白雪の閃光   作:おいいいいい

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今回の話は予想以上に長くなったので2分割ですよ。

戦闘シーンちゃんと描けてたらいいなぁ


#03 Wings

「おっ、左捻りこみ。やるなぁ。」

 

双眼鏡を覗いて空中で行われている模擬戦を見ながら、そう呟く。

空中では宮藤さん、クロステルマン中尉が踊るように、互いに背後を取り合っている。

そして今まさに宮藤さんが背後を取り、引き金を引くが外してしまった。

そのせいで相手に隙を与えてしまい、撃墜判定となってしまった。

しかし…、普段、宮藤さんとは組むことはないがあんな動きだったか…?

 

「少佐、宮藤さんの動き何か何時もと違う気がするんですが。」

 

俺は先ほど感じた疑問を隣で険しい顔をしながら彼女らを見る坂本少佐にぶつけてみた。

 

「ふむ。やはり白上もそう思うか。後でこちらで確かめてみよう。」

 

そんなこんなと話しているうちに彼女らの模擬戦は終わり此方に戻ってくる。

結果は三戦三敗、宮藤さんの負けだ。

どうしたのやら。と何となく思っていると少佐に声を掛けられる。

 

「白上!次はお前だ。ハンガーに行け。」

 

「了解。因みにですがお相手は…?」

 

「何時もと同じだ。本人の希望でな。」

 

「了解しました。」

 

何となくもう分っている質問をして、またか…と、思いながらハンガーに向かう。

彼女との戦績は六勝十敗。今日こそは勝とうと生きこんでハンガーに向かうと、目的の人物が待っていた。ストライカーを履いて。

 

「待っていたぞ、白上!」

 

「お待たせしました。準備は…いいみたいですね。」

 

彼女の準備万端といった様子を見て、思わずため息がでる。

全く、この人は何が楽しくてこんなにウキウキしているんだろうか。

そんなことを思いながら、ストライカーを履き、全身に魔力を流す。すると、頭から鷲の羽のようなものが出てきて、頭をクリアにしてくれる。

 

「いつもので?」

 

「いつものだ。」

 

短い言葉のやり取り、それだけですべてを理解する。

互いに極限まで集中力を高める。

先程まで何が楽しいのかとか思っていたのだが正直言って、この感覚は癖になる。

 

「バルクホルン出るぞ!」

 

「白上昴、でるぞ。」

 

二人してほぼ同時に空に飛び立った。

 

 

 

 

ハンガーから二つの機体が飛び出してくる。

それらはほぼ、同じ速度で滑走路を突き抜けていき、空へと飛びあがる。

 

『目標高度に到達、合図を。』

 

暫く行ったところで止まり坂本のインカムに男の声が流れる。

坂本は迷いなく次の言葉を発する。

 

「始め!!」

 

その言葉と共に向かい合っていた二人は動き出す。

バルクホルンはMG42の弾丸と薬莢を空中に派手にばらまく。しかしこれは牽制、只の切っ掛けでしかない。

その事を十六回に及ぶ戦闘から学んでいた白上はバレルロールを行い弾丸を回避する。

そのままシャンデルを行いバルクホルンと向かい合う状態になり、互いにロールを行いながら銃弾をばら撒きながらすれ違う。

そのまま互いに相手を見据えながら高所を取るために高度を上げていく。

 

「ふっ、さすがにこの程度はできるようだな。」

 

「舐めないで下さい。どんなウィッチでもこれくらいはできますよ。」

 

「なら、これはどうだ!」

 

そう言うとバルクホルンはストライカーに流す魔力を弱める。

すると急速に速度が弱まりそのまま下に落ちていく、落下速度が最大になったところで再びストライカーを吹かし急上昇する。

 

「っ!」

 

今まで相手の上を取るために全速力を出していた白上はバルクホルンの動きについていけず、背後を取られてしまった。

銃弾が迫る。

しかし、白上はそのまま速度を上げループを行う。だがループの頂点にあたるところで背面姿勢を取りながらロールを行い弾丸をよけつつ、バルクホルンと向かい合う形になる。

 

