【FE風花雪月】クロード×イングリット外伝 双極の比翼【SS】   作:いりぼう

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対抗戦での活躍が認められたベレス率いる金鹿の学級は、その後の学級課題でも十二分な働きを見せる。
翌月の竪琴の節では、【赤き谷】ザナドに逃げ込んだ盗賊団の討伐を、騎士団の支援の下とはいえ立派にやり遂げた。
模擬戦とは違う、生死が隣り合わせの実戦でも無事に生き残り、与えられた課題を確実にこなした金鹿の学級の面々。
彼らの実力が本物であることを証明させたベレスに、大司教レアは次なる課題を言い渡す。
花冠の節の課題…それは、とある国の小領主の一人の鎮圧。
その人物は、あのイングリットやディミトリの母国・ファーガス神聖王国のガスパール領主であるロナート卿であった。


第3章:目の前の真実
第1節:協力要請


青獅子の学級が、ざわついている。

致し方無いことだ。

青獅子の学級の生徒達の母国である、ファーガス神聖王国。

その王国領の一つ、ガスパールを治める領主・ロナート卿が、セイロス聖教会に向けて兵を挙げたのだ。

ロナート卿は、かねてより教団に対し敵意を抱いていた人物だ。

とはいえ、突然の反乱にファーガス出身者は動揺を隠せない。

 

「ロナート卿…一体、どうしたと言うのだろうか。」

ディミトリの声色からも、困惑の色が滲み出る。

「さすがの殿下も、今回ばかりはさすがにお困りだよな。」

「えぇ…。自国の領主の一人が謀反だもの。しかも突然の報せ…無理もないわ。」

そんな彼を見たシルヴァンとイングリットはそう話す。

「…フン、馬鹿馬鹿しい。猪が悩む事でもないだろう。」

そう悪態をつきながら二人に近づいたのは、ディミトリのもう一人の幼なじみ・フェリクス=ユーゴ=フラルダリウス。

後頭部で結った漆黒の長髪と細見の身体が特徴の彼も、ファーガス神聖王国の貴族の一人。

「フェリクス!殿下に無礼が過ぎるわよ!」

「悩むぐらいなら、最初から縄を繋いでおけばよかったんだ。そもそもセイロス教に対して敵対視しているのは、最初からわかっていたことだろう。牙を研ぎ澄ませてなければこうも考えが甘いのか、あの猪は。」

「フェリクス、いい加減に…!!」

「まぁまぁ、二人とも落ち着けって。」

容赦なく発言するフェリクスに、憤るイングリット。

その二人をなんとかなだめようとするシルヴァン。

そんなやり取りをしているところに、とある人物がやって来た。

 

「よ、邪魔するぜ。」

クロードだ。

「クロード?どうしたんだ、わざわざここまで来て。」

「急に悪いな、ディミトリ。実はちょっと頼みがあってね。」

先ほどの困惑した表情を押し殺して対応するディミトリに、クロードはいつも通りの飄々とした態度で依頼をしてきた。

「頼み?」

「あぁ。もう聞いてるよな、ロナート卿の話。」

「もちろんだ。俺達の国の小領主なのだが、セイロス教に対して挙兵した…。元々セイロス教に対してあまりいい目をしていないと聞いてはいたが、まさか謀反まで起こすとは…。」

また困惑した表情に戻っていくディミトリだが、クロードにとってはその話は別に興味のある話ではない。

聞き流した上で、自身の依頼を進めようとする。

「そのロナート卿およびその軍勢の鎮圧なんだが…どうやら、次の俺達の課題らしいんだよ。」

「そうなのか!?俺達ファーガスの問題なのに、またどうして…?」

「深い事情までは知らんが…狙いはセイロス教団だし、わざわざファーガス出身者をぶつけて何かあった時にゴタゴタになるのを避けたかったんじゃないか?」

「そういうことなら合点はいくが…なんだか忍びないな、お前達に任せるのは。」

「…って言うと思って、【頼みがある】って言ったんだよ。聞いてくれるか?」

クロードは不敵な笑みを浮かべながら、ディミトリを見る。

 

