ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

102 / 180
 しばらくはまったり進行なので初投稿です。



セッションその13 いんたーみっしょん その2

 おや、お疲れ様です新()さん。盤外(こっち)での生活には慣れました?

 

 なるほど、毎日充実していて実に楽しそうですね! ≪死≫さんも自分のデッキ調整に付き合ってくれる子が来てくれたってすっごく喜んでましたよ!!

 

 最近また新しいエキスパンションが出たみたいで・・・・・・って、おや? その子は確かダブル吸血鬼ちゃんたちと交友のある……なんと、彼女たちと姉妹だったんですか! いやー知りませんでした、世間は意外と狭いんですねぇ……。

 

 ほほう、結婚式に顔を出せなかったので、出産祝いくらい送ってあげたいけど何が良いか見当も付かない、ですか。

 

 うむ、新()さんらしい初々しい悩みですねぇ。そういう時は適当に暇ぶっこいてそうな()に声を掛けて、即興でイベントを起こすのが()々の流儀ですよ!

 

 ほら、ちょうどあそこで欠伸している()がいるんで、一緒に脚本(シナリオ)を考えてみましょう!

 

 破壊神さーん、太陽神さーん! ちょっと新()ちゃんを交えて、可愛いN子さんと一緒に遊びませんかー!!

 

 


 

 

 前回、兎人(ササカ)の次女ちゃんがやって来たところから再開です。

 

 ひなたぼっこをしていた吸血鬼君主ちゃんを捕まえ、血相を変えて飛び込んで来た次女ちゃんの先導で朝日の照らす牧場の敷地を駆ける一行。訪れたのはおちびちゃんたちの家ではなく療養所のほうですね。蹴破るように扉を開け、恐々と様子を窺っている療養中の女性たちを掻き分けた先で一行が目にしたのは……。

 

 

 

 

 

 

「……地母神様は決して一夜の交わりを否定されてはおりません。ですが、相手の年齢は慮って然るべきなのではありませんか?」

 

 

「「「……はい」」」

 

 

 ドドド……という擬音が似合う笑みを浮かべた女神官ちゃんと、彼女に正座させられている3人の女性。そして彼女たちの首筋に抱き着いて頬擦り(マーキング)している兎人(ササカ)の弟君達の姿でした。

 

 

 激おこ女神官ちゃんの隣には苦笑を浮かべた只人寮母さんと、あんまり状況を理解していなさそうな下の子2人(四男と四女)を抱き締め、年上のお姉さんたちとうさぴょいした兄弟にジト目を向けている三女ちゃんの姿もありますね。一行が来たことに気付いた女神官ちゃんが顔を向けた瞬間、吸血鬼君主ちゃんが「ヒエッ……」と怯えて女魔法使いちゃんに抱き着いちゃってます。

 

 

 いきなり抱き着かれた女魔法使いちゃんは……おや? 正座している3人の女性――よく見たら砂漠で兵士に捕まっていた冒険者の3人ですね――の顔を見て何かを察したみたいですね。額に手を当てて溜息を吐いてます。もしかして……。

 

 

「なにかしってるの?」

 

「ああうん、あの()たちがうさぴょいしたのは私が原因だわ……」

 

 


 

 

 

 とりあえず事情聴取のために一党の自宅に関係者が集まり、正座中の女魔法使いちゃんの弁明を聞く一同。あの後、牧場からおちびちゃんたちの雇用主兼保護者代理のゴブスレさんと牛飼若奥さんもやって来て、弟君達の女性冒険者3人に対する懐き具合からナニがあったのか凡そ察してくれたご様子。どうやら女魔法使いちゃんの説明が誤解を招き、彼女たちをうさだっちに駆り立ててしまったみたいです。

 

 

 

 心身ともに傷ついた状態で辺境の街に運び込まれた被害者の女性たち。身体の傷は奇跡で癒せても、心に負った傷はそう簡単には癒えません。訓練場での啓蒙活動により被害に遭った女性たちに白い目を向ける人は少なくなりましたが、いきなり街に放り出すのはあまりにも乱暴ということで急遽建設された療養所で心身のケアを受けておりました。

 

 

 ずっと寝台(ベッド)の上にいても精神がふさぎ込んでしまうため、リハビリを兼ねて農作業の手伝いをして貰っていたのですが、これがなんと大人気。土に触れ生命を育てることが彼女たちに生きる活力を与えてくれました。