「なっ!」

 

まさか今のを躱されるとは思っていなかったバルクホルンは一瞬の動揺を見せたが、すぐに持ち直し引き金を引き続ける。

恐らくここがこの勝負の正念場になるだろうと、両者ともが思っていた。

その為かわずかに武器を握る力が強まる。

数多くの銃声が空に響き渡る中で、ダダン!!と明瞭に聞こえるものがあった。

二人は再びすれ違い少し行ったところで止まる。

一瞬の静寂が流れ、男が口を開く。

 

「だから舐めるなといったんです。」

 

バルクホルンの軍服はオレンジ色のペンキによって汚れていた。

 

 

 

 

「と。いうわけで今日は俺の勝ちですね大尉。」

 

「まさかあれを躱されるとは思わなかった...。」

 

「油断したなバルクホルン。」

 

「じゃぁ今日はお願いしますね大尉。」

 

俺と大尉の間で取り決められたルール。

それは模擬戦で負けた方がハルトマン中尉を起こすというものだった。

前までは大尉が起こしてたみたいだが、そのことを愚痴っていた大尉を見て「なら模擬戦で負けたら自分も起こすの手伝いますよ。」と俺が軽はずみに言ったことが原因だ、実際にやってみるとあそこまで面倒くさいとは思わなかったが。

 

「まぁ、仕方がないか。もともと私がやっていたことだからな。」

 

そう言って大尉は少し肩を落としながら宿舎の方に戻っていった。

 

「しかし、お前も最初に来た時よりも腕を上げたな。」

 

「ありがとうございます。まぁ毎日エースに扱かれてたら嫌でも上がりますよ。」

 

そう言って朗らかに笑う坂本少佐は俺の言葉を聞いて表情を引き締め続けた。

 

「だが、お前はまだ本気を見せてないだろう?」

 

「っ!」

 

「いや、正確には航空技術に関しては今見せている物が全てだろう。問題はそれ以外だ。」

 

どうだ?と言わんばかりの視線を受け降参とばかりに両手を上げ溜息を吐く。

 

「少佐には御見通しですね、どうして気づいたんですか?」

 

「お前の武器の特性を考えたらな。」

 

「まぁ、それは余程の事がない限り使いませんし、多分見ることはないと思いますよ。」

 

「少し気になるがそう言うなら深く聞かないようにしよう。」

 

そう言って少佐はハンガーの方に向かう。

 

「どちらへ?」

 

「宮藤のストライカーの点検だお前も来るか?」

 

「いいえ、自分はもう少し飛んでいようと思います。」

 

「そうか。」

 

そう短く答えて少佐は歩みを進め、俺は再び空に飛びあがった。

 

 

 

 

その次の日、白上達はブリーフィングルームにいた。

 

「連合軍司令部によると、明日にはロマーニャ地域の戦力強化のため、戦艦大和を旗艦とした扶桑艦隊が到着する予定です。」

 

そんなミーナの説明に白上は半分ほど耳を傾けながら、もう半分で昨晩の事を思い出す。

 

(魔法力は十分にあるのに飛べない、か…。そんなことがあるのか?)

 

昨晩、偶然宮藤達が話しているのを聞いて、しっかりとペリーヌの怪我を直しているのを見ている。

 

(あり過ぎて受け止めきれないとか?いや普通に考えてそれはないな。)

 

白上自身もやろうと思えば無尽蔵の魔力を創り出すこともできるが、それは外部に変換できるエネルギーがある場合に限る、そんなストライカーが受け止めきれないような魔力を個人で創り出すことができるわけがない。

そんな事を考えていると大和が事故により怪我人が多数でている通信が入った。

 

「私に行かせてください!」

 

皆が騒然とする中真っ先に発言したのは宮藤であった。

続いてリーネもそれに賛同するかのように続く。

そんな様子を見て白上以外にの全員がやれやれと言った様子で笑みをこぼす。

また、ミーナと坂本もウィッチの方が早く到着することができると考え宮藤たちの案を採用した。

 

