「改めて、本日よりこの501基地の仲間になる白上昴さんです。階級は存在しませんので、軍としての命令権はありませんが、ここにいる間は私たちの指示通りに動いてもらう事になります。」
「改めまして、白上昴です。よろしくお願いします。」
改めてミーナが昴を紹介し、昴も改めて名乗ったところで控え気味に手を上げるものがいた。
「リーネさん。どうかしたの?」
リーネと言われた少女、リネット・ビショップ曹長は昴と目線が会うと、少しおびえた様子を見せながら質問する。
「階級が存在しないっていうのはどう言う事なんでしょうか?」
リネットのその問いにミーナはゴホンと咳ばらいをしたのちリネットだけではなく、全員に伝わるように説明を行う。
「白上さんに階級がない理由としては、彼が軍属ではないことが理由よ。」
「それじゃあさっき白上さんが言っていた特殊臨時隊員というのは何ですか?」
次にリネットとは対照的に元気よく手を挙げたのは宮藤だった。
ミーナは事務的な態度を崩さず、宮藤の問いに答える。
「白上さんは正確に言えば統合戦闘航空団専用のウィッチ…ウィザードで、各地の統合戦闘航空団の臨時隊員という扱いになっていて、他の部隊で活動することはない様になっているの。」
「まぁ、詳しいことは本人に聞け、取り敢えず今は別名あるまで待機だ身体を休めておけ。」
「そうね、個別の紹介は改めてしましょう。」
坂本とミーナの言葉に全員が敬礼を返し、ミーナが坂本に後を頼むと、とある人物が昴の背後から飛び掛かり、胸を揉みしだく。
「うおっ!」
「どうだ?ルッキーニ。」
「んーカチカチー。」
「だろうな。」
その様子を愉快そうに見つめる少女、シャーロット・E・イェーガー大尉は手を差し出し握手を求め、昴もこれに応じて手を取る。
その状態のままシャーロットはもう一人を指しながら自己紹介をする。
「シャーロット・E・イェーガー大尉だシャーリ―って呼んでくれ、今お前の背に負われてるのはフランチェスカ・ルッキーニ少尉、よろしくな。」
「宜しくお願いしますシャーリー大尉、ルッキーニ少尉も。」
「あー軍属じゃ無いんだろ?階級とか敬語とか無しで行こう。」
「そうか?宜しく頼むよ。」
そう笑顔で返しながら昴は、背中に乗っているルッキーニの頭を軽くなでると穏やかな表情をして、そのまま寝てしまった。
「ありゃ寝ちまったか、じゃぁ私はルッキーニを部屋まで持っていくよ。」
そう言ってシャーロットは昴の背中からルッキーニを引きはがし担いで部屋から出ていく。
「私、リネット・ビショップって言います…よ、宜しくお願いします!」
「あ、ああ宜しく頼みます。」
まるで一世一代の告白の様に差し出された手を取ると、リネットは顔を真っ赤にさせて凄まじい速さでブリーフィングルームを後にする。
昴がその様子を見ていると、隣にいる坂本がパンパンと手を鳴らし各隊員に告げる。
「すまんが、白上には今からやってもらうことがある、自己紹介はその後でしてくれ、宮藤も一緒にこい。リーネも連れて行きたかったがあれでは無理だな…。」
「やる事…ですか?」
「決まっているだろう?テストだ。」
501の面々に碌に挨拶もできぬまま、俺は坂本少佐に連れられハンガーに来ていた。
これから何をするかは大体想像がつく、恐らく俺の実力が知りたいのだろう。それ自体には特段問題はない、普段通りの動きが出来れば。
今俺の真後ろにはゲルトルート・バルクホルン大尉とエーリカ・ハルトマン中尉がいる、二人は俺が最初に配属された部隊にいた時からスーパーエースとして言われていて、宮藤軍曹、坂本少佐も扶桑では英雄扱いされている為、かなり緊張しているのだ。
それに加えて、バルクホルン大尉が此方を目の敵の様に睨んでくる、やはりまだ信用されていないのだろう、壁を感じる。
それに対しハルトマン中尉は、共通の知り合いがいた事でそれほど壁を感じない。
「いやーまさかシラカミがウルスラと知り合いだったなんて知らなかったよ。」
「507にいた時に知り合いました、色々と助けてくれましたよ。」
「そっか。」
そう言って笑うハルトマン中尉の姿はどんなに幼そうに見えてもやはり姉なのだなと思わせる物だった。
それなら
すると予想外にバルクホルン大尉が興味を示した。
「それは?」
「これは高圧縮魔力砲、通称HMGの試作型です。ウルスラさんの協力で完成したんですよ。」
「高圧縮魔力砲?」
そう問うたのは宮藤軍曹だった、彼女は余りにも一般的では無い武装を理解できていない様で、他の面々も同じ様な顔触れだった。
「いわゆる魔力を弾にして打ち出す銃です。」
「!」
俺のその言葉に全員が驚いた様な顔をする。
しかし坂本少佐は同じ様な物を聞いた事が有るのか余り驚いていなかった。
「前に一度聞いた事があったが、まさか完成していたとはな。」
「幾つか完成品はあるらしいですが、そもそもこの武装がとても実戦で使える様な物じゃなかったですからね。」
「どうしてですか?とっても強そうなのに。」
宮藤軍曹のその言葉にバルクホルン大尉は呆気に取られハルトマン中尉はニシシと笑っていた。