――――――自国の問題を解決してくれるのなら。

そう思ったのか、ディミトリは笑顔で承諾した。

「俺はベレス先生に借りもある。応えられるものなら協力しよう。」

「二つ返事とはありがたい。じゃあ、単刀直入に頼む。次の課題…ロナート卿とその軍勢の鎮圧に

 

 

 

 

 

アッシュを借りたい。」

 

クロードの一言に、青獅子の学級の中は更にざわついた。

アッシュ=デュラン。

灰色の短髪に、そばかすが目立つ幼い顔立ちをした少年だ。

先日の学級対抗戦でも選抜された生徒で、青獅子の学級の中でも随一の弓の使い手。

だが、それ以上にざわついた理由が彼にはあった。

「アッシュを…?なぜまたアッシュを課題協力に!?」

「今回の課題は、前回の盗賊団と比較しても遥かに戦力的に厳しい相手だ。もちろんセイロス騎士団が出向くわけだし、俺達の課題はあくまでその【事後処理】だが、何があるかは現地じゃないとわからない。できる事ならお互いに犠牲者は出したくないし、話し合いで解決する相手なら、わざわざ戦う必要もないだろう?」

 

そう、クロードは事前に知っていたのだ。

アッシュは、今回の標的であるロナート卿の養子であることを。

彼がいれば、和解で事を収束できる手札になり得るのではないか。

そう考えた上での彼への協力要請なのだ。

「…なるほど、それでアッシュか。よく知ってたな。」

ディミトリのその言葉に、クロードは益々不敵な笑みを浮かべて返す。

「俺は用意周到なんでな。」

そして、彼の視線は話題の中心であるアッシュに向く。

「どうだ、アッシュ。俺達に協力してもらえないか?」

 

教室内のざわつきは、当然収まらない。

彼の身辺関係を知る者ばかりなのだ、無理もない。

そんな事は、クロードの想定通りだろう。

そして、【彼女】が黙っていないことさえも。

 

「クロード、黙って聞いていればいけしゃあしゃあと…!アッシュの立場をわかって言ってるのかしら!?」

先程まではフェリクスの悪態で憤っていたイングリットが、矛先をクロードに変える。

彼女の怒りも当然だろう。

むしろ学級内の意見を代弁している、という表現でも間違いない。

「ロナート卿は、養父とはいえ彼の父なのです!なのに、そのロナート卿の鎮圧に彼の力を借りるとは…貴方には人の血が流れてるのかしら!?」

「だからその点に関してはさっきも言ったろ、イングリット。アッシュはあくまで【和解で収める】為の協力だ。戦闘になった場合は真っ先に騎士団が動くし、こっちには先生もいる。更には騎士団でも随一の剣の達人…【雷霆】のカトリーヌさんも加わるって話だ。無理に戦ってもらおうなんざ思ってないさ。」

「だとしても、目の前で家族と知り合いが戦ってるところを嫌でも見ることになるでしょう!?それはさすがに…!」

そう言いかけたところで、横槍が飛んでくる。

「俺は賛成だぜ?彼も被害を最小限にしよう、って言ってんだ。それなら、勝手知ったる人物を選ぶだろうよ。」

シルヴァンがイングリットの肩に手をかけながら、クロードの作戦に肯定する。

「戦う所を見るのも仕方のない話だろう。王国民だろうが、身内だろうが、反乱を起こしていることには変わりない。奴の言う作戦で和解ができないなら、斬るしかないだろうしな。」