「なら、俺も護衛としてついていってもいいですか?最近の様子を見るに宮藤さんは不調の様ですし、ネウロイが出たときにリネット曹長一人じゃ危ないでしょうから。」

 

「そうね、お願いするわ、白上さん。」

 

白上はただ単に彼女らが心配だから名乗りを上げたわけではなく、興味があったのだ自身が自由に飛べなくても人を守るために行動する宮藤が、彼女が何を成すのかを。

 

 

 

 

 

大和に着くと予想以上に怪我人が多くその多くが深い傷を負っていた。

宮藤さんは隊員から説明を受けるとすぐに施術を始める。

彼女が両手をかざすと青い光が部屋を照らし、見る見るうちに怪我がふさがっていく。

 

「すごいな…。」

 

思わず素直な感想が口から出る、しかし、宮藤さんはそんな事は気にしていないかのように次々怪我人を直していく。

そうして暫くして全員の処置が終わった。

 

「次はどの方ですか?」

 

「いません、これで最後です。」

 

「良かったね芳佳ちゃん!」

 

「うん!」

 

「俺の出る場面はほとんどありませんでしたね。さすがです。」

 

そうやって宮藤さんを労っていると、警報ブザーがなり艦内が慌ただしくなる。

 

「ちっ、どうやら場面が出来たみたいです。ここで待っててください。」

 

「私も行きます!」

 

彼女の性格上、そういうのは分かりきっていた、しかし今は一刻を争う、少女の我儘を聞いている暇はない。

既にネウロイとの戦闘が始まっているのか船が大きく揺れる。

 

「駄目です、ここにいてください。今あなたに出来ることはありません。」

 

「でも!」

 

このような言い方でも彼女が折れないことはないだろうと思っていた。

宮藤芳佳という人物について俺はあまりよく知らない、だが、ガリアの事も耳に挟んでいるしここ数か月共に過ごすことで彼女の性格は理解できていた。

彼女を突き動かすものは『守りたい』という強い意志。

それを変えたり、止めたりするのは誰であろうと出来ないだろう。

だから、こんな言葉を受けても彼女は折れないだろう。

でも、言わなければならない、彼女を殺さないために。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ」

 

「行きましょう、リネット曹長。」

 

「は、はい。ごめんね芳佳ちゃん…。」

 

 

 

 

格納庫に着くと艦長から無線が入る。

 

『すまない、君たちの力を借りることになってしまう。』

 

「いえ、構いませんそれで数は?」

 

『男の声…?そうか君が…。数は大型が三機、方位三四〇より此方に向かってきている。』

 

「分かりました。最優先目標は?」

 

『…察しがよくて助かる。出来ればすべての敵機の撃破が好ましいが、艦隊が撤退するまでの時間を稼いでほしい。少なくとも今、大和を落とされるわけにはいかない。』

 

その命令に「了解」と短く返すと、ストライカーを履き武器を取る。

プラグをライフルに接続し、キィィィンと電気が流れだす音が聞こえる。

 

「リネット曹長、君は大和の護衛だ。余裕があれば援護してくれ。」

 

「一人でやるつもりですか!?そんなの無茶です!」

 

「しかしやるしかない。」

 

そう、やるしかないのだ。

現状、まともに戦えるのは俺とリネット曹長だけだ。

艦隊も応戦してはいるが、圧倒的な力の前に成す術がない。崩れるのも時間の問題だろう。

 

「白上、でる。」

 

 

 

 

空に上がると戦況は思いのほか悪く、艦隊はほぼ壊滅しかけていた。

敵の三機のうち一体が此方に気づき小型のネウロイを飛ばし、ビームを放ってくる。

白上はそれを危なげなくかわし、電気エネルギーを魔力に変換した蒼き銃弾で小型のネウロイを破壊していく。

白上は小型の物には意識を向けず本体の方を撃破するために動く、まずはコアを見つけるために手辺りに表面を削っていく。

大和からの砲撃も加わって、意外に早く終わるかと思ったが、残りの二機が狙いを白上に向けた。

小型ネウロイを白上に差し向ける。

そして大型の一機が大和へと向かう。

大型のネウロイから無数のビームが大和へと放たれるが、待機していたリーネがシールドで防ぐ。

しかし、その数が半端ではない、それを何とか塞ぎきるが、恐らく長くはもたないだろう。

 

