クライムトリガー   作:百合の間に男を挟むα

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アフトクラトル⑤

「──トリガー使い二十人、金の卵とまではいかないがそこそこが数人。未知の、かなり低レベルではあるがトリガー技術か……」

 

 アフトクラトル遠征報告会、と言っても我らが領主に報告をしているだけに過ぎない。

 

 領主ハイレイン、ランバネインの兄であり黒トリガーの使い手である。

 ミラからは「思慮深い」、ランバネインからは「念密な根回し」、エネドラからは「陰湿で陰険」と表現される彼はある意味で平和主義者と呼べるかもしれない。

 

「二人程貰いたいのが居るんですけどいいですか?」

「…………ランバネイン、黙らせろ」

「ガハハ、まあまあ兄者。俺はそろそろ信用してやってもいいと思うがな」

 

 おかしいな、僕の味方が全然いない。

 親友エネドラは消えた、ミラは無言、初めて会う幼めの少年は俺のことを睨んでる。

 

「いいじゃないですかぁ、アフトに来てから全然楽しんでないんですよ。エネドラと戦うのも緊張感あっていいけどたまには嗜虐的な方向でも満たしたいし、ミラが相手をしてくれるならいいんですけど」

「させるわけがないだろう。貴重な黒トリガー使いだ」

「ですよねー。だから今回捕まえた人間の中で適度に弱くて適度にいじめ甲斐のある娘達を見つけたので、それが欲しいです」

 

 発言内容がカスすぎないか? 

 我ながらどうかと思う内容だ。現に初対面の少年に死ぬほど睨まれてる。

 

「君は要る?」

「ヒュース、気にしなくていい。害のある奴だがそれなりに優秀だ」

「そこは問題はあるが害はないっていうパターンじゃないんですか?」

「自覚してるだろう」

 

 それはもう。

 

「ふー……まあ、いや……一日待て。そうしたら結論を出す」

「一応考えてはくれるんですねぇ」

「相手の実力が低いとはいえ不利な状況で勝ったのも事実だ。そこは評価する」

 

 驚いた。

 軍人だから戦って勝つのは当たり前、そういう価値観があるわけじゃないのか。

 そもそも率いるトップと気軽に顔を合わせられる時点でそれなりにフレンドリーだな、そこを考慮してなかった。

 

 まだまだトリオン文化には疎いままだなぁ。

 

「それで、この子は? 初めて顔を合わせるんですけど」

「……俺はヒュース。初対面で悪いが、俺はあまりお前と話したくない」

「んぅっ……なるほど。愉快な子だ」

 

 いきなりの拒絶は興奮するから勘弁して欲しい。

 

「僕はクライム。玄界出身だよ、よろしくね」

「玄界……? どういうことだ」

「数年前に攫われて、それなりにトリオンがあったから馴染んだ。そしてここに拾われた」

「性根は拾う前から腐ってる。深入りするなよ」

「本人の前で言います? それ」

「何を言っても意味がないだろう」

「ふふ、僕の解釈満点です」

「退出しろ」

「いい返事を待ってますね、ハイレイン隊長」

 

 ニコニコ笑顔で退出する。

 いやあ実りのあるいい会話だった。頭空っぽにして脊髄で会話するのもいいが、たまには実用的な会話をするべき。脳のマッサージにもなる。

 

「あー、あの娘達貰えないかなぁ」

 

 僕が今住んでるのは城から少し離れた家で、用事がある時だけここに来る形だ。

 

 主な客はミラ。

 

 普通の一軒家だし、現代で考えればとても得のする話だ。

 二階建て一軒家、一人暮らし税金なし。農民達と違って僕は好きなことだけしていれば強くなるので怒られないし、飯も無料で食える。いやぁ天職すぎるな。

 

 でも一人暮らしも飽きてきた。

 遠征がない時とか暇すぎて何もいえない。飯を食う、トリガーを考える、トリオンを増やすためにひたすらアリシダを射出する、トリオン体のデザインを考える……結構いろいろやってるな。

 

 アフトの中でトップクラスの実力者とたまに遊んでもらうんだけど一度も勝てずにボコボコにされてる。

 

 それはそれで楽しいけど、やっぱり痛めつける側にも回りたい。

 苦悶の表情を浮かべて泣き喚く姿はどうしようもなく興奮する。性的興奮とも言えるし、もっと別の感情に変換していると思う。

 

「やっぱり家に帰ったらご飯作ってる人がいるってのはいいよね」

 

 うーん、やっぱり欲しいなぁ。

 なんでも言うこと聞く様な性格でもいいし、逆に反骨精神がすごい娘でも良い。なんでもあり、オールマイティに対応している。主に僕が。

 

 凄惨で陰鬱とした殺し合いを終えて疲労困憊な僕を出迎える女の子、お風呂にしますかご飯にしますかそれとも私? 僕はそれに笑顔で答える。

 

「勿論君さ、今日も寝かさないよ──あ、やば興奮してきた」

「おい見ろよ、また教導官一人で笑ってるぜ」

「こわ……」

 

 コソコソ話してる教え子は放っておいて、僕は一人夢見心地で歩く。

 また一から色々仕込んでもいいし純粋無垢でもいい。トリオン社会にとって彼女らは大切な人材ではないが、僕にとって彼女達は必要な人材だ。

 

 ハイレイン領主的にはどうかな。

 僕に二人を渡すリスクとリターンを考えれば渡すかどうか五分って所か。

 

 もうちょっと権利があればなぁ、トリガー(ホーン)を彼女達に生やすとかできるんだけど……僕にその権利はない。

 貴重なトリオン研究資材を使用するには、ちゃんとした成果を上げなければならない。

 

 まあアリシダの開発時にある程度の成果は提出してるからそこと交換して二人を貰えればいいか。

 

