「茉莉ー!船を動かすためにスイカ達と一緒にお金を稼ぐんだよ!」
「はぇ?お金?私が?」
「そうなんだよ! スイカと未来と茉莉で食べ物を売るんだよ!」
「よろしくお願いします!」
キラキラとした目を向けてくる未来とスイカに、私はなぜこうなったと頭を働かせる。
そういえば石油のためにに通貨を生み出し、それに伴っての商売も始まっていたような。だからと言って私が売るものなんて、と考えてみると思い当たるのが一つや二つ、三つ四つ。
まあ、売るとするならばアレしか無いか。
そうと決まれば早速行動あるのみ。
可愛い可愛いスイカと未来ちゃんのためならば、私はさらなる労働を受け入れる所存です。
用意するものは砂糖と重曹。あとはお玉と火、ただこれだけ。
スイカのラーメンや未来のわたあめよか簡単なカルメ焼き様の材料で、作り方は溶かして混ぜて冷やすだけの品だ。
値段は同じ甘味であるわたあめに合わせて100ドラゴ。別にガッツリ稼ぐ気は無いから、これくらいがちょうどいい。
「茉莉ならベーコンや鮭とばも売れるんだよ?」
「あれはみんなの食糧だからね、売らないよ。たまに食べる贅沢品だし」
ベーコンに至っては猪を狩った別の誰かがいてできたわけだし、私一人の力で作ったわけでは無い。むしろあれは村で食べて欲しいから売る気はないのだ。
「兄さん助けるためやもん!できることからなんでもお手伝いせんと!」
「女の子のお手伝い仲間ができて嬉しいんだよ!一緒にお役に立つんだよ……!」
世が世がなら私ははわわっと口元を抑えて悶えて苦しんでいただろう。
こんな健気な子達を見てはわわしない大人がいるぅ?いねぇよな!
私はカルメ焼きを売り捌きながら小さな子達の戯れを盗み見しては頬に力を入れ、チマチマとお金を稼ぐことに勤しんだ。
この後に船の手伝いと石像パズルの仕事も有るけれどこれはこれ、それはそれ。仕事はいくらでもあるけれど睡眠時間を減らせば問題ない。
否、元からろくに寝てないのだからモーマンタイというやつだろう。
塵も積もれば山となる精神で貯めていったドラゴは数日で大金となり、スイカも未来もニコニコとした顔で喜んでいる。このまま順調に行けば石油を大量に買えると意気込んでいるお二人さんには大変申し訳ないのだが、そううまくいかないのもまた人生ってやつなのだ。
「ねぇねぇ茉莉ちゃん知ってる〜?今ね、ドラゴが大ピンチでバイヤーなのよ。この先石油が見つからなかったそのドラゴ、みーんなカミクズになっちゃうわけ」
「ほうほう、ならそれをあの子らにも伝えたら?私は別に紙屑でも構わない人間なので?」
「え〜、流石の俺もスイカちゃん達には言いづらいというかなんというか」
「言いづらいのは私も一緒なんだけどね。まぁ、無駄な努力にならないようにしてみるよ」
流石のゲンも金に振り回される大人達にならまだしも、精神的にも肉体的にもお子様であり、健気にお手伝いをするのだと張り切っていた二人にそんな事を言えるはずもなくこちらに頼ってきたのだろう。ゲンならば上手い具合に説明できるとも思うが、一緒に働いていた私から伝えろという圧力を感じなくもない。
もしかしたら圧なんかかけられていないのだけれど、そう感じるのは私の物事を悪く考える癖が出ているからだろうか?
