家事が出来ない居候と農家の俺   作:マッカーサ軍曹∠( ̄^ ̄)

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記憶。


記憶がない女性

 その女性は自分の名前がわからないと言った時、大地は少し動揺した。大地はもしかしたらその女性はあえて名前を伏せているのかと思い、簡単に答えられるような質問を問いかけた。

 

「名前がわからないのは本当か?」

 

「……はい」

 

「両親は?」

 

「両親……いたとは思いますが、分かりません」

 

「友達は?」

 

「多分、少しならいたと思うんですけど……何も思い出せません」

 

「家は?」

 

「家は何も……すみません。やっぱり私、両親も友達も家も何も……思い出せないです」

 

 この時女性が答えた言葉で、大地は1つの真実にたどり着いた。それは、この女性が完全に記憶喪失であることが分かったからである。大地はとにかく彼女が持っている物にもしかしたら何か手がかりがあるかもしれないと感じて、女性に聞いてみた。

 

「自分のポケットに何か個人情報が載ってる物とかないかな?もしかしたら君の名前が書いてあるかもしれない。例えば……財布とか」

 

 女性は言われた通りに自分のスカートの中にあるポケットの中を探すと、中から可愛らしい小さな財布らしきものが出てきた。彼女がその財布の中を覗いて探してみると個人情報が載っている1枚の身分証明書がそこには入っていた。彼女はその身分証明書を大地に渡すと、大地はその身分証明書に何が書いているか調べ始めた。

 

「これはバイクの運転免許証か。名前は……風鳴翼。確かにこの写真は君の顔と同じ写真だし、君の名前で合ってると思う」

 

「翼……それが私の名前なんですね。他には何かありますか?」

 

「って言っても、この運転免許証には生年月日と君の歳しか……ん?この運転免許証の西暦が違うな。今は西暦2020年の筈なのにこれは……」

 

 大地がふと疑問に思ったのは運転免許証に載っていた西暦についてだった。今の西暦は2020年に対して、その女性……風鳴翼の運転免許証に載ってある西暦には2045年と載っていたからである。

 

(2045年……っておかしくないか?今の西暦は2020年だし、免許の更新があったとしてもその年から3年後ぐらいな筈だ)

 

「ッ……頭が、痛い」

 

「ッ!?大丈夫かッ!?」

 

「はい、何とか……目が覚めた時から少し頭が痛くて」

 

「頭を打ったのかもしれないな。とにかく、山中さんの病院に行こう。あの人ならこの時間なら休憩中だけどもしかしたら診てくれるかもしれない」

 

 すると、大地は翼にあまり負担がかからないように支えながら自分の軽トラックの方に向かった。しかし、その一方で大地は翼の顔色が少しずつ青ざめているように見えた。

 

「すみません。出会ったばかりの人にこんな迷惑をかけてしまって……」

 

「気にしないでいいよ。今は自分のことだけを考えてくれ。その方がきっと楽になるよ」

 

「ありがとう、ございま、す……」

 

 そして、大地は翼を軽トラックに乗せると、急いで唯一この村にある小さな病院へと向かった。その時、大地は急いで翼を助けようと軽トラックの時速は法定速度ギリギリぐらいの速度でただ軽トラックを走らせ続けた。

 

 

 

 

 

 

 大地が病院に急いで軽トラックを走らせた後、そのまま翼を連れて病院に入り、急いで翼の容態を山中さんに診てもらった。山中さんは大地が小学生の頃いつも病気にかかった時よくお世話になっていたので、仲がよっかった。

 

「ふむ……大地、彼女はやっぱり記憶喪失で間違いないよ。診察した時に頭を打った箇所が見られるからね」

 

「山中さん、仕事の休憩中にすみません。本当に急いでいたもので……」

 

「気にせんでええよ。ワシも丁度時間が空いとったからな」

 

 そう言いながら、山中さんはパソコンを操作しながら仕事を片付けていた。すると、山中さんは点滴をしている翼の方に視線を向けて様子を見た後、大地にゆっくりと話し始めた。

 

「この女性の記憶喪失を戻すには何か昔の思い出の場所とかを見たり、その両親や友人に会ったら記憶が戻る可能性があるからな」

 

「やっぱりそうですか……」

 

「……で、大地はこの後どうするんだ?彼女は私の予想だが、きっと頼れる人がいないんじゃないか?一応他の病院を通じて調べては見たが、風鳴翼と言う人物はいないと言われたからな」

 

「風鳴翼と言う人物がいない?でもこの女性は運転免許証も持っていたからそれなりにも個人情報が分かると思うんですが……」

 

「もしかしたら県外の人かもしれないな」

 

 その言葉を聞いたは大地は山中さんの言葉にそれなりに納得することが出来た。翼の服装は都会の女性らしい服装をしていた為に信憑性があったからである。すると、それまで話に入ろうとしなかった翼はゆっくりと口を開いた。

 

「……私は、これからどうすればいいでしょうか」

 

「……大地、しばらくの間この人を泊めてやれ。お前の家は広いし、元々は大地が発端だからな。よかったな、独り身のお前の家に彩りが出来たな」

 

「山中さんからかわないでください。……えっと、翼さん本当にいいのか?男一人の家に女性が暮らすのは少し抵抗があるだろ」

 

 すると、翼は首を小さく横に振って大地の顔を見ながら優しく答えた。

 

「その、あなたなら……私は構いません。よろしくお願いします」

 

「よし、これである程度のことは決まったな。後、ちゃんと診察代を払っていけよ?今回の診察代は高いからな」

 

「分かりました。それじゃ、行こうか……その、つ、翼」

 

「はい。……あ、私あなたの名前をまだ……」

 

「そういえばそうだったな。俺は春川大地だ。呼びたいように呼んでくれたらいい」

 

「……大地さんですね。分かりました。改めてこれからよろしくお願いします」

 

 

 

 




次回【風鳴 翼】
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