宝島で手に入れたもの。
それは勿論百夜が千空に残したプラチナでもあるが、それと同時に新たな仲間も手に入れたのである。
それはここに頭首として残るソユーズを筆頭にアマリリスといった宝島メンバーであったり、数百年前に石化された松風。キリサメといまだ石化中のモズももれなく付いてくる。ついでにいって仕舞えば私は見ていないけれど氷月もちゃんと仲間になったぽいし、それなりに大変だったが良い旅だったと言えるのではないだろうか。
本土へ向かう船の上で泣きながら手を振る乗組員を眺めつつ私も笑って手を振り、こうして数週間過ごした宝島を後にしたのだ。
「さぁ〜て、宝島でプラチナゲットした今となっちゃ復活液ジャブジャブ作れんだ。人もモノも世界中からかき集めて──」
「欲しい‼︎ 造るぞ科学王国で月面ツアー行き豪華客船!美しい宇宙の船をな……!」
いつも通りの調子で龍水は高らかに発言し、それに続くようにさまざまな声が上がる。
クラフトチームからはどんな大きさのどんな船を作るのかと、乗るメンバーは誰になるのかと。
まぁ月に行く時点で最強の科学使いと言われてしまえば千空さんになると思うのだが、一応アメリカにもう一人いるんだよなと私は思ってみたり。
最後まで知らないから故に、誰が行くのかはわからないが。でも月に行くのはきっと、既に決定事項であるのだろう。
「実働部隊として、動ける人員が欲しい。月で戦闘は考えたくないシナリオだけど、ホワイマンがどんな存在か分からないんだ」
「ムハハハ!とにかく一番強ぇ奴ってことだな!わかりやすいじゃねぇか、どう決める?また御前試合か⁉︎」
「んなもん楽しい天下一武闘会開くまでもねぇ。最強ならとっくにいんだろが」
「眠りの森の美女的な人がいるねぇ」
見た目だけなら!美女で通ると思うんだよね!司は!
「あぁそうだったな!俺たちには──!」
「ククク、俺ら科学王国は宝島でこのDr.stoneをゲットした‼︎コールドスリープから叩き起こすぞ!霊長類最強の高校生、獅子王司をな……!」
今更だが、霊長類最強の高校生とかパワーワードすぎではと思ってしまう。どんだけ武力チートなんだよツカサン。高校生なのに霊長類最強。設定盛ってないのが本当に凄い。
ノホホンとそんなことを考えていれば周りはワイワイと騒ぎ出して、既にお祭り騒ぎである。まぁそんなこと出来るのかと不安になられるより全然いいけれど。
本土に帰るまでの数時間はそれといってやることはなく、というかこの陽気なテンションを下げないために仕事をさせなかったようでもあり、私たちはルリ達に迎えられるようにそこへ帰ってきた。
遠くで手を振る南達に手を振れば、一部の人間からヒビが消えていた為に驚く様子が見てとれた。陸地に戻るや否やクロムは石化装置を片手にDr.stoneセットを手に入れてきたぜと報告し、それと同時にやるべき事があるのだと伝える。これで兄が起きるのだと安堵の涙を流している未来をスイカが慰め、その場所へと足を向けた。
けれどもコールドスリープは石化とは違いただ凍らせただけの状態で、そこからちゃんと石化からの復活となるとは今はわかっていない。その為ぶっつけ本番のチャレンジとなるわけで、ついでに言えば他に問題はあるわけで──。
「イバラに刺されたケガ。千空、合理的な貴様なら真っ先にDr.stoneで治すはずだ違うか?だが額のヒビ痕が消えていない。つまり使っていない!使わずに司のためにとっておいた。何故だ?考えうる理由は──」
「あ"ぁ、石化装置の電池切れだ」
いくら石化装置が凄い科学のクラフト品であったとしてもエネルギーなしで動くとは考えにくい。最先端技術だかなんやかんやで太陽光発電なんかしていたら話は別だが、千空的にはそれは無し。イバラ戦にて指定範囲がブレたことにより電池切れの線が明白だったのだろう。
「……不安になるのは分かるけど、やらないよりマシだよ未来ちゃん」
「──うんっ」
「行ってらっしゃい」
先程のやりとりを見ていた未来の頭を撫でて慰め、私は滝のそばで皆の帰りを待つことにする。
私みたいな感受性が違う方面でぶち壊れてる人間が側にいたら、復活した直後にうっかり兄妹尊いとその場でニヤニヤしないとも言い切れないのだ。疑わしくは罰せよ、というわけでないけれど頬の筋肉が緩みそうだから下には降りない。
「──司さんっ」
「って南ちゃんももう半泣きじゃん。ほらほら落ち着いてー」
「んぐっ、なんでアンタはそんなに落ち着いてんのよ‼︎」
「えー、だって復活するもん司くん」
「その根拠は⁉︎」
「根拠ってなきゃダメなの?復活して欲しいからそう願ってるだけだけど、それはダメ?」
「ダメじゃ、ないけどっ!」
まだ分からないじゃない!
そういって一緒にそこに残っていた南の涙腺は崩壊した。
未来は分かるけど、南が泣くのも分かってしまって尊いのだがどうしろと?
