凡人は石世界で推しを推す   作:燈葱

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ドクスト転生夢が書きたくて数年ぶりに2次創作に戻ってきました。
主人公は頭ポーンの推しを推すタイプ。


1 凡人、それが私。

 

 

 

 輪廻転生。

 

 日本人ならば一度は聞いたことがあるだろう。宗教に興味がなくてもテレビをつければ一生に一度くらいは耳に入った言葉でもあるかもしれない。むしろ私のようなオタクな人間ならば何度だって聞いて、そしてその言葉の意味を考えたことすらあるだろう。

 

 なぜ私がこんな事を今この時考えているのかといえば、お隣に住んでいるネギ頭の少年が宇宙に今すぐ行く発言をしたからだ。

 輪廻転生とは全く関係ないかもしれないが、ところがどっこい関係大ありなのだ。

 

 私の今の名前は左藤茉莉。

 今、というのは昔の記憶が、死ぬ前の記憶があるからで、まぁ、昔の名前なんぞ覚えてないがその子の発言で以前の記憶が一気に脳へ巡った。

 

『石神千空』という主人公の漫画があり、その世界は謎の石化光線でストーンワールドへと変貌を遂げる。そして目覚めた男、千空の手により原始の時代から現代まで科学の力で時の秒針を進めていく話なのだ。

 私が覚えているだけでアメリカ大陸編までは記憶している。

 それが漫画だからこそ千空さんスゲー!やらカッコいー!やら言えていたが、今この状態でそれが言えるはずがない。

 

「ひぇっ!」

 

 なんて情けない言葉を口に出し、私の思考は暗転し暗闇へ。

 

 まだ幼い私にはこの状態が耐えられなかったのだ。

 

 この先、生きていれば必ずそれは起こる。

 全ての人類が、70億万人全てが石へと変えられる。

 決して逃れられることない未来が、もう数年後まで迫っていたのだから。

 

「おい、茉莉大丈夫か?」

「んー、うん、大丈夫かなぁー」

 

 なんて嘘をつく。

 大丈夫?んなわけない。大丈夫なわけなんてない。故に今まさに隣を歩く幼き千空に顔を合わせられない。

 もしこのまま私が仲良しさんでいたらワンチャン復活液でストーンワールドに目覚めてしまう。たとえ役に立たなくても、お優しい千空だと本当にワンチャンあるかもしれない現実だ。

 ならば私がすべきことは千空から離れる事しかない。

 

 幼い千空はとてつもなく可愛らしく推したい対象だが、私が大事なのは私の命。もしかしたら石化して体が粉々になって復活出来ないかもしれないが、早々に復活して苦労したくない。

 出来ることなら科学がある程度進んだ頃に起こしていただきたい。

 

「──千空、ごめんね」

 

 俯いてそう呟いた言葉は届いていないだろう。

 でももう私は君と仲良しこよしは出来ないのだよ。私のために。

 

 

 

 

 

 

 その日から私の日常は真逆に変わった。

 今までは朝のおはようからそれこそ夜のおやすみまでお隣である千空には嫌ってほど言ってきたが、それをやめた。

 朝は一人で学校へ行き、夕方は一人で帰る。呼び止められることもあったが適当に用事あるといい疎遠にしていく。両親にさえその行動が咎められたが思春期らしい事をこぼしてみれば生温かい目で私を眺めるだけ。変な方向へ勘違いしてくれたようだ。

 ある程度そんな行動をしていれば千空は私を気にしなくなり、行動を共にする事は無くなってきた。寂しさもあったが自分から蒔いた種だ、文句なんて言ってられない。

 寂しさと引き換えにストーンワールドでの優先復活順位は下がったに違いないのだから。

 

 これで一安心と胸を撫で下ろしたが、次の問題はあっという間にやってきた。

 

 ストーンワールドでの復活順位が下がったとして、私が復活しないとは言い切れない。万が一、それこそ数億分の一、復活してしまったらという不安。その精神的恐怖が毎夜毎夜と夢に現れた。

 ある時は凍死、またある時毒死、獣に食い殺されるパターンや逆に何も食べ物がなくて餓死。さまざまな死に様が夜が来るたび襲いくる。その結果私は寝不足に落ち入り一度病院にまで運び込まれる程だった。

 病院の先生は何らかのストレスからくる睡眠障害だろうと診察し、不安や焦りからなるストレスならばそれをなくしていく方法へと舵を取る。内容は先生にさえ言えなかったがストレスの原因が何なのかわかっていた私は直ぐに行動に移すことにしたのである。

 

 死ぬのが怖い。

 それは誰だって抱える不安だろう。

 私の場合は特定の死の条件が怖いのだと推測できる。ならばと父方の祖父を頼り、田舎にある祖父の家の裏山で原始生活を体験することにしたのだ。

 

 親の心配など気にする事なく何度もトライアンドエラーで竹や木で家を作り、石を砕いてナイフやらも作る。祖父の趣味友達の陶芸仲間から陶芸を一から習い、土だけで作る窯さえを作り上げた。休みの日には山は登り食べられる草やキノコ、生活に使えるであろう技術を覚え、免許こそ取れないが狩猟のための罠や投石さえも数をこなす。私が現代科学に頼らない生活を学ぶのを面白く思った田舎の老人たちは狩猟会を紹介してくれて、そこから獣の捌き方や皮のなめし方、革製品への加工の仕方を調べて私へと教えてくれた。

 

 最初こそどれもこなせなかったが一年二年と年を重ねるにつれ私一人でも生活基盤は作れるまでに成長し、万が一が起きても生きていられると自信を持って言える程にもなった。これで安心したと祖父やお世話になった老人方にお礼を言うとこちらこそ楽しかったとお礼を言われた事を思い出す。

 

 思い出すと言えば年を重ねるにつれ、原作知識が抜けているのに気づいた。

 原作、というか千空の目覚めた時代に関わる事はないと決めつけていたが、万が一司帝国に目覚めさせられた時に備えて覚えている範囲でノートへと書き出す。

 その際は両親に読まれてもわからないように私だけの暗号で文章を構成した。

 例えば千空だったら"senkuu"のK。大樹はデカブツで物。杠は大樹の最愛で物愛などなるべく私にしかわからないように。

 数日かけて思い出したものノートに書き出し、寝る前に一度それを読んでから寝る。それが私の新しいルーティンになったのは言うまでもない。

 

 

 そして月日はながれ、今は高校一年生。

 原始時代への生活へ全振りしていた今の私は馬鹿よりマシレベルだったのだが、何故だか千空が同じ高校に進学しており、残念なことに大樹と杠とも知り合いの知り合い程度の仲になっている。つまりは大して仲良くはないのだが顔見知りになりたくはなかった。

 自分大好き人間にはお優しい人物達が眩しくて眩しくて、そしてどうしようもなく苦しくて、仕方ないのだ。

 万が一、そう万が一。

 私が原作に介入した場合、私は私の為に彼らの命を危険に晒せる。知っていながら見て見ぬふりをする、コハク風に言えば蝙蝠女へとなるしかないのだから。

 

 

 

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