すべからく全て不慮の事故です 作:カナーさん
「
江迎さんという学友と一緒に…彼女は自分の手で食事が出来ないため私が食べさせる形ですが…一緒に昼ご飯を楽しんでいた時に黒霧さんから連絡がきた。
「とうとう怪電波を受け付けてしまいましたか…流石に壊電波を受信するのは頂けませんね」
『_駄目ですか?』
「そういう問題じゃなくて根本的に、です。私を連合の一員かなにか勘違いしてませんか?」
『_ですが弔とは』
「それは仲間です。けど彼は連合の顔として動くのでしょう?ならそこに私がいるのはおかしい。前回が異例なだけですよ。それにステインにも興味ないですしね。本物のために贋物を
『……!』
「_蝶々崎さん?」
「…後輩が待っているので切りますね。どうしました江迎さん」
「…いえ気のせいみたいです。久しぶりに会えたと思ったんですけど気の迷いでした」
「あぁ彼女。そんなに会いたいんですか…私が言うのもなんですがやめたほうがいいですよ」
「死にたくないから…ですか?でもそんな感じは」
「えぇだって江迎さんは仲間じゃないですか。意図的に狙いを定めて切開…なんて。あなただってプレゼントされた髪飾りを腐らせたりしないでしょう。大切なものを自壊させず自分で壊してどうするのですか」
「それもそうですね。なら。尚更会いたいです。皆でカラオケとか遊びに」
私が態々あなたのマイクを持って?
…拗ねないで、冗談ですから。
「それで結局来るのですからあなたのことが未だにわからないです。蝶々崎」
「わかる必要なんてないですよ、我々は
あなたのせいですよ…という言葉は消す。
そろそろ自分が彼に適応する頃合いだ。しないと殺される。
未だ彼の地雷が把握しきれていないのも問題だ。
軽口程度ならいいのだが、先生に彼が日常会話からいきなり廃墟を建造していく所を見せられた時にそれも危険であると認識した。
…だからといって変化はない。現状が一番安定しているのだから。
「それで今日はなにを御所望ですか?」
「んーそうですねビスケットとかお願いします。それと炭酸を。時間を要するでしょうし」
そのまま少年は席で甘味料を味わいつつ、弔はそんな彼に話し掛けず、ステインと対話をしていた。
少年は一切対話に興味がなく、黒霧と向かい合っている形で座っていた。
少年がその変化に気付いたのはやはりというか黒霧からだった。
黒霧から、これでも食ってろとばかりに投げられた光沢輝く得物がビスケット皿の中にダイブ。
これには流石の少年も、日頃の鬱憤が募ったのだろうなと考えはしたが、それでもナイフはないだろう。これがチョコを加工したものなら話は変わるがビスケットを周囲にぶちまけて理由にはならない。
「…やっぱりチョコじゃないですね」
一応確認はする。
音も感触も金属だ。意図がわからず視線をナイフからあげようとしたタイミングで
ドッ ドッ
という衝撃が襲う。
この
取り敢えず味わったダメージは皿に飾られたナイフに押しつける。
叩きつけられた頭をヌゥと上げ背後を見やると伏せられた友に構えを解かない客。
…どうやら交渉は決裂のようだ。
「…あっどうぞ、お出口はあちらですよ」
扉を指さし、催促してみる。帰す気がないと勘違いしているのかもしれない。そしてそんな自意識過剰でもやはり興味ない。
数秒経っても動かない客人を無視して溢れたお菓子を片付ける。といっても散らばったやつをナイフと一緒に皿に戻すだけなのですぐ終わる。
それでも彼はそこにいた。
「意外ですね、てっきりそこに寝ている弔の首にナイフ振り下ろすとばかり」
「お前の目的は」
なにかを確かめるように少年の言葉に耳を傾けず、ステインは問いかける。
「それは私がここにいる事に、ですか?それなら友が敵連合なんてやっているのでその手伝いに。
…ん頭痛が…それともアタシの行動の目的かい。それならアンタに近いぜ。打倒ヒーロー。そうさな…のほほんとしているヒーロー見ると殺したくなる。これでいいかい」
そしてこんな状況を今を…
