なんやかんやで終わった五知将会議後、レーダーを作り上げた千空達はそのまま海へ繰り出した。
私やコハクはそれを見送り、ひとまずその他のやらなければならない仕事に取り掛かろうとする。けれどもそれを止める声が上がった。
「コハクちゃん、茉莉ちゃん。ちょっとえぇ?」
「ん、なんだ未来。どうかしたのか?」
「んとなぁ、これって食べられたりせんの?昔見たことある気ぃすんねん」
そういった未来の手には乾いた草、もとい豆。
そうそれは、長年私が探し求めていたものであった。
「み、未来ちゃん⁉︎それどこで見かけたの⁉︎」
思わず声を荒げる私に未来は驚き、そのままそれが沢山あったという場所に案内してくれた。
灯台下暗しとも言えた場所にあったそれは、私にとってもその他旧人類にも求めてやまないものであるといえるもので。それの群生地を見つけた時には思わずガッツポーズをしてしまった。
「未来ちゃん、マジでお手柄!百億点!」
「そーなん!これ、やっぱり豆で合ってるん?」
「あってるあってる!あ、でも、この後のことを考えると──」
誰にも言わないでもらってもいい?
私は彼女にそう頼み込んだ。
一緒に来ていたコハクはその願いを不思議に思い首を傾げ、私はただ確証はないからだと苦笑いをした。
「見た感じツルマメよりは実が大きいけど、大豆より小さい気がするんだよね。品種も交配して変わってる気もするし、それに毒性がない、とも言い切れないからパッチテストもして。そっからじゃないと作れないし、私もこればっかりは確実に作れるとは言い切れないからなぁ」
実際、田舎のおば様方に教わって作った時はただ腐らせてしまったこともあるし確実に出来るという保証はない。
未来が見つけたことを考えれば、千空はすでに見つけていたけど工程云々を考えて作らなかった可能性もなくはなく、その前にまず一般的に必要な麹菌ないわけで。
うん、期待させるだけさせて失敗した時の反応が怖い。
「うまくいったら美味しいものが作れるんだけどね、こればっかりは……。それに忙しい千空君に手伝ってもらうのも悪いし、ホワイマンとかも出てきて手一杯でしょ?」
「──なるほど、茉莉でも難しいものを作ろうとしているのだな。ならばひとまず黙っておくとしよう。それでも良いか、未来?」
「私は全然平気やで!茉莉ちゃん、私にも何かできることある?」
「んー、収穫もそろそろできるっぽいし、お手伝いお願いしていい?」
「任せてや!」
にっこり笑って胸を張る未来の頭を撫でて、私は覚悟を決めた。
この時代に味噌を作ってやる、と。
しかし流石に種麹の作り方は学んでないんだなぁ、これが。
だが麹菌なしでも作れる味噌はある。お隣の国でよく作られていたテンジャンとかね、長いと半年くらい作るのにかかるけどそこはまぁ割合。
知ってよかった雑学。
教えてもらっててよかった味噌玉。
見つけて復活していただいた暁にはマジで土下座して感謝しよ、オバ様方に。
私はそう決意するや否や大量の魚を持ち帰ってきた千空の元へ向かい、以前作ったツリーハウスの使用許可をもらう。何をするんだと探りを入れられたが、ちょっとしたクラフトをと言葉を濁らせた。
「まぁ、テメェが無駄なことしねぇってのはわぁってる。彼処作ったのもテメェだし、好きに使ってもかまわねぇよ。だがな茉莉、仕事のしすぎと徹夜は──」
「しないしない。絶対しないとは約束できないけど、無茶はしない、と思う」
「そこは無茶しねぇって言えよ」
できない約束はしない主義なので、とりあえず笑って誤魔化しておく。
「最短でも年の暮れか年明けにしか戻らないかもだけど、じゃあ!」
「あ"⁉︎ テメェちょっと待て──」
千空の静止の声を聞かずに私はウキウキと歩き出す。
そう言えば近場に椿もあったからギリギリ油も入手できるのではと更なる計画を立て、より一層食卓の彩りを豊かにしようと決意した。
それからというもの私は椿の種を集めたり必要になる土器や藁を製作したりと、少しばかり周りとは違う仕事に勤しんだ。
村の子供達と未来ちゃんはよく私の手伝いをしてくれて、豆の収穫と同時進行で椿油を手に入れることに成功。
椿油で天ぷらすると美味しいんだよねとザリガニを獲ってからの泥抜き、最終的には天麩羅にしてお仕事を頑張った子供らに提供した。
その後はそれをフランソワに売りドラゴを稼ぎ、使う気もないお金故にゲンに預けておく。是非ともガソリン代の足しにしてほしい。
そうこうしているうちに豆の収穫も終え、そこから私の頑張りが重要となるわけで。
子供達をカルメ焼きで買収し手伝ってもらい、多分大豆の親戚にあたる豆の下準備を開始する。
水を吸わせて厳選して、蒸して潰して。
丸めて藁で吊るし乾かすこと最短四日、長くて六ヶ月。
何度か様子を伺いにきたコハクには匂いが酷いと言われたが、これはしょうがない事なので諦めてもらうしかない。
「それで、そっちは今どんな感じなの?」
「うむ、クロムが鉄鉱石の鉱床を見つけたのは話しただろう?その後トロッコという乗り物ができてな!それがめっぽう楽しい!」
「ほほぅ、トロッコねぇ」
「陸路はアスファルトで固められて移動が楽になったぞ!──だだ、なぁ」
「ん?何か問題でも?」
「帆船作りが、うまくいっていないのだ」
「あ、あー、なるほどね」
確かそんなことがあったような気もしなくはない。
けど船は完成した記憶があるし、どうにかなったに違いない。
「ま、心配しなくても大丈夫でしょ。何せ千空君だけじゃなくて船のプロもいるし」
「そう、なのか?」
「そういうもんだよ。諦めたら試合終了ですよってやつ」
「う、うむ?なんだかよくわからんが、茉莉がそういうのならばそうなのだろうな」
私がいうから大丈夫なのではなく、もとより私がいない世界では作れたのだから作れないわけがない。
最初こそ手伝いたいと思っていた船制作であったが、へんに手伝い龍水の模型船作りの邪魔になってしまったら困る。私程度の知識が役に立つと思っていたわけではないが、ここは千空と龍水に任せるのが最善なのだ。
「──そうそうコハクちゃん、私、そろそろ一回そっちに戻るわ」
「なに?ということは、ソレが完成したということか?むしろそれはこの匂いからして成功しているのか?」
「まぁ、匂いはひとまず置いといて。失敗しちゃったのもあるから量はまだ少ないし加工途中なのもあるけど、一応完成体とはいえるよ。……間に合わなかったのは悔しいけど」
「うん?」
「とりあえず、一旦そっちに帰るってフランソワさんに伝えてもらっても?」
「千空ではなく?」
「そう、千空君ではなくフランソワさんに」
ひとまず出来上がった瓶は二つ。
本当ならば年明けに間に合わせたかったのだけど一度目のものは失敗して、次に手を加えたものは辛うじて完成。
若干味が薄い気がするが、まぁ、ツルマメとの配合種だと思えば仕方がないことだろう。
「で、何を作ったのだ?」
「あー、所謂調味料。味噌擬きと醤油擬きだよ」
主にお隣の国発祥のやつ。
本当に知っててよかった雑学。教えててもらって感謝しかない。
茉莉ちゃんが作った味噌擬き→テンジャン+味噌玉の合わせ技。そこから醤油擬きも制作可能。
ご家庭でも作ろうと思えば作れるらしいよ!