「まさかまさかの、岳斗君勝っちゃったね」
「…………」
「……葵君?」
無言のまま二人を見ていた葵君はふと振り返ると、満足した表情で話しかけてきた。
「舞殿、今日はわざわざ付き合わせてしまい申し訳なかった。拙者たちはそろそろ帰ろう。」
「――えっ? まだ途中だけど良いの?」
「今日、彼を見てきてそれなりに彼を理解することはできた……ま、まだ完全に許した訳ではないが、とりあえず彼がアツイ男だと理解する事はできた。だからしばらくは様子見にしようと思う」
「そっか(あぁ、これで葵君との初めてのお出かけも終わりかぁ)」
「家まで送るでござるよ」
「うん。ありがとう。(頑張りなさいよ紅葉)」
こうして私たちは帰路に着いた。
プロレス観戦が終わり、再び駅前へと戻ってきた。試合後に、プロレス団体の責任者の方がガクト様をスカウトにくるというサプライズもあったが、ガクト様は誘いは受けず、とりあえず名刺を貰う形になっていた。
そして、そろそろお別れの時間……
「岳斗さん、今日はありがとうございました」
「い、いえ、こちらこそ一緒に行けて凄く楽しかったです!」
笑顔で微笑みかけてくるガクト様に対して、私は……私の気持ちを押さえきれそうにありません。
「岳斗さん……また私とこうしてデートしてくれますか?」
「――えっ!? も、もちろんです! 俺なんかで良ければ、喜んで!!」
「でも私は……次は友達としてデートではなく、恋人としてデートがしたいです…………」
思いを込めて、ガクト様の瞳を見つめ、私の気持ちを伝える。
「…………ハッ! そ、それは!?」
「……岳斗さん、私は……『ちょっと待って下さい!』……えっ?」
告白しようとしたところでガクト様から止められる……どうして?……私の心の中に不安が広がっていく。
「そこから先は俺に言わせて下さい。紅葉さん、普段の清楚なあなたも、筋肉の事になるとテンションの上がるあなたも、俺は大好きです! 次はあなたの男として、恋人として俺とデートして下さい!!」
ガクト様が頭を下げ、手を差し出してくる……そんなの……私の返事は決まっている。
「……はい」
ガクト様の手を取り、再びお互いの視線がぶつかり合い、少し照れくさく笑い合う。
こうして私の恋は新しいスタートを切った。
家に戻って、今日の葵君とのデー……トじゃないな、尾行を振り返る。一緒に街中を歩き、食事して、お揃いのストラップを付けて……傍から見たら恋人同士に見えたのかな? そんな事考えてたら紅葉からの着信が入る。
「そちらもそちらで、本日はお楽しみでしたね★」
「…………えっ、紅葉気付いてたの!?」
尾行がバレていた事を知らされ、驚きと紅葉に対して申し訳ない気持ちになる。
「一応、可能性として警戒してたら、バカ兄さんはともかく舞ちゃんまで尾行してたのにはビックリしたよ」
「何処で気付いたの?」
「結構、始めの方から……バカ兄さんは気配消せてたけど、舞ちゃんはその辺素人だから仕方ないよね。ガクト様が気付いて無かったからそのままスルーしてたけど」
何それ……いわゆる「見るんじゃない、感じるんだ」的な何かですか? 友人の超人ぶりにため息をつく。
「それでバカ兄とは何か進展はあったのかな? さっき携帯にストラップ付けてたの見たけど、もしかしてお揃いとか!?」
「お揃いにはなったけど、進展があったかなんて聞かなくても紅葉なら分かる……って、チョットまて! 紅葉、あんた何処まで知ってんのよ!?」
「私は舞ちゃんを応援してるよ♡」
そんな……紅葉にバレてたなんて…………
「何年の付き合いだと思ってるのさ、私と舞ちゃん。まぁ、燕ちゃんはまだ舞ちゃんの気持ちに気付いて無いみたいだけどね」
「……そうなんだ」
「現状一方通行な愛だからねぇ……【舞ちゃん→バカ兄→燕ちゃん→?】みたいな。とりあえずバカ兄が他の連中同様、燕ちゃんに玉砕されるまではアタックするのも難しいよね〜」
「……グッ」
紅葉の言葉が重く私にのしかかってくる。葵君が燕を好きなのは分かってる。だから今告白しても振られるだけだろう。
「とりあえず今は友人として仲良くして、チャンスを待とうよ。今回の事で少なからず舞ちゃんがあのバカ兄の数少ない気の許せる相手だってのは分かったしさ! 前向きに前向きに!」
「…………(数少ない、気の許せる…………)」
それだけでも進展はしてるのかな? と今は自分を満足させた。
「……そ・れ・で・ね☆」
ワンテンポおき、紅葉の声が急に高くなった。何だろう? 凄く嫌な予感がする。
「私……正式にガクト様から交際を申し込まれちゃいました♡キャァァァァァ!!」
耳元に響く紅葉の叫び声を聞きながら、今日は何時に寝れるかなと目覚し時計を見た私だった。
ここで短編サイズは完結したんですよね。
それで、助手ちゃんが本来書きたいと言ったのがこのあとのオマケのその後の部分の舞と葵の切ない恋模様の部分だったわけ何ですが……とりあえず私が助手ちゃんから聞いてたのはここまで(最後の紅葉と舞の電話内容)なんですよね……ここから新章として裏物語が始まるはずだった訳です。
とりあえず本人が戻ってくるのをまた暫く期待したいと思います。私も一読者として助手ちゃんがどう書くのか期待していた一人ですし。
ご愛読ありがとうございました☆