転生したら山内でした。   作:鴨の加茂

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ようこそ実力至上主義の学校へ〜your story〜[2]

周りを見るとクラスメイト達、当然変わり者の高円寺ですら同様に、ひとり残らず固まっている。

 

「なんだ?これは·····どうしたんだ·····いったい何があった?」

 

綾小路に駆け寄り、肩を揺さぶる。

 

「綾小路?おい、綾小路」

 

だが、まるで反応がない。

 

 

「ははは」

 

どこからか笑い声がした。男とも女ともつかない無機質な声。込められた感情もよく分からない。ただ笑うべき場面であったから笑っただけ。そんな笑い声が。

 

「よくできていますね」

 

淡々とした声に気付いてそっちを向くと、さっきまで閉まっていた教室の扉を誰かが開けて入ってくる。

陶器のようにのっぺりした顔と、そこに切り込みを入れただけといった風情の目。透明な体には、所々、線を露わにする程度の紺青色が付着していて、それはガラスを伝う雨粒のように流動していた。

 

捉え所のない体だ。レンガのような石作りとも、機械のような鋼鉄製とも違う。唯一、手足の末端だけは粘土のような質感で───

 

その奇妙な『誰か』はすぐ近くに居た生徒に手を伸ばし、ぺたぺたと、手触りを楽しむように触っている。

 

「さすが最新テクノロジーです」

 

言葉の意味は理解出来たが、関連性が思い浮かばない。

 

「なんの·····ことだ·····?」

 

「ですが所詮プログラム」

 

そう言われ、掌で胸を押された生徒はその部分から無数のポリゴンに分解され、泡のように消えていった。

 

「ああっ!」

 

「見せてあげましょう。世界の真実を」

 

パチンッと、指が鳴る。

 

「マッピング、オフ」

 

そうつぶやかれた瞬間、世界から色が失われはじめた。

教壇が、教室の机が、窓から見える外の景色までも、無機質な白一色に変わっていく。建物や地形だけではない。綾小路や堀北、周りにいるみんなからも色が失われ、ただの人形のようになっていく。

 

「な·····何をしているんだ!?」

 

オレの質問は無視され、再び指が鳴る。

 

「グラビティ、オフ」

 

今度は重力が消えた。

無重力の世界で、みんながふわりと浮かび上がっていく。

 

「綾小路!」

 

オレは目の前にいた綾小路の手を咄嗟に掴んだ。が。

 

「コリジョン、オフ」

 

綾小路に触れていた手がすり抜ける。慌てて何度も掴もうとするが、触れることはおろか、まるで空気をかき混ぜるように、何の抵抗も返ってこず───綾小路は教室の壁も突き抜け、そのまま上空に浮かんでいった。

 

「綾小路?綾小路ィ──ッ!」

 

「もっと処理を軽くしましょう」

 

突然、教室が崩れはじめた。なんの音も衝撃もなく、最初に犠牲になった生徒がそうなったように、細かな立方体と化っして消滅していく。

 

「ああぁ!止めろ!」

 

消滅はみんなにも及んでいた。

綾小路が、堀北が、高円寺が、平田や櫛田が、そして軽井沢も、虚空に解けるように消えていった。

 

「やめてくれええ───ッ!」

 

「ははははは」

 

何もなくなった白一色の世界に取り残され、オレは絶望に打ちひしがれた。

 

「お前は·····月城理事長代理なのか?」

 

俺の問いに、はじめて反応があった。

 

「正確にはそうではありません。私は月城理事長代理のキャラクターコードに擬態し、侵入した·····ウイルスです。坂柳理事長は薄々気づいていたようですがね」

 

自身をウイルスと自称する存在が続ける。

 

「かつて、『ようこそ実力至上主義の教室へ』という絶大的な人気を誇った小説が世に出ました」

 

そう言って、ウイルスはオレに手を差し向ける。そこに見覚えのある小説が浮かび上がった。『ようこそ実力至上主義の教室へ』シリーズの記念すべき1巻だ。

オレが触れようとした瞬間、やはりそれも分解されて消えてしまった。

 

「それから数十年が経ち·····このような最先端のバーチャルシステムが完成し、一般に普及した時、『ようこそ実力至上主義の教室へ』の世界はこれまでに無い、新しいバーチャル世界として制作されました」

 

ウイルスの顔に、はじめて感情らしい感情が現れた。冷たい笑みを浮かべ、オレを見下ろす。

 

「そうです。この世界です」

 

戸惑うオレをよそに、ウイルスが言葉を続ける。

 

「あなたはあまりの懐かしさに、このシステムに入ることにしたのです。ですから、あなたがこのシステムに入ってから、まだ数時間しか経っていないのですよ──」

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