凡人は石世界で推しを推す   作:燈葱

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いつもよりちょっと短いかも?


88 凡人、空を見る。

 

 

 ジリリリっと音が鳴り、日本からできる限り正確な時刻が知らされる。

 まぁ、あれを作ってるのをみた時マジかぁって思ったよね。日時計とか砂時計とか、普通の人間は作り方知らんて。

 流石パイセン、そこに痺れる憧れるぅ!ってひたすら真顔で思っていましたマル。

 

「でも何時かがわかるとなんで船の場所がわかるのか、スイカにはわからないんだよ……??」

「だいじょうぶ、現代人の大人でもイマイチわかってないから」

「大人だからなんでもわかるわけでもないんだよ、また一つ賢くなったねスイカちゃん」

 

 大人組も時間だけで何故?どうしてと目を回している様子を伺い、そしてカセキ達のやりとりに耳を傾けた。

 カセキは真上に太陽が来ているとこを調べ、龍水はそれを聞くと地球儀をクルクル回し船から見える太陽の調べタテの位置を。東京との時差でヨコ位置を把握し、そうやって人力GPSで現在の位置を探し当てそれを頼りに海を進めばアメリカに着くというわけなのである。が、本当によくわからない仕組みとしか私は思えなかった。

 

「すごいんだよ科学の旅……」

「ヤベー、俺もガンバんねぇと!科学使いとしてよ!」

「お日様さえ見えてれば全部わかっちゃうんだよー!」

「あ"ー、このまま晴天が続きゃアメリカ行きも順風満帆だ……!!」

 

 そう意気込んだ千空をみて、そしてまだ晴れた空を眺め私はニコリと笑う。

 千空はかなり運が悪い。いや、人脈的にはハイパーいいんだけどね、物事を進めるにあたって悪いというかなんというか。

 つまり何が言いたいかというと──。

 

「──うわぁー、引くレベルで曇ってきたねぇ」

 

 真っ黒な雲が空を覆い始め、ポツポツと雫が降ってくるではありませんか。

 

「千空ちゃんが言った途端ゴイス〜……。あれね、千空ちゃんてば生まれた時知識・根性・努力家に100、運にゼロ。スキル振りしちゃった人ね」

「オホォ〜、これじゃ全然みえないのよ太陽なんか」

「こんだけ厚い雲が覆ってればねぇ……」

 

 とりあえず室内へと避難し、窓越しに空を眺める。このままでは時間はロスするし海で遭難の危機にも陥ると話していると、スイカが空を見ながら小声でヴァイキングの話をする。

 私は百物語を聞いたことはないが、そんなことまで入れ込んで話を考えた百夜には一生頭が上がらないだろう。

 本当に、石神親子は着目点がすごいものである。

 

 ヴァイキングと聞いて操舵室を飛び出したのはクロムで、スイカはその後に続く。何か思いついたのかなとゲンはいい、千空はニヤリと笑った。

 パイセン、本当に弟子が好きなんですね。わかります。

 

 残ったメンバーはとりあえず一旦雨が上がるのを待つことになり、他愛もない話をすることとなったのである。

 

「その言えば茉莉ちゃん、千空のこと呼び捨てにするようになったのね?」

「ん、まぁーねぇ……」

 

 カセキが首を傾げながらそんな事を言葉にすると、ぴたりとゲンと龍水の動きが止まる。そして千空は小指で耳をかきながら気持ち悪りぃんだよと言い切った。なんとなくその言い草がひどく聞こえるのは私だけでしょうか?

 

「昔は呼び捨てだったんだ、今更ガキみてぇによばれるとサブイボが出る」

「……そこまで言わなくても」

「あ"?俺もちゃん付けて呼ぶか、茉莉ちゃん」

「ヤメテクダサイ」

 

 ゾワリ、背中に何かが走った。アレから何度かこのやり取りはしたものだが、やはりちゃん付けされると変な感じがする。心臓に悪い。

 うげぇっと顔を歪めていればいきなり龍水は笑い出し、その勢いで他のメンバーも呼び捨てでいいのではと言い出すし。全くもっていい迷惑だと思うのだが?

