凡人は石世界で推しを推す   作:燈葱

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108 凡人、呪い。

 

 

 

 千空達と別れて一ヶ月半が経てば、自ずと自分の役割が何なのか見えてくる。

 一応メデューサ修理班に組み込まれた私であるが、千空やクロムのような科学技術は持ち得てないし、目覚めたばかりのジョエルみたいな器用さはない。ダイヤモンドが電池として使われていると分かったところで、なぁんにもできる事はなかったのだ。

 新しくダイヤモンドを用意するにあたって科学の力で生み出す事となったわけだが、ここでまたしても私は実験室出禁になってしまうしもうどうしようもない。

 ただ爆発に巻き込まれ、ちょっと痛みで息ができなくなっただけなのにみんな大袈裟なんだよ。誰にだってある危険なのに、どうして私だけ外すの。そんなに役に立たないってか。

 そう卑下しても仕方ないだろう。

 

 ならできる事は何かと考え、私は洗濯や食事の手伝いなどを申し出るしかなかった。英語は分からないが非戦闘員だった子達は主にそこで仕事をしているし、帝国時代の顔見知りばかりだったから問題はない。ただ問題があるといえば、彼女達は私よりもアメリカ側の人間を恐れているという事。そりゃ銃社会でなかった日本生まれなのに、それを持った人間がいりゃストレスは溜まるわな。よくわかる。むしろ分かりすぎる。

 そう思ってメンタリストになれなくとも気持ちを軽くするくらいはできるだろうと積極的に話を聞き、どうしてもダメそうな時は私からブロディ達へと伝える役にも徹した。怖いからもうちょい離れてくれない?もしくは斧とか剣とかにしてくれないかなと。ま、英語を話せない私の身振り手振りで言葉を察しなきゃいけないブロディ達からすればいい迷惑だったかもしれないけど、ニュアンスで伝わったからよしとする。見た目からひ弱なタイプが集まってたからね、そんな重装備じゃなくともいいかってなったらしい。ありがたや。

 私も私で彼らが怖くはあったが、まぁ、多分死なないから大丈夫かななんて。優先されるのはこの世界の住人のみなさまですと諦めの境地にいるのもまた事実で。みんなの役に立てればいいやと頑張った所存です。

 

 時折りトンツーと耳元で鳴る千空からの指示に耳を傾けつつ、ついでに定期的に流れてくるセンクウポイドで時間を把握して、私は日々できることを淡々とこなす。

 最近はパン作りと保存食作りを褒められてほぼ調理場にいることのが多い私であるが、呼ばれれば当たり前のように裁縫をチクチクとこなしもした。

 なんでニッキーちゃんの服がこんなに焦げてるのかとか考えたり、マグマの服がアルコール臭いのかなとか考えたり。たまにこれもできるかと彼方さんからお願いされたお針子仕事や、狩りの時にできただろう染み抜きをしたりと大忙しだ。だがしかし、じゃんじゃん仕事を持ってくるブロディ達にはいつか文句を言ってやりたい。千空は手が荒れたらクリームを作ってくれたんだぞ、なんて言ったところで作ってやくれないだろうけど。平和特区なんだからそれくらいご褒美をくれてやれ。私じゃなきゃストライキ起こしてるぞ。

 

 まぁ、そんなふうに気持ち的にすごく楽に生きてはいるけれど、なんか違うって思ってしまう私もいる。

 そんな時は所詮いらない人間ですし、雑用いっぱいこなしてみんなの負担が減れば万々歳と魔法の呪文を唱えるのだ。

 少し寂しくはあるけれど、今の状態が正しい事だと認識できるおまじないの大活躍である。

 

 今の今までみんなに関わりませんって行動してたくせに、その輪から外されると寂しくなるのは私の我儘だってわかっているし。怪我に気を遣っているみんなに仲間に入れてなんて言えるわけもなく。

 それでもって積極的に関わる事も怖い私もいて、なにをどうしたらいいのかよく分からなくなってきた。

 助けてせんえもんと、イヤリングを撫でたところで答えは返ってくるわけもないのにね。

 

 どうも千空を庇ってしまった辺りから思考がおかしい。どう考えてもおかしい。

 だって前の私だったら関わらないで済むいやっほー!って両手をあげて小躍りしてるに違いないのに。役に立ちたいと思うのはおかしな事なのだ、きっと撃たれた時に頭を打ったに違いない。むしろそのまま前の記憶なんて消えちまえばよかったのに、都合の悪いところは脳に焼き付いているらしい。チクセウ。

 

 それに何より、千空がここにいないしさ。

 

 目の前で生きていてくれれば安心できていたものの、それが分からない状況だから、なんかこう、モゾモゾするというか。

 ルーナとフランソワをちゃんと送り出したから大丈夫なはずだし、連絡は来るのだから何も起こっていないと信じたい。でも、通信だけじゃ伝えきれないこともあるだろうしと考え始めたらキリがない。

 千空は大丈夫。まるっと世界を、人類を救うのだと頭では分かっているのだけども、どうも感情がついていかない。これがみんなが今まで感じていた不安なんだろうなと思いつつ、今までどうやって信じきっていたのだっけとありし日の私に何度も問い掛けた。

 

「茉莉!俺たちは少しダイヤを探しにいってくる!何かあったらちゃんとニッキーに声をかけるんだぞ!」

「りょーかーい」

 

 銀狼がいないせいもあって私に対して兄風を吹かせ始めた金狼と、マグマを加えた数名がダイヤモンドを探しに出かけた。クロムがいない今なら探索隊に入れてくれるかもなんて淡い期待もあったが、そんな私の都合よく物事は転がる事はないので大人しくそれを見送って。相変わらずこなれた仕事を淡々とこなして陽が沈むの眺めてご飯を食べる。量は食べられないし飲みこめないけれど、これ以上みんなに心配させるのは如何なものかと食事は毎回必死に咀嚼し飲み込んだ。

 

 夜がくれば決められた時間に、決められた部屋でベッドで横になってまた朝日が登るのを只々待つ。悲しいことに睡眠障害さんは未だ健在だ。前よりずっと不安なんてないはずなのに、目を閉じても眠気は来ない。たまに気絶するかのように意識が落ちることもあったが、自分の意思で寝ようとしても寝れない夜が続いた。そういえば最低でも三時間は寝ろと千空に怒られた時もあったが、寝れないもんはしょうがないもんね。

 完全個室というわけじゃないせいで音も立てられないし、朝までの時間が長く感じる。

 そんな時は基地内を散歩することもあるが、ブロディ達には見つかるとそれはそれは大層怒られた。別に基地の秘密知りたいわけじゃないんだけど、余所者がふらつくのはよろしく思われないらしい。したがってバレたら速攻で部屋に戻ってベッドで丸くなるのももはや日常だった。

 

 前まで寝れなかった時はどうしてたんだっけと考えて、思い出すのは千空の姿。寝れない時は千空が近くにいたななんて思い出して、その時話してもらった下らない話を思い出して目を閉じる。そうすれば千空が今でもそこにいる気がして、ほんの僅かだが呼吸がしやすく感じた。

 なんというか、私は面倒なまでに千空に依存してたみたいだ。次会ったら依存しないように気をつけなければ。日本に帰れば一人で生きていけるし、今がいい機会だと、また独寝に慣れておかなくちゃなるまい。

 

 そんなことを考えていれば徐々に室内は明るくなってきて、また朝が始まる。

 誰も起きてない部屋を抜け出して顔を洗い、鏡の中の私に大丈夫だ、問題ないと言い聞かせた。

 

 いつものように変わりなく、みんなの役に立てる私であるようにと。

 

 

 




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