凡人は石世界で推しを推す   作:燈葱

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50 凡人、約束事?

 

 

 

 

 あ、ありのままに今起こったことを話すぜ!

 

 うっかり石像パズルをしていたら千空が現れて、いつのまにか私は寝てしまっていた。

 何を言ってるか分からないと思うが、私も何をされたのかいまだにわからない。

 何で私は推しのお膝の上で寝てたんですか?

 何で私は神に髪を撫でられてるんですか?

 頭がどうにかなりそうなんですが、どうしたいんですか?

 神から薬品の匂いがするんですがそれがまた良いといいますか、これは何のご褒美なのか問い掛けたい。

 

 もしかしてこれは夢か?夢なのか?

 私、何気に頑張ってるもの夢だよね?天国じゃん。楽園じゃん。エデンじゃん!

 

「──おい、テメェ起きてんな?」

「……ウッス」

 

 あ、現実(地獄)でしたか。

 

 むくりと身体を起こし頬を叩く。

 なかなか良い音と立てた頬に感じる痛みでより今が現実(地獄)だと再認識した。

 

「あー、その、ご迷惑をおかけして?」

「まったくな。テメェは過剰労働っつー言葉をしらねぇのか?気絶するまで働くんじゃねぇよ」

「んー、でも体を追い込むくらい働いた方が寝付きがいいといいますか……」

「だからそれが気絶だってつってんだ。これ以上働くならテメェは俺の監視下におく」

「──ゴメンナサイ」

 

 これ以上千空のそばにいろと?

 無理だ脳が死ぬ。思考が死ぬ。いらん事話しちゃう。

 私は千空にこれ以上多くは働きませんと宣言し、監視下からは逃れられることができた。がしかし、それには条件があったのはいうまでもないだろう。

 

 一つ、労働は一日八時間程度まで。周りと合わせた時間のみの仕事をすること。

 二つ、他者への指導も仕事の一つとし、仕事じゃないからと屁理屈を述べないこと。

 三つ、睡眠時間はとること。たとえ寝られなくても横になるように。

 四つ、それらが守れない場合、または守れていないと密告があった場合は千空の管理下に入ること。

 

 なかなか手厳しいお約束である。私なんか監視下においても碌な事ないと思うのですが?

 

 朝ごはんの準備はもちろん仕事だし、狩りや捌き方を教えることも指導に分類されてしまうらしく休息時間を多く取れとも怒られてしまうし全くもってよろしくない。

 一応千空だって八時間以上働いてるのではとツッコミを入れてみたが、俺は寝られてるから問題ないと返されてしまいこれ以上反抗はできやしなかった。

 

「……茉莉、テメェ自分では気付いてねぇかも知れねぇけど、クマ、ひでぇぞ」

「──そんなにかぁ」

 

 目立ってたんなら、気にされても仕方ないか。

 

「とりあえず当分はスイカと未来と行動してもらう。あの二人ができる仕事しかするな、いいな」

「……みんな働いてるのに?」

「子供もマンパワーの一部だ、そこにテメェが混ざったって不思議じゃねぇんだよ。むしろこれを機に子供らに文字でも教えとけ」

「──そーきたかぁ」

 

 誰が教えてたからわからないけど、銀狼が覚えておけばよかった的なこと言ってたようななかったような?

 それくらいならまぁ、介入しても大丈夫だろうか。どうせ誰かが教えるのだ、それが少し早くなるだけだろう。

 

 

 私は千空の提案に頷き、その日からスイカ達とドラゴを集めるのが仕事となった。そして彼女らに文字を教えながら時折杠の仕事を手伝い、何もしない時間が増えてしまっていく。

 何もしないということは考えてしまう時間ができてしまうわけで、私の頭はまたモヤモヤと嫌なことばかりが渦巻いてしまうのだ。自分の存在意義だとか命の使い方だとか、考えなくて良いことまで。

 頭を振って考えを取り払っても、沸々と湧いて出てきてしまう。

 こんなことならばいっそ監視下に置かれてでも仕事をするべきだったのかもしれない。

 

 

「茉莉ー、今日は杠のとこにお手伝いなんだよー!」

「布縫い合わせるんやってー!」

「うーん、わかった。行こうか」

 

 声がかかれば気球に使う布を縫いに行って、杠製の服を着せられたり。

 

「茉莉、今日は僕とニッキーも教師役するよ。僕は算数担当」

「私は音楽担当らしくてね」

「ほほーん、それはお有難い。みんなー、センセイが増えたよー」

 

 子供ら(たまに村の大人が混じっていることもある)に知識を広げていったり。

 毎日がのんびりのほほんとしてて、こんな風に生きてて良いのかなだなんて考えてしまう。

 

 本当はわかってるんだよ考えなきゃ良いだけだって。でもそれができない私はほんと馬鹿な人間だって話で。

 

「茉莉!気球できたんだよ!見にいくんだよ!」

「うん、じゃあ行こうか」

 

 純粋にこの世界を生きていけるのはいつになるのだろう。

 

 小さなスイカの手を繋ぎ、柔らかい未来と手を繋いでみんなが集まる場所へと向かう。

 そこにはすでに大半の人が集まっていて、ゲンの手元からカードを引いている。

 私たちは手招きされるままに側により、順番を待った。

 

「はっはー!当たりのジョーカーは俺のものだ‼︎……???」

 

 横目で当たりを引けなかった龍水を眺めながら私はカードを引き、そしてそのままゲンにそれを返す。

 当たり前のように外れたソレを持っている理由はないし、当たるべき人は他にいるのだから。

 

「あっれ〜引いちゃったよ〜、ジョーカー‼︎ まさかビックリ!俺に当たっちゃうとか困ったなぁ〜」

「あ"ー、何だいらねぇのか?二度と手に入らねぇ超プラチナチケットだぞ。新世界で人類初の飛行者だ!」

「だよねー、だけど気球ってちょっぴり怖いなぁ〜」

「はっはー!なら俺が代わってやっても良いぞ」

 

 予定調和の如く行われたソレはゲンの得意分野で、龍水がドラゴを支払う形でチケットを手に入れた。

 少し羨ましそうにそのやりとりを見ていたスイカと未来に後で乗せて貰えば良いよと声をかけ、私は最後の一人の登場を待つ。

 

「おぅ、俺も引くぜ!その空飛びマシンに乗れるくじ引き!気合い一発で当たり引いてやっからよ……!」

 

 最後の一人はもちろんクロムだ。

 知りたいという気持ちはもう抑えられるわけもなく、聞いていただけの世界をその目に映したい。

 そんな彼だからこそ気球に乗るべきで、世界を知るべきなのだ。

 

 無論、それをゲンは理解している。

 故にジョーカーのカードをクロムに引かせた。

 

「しゃぁぁぁぁあああ‼︎」

 

 

「優しいね、ゲン君は」

「さぁ?何のこと」

 

 

 ニヤリと笑うゲンに笑い返し、私もまた気球が空を飛ぶのを心待ちにしていたのである。

 

 

 

 

 

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