 

 

 とは言え全員が農家の出というわけでもなく、勝手が判らず戸惑う女性もいたのですが、そんな彼女たちを助けてくれたのが兎人(ササカ)のおちびちゃんたちでした。

 

 

 ゴブリンに穢された女だと蔑むことも無く、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるウサミミのショタ&ロリっ子。種族的な気質からか距離感も近く、献身的に接してくれるおちびちゃんたちの魅力に女性たちも大いに癒されていたそうです。褐色姉妹と武闘家の少女も、そんなおちびちゃんたちに心を救われた中に含まれておりました。

 

 

 農作業の合間に話す冒険譚におちびちゃんたちは目を輝かせて聞き入り、もっとお話しを聞きたいとせがんで来ることもしばしば。いつの間にか互いの部屋に集まって一緒の時間を過ごすようになっていたそうです。

 

 

 このまま冒険者を辞めておちびちゃんたちと牧場の手伝いをしていこうかと考え始めた頃合いに、タイミング悪く女魔法使いちゃんから今後の身の振り方についての聞き取りがやって来てしまい……。

 

 

「もし冒険者に復帰するんだったら、街にある一党の拠点を暫く無料で貸してあげるから、良かったらそっちに移る?って聞いたつもりだったのよ……」

 

 

 居心地が悪そうに告白する女魔法使いちゃん。どうやら彼女たちにはそれが療養所からの立ち退き勧告に聞こえてしまったみたいです。既に一緒に救出された女性たちの何人かは地母神の神殿やギルド訓練場の職員など新たな行先に旅立っており、自分たちも療養所を出て行かねばならないと思い込んでしまったとのこと。

 

 

 急な話に作業が手に付かず、様子のおかしい3人を心配したおちびちゃんたち。特に仲の良かった上の兄弟3人がおゆはんの後の自由時間に彼女たちの部屋を訪れ消沈していた理由を聞いたところ、牧場を出て行かなければならない(と彼女たちが思い込んでいる)ことが発覚。いくら偏見が薄れているとはいえ彼女たちが酷い目に遭ったのは事実ですし、一般の街の人からしたらゴブリンの慰みモノになった女でしかありません。救出に立ち会った辺境三羽烏は兎も角、それ以外の男性に対しては未だに恐怖心が残っているというのも彼女たちの負い目になっていたのでしょう。

 

 

 なかなか他の女性には打ち明けられなかったこれらの想いが一気に噴出し、行き場の無い悲しみによって目の前で泣き出してしまった女性冒険者たち。心優しいおちびちゃんたちがそんな彼女たちを放っておけるはずも無く……。

 

 

「だいじょうぶ!」

 

「ぼくたちがついてるよ!」

 

「だから、もうなかないで?」

 

 

 ふわふわの毛並みの腕に頭を抱きかかえられた女性陣の乙女回路はMAXフル回転。大好きな彼女たちを何とか泣き止ませようと、懸命に頭を撫でたり頬擦りしてくるおちびちゃんたちに思わずトゥンク・・・・・・してしまったのは仕方がなかったのかもしれません。数人毎に分かれて生活していた大部屋の住人が、ちょうど彼女たち3人だけという偶然も状況を後押ししてしまったのでしょう。

 

 

 積極的な性格の褐色姉妹の姉のほうがおちびちゃんを抱えたまま部屋の扉の内鍵を施錠し、妹と武闘家の少女が部屋の明かりを吹き消すチームプレイ。暗視はあるものの突然暗くなってビックリしているおちびちゃんたちを寝台(ベッド)に運び、柔らかな肢体の感触に顔を真っ赤にしている可愛らしい兎人(ササカ)の少年たちに微笑みかけ……。

 

 

 

「言葉だけじゃ信じられないわ」

 

「そういうのは行動で示して頂かないと……」

 

 

 

「――お願い。冷え切ったままの私たちの心と身体、暖めてくれる……?」

 

 

 

 

 

 

 明朝、起きたら兄たちが居ないことに気付いた末の弟君がお姉ちゃんたちにそれを報せ、みんなで手分けして行方を捜したところ……。

 

 

