直ぐにどこう」

 

「ううん、別に構わないわ。隣に座るわね」

 

 ついには地面を涙ながらに叩き出すスバル。

 

 そんなバカを横目に、ハナヨの隣にエミリアが座りスバルのそんな肩をふいに優しく誰かが叩いた。掌から伝わる温もりに、スバルは安堵と安らぎを与えられて顔を上げる。そこに輝く希望が──、

 

「君の温もり、しぃっかり堪能させてもらうよ」

 

「ペッ!」

 

 躊躇なく唾を吐くスバル。

 

「俺の尻余熱が穢されるくらいならこうしてくれるわ!」

 

「おややぁ、即断即決で意表を突く、すばらしい。でも、ホイ」

 

 ロズワールが指を鳴らすと、椅子にかけられた唾があとかたもなく消滅する。

 

「おお!」

 

「ほう……」

 

 明らかに普通ではない出来事にスバルと華代は声を上げ、スバルが唾のあった場所をなぞる。

 

「蒸発した?」

 

「……ごく小規模に高熱を発生させたのか」

 

 2人の推理にロズワールが口笛を吹き、感嘆するように口を開いた。

 

「あはぁ、よくわかったねぇ。今のは極々小規模の火のマナに干渉して、その部分だけ瞬間温度を上昇させたんだよ」

 

「なんだその離れ業っぽいのを簡単そうに言いやがって……ひょっとして、タダ者の変態さんじゃなかとですか?」

 

「よく分からないが、かなりの技量を感じられるな」

 

「そんなでも、ルグニカ王国の筆頭宮廷魔術師よ」

 

 そう言えば、コイツと会う前にエミリアに言われ事を思い出すハナヨ。スバルは彼女の言葉を上手く呑み込めず反芻しながら、変人を見る。

 

 と、まぁそんなことがありつつも自己紹介を簡単に挟み、一同は昼食へと手をつけ始めるのであった。

 

 その中で、エミリアやロズワールとの会話が弾み、その内容はやはりと言うべきかあの出来事になるのである。

 

「はー、エミリアたんってば王様候補なのか」

 

「ハナヨにはもう説明していたけど、ごめんなさいスバル黙ってて」

 

「いやいや、べつにいいって! 

 ぶっちゃけていえば、関係ない俺らが勝手に関係ないことに首突っ込んだだけだからな。

 にしても、まさか国民を引っ張てく王様をこんな小さなもんで決めるなんて驚きだな……」

 

「だな。血筋ではなく、このようなものは驚きだ」

 

「まぁーねぇ。なんていったって、それに選ばれるって言うことは龍に選ばれると同義。

 この『親竜王国ルグニカ』にもとぉーっても大きな意味を持つのさぁ」

 

 ロズワールの声に、スバルはふむふむと得た情報を統合し呟く。

 

「つまりはアレか。エミリアたんって王様候補のの証を無くしたってことか……」

 

「無くしたなんて人聞きが悪い! ちょっと、手癖の悪い子に盗られただけだもの!」

 

「いや、それだと意味はあんまり変わらないのではないか?」

 

「うぐぅ……」

 

 これには流石のスバルも擁護できず、顔を赤くして俯くエミリア。

 どれだけ盗むのが悪かろうと、民草を統べる王の候補が盗む隙を与えたどころか、その証を一時とはいえ盗まれたという不祥事は言い逃れのできない事実だ。

 

「(だが、それでも解せないところはある。

 その盗むことを何故、素人の子供にやらせた? 

 ほかの陣営の妨害だとしても、やるならその道のプロを雇ってやらせるはず。事実、私もそういう立場ならやる。

 だが……、エミリアの容姿はそんなことをするよりもよっぽど爆弾になる。件の『嫉妬の魔女』とやらとそっくりなエミリアのことを噂として流せばそれだけで────

 

「ねぇ、ハナヨ! スバルってば私のことをいじめるの!」

 

「ん、おぉ……。スバル、あまり虐めやるなよ」

 

「そうだよー、僕の娘に意地悪はダメだからね〜」

 

「やだ、この王様候補超可愛い……。って、笑顔でナイフとか手を向けないでくれませんかねぇ!? 

 冗談だとしても、ハナヨがエルザのナイフをナイフやらフォークで弾いたの忘れてねぇからな!」

 

 思考に没入していた華代だが、エミリアに肩を揺さぶられ中断し、頼られた華代は手に持っていた銀のナイフの切っ先をスバルへと向ける。

 なんでか、エミリアに頼られるようになり首を傾げる。

 思い当たる節があるとすれば、あの木彫り人形を作ってあげたくらいだが、些かそれだけだとイマイチこれほど懐かれるかはよく分からない。

 

「……というかさ、それだけのスキャンダルをあ未然に防いだ俺らって結構すごいことなんじゃねーの?」

 

「そーだねぇ。加えて、エミリア様のお命も救ったとなれば、その功績は計り知れないものだろぉーね。

 これだけの恩、願いもお望みのままだろーさ」

 

「お、お望みのまま───!!」

 

「エミリア、そんな縋るような目で見られても私にはどうしようも出来ん。

 アイツが文字通り体を張ったのだからな」

 

「姉様姉様、お客様の視線が例えようのないくらい気持ち悪いです」

 

「レムレム、バルスの視線が筆舌に尽くし難いくらい気色悪いわ」

 

 流石の華代もスバルの欲まみれの目に大丈夫か? と思うが、視線が華代と合いその心配は杞憂に終わる。

 アイコンタクトからの互いに小さく頷く。

 

「君は私になぁにを望むのかな? 現状、私はそれを断れない。君がどんな金銀財宝を望んでも。あるいはもっと別の、酒池肉林的な展開を望んだとしてもだ。徽章の紛失、その事実を隠ぺいするためなら何でもしよう」

 

「よしきた! じゃあ言わせてもらうぜ」

 

「この機会だ、私もついでに言わせてもらおう」

 

 

 

「俺の願いは───」

 

「私の願いは───」

 

 

 

「ここで働かせてくれ!」

 

「食客として迎えて欲しい」

 

 

 

「……あっれぇ?」

 

 唖然としてスバルはそばに居た薄紅色のやつを見る。だが、そいつは素知らぬ振りをしてレムにお代わりを頼むであった。




異世界こそこそ噂話
華代は常に糖分が摂取できるようドライフルーツであったり保存の効く菓子を常備している。
どれも美味しく、鬼殺隊で彼と任務を共にする時はソレらの菓子を貰うのを楽しみしていた隊員もいた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。