転生したら山内でした。   作:鴨の加茂

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説明会なので文字数多めです。

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天国と地獄の境界線 [2]

ダラダラとDクラスの生徒たちが纏まりも無く、船をおりる。そんな俺たちに茶柱先生から厳しい言葉が飛ぶ。

 

「今からDクラスの点呼を行う。名前を呼ばれた者はしっかりと返事をするように」

 

同時に整列するよう指示され、ボード片手に全クラス一斉に出席の確認を始めた。

 

「あーもう、早く自由時間にしてほしいぜ。目の前に海が広がってるんだからさっ」

 

池が面倒臭そうに呟く。大半の生徒は砂浜を駆け出したくて仕方がないだろう。暫くすると、Aクラス担任の真嶋先生が前へ出てきた。

 

「今日、この場所に無事につけたことを、まずは嬉しく思う。しかしその一方で1名ではあるが、病欠で参加出来なかった者がいることは残念でならない」

 

「ではこれより──────本年度最初の特別試験を行いたいと思う」

 

「え?特別試験って?どういうこと?」

 

そんな池の声が聞こえたが、それだけではなく他のクラスからも似たような声が挙がる。

 

「期間は今から1週間。8月7日の正午に終了となる。君たちはこれからの1週間、この無人島で集団生活を行い過ごすことが試験となる。なお、この特別試験は実在する企業研修を参考にして作られた実践的、かつ現実的なものであることを最初に言っておく」

 

「無人島で生活って·····船じゃなくて、この島で寝泊まりするってことですか?」

 

BクラスかCクラスの辺りからそんな疑問が出て来た。

 

「そうだ。試験中の乗船は正当な理由無く認められていない。この島での生活は眠る場所から食事の用意まで、その全てを君たち自身で考える必要がある。スタート時点で、クラス毎にテントを2つ。懐中電灯を2つ。マッチを1箱支給する。それから日焼け止めには制限なく、歯ブラシに関しては各自1つずつ配布することとする。特例として女子の場合に限り生理用品は無制限で許可している。各自担任の先生に願い出るように。以上だ」

 

「はああ?もしかしてガチの無人島サバイバルとか、そんな感じ!?そんなめちゃくちゃな話聞いたことないっすよ!アニメや漫画じゃないんすから!テント2つじゃ全員寝れないし!そもそも飯とかどうするんですか!あり得ないっす!」

 

そんな池の発言に対して、真嶋先生は心底呆れている様子だ。

 

「君はあり得ないと言ったが、それは短く浅い人生を送ってきたからに過ぎない。事実、無人島での研修を行っている企業は存在する。それも誰もが知っている大手企業が試みとして行っているものだ」

 

「う──────そ、それは、その、特別なんじゃないですかね。·····無人島は飛躍しすぎっていうか。絶対ないっしょ!非現実っすよ!」

 

「これ以上はみっともないからやめろ。今真嶋先生が言ったものはほんの一部だ。世の中には様々な企業が存在する。変わった研修だけでなく、オフィスに椅子がない職場であったり、サイコロの出た目で給料を決める会社など。世の中はお前が知るより深く広い。つまり、現実と非現実の区別をつけられていないのはおまえの方だということだ」

 

見兼ねた茶柱先生が池を宥めるように言う。

 

「今君たちはこう思っているんだろう。こんな試験にどんな意味があるのか、と。あるいはまだ実在する研修なのかを疑っている者もいるかも知れない。だが、その程度の考えで留まっている生徒は将来的にも見込みのない人間だ。この話のどこに君たちが『あり得ない』『馬鹿げている』と批判するだけの根拠があるというのだ?君ははただの学生であり、まだ何者でもない。言ってしまえば無価値に等しい。そんな人間が一流企業のやり方を批判する?おかしな話だ。君たちが一例として挙げた企業よりも格上の会社を経営する社長だったなら、それを否定する権利はあるのかも知れない。だが、そうでない人間に否定できるだけの根拠など存在しないはずだ」

 

「しかし先生。今は夏休みのはずです。そして我々は旅行という名目で連れて来られました。企業研修ではこのような騙し討ちのような真似はしないと思いますが」

 

不服を覚えたらしいどこかのクラスの生徒が正論を言う。

 

「なるほど。その点に関しては間違った認識ではない。不平不満が出るのも納得だ。だが安心していい。これが過酷な生活を強いるものであったなら批判が出るのも無理のない話だが、特別試験と言ってもそれほど深く考える必要はない。今からの1週間、君たちは海で泳ぐのもバーベキューをするのもいいだろう。時にはキャンプファイヤーでもして友人同士語り合うのも悪くない。この特別試験のテーマは『自由』だ」

 

「え?え?自由がテーマってことは·····?バーベキューもできるって·····んんんっ?それって試験って言えんの?頭混乱してきた·····」

 

大半の生徒は池のように疑問点ばかり増えていく。

 

「この無人島における特別試験では大前提として、まず各クラスに試験専用のポイントを300支給することが決まっている。このポイントを上手く使うことで1週間の特別試験を旅行のように楽しむことが可能だ。そのためのマニュアルも用意している」

 

真嶋先生が他の教師から数十ページほどの厚みの冊子を受け取る。

 

「このマニュアルには、ポイントで入手できるモノのリストが全て載っている。生活で必需品と言える飲料水や食料は言うに及ばず、バーベキューがしたければ、その機材や食材を用意しよう。海を満喫するための遊び道具も無数に取り揃えている」

 

険しかった生徒たちの表情が、段々と穏やかになっていく。

 

「この特別試験終了時には、各クラスに残っているポイント、その全てをクラスポイントに加算した上で、夏休み明けに反映する」

 

この学校において、1年生初の学力以外の試験。筆記試験は絶対的に上のクラスの方が有利なのでどんどんと差を開かれていたDクラスにとってはハンディキャップを感じさせない仕組みだった。

 

その後は腕時計についての説明、冊子を含みテント等無償で提供される物の再確認。簡易トイレの使い方を各クラス、それぞれが各担任からされた。だが、やはりと言うべきか他クラスがスムーズに移動している中、トイレ問題でDクラスのみ男子と女子が揉めてしまっている。

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