「療養所の部屋でうさぴょいしたままの姿で気持ち良さそうに寝ているみんなを発見したと……」

 

 

 確認するように呟く女神官ちゃんにコクコクと頷きを返す二女ちゃん。四男と四女の末っ子コンビは三女ちゃんに「ねぇねぇ!」「うさぴょいって?」と聞いて困らせちゃってますね。早熟な傾向にある兎人(ササカ)ですが、まだ2人にはちょっと早かったみたいです。

 

 

「……ねぇ、年齢的にはどうなの? ちゃんとうさだっち出来るのかしら?」

 

「そうですねぇ。もう(つがい)を探してもおかしくない年齢にはなってますよ。ぼくくらいの歳なら産んでても不思議じゃないですから」

 

 

 僅かに膨らんだおなかを幸せそうにさすりながら返事をする白兎猟兵ちゃんと、おちびちゃんたちに驚愕の視線を向ける妖精弓手ちゃん。やっぱり捕食されちゃう側の存在であるため、兎人の子作りは早いうちから可能になるみたいですね。

 

 

 

 

「ええと、つまり彼女たちは此処を追い出されると勘違いしてしまっていたと……」

 

「今後の当てについて聞いたつもりだったんだけど、聞き方が悪かったわね。……紛らわしい言い方をしちゃって御免なさい」

 

 

 深々と頭を下げる女魔法使いちゃんに対し、慌てたように首を振る女冒険者たち。些細な行き違いから生まれたうさぴょいでしたが、それがおちびちゃんたちとの関係が一歩進むきっかけとなったため、ある意味後押しされたような気持ちみたいです。感謝の言葉を向けて来る彼女たちに苦笑を返し、女魔法使いちゃんが今後について話し始めました。

 

 

「もし牧場に残るなら、街の職人さんに依頼して新しく家を建てて貰おうと思ってたのよ。あんまり≪死王(ダンジョンマスター)≫に頼るのも良くないし、ある程度お金を地域で回さないとね……」

 

 

 たしかに。ダブル吸血鬼ちゃんがポンポン建築しちゃうと建設に携わる人の仕事を奪うことになっちゃいますもんね。一党の拠点や療養所といった特殊な設備が必要な建物なら兎も角、一般の居住施設なら専門の業者さんに依頼したほうが良さそうです。

 

 

「……まぁ、その様子ならおちびちゃんたちの家を拡張して個室を作るほうが良さそうね。あ、ちなみに秋にはその子たちのご両親とその友人がこっちに移り住んで来るから、しっかり挨拶は考えておいたほうが良いわよ?」

 

 

 おお! 白兎猟兵ちゃんの家族と戦友がこっちに来てくれるんですか!! 陸軍特殊部隊群(グリーンベレー)の偵察チームで培った技術と経験は一級品ですし、牧場の護衛任務はもちろん冒険者への教導といった仕事も任せられそうですね。

 

 

「パパとママがいっしょだー!」と無邪気に喜ぶおちびちゃんたちとは対照的に、顔を青くする3人の淑女。なかなか親御さんに息子さんとうさぴょいしましたとは言い辛いでしょうねぇ。しっかりと責任は取って頂きましょう。……お、漸く事態を理解した牛飼若奥さんが吸血鬼君主ちゃんと目配せしてますね。イエーイとハイタッチをしながら満面の笑みを浮かべて……。

 

 

「かぞくがふえるよ!」

 

「やったね妹ちゃん!」

 

 

 2人とも、それ以上いけない(真顔)

 

 


 

 

 朝っぱらから思わぬイベントが勃発していましたけど、今日は夏野菜の収穫をする日であることを思い出した一行。手に手に籠や麻袋を抱えて畑までえっちらおっちら。あ、参加者には一党の面子に加えてゴブスレさん夫妻におちびちゃんたち、それにうさぴょい組も合流しています。

 

 

「皆様、此方に冷たい飲み物を用意しておりますので、汗をかいたらこまめに水分を補給してくださいませ。塩分補給用の焼菓子もありますので、小腹が空きましたらご一緒にどうぞ」

 

 

 畑近くに茂る木の下に敷物を広げ赤ちゃんたちの面倒をみてくれている若草祖母さんが、手に持つキンキンに冷えた金属瓶を示しながらみんなに声を掛けています。どうやら精霊さんたちに頼んで希望の温度を維持しているらしく、森人(エルフ)の間では通称『魔法瓶』と呼ばれているみたいですね。

 

 

「はい! 自分の手と野菜、どっちも傷つけないように気を付けてね!!」

 

 

 牛飼若奥さんの配る鋏を手に畑へと散っていく一行。太陽の恵みをいっぱいに浴びて立派に育った夏野菜を次々と収穫していきます。一党の面子やゴブスレさんは手際よく進めていますが、不慣れな女冒険者たちは手間取っているみたいですね。でもご安心を、頼れるパートナーが一緒です!

