【FE風花雪月】クロード×イングリット外伝 双極の比翼【SS】   作:いりぼう

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帝国歴1180年、大樹の節。
フォドラの中心に位置するガルグ=マク大修道院にも、新たな季節を告げる風が吹き込んでくる。
この季節、聖セイロス教団の拠点でありながら士官学校としての側面も持つガルグ=マクには、高い志を持った若者たちが、新たな人生への一歩を踏まんとし訪れる。
今年もまた例年と同じように、多くの若者たちが大修道院へやってくる。
そしてこの若者たちが、後にこのフォドラの歴史を大きく動かすことになることは、今はまだ誰も知らない…。


第1章:邂逅
第1章 1節:入学式


ガルグ=マク大修道院。

統治する三国が隣接するフォドラの中心に位置し、民の多くが信仰する【セイロス教】の総本山であるこの施設は、宗教施設であると同時に、教団が擁する【セイロス騎士団】の拠点としても機能し、世界の秩序を図り、三国の均衡と平穏を守る重要な役割を担っている。

更には、騎士や傭兵等の兵士として戦うもの、各国や自領の統治者や政治家などを目指す若者を養成する士官学校も併設されており、この大樹の節には、志を持った若者達が新たに訪れ、このガルグ=マクを学び舎として一年間の研鑽を積んでいく。

今年も、士官学校には多くの生徒が集まった。

 

「ここが、ガルグ=マク大修道院、か…。」

 

クロード=フォン=リーガン。この男も、その生徒の一人。

フォドラを統治する三国の一つ【レスター諸侯同盟】の盟主であるリーガン家の嫡子であり、家系の事情ながらも、リーガン家の次期領主…すなわちレスターの次期盟主を、若干17歳という若さで任される人物である。

彼もまた、盟主としての知識、武術そして器量を学び、身に着けるという目的でここにやってきたのである。

 

(士官学校入学は俺の野望の足掛かり…。さぁ…色々と学ばせてもらうとしますか…!)

 

 

 

 

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(へぇ…見渡す限り、フォドラ貴族一辺倒、って感じだな。)

 

クロードは、自身と同じように今節から入学する生徒達を一通り眺める。

士官学校の生徒は、統治者を目指す者が多いこともあってか、やはり貴族出身者が多い。

身だしなみや姿勢などをきちんと整え、気高い雰囲気を醸し出している者も多いせいか、自身もまたフォドラ貴族でありながらも、その緊張感さえ感じられる空気に押し返されそうになる。

生徒達の中には、クロードが嫡子として各地へ訪れた際に見たことのある顔ぶれもいることを確認し、彼は不敵な笑みを見せた。

(三国から集まったとはいえ、これだけの粒揃いなんだ…。否が応でも、多くの秘密が収穫できそうだ…。)

 

「お~い!クロードく~ん!はやくこっちきなよ~!」

大きな声で彼を呼ぶ声がする。

彼の所属する【金鹿の学級(ヒルシュクラッセ)】の面々だ。

 

ガルグ=マクの士官学校は、それぞれ自身の出身に合わせ三つの学級に分けられる。

フォドラの南西を占め、長い歴史を誇る【アドラステア帝国】出身者が属する【黒鷲の学級(アドラークラッセ)】。

北の大地を統治する【ファーガス神聖王国】の出身者で形成される【青獅子の学級(ルーヴェンクラッセ)】。

そして、彼らレスター諸侯同盟に属する者たちの金鹿の学級だ。

各学級の級長は、よほどのことがない限り次期統治者となるものが担い、クロードもまた、次期レスター盟主ということもあり、金鹿の学級の級長を務めることになっている。

 

「お、みんな揃ってるじゃないか。」

クロードが集団に近づきながら、声をかける。

「クロードくんが遅いだけだよ~!」

「…ったく、級長なんだからシャキッとしろよな!」

他の生徒たちは、呆れた様子でクロードに返事をした。

「キョロキョロと辺りを見回していたようですけど、何してたんですか?」

…と、別の生徒から問いかけられると、

「いやぁ、左右どこを見渡しても名が通ってる貴族の出の者が多いからなぁ。圧倒されてただけさ。」

…と、おどけた表情を見せる。すると、

「どうせ君のことだ。観察をした上で、付け入る隙や利用できそうなところを探していたのだろう?」

そう言いながら近づいてくるさらに別の生徒。

ローレンツ=ヘルマン=グロスタール。

彼もまた、レスター諸侯同盟出身の貴族・グロスタール家の嫡子。

「おやおや、誰かと思えばローレンツじゃないか。」

「ずる賢さが取柄の君だ。ただただ他の生徒を見て圧倒されるなんて考えられないな。」

「相変わらず勘繰り深いねぇお前は。とか言って、実はお前がそうだったりしてな?」

ニヤリと不敵な笑みを浮かべながらクロードがそう問いかけると、ローレンツはえらく慌てた様子で、

「なっ!?そんなわけないだろう!一緒にしてくれるな!」

…と、答えた。

「二人とも、入学式はじまるってよ!」

「おう!今いくよ!…ほら、行くぜローレンツ。楽しい楽しい学校生活の始まりだぜ?」

クロードは他の生徒に応答し、どこか納得のいかない表情のローレンツと共に、入学式会場へと向かった。

 

 

 

 

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ガルグ=マク大修道院内の大聖堂。

生徒達でも入れる場所の中で、最も神聖な場所であるここで、入学式は行われる。

三つの学級の生徒がすべて集まり、大司教からは式辞が送られる。

(こういった形式ばった式典、ってのはあんまり好みじゃないんだが…。)

…と、少しけだるそうな表情を見せるクロード。

フォドラの民の多くが信仰者のセイロス教だが、士官学校生が必ずしも敬虔な教徒であるわけでもない。

クロードもまさにその一人で、教団の最高指導者である大司教からの式辞はほぼ女神からの啓示のようなもので、もはや彼にとっては馬の耳に念仏なのである。

「ふわぁ…。」

軽く欠伸をしてしまうクロードに、後ろからローレンツが

(クロード…!いい加減にしたまえ…!さっきからなんだって君は…!)