 

「俺のことも龍水と呼べ!」

「いや、呼ばんて」

「何故だ!」

「なんでって、んー、呼ぶ必要性はないのでは?」

「なら俺も茉莉ちゃんと呼ぶぞ?」

「──うん、どうぞ?」

 

 一瞬そう呼ばれる事を考えて、違和感がないことに驚く。多分これはアレだ。千空には昔からそう呼ばれていたから、無意識に拒絶反応が出るのだろう。故に龍水にそう呼ばれたところでなんの変化も感じない。

 

「フゥン、千空だけか。──幼馴染とは面白いものだな」

「そう、かもね?」

「いや!違くないっ!?茉莉ちゃん俺は?」

「ゲン君」

「ダメかぁ」

「ワシはワシは!」

「カセキのおじいちゃんはカセキのおじいちゃん」

 

 尊敬してる人を呼び捨てとか無理です。

 高校生みたいなノリでそんな会話を続けていればいつしか雨は止み、分厚い雲だけが残っている。外に出て空を見上げてみてもそれは変わらず、太陽なんて見えやしない。

 さてどうしたものかと思っていれば、ニッコリ笑ったクロム達が何かを持って帰ってきたところであった。

 

「千空!これを見ろっ!」

「んあ"?──方解石か!!」

 

 自撮り棒のようなものに付けられた石を外し、千空は嬉しそうに顔を綻ばす。方解石と呼ばれたそれはクロムが日本から持参したもので、コハクが加工したものでもある。

 それをマークを掘った小さな箱に入れ込んで曇り空を見上げると、二つ並んだ光が見えた。

 

「天然のプリズムだ。光を分解して二つに見せる」

「それが揃うと太陽の光の向きってこと……?」

「あ"ー、ザックリ言やそうだ」

 

 かつての海賊、ヴァイキングが使っていたであろう太陽の石。それはいま、4000年の時を超えてここにある。

 人が生み出し繋いできた科学が、またしても繋がっていく。

 

 に、してもだ。

 

 チラリと横に視線を逸らせばクロムを優しげに見つめる千空がいて、私の心臓はキュンとしてしまった。

 美しい師弟愛。ごちそうさまですありがとう!アレですね!お前も立派な科学使いになりやがってってやつですね、わかります!

 

 思わずにやけそうになる頬に力を込めて視線をずらし、わいわいと喜んでいるスイカ達の輪に入る。そこで笑う分には誤魔化せるし、なんてったってスイカが可愛いから微笑んでいても問題はないだろう。

 

「茉莉もクロムに貸してもらうといいんだよ!」

「ほらよ!」

「あんがとう」

 

 手渡された方解石を頭上に掲げ二つ並ぶマークの光加減を合わせていく。

 するととある場所で綺麗に、同じように光り輝いた。

 

「──ねぇねぇ、クロムくん」

「なんだ?」

「なんでこのマークにしたの?」

 

 箱にくり抜かれたマークの形はロケット。

 別に丸でも三角でも四角でもいいのに、そこに映し出されていたのはロケットである。

 その理由を問えばクロムらはきょとんと首を傾げて、科学と言ったらコレだろ。と言葉を放った。

 

「……そうだね」

 

 科学王国という名称がつけられた時、杠と大樹はロケットに見える柄のついた布地をプレゼントした。

 千空といえばロケット、という発想だったに違いない。

 しかしながら今はロケット=科学とクロムは認識している。もしかしてこの形がロケットと認識はしていないかもしれないけれど、ここであの幼馴染二人と弟子が繋がるのかと思わず笑ってしまった。

 

「ふふっ」

「──なんだよ」

「なんでも、ないよ」

 

 ただ、君らの関係が愛おしく思っただけ。

 

 本当に、良いものを見せていただきました!

 満腹です!

 

 そう思いながら、私はもう一度わらった。

 

 




かきたい場面の構想がようやくできたので、船旅はまきでいきます。
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