「…なるほど。お前には驚かせられる。…いいだろうお前が紡ぐその先を見てみたくなった」
「いいのかい。アタシは滅多に表舞台を彩る人種ではないよ。むしろ表紙すら染め上げてしまうぜ」
「あぁいい。それはいい。お前は俺と同じだ。やることは同じだ。それならば期待できる」
ステインはその短い問答で感じ取った。
この女は同じだ。さっきの男とは違う。真逆に位置していながら全く同じ直線上にいる。
ヒーローの本質を理解している。しているからそれの贋物が嫌いでそしてヒーローその者が嫌いだとこの女は言った。そう聞こえた。
対極。
本物のヒーローのためヒーローを殺す。ヒーローの価値を知っているから。それを穢す者が許せない。
本物のヒーローもそれ以外も含め殺す。なぜならムカつく。なぜなら傷付けたから。仲間を傷付けた奴は許さない。
言葉はいらない。意外にも彼、彼女は似た者だった。捉え方、感受性は違うだろう。それでも通じた。たとえ間違っていたとしても。
ステインは彼女を知り歓喜した。なぜなら粛清が終わったその先。ヒーローをヒーロー足らしめる存在が必要だからだ。そしてそれは純度が高ければ高いほどよりヒーローを光輝にする。
「…交渉成立かい?なら…おい黒霧、起きてるだろ。客人がお帰りだぞ」
「…しかしいいのかオッサン。アタシがいいトコ全部かっさらったが」
『_良し悪しで判断するなら勿論駄目だ。だがなにも成果がなかった訳じゃない』
「ふーん。アンタが未だになにを計算しているのかわからないね。けどいいならいいや」
「…おい志布志」
モニター越しに会話していた志布志を呼ぶ。
「なんだ弔」
「あの男をどうにかしろ。最近足並みを合わせないで自由に遊びすぎだ」
「それは難しいオーダーだ。なんせアタシらはそもそもとして偉そうなやつが嫌いだ。それなのにアイツがお前と付き合えた理由わかるか?
アイツが過負荷にしては普通だからだよ。冷静で理性的な思考が出来る。アタシや江迎ちゃんのように破綻せず歪まなかったんだ。よくやってると思うぜ。アタシならお前はオブジェに成り果てているからな
それと_そんなに羨ましいのか。勝ち、になんて拘るクセに本当の価値を知らないからそうなる。受け入れちまえよまずはそこからだ」
「価値を知らない…受け入れろ…」
今までの弔からは考えなれない、言葉を咀嚼するという行為。呟くようにうわ言のように。
「あぁ悪役ごっこと悪役は違うんだぜ。悪行やってればそれで満足か?違うだろ。それとも文字に書いて教えてやろうか」
「……」
漏れていた言葉を閉め瞑想するように瞳を閉じる。
それに志布志は言葉を投げない。その必要はないみたいだから。
「先生、脳無を何体か借りるぞ」
モニター越しだが開くようにわらったような気がした。
『_あぁ弔の好きなようにやりなさい』
その言葉を受け取ると弔は黒霧にゲートを開かせ、その奥へと消えてしまった。
『_君達には感謝するよ』
「なら辞めてくれ。そういうの馴れてない」
『_だろうね。ところで君はいつまでその姿でいるかい』
「なんだオッサン。女でも飢えてんのか」
『_あぁそうだ。君に飢えている。
君は滅多に姿を見せない。僕を開いたあの日から。…君はその姿を、一週間保ったことがない。なぜだい』
志布志は応えない。なぜなら回答がほしいわけではないのだから。
『_弔と同じ、内に歪みを持ちながら全く別のカタチ。しかも僕が会った時に既に仕上がっていた』
「取り敢えず数日はこのままだな。やることがあるし会わなくちゃいけない奴もいる。カラオケの予約もある」
老人の話は長い。そうそうにこっちから話題を出して終わらせる。
『_それはいい。君の歩く姿はとても愉快だ。君の在り方は弔も見習って欲しいものだ』
その言葉を流して志布志は扉を閉める。そして蝶ヶ崎は消える。
ここからは弔の友人、蝶ヶ崎蛾々丸ではなく過負荷リーダー代理、志布志飛沫の時間だ。
実は割と主人公気質な志布志さん。まあ過負荷は勝てないんですが。