どんなに後悔しようとどんなに苦しもうと時間は流れるもので、あっという間に出来上がってしまった冷凍庫のお陰で司はひと時の眠りにつくこととなった。
今度は私が兄さんを守るからと涙を流す未来を見て見ぬ振りをして、私は今日も今日とて無心で働く。
主な仕事は石像の修復であったがどうやらそれも一旦その他大勢に任せて、私は船作りに駆り出されるようなのだ。
「茉莉ちゃん、船作りたいっていってたのワシ知っとるもん。千空に頼んじゃった」
「なるほど、私は今日から工作チームってわけね?」
まぁそんなこともあるだろうと思っていたし、別に問題はない。
目の前で行われる制作するべき船のアイデア対決を眺めていれば、さも当たり前のように千空のアイデアに皆が心を躍らせ始め、石神村と復活者達の力を合わせてその帆船を作ることと決まった。
私の仕事はカセキの現場補助。石神村の住人だけでなく現代人にも指示を飛ばせと何ともまぁ責任者の立場に近い役割となったわけなのだが、これがまた面倒くさい。
でっかい船を作るのワーイゴイスーなクラフトじゃん!な村人vsそんなの作れるの?え、ジーマーで、の現代人に二分化しないように努めなければならないのだ。
そりゃ私だって普通に考えたらそんなん作れる?と思うが、発案者は千空さんだぞ?秒で納得したわ。だが他の復活組がそう簡単に納得して作り出すとも考えきれず……。
しかしまぁ、ありがたい事に復活組の中でも先の戦いで見ていたダイナマイトやら冷凍庫、戦車のおかげもあってかなんかできるんじゃね?とも考えてくれる人が多数いて、何となくだがまとまってはいるからほんの僅かなサポートで済みそうだ。
マジで復活組の理解力高くて助かります。
だがしかし、まとまってはいるのだけれども、人によっては若干の温度差は感じるのが現状でもあろうか。
私も少しは思っていたよ漫画読んでて。よく全員が作ろうと思ったねって。頑張って作ったねって。
故に、早くお金という文化で作業員のやる気をより一層高めたい次第です。
「カセキ!茉莉!俺たち一旦船長を探しに出掛けてくる!ここは頼んだぞ」
「はーい、いってらっしゃーい」
「いってらー」
せっせこせっせこ働いて、私はもうすぐここにくるであろう人物を思い浮かべる。
確か名前は龍水だったはず。割と凄腕の船長。この世界は何でもかんでも凄腕の人間が多いから、もう早くモブに徹したい。切実に。
マ、当分無理そうだけど。
今のところ世界に綻びはあまりなさそうだから、順調にいけば船作り完了後に宝島。そしてその後に司復活のアメリカへ。
船に乗るか乗らないかは自分で決められた筈だし、もし選ばれても拒否することも可能だったはずだ。
拒否すれば私は日本に残ってようやくのモブルート確定と行くのだろう。
今までなんやかんやで千空達と接してしまっていたが、ここが正念場だ。
頑張ってやり切って、少しの寂しさを耐えれば私はまた一人に戻れる。その他大勢に分類される。
これ以上の罪悪感を抱くこともなく、また誰かを見捨てることもせずに、可もなく不可もない人生をおくれることになるだろう。
だから今だけは精一杯彼らのために働くとしよう。
だから、寂しいだなんて気のせいだ。気のせいでしかない。
ブンブンと頭を振って邪心を払い、私は決意する。
忙しなく働こう。こんな気持ちなど抱かないように無心にただ今を生きる事だけに集中して、それこそ過剰なほどに働いて。夢を見る暇などないくらいに働こう。
それが今の私にできる精一杯に違いないのだから。
「やるな貴様ら、欲しいぜこれは…‼︎」
「オホホ、ワクワクしちゃうでしょ帆船‼︎」
「この船で行けっか?地球の裏側まで」
龍水が作業場に来たのはそれから一日経った頃だった。
漫画では淡々と進められていたがそりゃ人力で進む船で少し離れた場所に行き、人を発掘してすぐ戻るなんて出来るわけもなく今まさに到着したところである。
私はこれといって関わる気は無いのでカセキに全てを任せてそっと視界からフェードアウトし、あとは千空の指示をイエスマンの如く聞きこの後来るであろうメイストームに備え始めた。
コハクやルリ、その他の作業員にも声をかけ雨風を凌げる簡易テントを設備し、嵐が過ぎ去るのをのんびりと待つつもりだった。
そう、だったのだ。
「邪魔するぞー」
「ひー、流石に冷えるねぇ」
「はっはー!流石に俺たちも風邪を引くわけには行かないからな。──ん、先客がいたのか。悪いな邪魔をする!」
「あー、ハイ、ドウゾ」
折角会わないようにしたのに、何で連れてくるんですか千空さん。お隣にコハクさんがいたでしょ?そちらに行ってくれません?
あ、クロムはルリのところに行ったんですね?
私、クロルリ見たいのでお暇をいただいても?
「龍水、コイツ茉莉な。カセキの一番弟子で帆船作りのサブリーダーだ」
「何⁉︎ ……その細腕で船が作れるのか?いや、意外と筋肉はあるようにはみえるな」
「茉莉ちゃんはぱっと見細いけど割と力はあんのよ?それにカセキちゃんを除いたメンバー中じゃ一番物作りに特化してるよね、ね?」
「うーん、趣味の延長線みたいな感じだと思っていただいても?」
にっこりとゲンは笑っていうけれど、私はそんなんじゃ無い。
確かに物作りは趣味の一環ではあるけれどそれに特化しているわけでは無いし、そっち関係の復活者がいないからそう見えるだけ。
だから変な事を教え込まないでいただきたい。
和かな笑みを保っているが、私の心臓はバクバクと脈打っていた。
こんな狭いテントに五知将の内の三人がいるのだ。下手に口を開きたくは無い。千空やゲンと話すとボロが出る率が高いから、何も聞かないで欲しいし話さないで欲しい。
しかしそれは無理な話だったのだけれども。
無理な話だったのだけれども。
「ねぇねぇ茉莉ちゃん。千空ちゃん達が今度何を探そうとしてるか教えてあげよっか?」
「えー、いいや、どうせ石油だから」
「へ?」
「は」
「──よくわかってんじゃねぇか」
「…………マ、千空君ならそう考えるかなってオモッテ」
メーデーメーデー。
急募。思考が声に出ない方法を求む。
誰か私のお口を縫い付けて。
千空パイセン前にしたら私のHPはゼロよ!
タッケテ!