 

 

「あわてなくてへーき!」

 

「まずはヘタからちょっとはなれたところにハサミをいれて……」

 

「それからヘタのうえできればキレイにとれるよ!」

 

「う~……ていっ! ……やった、綺麗に取れたよ!!」

 

 

 小さな身体をぴょんぴょんさせながら手取り足取り教えている兎人(ササカ)の男の子たち。武闘家少女ちゃんが慎重にヘタの直上に鋏を入れ、実に傷を入れる事無く収穫出来てほっと笑みを浮かべるのを長男くんが満面の笑みで喜んでますね。褐色姉妹に手を貸している二男と三男くんも向こうのほうで同様にぴょんぴょん跳ねて喜びを露わにしています。

 

 

「まったく……ただでさえ夏真っ盛りで暑いってのに、アレ見てると更に暑く感じるわね……」

 

「うん。でも、すきなひとといっしょにいられるのはしあわせ!」

 

 

 器用に蕃茄(トマト)をもぎ取っている妖精弓手ちゃんと爪で茎を切り離している吸血鬼君主ちゃんが、そんなカップルたちの光景を見て微笑んでますね。種族の違うカップルという共通点もあり、何処かシンパシーを感じているのかもしれません。

 

 

「うう……とどかない……」

 

「あらあら、それじゃあちょっとお手伝いしましょうね?」

 

「わっ!? ……おねえちゃんありがとう!!」

 

 

 甘唐辛子(ピーマン)畑のほうでは背伸びしても届かない位置に生った実を懸命に取ろうとしていた四女ちゃんを、大人モードの剣の乙女ちゃんが抱っこしてあげてますね。普段のエロエロ衣装ではなく作業用のシャツとズボンという恰好はちょっと新鮮かも。急に高くなった視界に驚きの声を上げる四女ちゃんでしたが、ひんやりとした手の感触と優しい声に落ち着きを取り戻して抱っこされた状態で次々に収穫した実を籠に入れていってます。

 

 

「はふぅ。ひんやり……」

 

「ふふ……この辺りは粗方収穫出来ましたし、ちょっと休憩に致しましょう」

 

 

 おやおや、耳出し用に2つ穴を開けた麦わら帽子を被っている三女ちゃんが、同じく麦わら帽子スタイルの令嬢剣士さんのたわわに顔を埋めてますね。吸血鬼特有のひんやりとした体温が気持ち良いのか、脱力したまま目を閉じて令嬢剣士さんに身体を預けています。只人(ヒューム)よりも高い体温のおちびちゃんを苦笑しながら抱き上げた令嬢剣士さんが、ゆっくりと若草祖母さんの待つ木陰へと運んでいきました。お、昼食の用意をしていた若草知恵者ちゃんがみんなを呼び集めてますね。作業もひと段落したようですし、みんなお待ちかねのランチタイムです!

 

 

 

 

 

 

「はむはむ……。それでオルクボルグ、収穫が終わったら次は何を植える予定なの?」

 

 

 ちょっと贅沢な白麺麭(パン)に牧場産の牛酪(バター)を塗り、そこに同じく牧場製のベーコンと収穫したばかりの夏野菜を挟んだサンドイッチが振る舞われたランチタイム。指に着いた蕃茄(トマト)の汁をペロリと舐め取りながら妖精弓手ちゃんがゴブスレさんに今後の作付けについて尋ねてますね。まだ暑い時期が続くとは言え、冬に備えた食料の備蓄も考えないといけません。

 

 

「基本は日持ちのする根菜を植える。玉葱に蕪、それに……人参もだ」

 

 

 キラキラ輝く期待の目に圧されたのか、付け加えるように話すゴブスレさん。もちろんおちびちゃんたちのテンションは爆上がりです。品種による味の違いも楽しめるので一石二鳥ですね!