「宮藤、私達は魔法力を使って飛んでいるんだ、そんな中で魔法力を消費して打つ銃を撃ったらどうなる。」
「あっなるほど。」
「まぁミヤフジなら、使えそうだけどね。」
「どういう事ですか?」
「いや、なんでもない。」
坂本少佐の説明で察したのか成程と手を叩く宮藤軍曹、それと、ハルトマン中尉の私見はひとまず置いておこう。なんだか想像出来るけど。
「ま、まぁ、その様な欠点があった為実戦に投入する事は出来なかったんですが、俺の固有魔法で先程坂本少佐が仰ってた欠点は無いに等しくなりました。」
「ふむ…それで?お前の固有魔法とは?」
「俺の固有魔法は“変換”です。あらゆるエネルギーを魔法力に変換する事が出来ます。」
「成程そうすると、その銃と一緒に入ってたその黒い箱が関係あるのだな。」
坂本少佐が木箱の中身を指差しながら尋ね、俺は箱の中から2つの黒い箱を取り出して答える。
「そうです。これは単に電力を溜めておく物なんですが、これを…こうして。」
俺はその2つの蓄電池を腰にしっかりと固定し、ストライカーを穿いて魔力砲を持ち、武装の下部から飛び出ているプラグを蓄電池の差し込み口に差し込む。
すると、キュィィィィーンと甲高い音が鳴り響く。
「こんな感じですね。後は実際に見てもらった方がいいと思うんで、的を出してもらってもいいですか?」
俺のその言葉に坂本少佐は分かったとだけ言って整備兵に指示をするとすぐに訓練用のバルーンが10個ほど空に打ち上がった。
「何時でも大丈夫だ、お前の実力を見せてみろ。」
その言葉を聞いて俺は徐々にストライカーに送る魔力を強めていく、その俺の動きに同調するかの様にプロペラの音も大きくなっていき、まるでストライカーと合わさって、感覚が研ぎ澄まされていく。
俺はこの感覚が好きだ、きっと其れだけはずっと変わらないのだろうと思うと、自然と先程まで感じていた緊張はどこかに行っていた。
今はただ、空に行きたい。それだけだった。
「白上昴、出るぞ。」
ストライカーが男を乗せて飛んでいく、滑走路を越え、蒼き空に一筋の白を残しながら登っていき少ししたところで停止する。
『目標高度に達した。砲撃許可を。』
「許可する。」
白上と少佐の短いやり取りの後アイツは動いた。
三度引き金を引くとタタタッ、と心地よいリズムが地上まで微かに聴こえてきた。そして、銃身から飛び出た、短く青白く光る弾丸は確かな威力を持って訓練用のバルーンを次々と破壊していく。
私はその光景を見て酷く絶望した。
初めあの装備を見て、私達の祖国奪還が早まるかと期待していたが、蓋を開けると今までのものに毛が生えた程度、此れでは祖国奪還までの道のりは早まりはしないだろう。
そう思うとウィザードなどにも興味が失せ、自身の疲れを取ろうとしたその時、ネウロイ出現を知らせるサイレンが鳴った。
『南西の方角1500mより大型ネウロイを一機確認、此方に向かって真っ直ぐ飛んできています。』
その言葉とともに私達は動き出すが空から其れを制する者がいた。
『出撃する必要はない。此処から狙撃して排除する。』
何を馬鹿な。そう思った、此処から狙って当てるなどリネット曹長でも難しいだろう、ましてやコアの位置さえ分かりはしないのだ、そんな状況で失敗でもして基地を攻撃されたら事だ、そう思い言葉を無視してハンガーに向かう。
しかしそれは少佐に止められ、白上の提案を是とした、その事に疑問を呈したが「試す価値はある」との事だった。
ミーナがよく「扶桑の魔女って…」とぼやいていた気持ちが今ならよくわかる気がする。
そうして少佐が許可を出すとスコープを覗き込む。
『魔法力充填開始…20%…50%…70%』
そう呟く声がインカムから流れてくる、呟く数字が大きく成程、銃身が青白く光り輝きその輝きを強めていく。
『90%…100%。ハルトマン中尉、貴方の妹の成果をお見せします。ファイヤ!!』
そう言った瞬間、空を切り裂かんばかりの光線が走った。
一瞬遅れて凄まじい爆音と、衝撃波がやって来て呆然としていた私とハルトマン、宮藤を襲う。
その威力は凄まじく、光線は地平線の彼方まで伸びて行き、大型のネウロイなら消し飛んでしまうだろうと思えるものだった。
やがてその光は消えて、有るのはいつも通りの空だけだった。
『…ネウロイの消失を確認…警戒体制を解除します…。』
少し遅れて聴こえてくる管制塔からの声。
彼らも先程の光景が信じられない様だった、それは私達も同じで空にいる白上を呆然と見ることしかできなかったが、私は先程のこと以上に白上自身の事が気になって仕方が無かった。
あれ程の力を持って、何の為に戦うのか、其れが如何しても分からなかった、ネウロイに対する憎しみが有るわけでも無さそうだしアイツの場合使命感と共に志願して戦場に出てきた訳では無いだろう。
だから気になる、一体何をしたいのか。
私はゆっくりと戻ってくる奴を見据えながら隣の少佐に尋ねる。
「私とアイツで模擬戦をしたい。」
私の読み通り少佐は直ぐに頷いてくれた。
出来るだけ時系列に矛盾がない様に気をつけますが、もし矛盾しても大目に見てください…