凡人は石世界で推しを推す   作:燈葱

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105 凡人、カタコト。

 

 

 

 千空達を見送り、ニッキー達が平和協定を成立させたことにより私たちは捕虜ではなくなった訳だが、互いに警戒心が消えたわけではない。ゼノが連れ去られ、スタンリーは千空達を追うためにペルセウスに補給を開始し、残った日本のメンバーはゼノ達の拠点へ向かう事になった。

 皆んなが城へ向かう最中私は何故かマグマに抱えられ、いや、お姫様抱っこされたままである。一度自分で歩けるよと声はかけたのだが、舌打ちと共にマグマさんに睨まれた。解せぬ。

 

 私たちを見張っているアメリカメンバーには杠が病気と伝えたことが功をなし、ゼェゼェ息を荒げた状態で抱えられていても不問とされているようだった。

 けれどもそんな私とは違い、先ほどの戦闘で怪我を負った松風は自力で歩き、そしてパタリと倒れ込んだ。彼は駆け寄った杠達に何かを伝え、杠はチラリとコチラを見た後に怪我が酷い、歩けない、長距離歩けば死んでしまうかもと不安を煽る。その結果松風は千空達を追うであろうペルセウスに運ばれたのである。

 

「……茉莉ちゃん、あのね」

「ん?」

 

 いそいそとマグマの隣にまで来てくれた杠は何故松風をペルセウスに戻すような真似をしたか説明してくれたのだが、彼のその行動力には脱帽ものである。何でもペルセウス襲撃時に銀狼を避難させており、そのまま残る事に決めた銀狼のサポートに回る、と。

 いや、銀狼にそんな考えはなかったんじゃないかな?うん、多分でるに出られなくなっただけなのでは?

 そう思ったところで今更どうこうなるものではないだろう。

 

 遠くでペルセウスのエンジン音が鳴るのを聞き、これで本当に千空達とはお別れだななんて思いつつも、私は心の何処かで安堵している。これで当分私の知らない未来と関わることはないと。

 千空と離れてしまった事を少し寂しく思ってしまう気持ちもある自分に嫌になるが、本来ならばずっと前にこうするべきだったのだ。関わりすぎていた今までが可笑しかったのだと自責し、天を仰いだのである。

 

 だがしかし、やはり物事はそう上手く回らないらしい。

 

 ゼノ達の拠点に着いて早々、私たちはニッキーを介してアメリカ側の今のリーダー、ブロディとオハナシアイをする事となってしまったのである。

 まぁ原因は十中八九最後の通信の、千空さんのお言葉であろう。何を言っていたのか私はまだわからないのだけれども。

 でもまぁ、ニッキーがものすごく怒ってるのは私にだってわかる。

 

「みなみちゃ、ニッキちゃ、達、なんて?」

「……復活液作るのに、さっそくアンタと話させろって言ってるのよ。──無理に決まってるのに」

「ありゃー」

 

 ちょっとプンスコ怒ってる南ちゃんキャワワでは?言わんけど。

 

 要約するとブロディ達は復活液作りのプロだとされている私と話させろと。英語がわからないのならニッキーか南が間に入れば問題ないだろうと。むしろここまで来て会わせられないなら、そんな人物本当はいないんじゃないのかと声を荒げているらしい。ニッキーは強い口調で反論してるけど、やはり何というか、今だに銃を持っている奴らがいる中じゃ他のメンバーが萎縮しちゃってそのデカい声は大変よろしくない。

 人って大きい声にびっくりしちゃうものなんだよね、私にはよく分かる。だってビビリだもの。

 

 多分だけど、ニッキーと南が必死に私のことを相手にバレないようにしてるんだろうな。こんな怪我してますし、病気にしてバレないようにしてって言ったようなものですし。変な手間かけさせてしまって大変申し訳ない。

 でもね、周りに気を遣わせてまで守られるのは違うんだよ。まして私はここにいないはずの人間だし、最悪死んだとしてもしょうがないのだ。死にたくは、ないけれど。多分、きっと。

 

 故に私はマグマに抱えられながらも、撃たれた体の痛みに耐えながらも手を伸ばし、発言したのである。

 

「へい、あいむ、茉莉。ハロー?」

 

 英語なんて知らんがな。

 こちとらろくな勉強してない社会不適合者。前があったとして生粋な日本人が日常会話なんて出来るわけないだろ。挨拶して名前言っときゃ何とかなる。きっとそう。

 

「っアンタね?!」

「何で自分から名乗っちまうんだい!?」

「最適、解」

 

 だってこれ以上みんなに負担かけるのは良くないでしょ。

 にへらと笑ってみれば、困ったようにニッキーは頭をかいた。そして彼女と話していたブロディの視線はコチラに向き、ポカンと口を開けている。その行動を不思議に思っていれば早口に話されて、今度は私がポカンとするだけだ。

 

