凡人は石世界で推しを推す   作:燈葱

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75 凡人、法は犯さず。

 

 

 

 モズが一応仲間になったという事は、あと数日のうちに全ての決着はつくのだろう。

 杠印のフードマントは完成しているし、今夜にでもモズは侵入者のフリをした闇討ちを決行する。

 私が覚えている限りじゃこの後割とすぐに島諸共石化装置が発動されてしまう訳だし、身動きの取れない、否、ここに待機命令が出ている私もニ度目の石化を迎える事となるはず。

 まだそうとは断言は出来ないが、もしもの時用にと新たなインカムが千空パイセンから預けられてしまった以上、私は確実に非戦闘員で決定。どう足掻いても石化は決定事項です。

 

 そりゃあ走って逃げることのできない私なんかが対決の場に行ったところで役たたずにしかならないのだ。ここは大人しく復活液を量産してるのが一番役に立つのだろう。

 

「っても、あと7、8本が限度かなぁ」

「──何がだ?」

「復活液。ラボカーにあるアルコールがそろそろつきそうなんだよ」

 

 量産といってももうすでに手元にあるアルコールは少なくなっている。配分をミスって3、4本分のアルコールを無駄にしてしまった事もあり、あと十本も復活液を作れない。

 千空にそれについて謝れば、別に失敗はつきものだからと責められることはなかった。

 むしろ責めることよりも良くやってると褒められてしまい、なんだかむず痒くもなる。

 

「イバラのやつをどうにか出来れば、あとはジャンジャン復活液使うからな。作れる人間が増えるに越したこたぁねぇ」

「別に、千空君が作れるんだから良くない?」

「俺が他のモンに手ぇだしてる時は茉莉、オメェが担当すんだよ。その為のトライ&エラーだろ」

「マジでかー」

「大マジだ。それに、何かしてた方が楽なんだろ」

「ん、んー、ソウダネ」

「……吐き出したくなったら、言いに来い。聞いてやる」

「んー」

 

 やっぱり、バレてら。

 流石千空さんですね、既に私の頭がぽんぽこぴーなのを熟知していらっしゃるのですね?

 

 千空の言うとおり、何かしらしてないと嫌なことを思い出してしまって大変よろしくない。泣きそう、にはならないが洞窟の隅に固められて置いてある乗組員の石像が視界に入るだけで、嫌な映像を思い出してしまうのだ。

 大丈夫だと自分に言い聞かせたところでたかが知れてるし、目に映るものは動いている人だけにしておきたい。

 態度を変えた気はなかったが、前々から私の異常行動を見てきた千空だもの。どこかしらにバレてしまう行動があったのだろう。

 それさえ分かれば知られないようにできるのに、私にはそれが分かっていない。

 どこから察してるのと聞いたところで教えてもくれないだろうし、とりあえず目を合わせないようにはしておくとしよう。

 

 

 翌る日を迎えれば、今度はモズ対策用に悪魔の発明品の作成に取り掛かる。

 カセキが淡々と生み出していく部品と、プラチナのおかげで量産される硝酸を使って作られた火薬。

 その二つが合わさることでできてしまうのが──。

 

「老若男女関係ねぇ。人類、つまりホモサピエンスを地球最強生物として君臨させた神と悪魔の発明品」

 

 銃、である。

 

 武器の使い方を決めるのはいつだって人間だ。ダイナマイトだって元々兵器として生み出されたわけではないのだから、使う人によってソレは救いにも破滅にもなってしまうものなのだ。

 使わないに越したことはないが、使わないといけない場面もある。故に取り扱いが一際面倒な代物。

 だからこそ、不殺を心がける羽京は声を荒げた。

 

「こんな状況で綺麗事はやめろって言われるだろうけど、やっぱり僕は出来れば誰も殺したくはないんだ!だからギリギリまで──」

「綺麗ごと?はっはー、それは違うぞ羽京!不殺は綺麗ごとでも倫理でもない。身内を殺されたものの遺恨は永久に消えん!敵すら手に入れる!そのために殺さない‼︎それこそが合理的なのだ……‼︎」

 