「くっ……!!!」

 

その様子を見て白上は焦燥感に駆られる。

このままでは作戦は失敗に終わる。そう感じた白上は一段階魔力を高め攻撃を行う。

まとわりついてくる小型ネウロイを撃破しつつ大型ネウロイに攻撃を行う。

すると表面が削れ中からコアが露出した。

それに向けて引き金を引くが弾が出ない。

 

「くそっ!弾切れか!!」

 

充填している時間はない、しかしこのタイミングを逃せばチャンスはないだろう。

そう思った白上は銃身を上にあげワンアクションで銃口にあたる部分を切り外す。

この武器は先端の槍のようなところが取り外せるようになっており、その材質は魔力をため込みやすい材質で出来ている。

それだけであるならば只手入れのしやすい武器ではあるが、白上昴が扱うとなると話は変わってくる。

彼の固有魔法は『変換』である、そして取り外したばかりの銃口は僅かだが魔力を帯びている。

つまり―――

 

「破ぁぁぁぁぁ――――――!!!!」

 

白上は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

その瞬間わずかに残っていた魔法力は全て、運動エネルギーに変換され、小型ネウロイを蹴散らしながらコアに向けて突き進む。

その勢いは収まることなく、コアを貫いた。

大型ネウロイが撃破され、白雪の様な破片が散らばる。

だが、それにかまっている暇はない、白上はすぐさまプラグを腰に下げていたもう一つの蓄電池に差し替え、スペア用の銃口を取り付ける。

 

「リネット曹長!そちらは大丈夫か!?」

 

『大和艦隊は撤退していきました!私はまだなんと…っ!!ぐっ、きゃあぁぁぁ!!』

 

「くそっ!」

 

リーネのその声を聴き白上はすぐに向かおうとするも、もう一体の大型ネウロイが出す小型ネウロイにまとわりつかれてうまくいかない。

 

「邪魔をするな!」

 

彼は怒号を上げながら再び武器を構える。

 

 

 

 

 

 

 

その様子を宮藤は甲板から見ていた。

空では友が、仲間が戦っている。

白上が一機落としたようだがすぐにリーネの救助に行けないことは明らかだった。

宮藤は格納庫へと走る。

そこにある自身のストライカーユニットである、 零式艦上戦闘脚二二型甲を履く。

魔法力を込めてみるが何も反応はない、まるでストライカーが彼女を見放したかのように。

 

「動いて!!」

 

再び魔力を流すが動かない。

 

「動いてよ!!どうして!!」

 

動かない。

 

「どうして!!なんで飛ばせてくれないの!?」

 

動かない。

彼女は苛立つように、嘆くようにストライカーに拳を叩きつける。

ガンッ!という音が格納庫に響き渡る。

 

「ごめんなさい…お父さん。」

 

ぽつりとつぶやく言葉は酷く震えていた。

 

「私約束守れない。もう飛べない、もう、誰も守れないの。」

 

それは、古き日に父と交わした約束。

それが彼女の意志を形作るものであり、彼女の行動原理その物だった。

だがそんな大層な意思も今となっては無意味なものだ。

いくら大層な夢を掲げても、実現するための方法が無ければ意味がないのだから。

 

「リーネちゃん……。」

 

そう小さく呟いた声は何の為か、祈りだろうか、それとも、贖罪だろうか。

 

船が大きく揺れ、宮藤はそのまま地面に転がり落ちる。

そんなことが彼女を一層惨めに感じさせ、涙が止まらない。

しかし――

 

「っ!!」

 

父の声が聞こえた気がした。

何かの不具合で起動したエレベータから一つの翼が現れる。

 

これがお前の新たなる力だと、

 

これがお前を受け止めることのできる器だと、

 

これがお前を空に羽ばたかせる為の翼だと。

 

 

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