後ろからフェリクスも、肯定しながら近づいてくる。

「おや、お二人さん。わかってくれるとは頼もしいねぇ。」

「お前さんの暗躍っぷりは、対抗戦で十分に見させてもらったからねぇ。むしろ、王国内の話をゴタゴタさせずに片付けてもらえる、ってんなら俺としては万々歳だしな。」

「少々小狡い作戦だったが、圧倒した以上、実力は本物だろうな。面白いからあいつが協力しない、って言うなら俺の剣で片っ端から斬り捨ててやってもいい。」

「ちょっと二人とも!何を勝手に話を…!!」

4人でやり取りをしている中、ディミトリがアッシュに近寄っていく。

「お前はどうなんだ、アッシュ。」

「え…?」

「クロードが協力を依頼してるのは、他でもないお前だ。お前の意志を尊重すべきだと、俺は思ってる。」

ディミトリは、真剣に彼に伝えた。

「もちろん無理にとは言わないさ。他学級なわけだし、強引なのは俺の性に合わない。ただ、お前がいてくれると、俺としては助かる。」

クロードも、アッシュには真面目に言葉をかけた。

「僕は…。」

彼は少し俯いて考えたが、思い立ったように立ち上がった。

そして、

 

「…できれば戦いたくないです…。けど、僕は今回の事…ロナート様から何も聞いていないんです。だから…本当の事を知りたい…!」

彼に真っ直ぐな瞳で見つめられたクロードは、またニヤリと笑みを浮かべ、

「決まりだな、よろしく頼むぜ。先生には俺から言っておくよ。」

…と、言って、アッシュの肩をポンと叩く。

「すまない、クロード。ファーガスの事でお前達に迷惑を掛けてしまって。アッシュの事、よろしく頼む。」

ディミトリに頼まれたクロードは、ひらひらと手を振りながら教室を後にした。

 

「いいんですか、アッシュ?ロナート卿と対峙することになるかもしれませんよ?」

イングリットは、心配そうにアッシュに問いかける。

それを見たフェリクスは怪訝そうだ。

「チィッ。お前もしつこいぞ。こいつがそう決めた以上、余計な心配をするな。」

「で、でも…。」

そんなイングリットを見て、アッシュは微笑みながら返事をした。

「心配してくれてありがとうございます、イングリット。確かに言ってる通り、ロナート様と戦うことになってしまうかもしれない…。できることならそれは避けたいです。でも、そのためにクロードは僕に協力を求めてきた。求めてることは一致してるんです。それに…。」

「それに…?」

「さっきも言ったけど、今回の反乱について…僕はロナート様から何も聞いてません。ならば、理由を聞いてみたい。本当の事を知りたい。もしかしたら、理由によっては本当に争わなくて済むかもしれない。」

アッシュは自らの拳をぎゅっ、と握りしめた。

「…アッシュの方が、大人だったな。」

シルヴァンが、ニヤリとしながらイングリットに言う。

「うるさいわね…!」

イングリットは痛いところを突かれ、むくれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「これでよし、と…。」

帳面に何かを記入しながら、クロードは呟いた。

「何の猜疑心もなく協力してくれた、ディミトリとアッシュには感謝しないとな。これでまた、色んな事がわかりそうだ。」

うんうんと頷きながら、納得の表情を見せる。

 

士官学校に入学してから、色んな事が起きすぎている。

課外活動での盗賊団の襲撃、謎の傭兵業の親子、ザナドでの盗賊討伐という課題…。

そして突然のファーガスでの反乱。

(【色々起きている】と言うよりは、【色々噛み合いすぎている】…ってところか。)

書き終えた帳面を、目を細めながら眺めるクロード。

(俺達の知らないところで、何か大きな物が動いていて、今までのはその序幕に過ぎなくて…。知らず知らずのうちに俺達はその渦中に…?)

考えているうちに、難しい顔をし始める。

当然、答えなど出るはずもない。

そう悟ったクロードは、帳面をパタリと閉じた。

「…まぁ、いずれわかるか。その為に手を打ったんだ。後は【果報は寝て待て】ってね。」

最後にそう呟いたクロードは、寝台にゴロンと横になり、目を瞑った。

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