 

 

「それから、豹芋(ジャガイモ)を多目に育てるつもりだ」

 

「へぇ……? 腹持ちが良いから訓練場でも人気だけど、それだけが理由じゃ無いわよね?」

 

 

 牛飼若奥さんと頷き合った後にゴブスレさんが告げた内容に反応する妖精弓手ちゃん。シンプルに塩茹ででも美味しいですし、そこに牧場産牛酪(バター)をのっけたじゃがバターは寒い冬の間、収入の減った新人たちの半ば主食になってます。付け合わせにザワークラウトを添え、懐に余裕がある時は腸詰(ソーセージ)の1本でも追加するのが定番メニューですね。

 

 

 他のみんなも気になるようで、視線がゴブスレさん集まっています。突然注目の的となり若干引いた様子のゴブスレさんでしたが、咳払いをした後にジャガイモ祭りの理由を話してくれました。

 

 

「砂漠の国に滞在している間に、豹芋(ジャガイモ)を煮て発酵させた後に蒸留を重ねることで高純度の酒精(アルコール)が出来ると依頼人から聞いた。少量なら寒さ対策や気付けに使えるし、火炎瓶の材料にもなる。それに……出産や手術の時の消毒にも役に立つだろう。……なんだ?」

 

 

 一同が目を丸くして見つめて来るのに対し、居心地が悪そうに身じろぎするゴブスレさん。思いがけないみんなの反応に戸惑っているみたいです。叢雲狩人さんと目で牽制し合っていた女魔法使いちゃんが、みんなを代表して口を開きました。

 

 

「いやぁ、最近はずっと牧場の跡取り息子として働く姿しか見てなかったから忘れてたけど、そういえばアンタはそういうヤツだったなぁって」

 

「そうか。……いや、そうだな」

 

 

 女魔法使いちゃんの口振りに一瞬だけムッとした顔になったゴブスレさんでしたが、ふと何かを思い出したように苦笑しています。しまった、怒らせたかと女魔法使いちゃんが謝罪の言葉を口にする前に彼の口から出てきたのは……。

 

 

 

 

 

 

「平穏な毎日というものが幸福だということを知ることが出来た。今の生活に不満など無い。だが……俺は冒険者だったな」

 

 

 暫し目を瞑った後、牛飼若奥さんへと向き直るゴブスレさん。しょうがないなぁという顔の奥さんに頭を下げながら、また家を空けることが増えるだろうと告げています。

 

 

「ん、わかってるよ。キミのやりたいことをして良いからね! あ、でも約束。何があっても、ちゃんと帰ってきてね? じゃないと……」

 

 

 悪戯っぽい光を浮かべた顔で吸血鬼君主ちゃんを手招きする牛飼若奥さん。警戒心皆無で近寄ってきた小さな身体をむぎゅっと抱き寄せちゃいました。出産と育児を経て尚成長しているたわわで顔を塞がれ、汗とミルクの入り混じった甘い芳香にクラクラしている吸血鬼君主ちゃんを優しく撫でながら……。

 

 

 

 

 

 

「もし未亡人になっちゃったら、この子と再婚しちゃうかもよ?」

 

「おあ~……」

 

「駄目だ。たとえ戦友(とも)であってもお前は渡さん。お前は、俺のものだ」

 

 

 ゴブリンに対する怒りとは異なる感情で瞳を赤く光らせるゴブスレさんの反応を見て一斉に顔を扇ぎ出す女性たち。「な~んか気温上がってない?」「いやはや、ラブラブだねぇ」という奥様戦隊の言葉でみんなに担がれたのだと気付き、ゴブスレさんが憮然としながら冷たいお茶を一気飲みしちゃってます。あ、当て馬にされてた吸血鬼君主ちゃんがやっとたわわの間から顔を出せたみたいですね。本来は不要な筈の深呼吸をして、若干赤い顔でゴブスレさんに向き直りつつ素直な気持ちを伝えています。

 

 

「ぷはっ。えっとね、しんゆうのものをとったりはぜったいにしないよ? でも、ちゃんとかぞくのところにかえってあげてね? じゃないと……」

 

「ああ、最大限努力すると約束する。だが、万一の時は……頼めるか?」

 