 

 

 

 

 翌日、呼び出されてやってきた城。

 

「この二人で間違いないかしら」

 

 そう言うミラの後ろには手錠で手足を繋がれた女の子が二人。服はちゃんと着せてるのがまだマトモに感じるね。

 僕が最初攫われた場所はトリオン少ない人達が非人間扱いされてたからなぁ。

 

「うん、間違いないよ。よくわかったね」

「一番貴方に嫌悪感を持つ娘を探していたらこうなったわ」

「なるほど、納得した」

 

 ツインテールの娘と、ポニーテールの娘。

 もしかしなくてもこれ姉妹かな。顔立ちも似てるし、結構かわいい。

 

「名前は?」

「……アロエ」

「可愛い名前だ。そっちの()は?」

「……エリカ」

 

 アロエとエリカか。

 これはまた随分と皮肉なもんだな。

 

「君達にピッタリだね(・・・・・・)

 

 玄界出身って訳でも無さそうだし偶然ではあると思うけど、今の君達にはピッタリだ。

 そのうち教えてあげようか。

 

「アロエとエリカね。今二人とも何歳?」

「……15」

「17歳よ」

 

 わお、未成年。

 圧倒的未成年、玄界でやったら犯罪だね。パパ活とかそう言う次元じゃない大事件だよ。

 

 アロエ17歳、エリカ15歳。

 高校二年、中学三年とかそこらへんか。僕の思い出の中にある幼馴染みがこれくらいの年齢だったなぁ。ヤバいヤバい、興奮してくる。

 

 まだ抑えよう。

 

「僕はクライム。痛いのが大好きで、痛めつけるのも大好きで、喜ぶのも好きで、喜ばれるのも好き。他人も自分も全部快楽になっちゃうんだ」

「哀れね」

「僕が?」

「いいえ、この娘達が。あなたは哀れんでも悦ぶでしょう」

 

 流石ミラ。

 僕のことをよく理解しているね。

 

「安心しなよ、僕は高給取りみたいなもんだから。この国じゃそこそこのエリートだよ? ……多分」

「生活の心配はしてないわ。人格の心配をしているの」

「そっか、なら大丈夫。きっと育つよ」

「捻じ曲がった方向に?」

「そんな大昔の話じゃあるましい、僕好みの女の子を育てるのも──それはそれで一興だけど」

 

 二人の僕を見る視線が負の方向へとどんどん堕ちていく。

 嫌悪感、懐疑心、疑いと不安と切なる感情がまとめて僕へと突き刺さる。この二人は余程僕のことを喜ばせたいみたいだ。

 

「いいね……」

 

 いいよ。

 すごくいい。

 

「僕好みで安心した。これからヨロシクね、二人とも」

 

 差し出した手が受け取られる事は、なかった。

 

 

 

 

 

「さ、ここが君たちの新しい家だよ」

 

 僕が暮らす家に連れてきて、手錠を外す。

 奴隷的な扱いをしてもいいんだけど、初めて年下の女の子と暮らすのにそんな扱いしてもな……と言う所存。折角だから仲睦まじく暮らしていきたい。

 

「部屋割りとか何処が良い? 二階は基本使ってないけど」

「なら二階がいいです」

「理由は?」

「あなたが居ない場所が良い」

「じゃあここにはないね」

「…………」

 

 眉間に皺を寄せて渋るアロエ。

 

 主体的なのは姉、かな。

 片方だけ甚振って片方に優しくして、これすると仲間割れが起きたりして負の感情面でニヤニヤ出来るんだけど序盤にそれをやるのはね。やるとすれば慣れてきた辺りかな? 

 

 対照的に妹のエリカは大人しく、手錠を外されても髪を少し揺らす程度で済ませている。

 

「まあまあ、そう警戒しないでよ。僕は悪辣な精神性をしている自負があるけど、それと同時に人道的な面も兼ねているからね。空気を味わい、華を撫で、陽を拝む。それくらいの感性は持ち合わせてるよ?」

「あんなことした人を信用出来る訳ないでしょっ!」

「あんなことって……ああ、アリシダで共有した奴? あれくらいは挨拶だよもう」

 

 大袈裟だなぁ、そう言ってから息を吐く。

 トリオン社会に生きる人間は、痛みに弱い。正確には戦意が高く士気も高いのに何故か死ぬだけで済むと思っているのだ。

 

 戦争を常に続けている人材は違うが、国に所属し軍隊としてただ生きているだけ(・・)のヤツ。

 コイツが厄介で、簡単に殺してもらえると思ってる。

 

「そうだねぇ。世間一般、発展した人類としての見解なら僕は異常だ。狂っていて外れていて、どうしようもない位に屑。だけどね」

 

 アロエの顎に手を添えて、無理矢理視線を合わせながら話す。

 

「僕は理解できた。自分の事を、社会の事を、全部全部全部ぜーんぶ。個は殺し、群に生きた。出来るだけその輪を乱さず自分を満たしてきたんだ。これがどういう事かわかる?」

 

 僅かに僕を睨む瞳を嘲る様に、身体をそっと引き寄せる。

 

 細い身体だ。

 骨も厚くない、されど女性特有の柔らかさが実りはじめている。脂肪の膨らみ、甘温い香り。彼女(ミラ)とは少し違った個人差に興奮を示しつつ、まだ男を知らない未熟を撫でつける。

 

 降り積もった新雪を汚すとき。

 張ったばかりのキャンパスに一筆入れるとき。

 

 『初めて』を汚すのは、なんだって興奮する。

 

「君はどうかな?」

 

 世間一般、『普通』の人間か。

 それとも僕と同じ、『異常』か。

 

 接吻を交わす距離感で、星間程に離れた心を。

 

 

 

 

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