そしてリハビリ投稿!
仮眠などあまり取らずに石神村まで走って約二日。きっと村に帰ってきた私の顔は酷いものだったのだと思う。
村に来て早々会ったあるみには心配され、その他の住人にも二度見されては珍しく声をかけられた。その度に皆は誰も死んでいないのでしょうと私に問いかけ、私はいつも通りに笑って頷き応える。
確かに戦いで誰も死ななかった。
死ぬとしたら、それはこの先。
千空が殺す。
私が知っている紙上の世界のように、皆を助けたその手で頭脳で、千空が司を殺す。
例えそれが彼を助ける為だとしても、その決断を思い返さない日はないだろう。
そう考えれば考えるほど、あの時の自分の行動が正しいものだったのかと悪循環な悩みが途絶えることはない。
そうするしかなかった。それが正しい行動だ。それが正史だと。
私がいない世界ではそうなる事が当たり前だったのだ、下手に動いた方が世界を壊してしまうかもしれないのだからと。
嗚呼それでも、千空にわざわざその選択をさせる必要があったのか?
全人類を救いたいと願ってやまない彼に、他の選択を与えられた可能性は?
もしも、もしも、もしも、もしも……。
私に抜きん出た才能があったのならば、知識があったのならば、記憶があったのならば。それらを使って何かを成し遂げられたかもしれない。
こんな記憶さえなければ自由に動いて生きて、彼の隣で生きられたかもしれない。
たらればの未来、願望だらけの世界。
わたしは、どうして……。
「……無力、なんだろ」
いてもいなくても良い存在。
元々なかった存在。あるべきではない存在。
無意味で役に立たない木偶の坊。
何度も何度もそんな考えが頭をよぎり、消そうとしても消えてくれやしない。
きっとこれは私が生涯抱えていくしかない事柄なのだ。
誰にも伝えず漏らさずに、馬鹿みたいに自分勝手な罪悪感を抱いて死んでいく。
実にいいざまだ。
何もできやしない凡人に、何もしようとしない俗人に相応しい最後だ。そうやって死ぬのが私には相応しい。
だというのに。
「茉莉は無力なんかじゃないわ、いつも私たちを助けてくれたじゃない」
「そうだぞ、ワシらにとってお前さんは良き友であり愛すべき家族じゃ」
「あなたのおかげで冬は暖かく、食べるものにも困らなかったわ」
「──それは、千空君が……」
「暖炉を作ろうといったのは茉莉だって千空はいっていたわ。これから、柔らかい食べ物も作ってくるのでしょう?」
「……うん」
「ほら、あなたは無力なんかじゃない。大丈夫、大丈夫よ」
そういって、彼らは私を抱きしめた。
私が相当ひどい顔をしていたのか、それともご老人達の勘の良さか。もしくはその両方か。
何が大丈夫なのかわからないけれども、その温かさに私は息を深く吐き出した。
「じゃあ、私は戻るので。また後で、何か美味しいもの作りに来ますね?」
「ゆっくりしていけばいいのに。そんなに急ぎの用なの?」
「──えぇ、まぁ。これが、私ができる事なので」
サルファ剤とありったけの科学用具を鞄に詰め込んで、私に向かって微笑み手を振るあるみ達へ手を振りかえして帰路に着く。
不思議と帰り道の足取りは軽く思えた。
戻ったところで私の知る世界は変わっていないだろうし、もしかしたら悪くなっているかもしれない。
それでも私にはまだやる事ができてしまった。
過ぎてしまった冬に約束したように、ご老体にも食べやすいものを作らなくてはいけない。
今、私がここにいる理由はその約束を果たすためとしておこう。
大丈夫、私は大丈夫。
大丈夫、まだ大丈夫。
大丈夫、今は大丈夫。
大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、 大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫──。
私はまだ、大丈夫。
思考が壊れたままあの場所から抜け出して、呪いの言葉を唱えながらそこへ戻って。私は一度頬を叩いて笑顔を作る。蝙蝠にもペテン師にもピエロにもなれないが、嘘はつくことはできるのだ。
「大丈夫、大丈夫、大丈夫──」
自分に言い聞かせて息を吐いて。私はいつも通りの声色でコハクへと声をかけた。
「村からサルファ剤とか持ってきたんだけど、千空くんと司くんは無事かな」
「茉莉!全く心配したぞ!いきなり村に帰るなんて──」
「それは悪かったと思ってるけど、有った方が役に立つかなと思って」
「嗚呼、そうだな。……千空と司のところまで案内しよう」
「うん、お願いするよ」
少し視線を下げたコハクはゆっくりとした足取りで私を彼らの元に案内してくれた。やはりというべきか当たり前というべきか、彼らは私の知っていた通りに怪我をしてそこにいて、思わず安堵の息を漏らす。
これは司が生きていたことを安心したものなどではなく、知り得た未来が変わらなかったことへの安堵だ。
全くもって、私はヒトデナシなのだろう。
誰かの生よりも自分の存在意義についてまず考える、クソアマでしかない、
「──作り置きのサルファ剤持ってきたけど、必要かな」
「嗚呼、ないよりマシだな。冷凍庫ができるまでは司には無事でいてもらわねぇといけねぇからな」
「冷凍庫……、ねぇ司くん。科学は役に立っただろ?」
「──あぁ、茉莉。君のいった通り、助かる可能性が、見えたよ」
「うん、だからまた、会おうね」
一年と数ヶ月先もしくは二年近くだろうか。
いつかまた会えると知ってしまっている私は、和かに笑った。
笑うしかなかった。
茉莉ちゃんをペルセウスに乗せるかどうかよっていて、支部の方にアンケを設置しました。が、今のところ地獄ルート(ペルセウスに乗る)が多いので、多分乗せます。更なる地獄へ駆け上れ!