すべからく全て不慮の事故です   作:カナーさん

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前回の彼女の言葉をちゃんと受け止めましたか?
とくに反応がなかったので仕込みが甘いなぁと反省。
追伸少し弄ってみた


教師(この話は弔とリンクし、合わせて一話となります)

「…出番ですか。先に言っときますけど私は敵連合の仲間ではないです。私はあなたの味方です。それをお忘れないよう…」

 

「んな事はどうでもいい…なんでこんな状況になるまで手を貸さなかった」

 

弔の手は自身の首にまわし、瞳には明確な苛立ちが覗いていた。

 

「そりゃ他人のゲームに横からちょっかい掛けるのはいけないでしょう。あなた自身もそれは望んでいなかった。あなたの意思を尊重しただけですよ。

…それで?私は時間稼ぎで」

 

ゆったりと黒霧が覆っている弔を見ながら彼らの前に躍り出る少年。

そんな隙だらけの姿にスナイプの銃弾が大人しくしている筈もなく、四肢を明確に撃ち抜かれ倒れる。

 

「…ったく痛いですね。人がまだ喋っているのに攻撃してくるなんて、駄目ですよ。今はそういう流れじゃありませんからね」

 

そこまでは弔と同じだが、何事もないかのように少年は立ち上がる。

更に銃撃が襲うがそれでも全てが同じ結果になる。

 

「黒霧さん速く…って吸い込まれてますね」

 

時間稼ぎの間、仲間の盾になるのなら少年はそれを受け入れる。ただ小石を蹴るように無心で嬲られると…つい、健全に復讐しようと心を決めてしまう。

なので黒霧に催促の言葉を言うため目線を向ければなんと13号に吸い込まれている姿が映った。

 

「あららら、そういうことなら」

 

少年は黒霧が邪魔されているのを確認するや否や13号の射線、黒霧を吸い込んでいるブラックホールの脅威の中に

 

「んな!?」

 

躊躇いなくも飛び込んだ。

かなしいことに彼女は敵ではなくヒーローである。

ので勿論タブーは犯せない。

だが彼女はその個性を、黒霧が逃げれないレベルで使っていた。それは決してフルパワーではないのだろう。だが…

 

皆は風というのがどれほど脅威かご存知だろうか。

自然の脅威、台風。それですらもシャッター、屋根、電柱、果ては鳥居まで吹き飛ばす。なんせ風速50mあれば人など簡単に吹き飛ばされてしまう。

なれば星すらも強大な重力で呑み込む存在の名をつけられた彼女の個性が、大気という物質を吸い込む力が弱いはずなく。

彼女が急いでその個性を停止しても彼女が日々口にしているように簡単に人を殺せるその力は、車と同じように急には止まれない。

 

「ガッ…アアア」

 

無惨にもその体は奇しくも吸い込んだ本人と似た状態になった。

 

「なっ!?あいつ一直線に13号先生に飛び込んだぞ!男気があるとかそんなレベルじゃねえ死ぬ気か!?」

 

「いや、ちげぇ。捨て身である事に違いはねぇがアイツ、銃弾受けても普通に動けてた所を見るにおそらく再生系の個性なんだろ。なら先生が止めることを見越した打算の行動」

 

「だとしても仲間のため死ぬかもしれない個性の中に飛び込める精神とそれを可能として、絶対の自身を裏付けるほどの個性。もしあの脳無と同じレベルならどっちを取っても一筋縄じゃいかない相手だ。このままじゃ…」

 

 緑谷の視線は巻き込まれた部位を抑える少年の近くにいるオールマイトへと。時間切れで立っていること、と虚勢を張ることしか出来ないオールマイトに向けられていた。

 

「全く…酷いですね。無抵抗な一般市民にこの仕打ち。ジャンプならあなた達敵役にされてますよ」

 

「安心してよ。君たちをただの一般市民と呼ぶのはかなり厳しいよ」

 

「…くまさん?というか黒霧さん速、っていないし。我が身を盾に、を発動中に行っちゃっいましたか。皆さん彼、なにか仰ってましたか?」

 

少年の問いに応える者はおらず、少年の言葉は荒らされたUSJの騒音の中に混じる。

 

