すべからく全て不慮の事故です   作:カナーさん

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おかしい…なにも進んでない


少年野球団

「リーダーも納得すると思うかなセロハン」

 

「し、志布志…」

 

「おん。ショピング以来だな。まさかこんな再開するとは思ってなかったけど」

 

 それは彼の言いたかった言葉だ。

 彼にとって彼女は…クラスメイトとはまた違った形の感情を抱く旧友で、自身の原動力の一部だったのだから。

 


 

 ズザーと砂を擦り切れ、かき分ける音と共に少女がスライディングを決める。

 

「セーフ!」

 

 志布志の居た少年野球団に瀬呂はほんの少しの間、所属していた。

 強豪だった。選手である彼女含め皆プレイを楽しみ、またそれ以上の傷と怪我(志布志の過負荷の影響)を伴いながらそれに抗い堪えた者達で構成させた彼等は、年層に合わぬ力強い歴戦の猛者であった。

 

 そんな中で彼女浮い…てる事はなく寧ろ同年代にしては良好な関係を築いていた。

 彼女の年齢の女子達のように男子にキモい煩い汚いなど危ないだの言わないばかりかそれに拒否反応も示さない。それどころかチームの誰よりも男勝りで野球に積極的であった事から彼女の存在は受け入れられていた。

 

 とはいえ別に彼女は野球に興味はない。入団したのも積極的なのも怪我しやすそうだったからなのけど、続ければ愛着は湧くもので、通っている内に気付けば彼女はこの少年野球のマスコット的な扱いになっていた。

 

 特に瀬呂とのからみは定番のネタであった。

 

そう例えば誰かが

「可愛い顔が汚れて勿体無い。可愛いのに」

とからかうと彼女はそれにどう反応すればいいのかわからないのか、その言葉から逃げ出そうとする。つまるところ恥ずかしがってどっか行く。

 そんな彼女を瀬呂が蜘蛛男のようにテープで捉えてフィッシング。ついでにペタと流血している箇所にテープを張る。

 

 瀬呂にとってはこの一連のやり取りは怪我人を救い出す最も古い原初の記憶。

逃げ出す敵を捉える。遠くの者を着物の帯をくるくると巻き取るように優しく引き寄せる。

彼の全てが詰まっていた。

 

 そんな過負荷が居るにしてはほのぼのとした日々が彼の中での印象深い記憶だ。

更新されたのはショピングの時でそれはたいそう驚いただろう。男勝りな性格と距離感はそのままでナイスバディになっていたのだから。

しかも手首に巻いていた物を見たとき密かな喜びが彼に芽生えた。久しく会わなくとも繋がりは今なお途切れていないのだと。

 


 

「フリーズしてどうした?いいから頼むぜ」

 

彼女が見せる手首には彼との繋がりはない。あるのは腐食して黒く変色した見るも無残な姿。

異常空間において正常な判断を下せる異常な精神性。どれも彼の記憶に当てはまらないもの。

自分ですら言葉を失うのにあの日再開した時と何も変わらない調子。

 

「_____」

 

彼が衝撃を受けている間に床から呻きにすらならない微かな音がなる。

 

「あーあ。やっぱり本気だしてないから耐えるか。すごい根性。素直に賞賛するぜ」

 

先生という言葉は空に消えた。

改めて視界に収めてそれで終わった。

 

「教師ともなるとそこらの資質も問われるのか。アンタ確かに脳無に後遺症を負わされたんだろ。寝とけよサーフィンしてんじゃないからさ波は勝手に上昇するもんじゃないぜ。

…起き上がったよアンタ英雄かなんか?」

 

「_____」

 

「悪いね。漫画なら小声でも吹き出しで読めるんだけど、何言ってかわかんないよ」

 

スッと手を掲げ過負荷を使おうとする。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

…………

 

「…テープ長すぎな」

 

瀬呂の個性が志布志の腕に絡みつく。相澤先生に向けられていた腕が瀬呂を捉える。

 

「…俺との関係はもうなくなったかも知れねぇ。けどどんだけ途切れようと、どんだけお前が遠くにいっても…ヒーローとして俺はいつもみたいにお前を"捕らえる"。何度でもずっと逃さない」

 

志布志は納得したような安心ような顔で

 

「…。そっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を待ってた!

 




最後のシーンはめだかボックス9巻。74箱「絶対に勝って」の名瀬に初っ端過負荷を放ったときの顔をイメージしてます。ギィやニチャアなんて擬音いれそうです。
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