しかしまぁそんなことは一旦隅に置いといて、私が今しなきゃいけないのはスイカと未来にドラゴの価値が下がっていると伝える事だ。
「手っ取り早く伝えるとね、石油が見つからないと今まで貯めたドラゴはお金として役に立たなくて、海にも出られないってなってるのが今の状態で。そうならない為に私達はまた新たなお手伝いをしなきゃいけなくなりました」
「え、折角集めたのにドラゴ使えないん?」
「他のお手伝いってなんなんだよ?」
「それを今から千空君達のところに聞きに行こうか。大丈夫、なるようになるから」
説明にも説得にもなってないだろうけれど私は悲しそうな顔をした二人の手を引き、千空達の元へと向かった。
そしてそこにはすでにカセキや杠が待機しており、千空は高らかに空を飛ぶと発言したのである。
「ムハハハ、笑わせるぜ!千空いくらテメーでも人間が空を飛べるわけ──」
「いや笑わねーよ。俺らも分かんねーし。こんななんにもねぇとっからどーやって飛ぶのかはよ!」
マグマは大声で人が飛べるわけがないと笑い、陽もまた唖然としながら飛ぶ方法がわからないと頭を悩ませている。
復活組でさえそうなのだ、そう簡単に空を飛ぼうという発想が出てくるはずはない。
スイカは鳥みたいに飛べたらすごいんだよと口にし、それを聞いた千空はニヤリと笑っていつも通りのロードマップを広げた。
今までのクラフトの中より道なりが長そうだとがぜんやる気を出すカセキとは裏腹に、広げられたロードマップに記載されている事柄は僅か三つ。
麻糸、布、気球。
それだけだった。
「ククク、気球様のお手軽っぷりは半端じゃねぇぞ。飛行キット一式、畳んで車にでもぶち込めっからな」
「空飛ぶってそんな気軽な話だったんだ……」
「まぁ、飛ぶだけならパラグライダーってテもあるけど、それじゃあ地形は見られないから、そうなるねぇ」
「──相変わらず茉莉ちゃんは驚かないのね、うん、茉莉ちゃんだものねそうだよね」
半ば呆れた顔でゲンに見られた気もするが、あの千空様だぞ?なんでも作り出すに決まってるじゃない。この世界と私の神=千空さんが作れると言うのならば作れるし作るんだよ!
「しかしまぁ唯一にして最大のハードルは……」
「はい、たっっっっっっっっっくさんの布、でしょ?」
「1ミリも気づかなかったわ!こんなところに偶然にも手芸部と超絶オールラウンダーが二人もいんじゃねぇか‼︎ ──科学チームは搭乗部の設計に籠る。布作りは丸々任せて問題ねぇか?杠手工芸チームによ……!」
「もちろんです‼︎」
「もしかしなくてもオールラウンダーって私のこと言ってる?私は出来ることをするだけなのだけども」
まぁ、いいか。任されたらやるだけだもの。
「茉莉に至っては他の作業と掛け持ちになっちまうが、平気か?」
「問題ないよ、やれる事をするだけだから」
ほんの少し眉を下げて頼んでくる千空の顔を心の中で拝みつつ、私は頼られた嬉しさを胸に刻み込む。
布作りの指揮を取るのは主に杠だし、私はまたもやそのサポートや作業チームの一員として働けばいい。
よくよく思い出してみればオバ様方の会で簡易織機を教えてもらっていた気もする。あの時は布まで自分で作ることはないと思い込んでいたが、今となって考えてみればその考えは甘かったようだ。
何事も経験と教えてくれたオバ様方が復活した暁には菓子折りを持参してまた教えを乞おう。
「えっと、じゃあ私は今後布作りを手伝ってドラゴが紙屑にならないように働くから、スイカちゃん達はこのままドラゴ集めってことでもいいかな?」
「私たちも布作らなくていいの?」
「スイカもお手伝いするんだよ!」
「みんなでお手伝いするのはいいことだけど、ラーメンとわたあめを楽しみにしてる人もいると思うんだ。だから二人の本職はそっち。たまーにこっちにお手伝いに来てよ、ね」
納得しきれないで唸っている二人の頭を軽く撫で、私はお願いと頭を下げた。
現にラーメンやわたあめは一部の人にとって娯楽となりつつある。だと言うのにそれを取り上げるのはいかがなものだろうか。
それに何より二人はまだ子供なのだ、子供らしく生きていて欲しい。
千空や他のメンバーだって進んで子供を働かせたいとは思わないだろう。
だから、お手伝いくらいでいい。
それ以上は大人の領分である。