「…返答はありませんか。それで?私が犯したのは不法侵入と職務妨害程度だと思うのですがその辺はどうでしょう。私、あなた達に敵意や殺意を向けた記憶ないのですが」

 

「そうだね。大まかな罪状はそうだろうさ。けど君はヒーローとして、人として、見逃せないよ」

 

「…みたいですね」

 

少年の周囲に現役ヒーローが円を描くように立つ。

それを認知していながらそれでも少年は焦るような素振りはなく。

 

 

そこには異様な緊張が流れていた。

けれど長くは続かない。その緊張感が切れたのは少年がズボンのポケットに手を入れたのが始まりだった。

 

エクトプラズムの『分身』が素早く少年に近付き地面に取り押さえる。

抵抗感はない。無いはずなのに今すぐこの腕を、むしろ自ら切り離したい衝動に駆られる。それを無理やりヒーローとしての矜持で抑え込む。

 

「驚くほどあっさりと捕まったわね。余計恐ろしくなる」

 

「それはそうですよミッドナイト。私はこれ以上罪状を増やすつもりはないですし。私はあなた達を傷付けるつもりは全く持ってありませんよ。だって興味ないですし」

 

嘘くさい。

一同はそう同調した。

異質な空気が妙な空気に変わりつつある中、劈くのは女子生徒の悲鳴だった。

 

「せ、先生!」

 

その悲鳴は重傷で運ばれていた相澤先生が居るであろう場所から発せられていた。

 

「そんな中で負った怪我は私には関係ないただの不慮の事故ですから。

しかし酷ですねヒーローというのは。あんな状態でも仲間からあんな仕打ちされるなんて」

 

遠くから先生、先生と嘆くような悲痛な声が届いてくる。

 

「どんなお気持ちですかせんせぇ。同僚にトドメを刺す気分は?」

 

「お前!相澤先生に!」

 

「うるさいよ外野。で、どうです。ほんの些細な行動で人の生死を後押しする気分は。あっ返答は結構です。変わりに離してください」

 

スッと少年の瞳がエクトプラズムを射抜き、彼の拮抗していた精神が傾く。

その隙は他人には見えず、タイミングは少年にしかわからない。少年はゆるりと蛇のように拘束から抜ける。

 

「ん。ありがと」

 

鮮やか。そうとしか形容出来ないほどさも当たり前だと言外に伝えてくる。本人はそんなこと思っていないのだけど。

抑えられていた腕の調子を確認しながら離した張本人に蔑むような瞳を向ける。

ズゥと地面のコンクリートが蠢き少年を中心にしてとぐろを巻くように包み込む。

 

「……。まだ喋ってんだろうがあんたら!

 

大人しく悠々としていた気配が急に刺刺しく荒々しい気勢に_

 

ズバッ!とかまいたちにズタズタに切り裂かれたように、エクトプラズムとセメントスから鮮血が舞い、その中に崩れ去る。少年を覆っていたコンクリートが個性の操作から途切れ崩れる。

 

「……んんっ。失礼癖で。あっ少し席外しますね。もしもし_」

 

 


 

 

……なにが起こった?

拘束から逃れたのはまだ納得できるそういう個性か技術なのだろう。だがこれはなんだ?

技術では決してないだろう。なら個性ということになるが…彼の個性は行動から考えて再生系、少なくとも攻撃的なものではないのだろう。

なぜなら13号先生に対して、彼は攻撃しなかった。近付いて殴るでもなく個性で個性の矛先をずらすこともなく、選んだのは身を危険晒す行為。それはつまり体が損壊してもどうにかなる考えがなければ狂人でもない限り無理。だがあの脳無のように再生するなら過去の行動も納得できる。

実際、僕の攻撃を受け止めたのはあの脳無なのだから。なら同じ行動してもおかしくはない。

 

なのに目の前で地に沈んだ先生達は急に、同時に。明らかに個性でなければ説明出来ない。

 

「_あっじゃあ後で合流しますね」

 

ピッとケータイの通話が切られる音に緑谷は顔を上げる。

 

「_!!」

 

緑谷だけではじゃない。爆豪、轟、切島も皆一同に息を呑む。

あんなに頼もしかった先生達が汗のように紅い血液を流している。経った一瞬考え込んだだけで。

 

「あっ私この後用事が出来たのでもう帰りますね…って言ってなんであなた達が安心するんですかねぇ?」

 

