すべからく全て不慮の事故です 作:カナーさん
「そりゃじゃまた後で、しぶっち先輩!」
そのまま夜の森に消えていく新たな後輩。
ち+しぶき。それを逆にしてしぶきち→しぶっちらしい。飛沫先輩、飛沫ちゃんは経験あるがしぶきちもしぶっちも初めて呼ばれた。なんだかむず痒い。
江迎にしろ大抵の同類は何故かあたしに対して敬う気持ちでもあるのか先輩呼びと敬語がほとんど。まぁしなかったらなかったらで問答無用でしばくのでとても新鮮な気持ちだ。
「んであたしは集合場所で待機でいいか?ちょっと考えたことあるし独りがいいんだけど」
「わ・す・れ・ず連絡さえしていただければ」
オーケーと適当に返して。アイツの仲間、弔について考える。
別にあたしはアイツのことは割とどーでもいい。勝手に死のーが投獄されようが興味ない。バックのおっさんがなに考えてんのかなんもわからんがそれを含めて敵連合に思い入れもない。
…ただ_いやいいか。
ざぁーと月に照らされた森がざわめく。
こんな日は肝試しとか盛り上がりそうだと眺めていると
「……っ」
手首から爆発するような熱に意識を持っていかれる。
過負荷とかそういうの抜きで個人的趣向の話をするなら江迎ちゃんはよくもやってくれたと思う。
こんな腐葉土のような状態ではかさぶたなんて作れないし作られない。子供の頃から結果的にかさぶたを作り続けてきたあたしからすればただ痛いだけでかさぶたも出来ないこの傷は…寛容に受け止められる。江迎ちゃんじゃなきゃ将来殺していた。
…やっぱり痛むなぁ…前ならテープが嫌がっても巻き付いていたのにな
…
『あなたから電話とは珍しいですね』
「なぁ面白い案があるんだけどリーダーに変わってくんね?」
赤点組のいる宿舎の部屋。そこ今しがた荼毘が倒され、再度この部屋に緊張の糸がピンと張る。
「つなぎの炎は目印としていいな。おかげで部屋がわかった」
聞いた覚えのない声。少なくともどちらの教師も目で瞬時に判断を下す。
だが聞き覚えのある、馴染みのある、最近覚え直した者はその光景を眺めることしか出来ない。
「おービンゴ。やっぱりここにいたかセロハン。探したぜ」
スッと現れた女に教師二名は迅速な行動をした。
目線より早く、歩行より早く、認識される前に_だが
パァン
数々の痛みが
刻まれた勲章が
日々の努力が
体の負荷が
一斉に彼等に牙をむけた。
それは人体から鳴っていい音ではなかった。
それは水気を含んだハンバーグのような。それはボーリングボールのような。それは剥がれる塗装のような。それは。それは。
肉体も精神もとても人が耐えれるものではなかった。
そんな惨劇を横目でも確認したであろう女は、道端にある標識を見るように視線こそ向けたがただの確認作業だった。
その劇を目撃した者達の方がよっぽど初心者のように過敏に反応した。口を鯉のように空洞にして目を蝋のように固めて。
先生がいるから安全。
誰の発言だったか。
…これが?
「あっそうだ。会えたことで大事なこと忘れてた」
もはや音を聞きたくない。
「これぐらい細々でもリーダー納得するかね」
残された彼の精神は現状を正しく認識出来ない。
彼は大丈夫なのだろうか。受け入れなれないこの惨状がただ彼に会う為だけに起きたことを。
ヒーローとして彼は前に進めるのか。
自分にとって少し特別な存在だった彼女を彼はどうするのか。
よかったな血液噴出しなくても既に溢れてるぜ