「な、なんて?」

「──っフ、大事に抱えられてる"子供"に変な役をさせるなって言ってんのよ。まぁアジア系は童顔だもの、そう思われても仕方ないわ」

「……ひどい」

 

 確かにアジア系の顔は子供に見られやすい。ソレに何より私の発育はよろしくなく自他とも認めるつるぺったんだ。だからといって、言っていいことと悪いことはある。

 ブフッと吹き出したマグマを睨んでニッキーに視線を移せば、彼女も彼女で私から目を逸らす始末で。全くもって遺憾である。

 

「……これでも、にじゅ、にだと、伝えて」

 

 そう通訳して貰えば英語が分からない私でも分かるように反応をされた、解せぬ。

 

 しかしまあ、そんなことはさておき。今はやるべきことをやらなきゃいけないだろう。

 千空が私を復活液のプロだと言ってしまったのならば、私の仕事はソレなのだ。身を粉にしてでも働かなければなるまい。もとより復活液を大量生産するためにアメリカに来たのだがら、多分私がいなくとも復活液作りは行われていたはず。なら問題はないと思いたい。

 私が英語を話せない以上ニッキー達に負担をかけてしまうが、そこはどうにもならない問題だ。諦めよう。

 

「復活液は、つくれる。なれてる、から。ただちょっと、時間欲しい」

 

 何せ体が上手く動かないので。

 こんなにも思考はクリアなのに呼吸するだけで痛いのだもの、無理なもんは無理。てかまずはアルコールの量産から始めてくれ。

 

「──なんで時間が欲しいんだって」

「……んー、肋骨、折れてる、から?」

「それ、伝えていいのかい?」

「せんく、追ってったでしょ。たぶん、へーき」

 

 スタンリーさんに庇ったのがバレて最悪人質ルートになってしまえば死ぬしかなかったが、多分今はそんな危険はないと思いたい。むしろ復活液作れる人間を殺すことはないのでは?だって彼らは千空から情報を引き出すために頭でなく体を撃つ判断を一度はしているし。

 それにもし仮に私がここで殺されたとして、千空さんが素直にレシピを言うだろうか?

 いや、いうな。みんなを守るために。けれども蟠りはできるに違いないだろう。少なくとも平和特区でそんなことしてしまえば、従えねぇと暴れ出す奴はいないといえない。血の気の多いマグマとかモズあたりは特に危険。

 千空が何を考えて私の名前を出したか分からないけれど、少なくとも、とても嫌だけども重要人物扱いされてる間は害されないだろう。

 

「あ、ニキちゃん。ついでに、PTSD、発症するかも、銃、怖い、なるべく、隠して、欲しい。て、つたえて」

 

 少なくとも日本は銃社会じゃないから、ソレは見ていたくないんだわ。私じゃなくてもそう。PTSDは発症するか分からないけど、ストレスだらけの世界だもの、銃だけが原因だとは限らないけど理由に使えるなら使った方がいいだろう。

 

「武装は、してて、いい。ただ、銃は、勘弁」

 

 うっかり撃たれた私がいえば少なくとも隠してくれるだろうなと軽い気持ちでお願いしてみたのだが、どうやら言葉を間違ったらしい。

 ニッキーや南の顔が、旧時代人の顔色が悪くなってしまったのだ。銃社会だって認識したくなかっただろうに、私の一言でそんな顔させてしまうのならば後々お願いすればよかった。まぁ、訳してもらうニッキー達にはまた負担をかけてしまうけれど。

 案の定それを訳してくれているニッキーの言葉は辿々しくなってしまうし、ブロディとその他アメリカメンバーはコチラをみてくる瞳が少しながら柔らかくはなった。ま、銃で怪我したのかって聞かれたから、素直に撃たれたと答えたけど嘘ではないし。その方が相手さんにも罪悪感持ってもらえるかなんてずる賢いことは考えていない。

 だってほら、コレは私がバカやった証みたいなもんで。痛いし銃が怖いのは本当だけど、無意識のうちに自ら当たりに行ったようなものなのだ。誰も悪くない。

 

「えー、あー。どんと、うぉーりー! あいむ、ふぁいん」

 

 私のことなんて気にしなくていいよと笑って見せたものの、どうやら違った意味に捉えられてしまったようだ。

 英語って難しい。

 




千空と離れたことで変に原作に関わらなくなった!と思っている茉莉ちゃんですが、割とアメリカにいるだけどガッツリ関わってる事には目を背けてます。気付かないふりに近いけど、知らないわけではない。
割とストレス過多状態で躁的防衛の一種が働いてから内心テンション高めなのかもしれない。
ついでに言えば茉莉ちゃんは杠よりは小さいし、ブカブカの服着てるから筋肉は見えていない。故にスイカがいなけりゃ一番子供っぽい。

アメリカに居残りしてるのでサクサク話が進む予定です。早ければ最終決戦までビュンっと進みます
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