だって司のこと大好きだもんね南。龍南か司南か悩んだけど、どっちなんだろうね南。私の情緒をぶち壊しにきたんだね南。なんで公式に明記されてないのか、むしろ明記できなかったのか分からないが南ちゃんは好きな方と幸せになってください。
ぐずぐずと泣く南をニッキーとルリと一緒に慰め、下の方で歓喜の声が上がったところでグイグイっと押してそちらに向かわせておいた。
ただのファンだから家族とのやり取りを邪魔しちゃいけないと南は遠慮するが、司にとって南はもう家族に近いんじゃないかなと思うんだ。
だって復活メンバーの選定を任されていたのは南で、その南を頼って復活させたのも司なのでしょう?愛だの恋だのはおいといて、そこに何かしらの感情があってもおかしくはないのでは?
「って思うのだけど、ニッキーちゃん的にはどう思う?」
「……茉莉はそっち系の話に興味ないと思ってたけれど、案外いける口なのかい?」
「んー、いけるというかなんというか。長年杠ちゃん達見てきたからそういうのに甘い?というか。お幸せにねとは思う」
チラリとルリとクロムに視線を向けるとニッキーはその意図に気付いたようで私達はぎゅっと握手を交わした。
けれども当人達には伝わらないんだな、コレが。
「にしてアンタ、随分スッキリしたんじゃないのかい?」
「……何が?」
「宝島じゃあアタシでも分かるくらいひどい顔してたからね、ほんと良かったよ」
「そう、かな?」
「そうさ。ま、アタシもそこんとこ知りたいから南や杠、その他女子達でも誘って女子会でもしとこうか!」
「あー、女子を愛でる会ならば参加するよ。残念ながら生まれてこの方恋バナとはご縁がないので」
ごめんねと謝ればニッキーは聞いてるだけでも楽しいもんさと私の肩を叩き、誰を誘うかと悩み出す。
司が復活してすぐだというのに、そんな風に別の楽しいことに振り切れるニッキーは本当に素晴らしいと思うよ、流石アニッキー様。
どうしようかと二人で頭を悩ませていれば滝下から復活したばかりの司達が登ってきて、当たり障りなくおかえりとだけ声をかけておく。それ以上の言葉は未来達に言われただろうし、私が多く語る必要はないだろう。
そうして司は復活したばかりだというのに松風と手合わせを始めるために開けた場所へと移動し、そこでコールドスリープ前と変わらない強さを見せつけたのだ。
「松風──、彼も十二分な実力者だよ。俺はおめおめと科学王国の戦士として仲間に加わるわけにはいかない。違う理想の世界のために石像達を傷つけたその事実は消えな──」
「あ"ー、いいからそういうの。しちめんどうくせぇことは後でハゲるほど考えりゃいいじゃねぇか。放っときゃ人類ブチ殺されんだぞ」
「そうなると困るので司くんには拒否権はないに等しいんだよね、ごめんね。一緒に働こ」
マンパワーが必要不可欠な科学王国だというのに、それを犯罪云々で使わないなどないわけで。
復活した以上戦士として働く以外の選択肢はもはやないと思ってもらいたい。じゃなきゃアメリカ行ったら即ゲームオーバーなんだよ、こっちは。
ニコニコしながらことの成り行きを見守っていれば今度はスイカが石化装置の電池切れについて話し始め、千空のヒビは消えないのかと悲しそうな声を漏らす。
とそこにゲンが俺も戦化粧をするよと頬にヒビを描き足した。
「みんなの戦化粧が消えるのはみんなで石化の元凶に勝った。その瞬間──」
「うぉぉぉおお、俺もかくぞー!」
乗り気な大樹が全く違ったヒビを顔に描き、それを直しながら杠が左肩にヒビを描く。龍水やフランソワは描き足して、ソレは司の前まで回される。
「司ちゃんもど〜お、ホラ♪ それとも僕のキレイなお肌に落書きなんてヤダヤダってタイプ〜⁇」
あからさまに断りづらい雰囲気を醸し出しつつ、司も仲間なのだと言い聞かせるようにソレを施して。全く持ってメンタリスト様様な働きぶりだ。
司はゲンにお礼を言いつつ二本のヒビを描き、そこで司が"仲間"になったのだと大樹は大声を上げた。コレでホワイマンかどんなやつでも勝てる気がするといってのけるメンバーがいるあたり、やはり千空と違った意味での主柱なのだろう。
仲間が増えてよかったねと喜ぶみんなの姿を眺めていればいつの間にか中心にいたはずの千空が背後にいて、襟元をグイッと下げられたかと思えば冷たい何かが首に伝う。
一体何をされたのだと千空を見やれば首を指しながら、ヒビ、描いといてやったぞと真顔でそう言ったのだ。
「そこじゃ自分で描けねぇだろ」
「んー、確かに描けない以前にどんな形かも知らなかったかも?ありがとう?」
「──消えたら描き直してやっからいえ」
「残念ながら見えないんですよねぇ」
「んじゃ勝手に描くわ」
「一言言ってからでオネシャス」
流石にビビるので。とは言わなかったがなんとなく意味は通じたのではないだろうか。最近、よく心を読まれてる気がするので。
ヒビを描き足されてしまった私はついに科学王国の一員になってしまったのだと思いつつも、なんとなくソレを嬉しく思ってしまうものであり。
確かにニッキーの言う通り、色々とスッキリしてるわと納得するしかない。