すべからく全て不慮の事故です 作:カナーさん
作戦を完了した開闢行動隊を待っていたのは我が物顔で、黒霧が出したであろうクッキーを頬張る素知らぬ少年。それがカウンターに座っていた。
少年は拠点に帰還した彼等に簡易的な自己紹介をした。
「どうやら皆さんは志布志さんと既に交流があるご様子。なら私はアレと同類ですよ」
同類。それを聞いて警戒しようとしてしかし違和感を覚える。あの女ほどスゴみではないが…気迫が希薄であった。存在感がないと言えばいいのだろうか。志布志が強烈であったぶん、蝶ヶ崎の印象は大人しくて影が薄い。そんな感想であった。
そんな様子を人質 爆豪は観察していた。
「それで、結構志布志さんははっちゃけたみたいですね。『致死武器』を使わないでカミソリで皮膚をズタズタにするなんて珍しいですね。いやはや、恐ろしい。よほど機嫌が良かった様子」
血が滴るカミソリを手に蝶ヶ崎は独り言のように呟く。
「そうですね。彼女の方から積極的に意見をしてくるなんて初めての経験で末恐ろしいものですが終わってみれば呆気ない_いえ満足の行く結果でしたね死柄木弔」
「そうだな…お前も奴を見習え」
「嫌ですよ。まるで仲がいいみたいじゃないですか。私は別に志布志さんと恋仲でもないですよ。死にたくないから一緒にいるだけで」
「あっ?それは初耳だぞ。てっきりお前等はそういう繋がりだと思ってたが。なるほどお前でもあの女には殺されるのか」
「…なにか変なこと考えてますか?」
「そんなことはどーでも良くて!しぶっち先輩は何処に?」
消えた志布志に皆それほど固執はしなかった。
死柄木がそれを容認しているというのもあるがあれほど女が一緒にいることを認めたこの少年という微弱な興味がそれを押し退け、そして少年を受け入れた。
当たり前の様に受け入れているが少年も他者に無作為に仕掛ける存在ではないにしろ、根っからの過負荷でその存在は異質である。トガにしろコンプレスにしろここにいる誰にしろ、身の毛がよだつあの空気に居れることが彼等が普通と掛け離れていることのなによりの証明。それは人質である彼も変わらない。彼に限ってはそれは"強さ"だが。
カチャカチャと食器同士が擦れ合う音がTVから流れる情報を横断する。
普段なら神経質な者から非難の声が飛ぶところだが今は大事は時。食器程度の小さな騒音程度気にも止められなかった。
画面に映るのは独りの校長。
しかし今はちっぽけな一匹のネズミ。
本来なら責任者としてA、B両陣の教師がここに陳列していなくてはならない。
しかしブラドキング、イレイザーヘッドの両名は志布志によって命こそ繋がっているものの病院で格闘中。
イレイザーに限っては前回の脳無のダメージも含め危険な状態だ。
リカバリーガールの個性でも応急処置は施せない。いやリカバリーガールの個性だからこそ必要ない。
雄英に出来ることはなにもない。こうやってTVに観衆に姿を晒すという行為すら彼等は許されなかった。
ネズミが紡ぐ言葉に少年は興味を示さない。あれは志布志がやったことで自分ではないから…それもある。だが事はもっと単純なことで、弔の味方で少年にも決して無関係でないが、結局のところ偉い奴をいちいち好き好んで拝見するほど少年には耐性がなかった。
数少ない少年の付け入る隙である。
弔がTVを消し、人質に言葉を投げる。
ようやく話が進むのか、ジャンプの修業回かよと内心ぼやきながらそれでも無関心。弔のお気に入りの手を飛ばされた時は一瞬腰を浮かせたが纏っている空気を感じ取って座る。
少年がここに留まる理由もここでご飯を頂く理由も死柄木弔がそこにいるから以外ない。
生ぬるい友情だがこれが少年の付き合い方だ。
グループチャットは通知が煩く、ネットの海も同様の話題のみが溢れ、再放送アニメすら放映されない。
ピザでも注文しようか、と思考を巡らせていると_
_ピザーラ神野店ですぅ。
爆豪が背にしている扉からそんな本来なら場違いな少年にはナイスタイミングな声が聞こえる。
暇している少年だからこそ、その声にいち早く対応出来た。
「なに急に来てんだよ」
ドガッ
と扉を開けることなく扉ごと蹴り飛ばす。
ボゴッ
とスピナーの背後の壁が炸裂するように吹っ飛ぶ。
それらは奇しくも同時だった。
「黒霧ゲート!」
即座に指示を飛ばす弔。
呼応しゲートを開こうとする黒霧。
轟音の中で聞き取れないかおそらくはヒーローの個性であろう枝が個性を使おうとした黒霧含め縛りあげる。
少年は運良く爆豪に重なったからか束縛こそされていないが現状に困惑していた。
なんせ蹴り飛ばすつもりで蹴破った扉は予想より吹き飛ばず外にいた特殊部隊の様な格好の奴等に受け止められ、忍者コスヒーローになにかされたがなにをされたわからない。とりあえずダメージを先の部隊の先頭に押し付ける。
「どうするんです弔捕まってしまいましたし、私も捕まるのは勘弁してほしいのですが」
「オールマイトこいつUSJの時の」
「もちろんわかっているとも爆豪少年。我々もただヤラレに来たわけじゃない。こうされると困るんだろう蝶々崎蛾々丸」
「あんたみたいな有名人にフルネームを呼んで貰えるって有り難い体験なんでしょうけど全くそんな感情湧いてこないですねぇ…」
「なら安心したまえ。それはきっと緊張からだ。慣れるさ。なんせこれからたくさんの有名人が君を取り囲むのだから。直接的な害を与えない者には君の個性は発動しない。あくまで君は自分の身しか守れないのだろう」
「…良くご存知で」
観客として少年が観戦していた時。自分自身に向かってくる者には押し付けは適用されたがただ監視する者には少年は干渉していない。少年が一番困るのは周囲を満員電車のようにただ囲まれるだけの行為。
そして今黒霧がされているような拘束。
押し付けた所で拘束は解けないため少年はそれで無力となる。少年はダメキャンこそ出来る基本スペックは普通のただの弱キャラである。
「これは…」
また負けるかと思い始めたころ弔の悲痛な怒号のような叫びが少年に届く。
「__お前が!嫌いだっ!」
その言葉は少年に届く。
-泥が身を包んだ。
時間的には2週間更新できてないですね…遅れてすいません。体調不良で。
文字数は…いつもより少し多め、ギミックもとくになし。
展開は原作から少し変更出来そう。つまりこの作品にしか出来ない状況が起こりそうです。現状は雄英側の惨状が凄まじいですね。教師も生徒も全員病院送り。
想定していた展開から既に外れています。相澤先生いないくて過負荷どうするねん。そして爆豪救出組はそもそも行動を起こせるのか。
楽しみですね。
2月24日現在、難航しています。来週も厳しいと考えてください…。