 さも当たり前にそんなことがいえてしまうのは、欲しい=正義を掲げている龍水だからこそだろう。

 無論、千空も殺すつもりで作ったわけではない。

 足にでもあたれば後で石化させて治してしまえばいいだけだと言い切りゲン達をドン引きさせているし、大樹も元からそうだぞと疑問にも思ってやいない。

 私がそういうとこあるよねと頷いていれば、スッと向けられた赤い瞳と視線が合わさってしまった。

 

「で、だ。一応念のために聞いとくが、流石にテメェも撃ち方は教わってねぇよな?」

「……じぃちゃん達は教える気満々だったけど、免許は二十歳からだったしねぇ。流石に法は犯せなかったよ?」

「え、なんの話してんだ?二人して」

「こいつの爺様、猟師だかんな。もしかしたら撃てっかと思ったんだが……」

「いくらなんでも未成年に銃を教える人はいませんでしたー。ま、そのほかは色々教わったけどね」

 

 合法か分からないけど狩りの仕方だとか、R指定つきそうな熊の捌き方とか解体の仕方だとかエトセトラ。本当に今、役に立っている知識達は全てそこからである。

 

「フゥン、貴様の知識の源はそこからだったのか。だが、そうなると誰が使う?拳銃は未経験者には至難だぞ?扱える人間など日本に──」

「あ」

 

 皆の声と視線が、一つになった。

 

「ククク、現職のお巡りが拳銃持つってんなら羽京テメェも文句ねぇだろが‼︎」

 

 そうして復活したのは警察官の陽だ。

 陽は出来たてほやほやの銃を嬉しそうに預かり、そしてアマリリスのお色気攻撃に撃沈。かっこいいと顔を赤らめた美女に縋られてしまえば、得意げになるしかあるまい。

 

「ウェェエエイ!俺に任しときゃ問題ねぇーしょ!」

 

 と自慢げに弾を放つこと三発。

 狙ったガラス瓶は割れることはなかったが、頭上からはポトリと毒蛇が落ちた。まさかコイツを狙ってと驚くクロムに、やるじゃねえかと陽を褒める千空。

 

 だがしかし、私と陽は胸の中に秘めたる言葉があったのだ。

 

 普通にビン狙って打ったはずなんだけどね、と。

 

 不安だ。知っているけど、すごく不安だ。

 頼むから私が知っている未来になりますようにと、心の中で私は祈るしかない。

 

「んじゃ次だ。勝つためには四つの装備がいる‼︎それを全部完成さして作戦決行といこうじゃねぇか……‼︎」

 

 まず初めに必要なのは囮のフード。敵の前に出るメンバーを五人として、フードも五人分作成。これは勿論杠が。

 それと同時に陽の銃練習のための騒音をアマリリスが手引きし、いざという時のモズの足止め手段に備える。

 石化装置は投げられたものをドローンで絡め取らなければならない為、そのために必要なパワーチームとして金狼、ニッキー、マグマの三人を復活させた。

 その際に金狼には銀狼はやるべき事をやったと、コハクの機転でギリギリ生きているのだとも伝えられた。

 

「おぉおぉおおし!早速綱引きの特訓だ!パワーチームで……!」

 

 最後は無理矢理石化装置を奪い取るため、力ずくの綱引きをしなければならない。そのために必要なのはただの縄ではなく、軽くて切れない最強のロープが必要となるわけで、それを作るのが科学チームの仕事だった。

 私もその時ばかりは恒例のドイヒー作業に加わり、コマを使ってのロープを作り上げていった。

 

 最終的に必要なドローンもカセキ達の手で無事に出来上がり、操縦者として龍水が選ばれることとなる。幼少期、プロゲーマーとしてトレーニングを受けていた龍水はあっという間に操縦を覚え、皆を驚愕させた。

 

 

 おおよそ一日かけて最終決戦に必要な装備を手にした私たちは、翌る日の早朝、全ての決行を待つだけとなったのである。

 

 

 




余談、番外編のR指定のものは支部にのみ置いてあります。
読みたい方はそちらでお願いします。ハーメルンだと別シリーズを作るようになるので、こちらでの公開予定はありません。
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