…と、小声で叱りつけた。

 

「では続いて、各学級の級長の紹介と共に、級長の証である外套を授与する。各学級長は前へ。」

そう言われると、黒鷲、青獅子の両学級の先頭にいる生徒がそれぞれ前へと進みだす。

(げっ…そんなのもあるのかよ…。ますますめんどうだな…。)

クロードは怪訝そうな表情を見せるが、これ以上ローレンツに小言を言われるのもまた面倒だ、と思い、他の級長と思わしき生徒同様に、前へと進んだ。

 

「あら、やっぱり貴方が級長なのね、ディミトリ。」

「そちらこそ、噂に間違いはなかったようだな、エーデルガルト。」

黒鷲の学級、青獅子の学級から出た生徒は、お互いに面識があるのか挨拶がてら声を交わす。

どこか牽制しているようにも見えなくもない様子に、この男が首を突っ込んだ。

「やぁ、お二人さんは顔見知り同士なのかい?」

「貴方は確か…クロードだったかしら?」

「そ、レスター諸侯同盟リーガン家のクロード=フォン=リーガンだ。他学級とは言え、よろしく頼むぜ。」

「…驚いたな。リーガン家が嫡子を発表したのは確か1年前。レスター盟主の家柄の嫡子なら当然といえば当然だが、本当に級長になるとは…。」

「それに関しては、年数ってだけであんたらとそう立場は変わんないはずだぜ?アドラステアの次期皇帝陛下様と、ファーガスの次期国王陛下様?」

「!?…私たちのことまでよく知っているのね…。」

「まぁ、次期盟主ともあらば、黙ってても色々と情報が入ってくるんでな。」

「次期盟主…!?」

「おっと、おしゃべりが過ぎたかな。あんまり自分の身のうち話をするのは好きじゃないんだが、そちらから話してもらえる分には大歓迎だぜ?」

相変わらず不敵な笑みを浮かべながら、会話の主導権を握るクロード。

情報量や話術に、エーデルガルトとディミトリと呼ばれた二人の級長と思わしき生徒は、ただただ圧倒されるだけだ。

「ま、別に戦争でもおっぱじめようってわけでもないんだ。仲良くしようぜ。」

そういってクロードは軽くウィンクする。

彼の気さくな雰囲気に最初よりは幾分か警戒心が解けたのか、二人も、

「えぇ、こちらこそよろしく。」

「お互い各学級の級長として、切磋琢磨しよう。」

と、返事を返した。

 

「それでは外套を授与します。皆さんは各学級の代表者。各々、生徒の皆が道を違わぬよう、そしてお互いに立派に成長し合えるよう、先頭に立ち、導いていただけることを願います。」

各級長に贈呈されるマントは、それぞれの学級のモチーフになる色が施されている。

エーデルガルトには赤、ディミトリには青、そしてクロードには黄色のマントが渡され、これを身に纏っていることで級長として証明されるのである。

三人はそれぞれ、そのマントを身に着け、各級長に直々に贈呈した大司教に深くお辞儀をすると、それぞれの学級の集団に戻っていく。

(ふぅ…やっと終わったか…。)

…と、クロードは身体をう~んと伸ばしながら、また軽く欠伸をする。

ふと、クロードは自分に何者かの視線があることに気付く。

(またローレンツかな…。)と、思いながら視線の向く方に目を配ると、ディミトリが級長を務める青獅子の学級の方から見られていることがわかった。

視線の主は、ブロンドの長い髪を後ろで一つの三つ編みで束ねた少女だ。

(お、誰だ?…わからんが、俺に注目してくれるってんなら、挨拶の一つでもしとくかな…。)

…と、クロードはその少女にウィンクを投げ返す。

少女は、ハッとなってふいっと首を横に向け視線を反らした。

(おや…こいつは失敗だったかな。)

そう思ったクロードは、何事もなかったかのように頭に手を回しながら、金鹿の学級の集団に戻っていった。

 

「おい、どうしたイングリット?」

先ほどのブロンドの少女に赤い髪の男が声をかける。

「…シルヴァン。私たちの級長が殿下で本当によかったわ…。」

「はぁ?急にどうしたんだ、お前…。」

少しイライラした表情の少女の反応に、キョトンとする男。

(…あんな適当そうな男が級長だなんて…。金鹿の学級は真面目に学ぶ気があるのかしら…。)

少女はそのようなことを考えるものだから、余計にイライラし、眉間に皺を寄せる。

「おいおい、入学式早々あんまりカリカリしてっと、皺が増えて婆さんになっちまうぞ~。」

…と、男が冗談を言うと、余計に少女は腹を立て、

「うるさいわね!」と、その男の足を強く踏みつけた。

痛がる男を他所に、少女は決意を改める。

(そう…こんな適当な男たちには絶対に負けない…!私の目指す立派な騎士になるためにも…!)

 

こうして、士官学校での新たな一年が、幕を開けた。

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