「……!!!?」

 

その心が一切なかったとはいえない。一瞬過ぎった考えとはいえあの発言に偽りの希望を見出したのは事実だ。

 

彼らの名誉のため言っておくがこれは相手が悪い。なぜなら彼ら過負荷に相対するには第一としてメンタルの強さが必要だ。

けれど彼らは学生で、突発的な襲撃、迫る明確な死、現れたオールマイト(きぼう)、一瞬切れた緊張、異質な空気、倒れ伏す先生。

ただでさえ精神の緩急が激しいのに加え目の前にいるのは相対するだけで逃げ出したくなる過負荷。常人なら心が折れているかもしれない。

そんな相手がここを去ろうというのだ。縋りたくもなる。

 

「まぁもう用ないですし…最後にあそこに隠れてるオールマイトを一瞥して帰りましょうか」

 



 

コトンッと少年の靴音が妙に静かになったUSJに響いたような気がした。

周囲が停滞世界の中ですでにグチャグチャになった足に力を入れ跳び出したのは無意識の事だった。

 

力む腕に閃光が迸る。

少年を止めろと叫ぶ。

これ以上誰も傷付けさせるな_!

 

 

SMASH!

 

ドンッ!と大気が一瞬で押し流される。

ただ拳を振り抜いただけなのに辺りには暴風が吹き踏ん張っていなかった者は攫われる。

 

「(痛く…ない、それに手応えもある!)」

 

その威力を発生させた拳を頬にモロにくらった少年はその衝撃を受け止められずミサイルの様に吹っ飛び、噴水に叩きつけられた。

 

「ガッ、ハッ…_ペッ。あぁ…せっかく仕立てた服がびしょ濡れだ…」

 

「…!」

 

予想しなかった訳ではないがこれだけの手応えがあったのにも関わらず少年は濡れた服を嘆きながら崩壊した噴水からしっかりとした足取りで出てきた。

 

「スマッシュってオールマイトリスペクトか。久しぶりにギャグ回のように吹っ飛びましたが、まぁこれだけのパワーならそれも納得ですね。あっちなみに御本人の方はそれ、知っているんですか?」

 

「…それが、どうした!」

 

「あっいえ。なら尚の事顔を見たくなっただけですよ」

 

ドサッとコンクリートを挟んだ向こう側から、オールマイトがいる場所から倒れた音がする。

 

「どんな気分なんでしょうね自分の後釜になるかもしれない存在から全力の思いを受け取るのは。きっと先生冥利に尽きるというか、とても光栄な事なんでしょうね」

それを不慮の事故なんていう形で受け止めるのはいったいどんなのお気持ちなのか_少年は嗤う。

 

なんだどういうことだ。だって彼の個性は再生ないし斬撃を備えた、もしくは二つの別々の個性の筈…。それでなんで

 

ガラガラっとオールマイトを囲っていたコンクリートが、砕け落ちる。

そこに居たのは…地面に手をついた頼りない骸骨の様な男だった。

 

「噴水の激突でようやく壊れましたか…しかし残念です。オールマイトは既にこの場にいない様子。考えてみればあれ程の戦闘、負荷がなかったら異常ですね。それに変わりを任せれる教師の到着、入れ替わる時間は幾らでもありましたね。

うんじゃ私はこれにて失礼。邪魔はしても構いませんよ。私が、[あの霧に無理やり飛ばされた善良な市民をヒーロー科の生徒及び教師が攻撃した]とマスコミにリンクするだけですから」

 

それじゃまたこんど。

そう言って少年は堂々と雄英を正門から出ていった。勿論事情の知らぬ警察等は問答無用だったが少年はそれに正面から打って出た。

 

幸いな事に敵を白昼堂々と逃した事は世間にバレることはなかったが、彼らはたった一人の男に屈辱的な勝利をもぎ取ってしまった。

過負荷相手にしてはいけない勝利を飾ってしまったのだった。

 

 

 

 




ちなみに敵もヒーローも主人公のことは途中まで忘れてました。だって影薄いですし、脳無の方がインパクトありますし。

追伸…まさか誤字報告を受け取りました…ありがとうございます。それとリークとリンクはあえて間違えてます。深い訳は特にないですが
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