「ん。まかせて、やくそくする。もししんゆうになにかあったとき、おくさんとこどもたちは、ぼくたちがまもるから。……でも、そのしんぱいはいらないよ?」

 

 

 

 

 

 

「ぼくたちがこのせかいでいちばんわるいやつになるまで、ほかのわるいやつはぜ~んぶやっつけつづけるもん!」

 

 


 

 

 日がとっぷりと落ちた頃、野良魔神退治に出ていた吸血鬼侍ちゃんからギルド支部に来て欲しいという脳内通信が届き、吸血鬼君主ちゃんと女魔法使いちゃんが闇夜を飛行しています。

 

 

 2人の背にはゴブスレさんと叢雲狩人さんの姿が、ゴブスレさんは鉱人道士さんを通じて鉱人(ドワーフ)の里に蒸留に用いる機材の見積もりを依頼していたのが到着したということで、一緒に運んであげているみたいです。叢雲狩人はというと、魔神退治でヘロヘロになっている吸血鬼侍ちゃんを迎えに行くという建前で一足先にちゅーちゅーさせる腹積もりのご様子。「お酒は絶対にダメですよ?」という若草祖母さんの言葉にはしっかりと返事していたのでそちらの心配は無さそうです。妊娠中はもちろん、授乳時期のお酒は避けたほうが無難ですからね。

 

 

 夜になっても灯りの絶えないギルドの扉を潜り、お目当ての人物を探す一行……お、ちょうどみんな一緒にいるみたいですね。机に突っ伏している吸血鬼侍ちゃんと火酒を景気よく飲み干している鉱人道士さん。それに、今回吸血鬼君主ちゃんを呼ぶよう吸血鬼侍ちゃんに頼んでいた人物とそのパートナーも同席しています。一行が到着したことに気付いたその人物……女騎士さんが、大きく手を振って酒場の席へと一行を招きました。

 

 

「こんな夜分に呼び出してすまない。キミにも感謝するよ、ありがとう」

 

「ん、おきになさらず~。……はむ……ちゅ~……」

 

 

 目にも止まらぬ速さで吸血鬼侍ちゃんを抱きかかえた叢雲狩人さんが早速ちゅーちゅーさせる光景を横目に一行へと頭を下げる女騎士さん。その手には精緻な装飾が施された一通の封筒が握られています。おゆはんはご馳走しようという彼女の言葉に頷き女魔法使いちゃんが適当に注文を済ませた後、女騎士さんが一行を呼び出した理由を話し始めました。

 

 

「今朝、私の元に姉からこの手紙が届いたのだ。……ああ、姉と言っても竜司祭殿を捕獲したあっちじゃない。もう1人真ん中にいるんだが……」

 

 

 途中で口を噤み、ゴブスレさんを見る女騎士さん。兜越しに無言で見つめ返して来る彼の視線を受け止め、続きを話し始めました。

 

 

「お前は知っているだろう。かつてこの近くに庵を構えていた偏屈な女魔術師を。そして、その魔術師がどうなったのかを……」

 

「……ああ。暗黒の塔の屋上から、あいつは此処ではない何処かへと旅立っていった」

 

 

 何処か懐かしむような響きを帯びたゴブスレさんの呟き。孤電の術士(アークメイジ)さんとの冒険の日々は『小鬼を殺す者(ゴブリンスレイヤー)』を形成する重要な要因になっていましたもんね。そんなゴブスレさんを見ながら持っていた手紙を机へと広げる女騎士さん。そこに記された内容を見て、一行の目には驚きと困惑が手を取り合いながら踊っています。

 

 


 

 

『やぁ、結婚おめでとう。キミと姉さんの慶事には()()も随分と盛り上がっていたよ』

 

『本当は結婚式にも出たかったんだけど、何分こちらも立て込んでいてね。最近やっと時間が出来たのでこうやって手紙を認めることが出来たくらいなんだ』

 

『そのお詫び、というわけではないのだけれど、ひとつ結婚祝いを送ろうと思う』

 

『同封した地図に記された古い神殿に、我が家に伝わる黄金の鎧と源を同じくする逸品が眠っている』

 

『パートナーである彼にピッタリのモノだろうから、箔付けにもちょうど良い筈さ』

 

『そうそう、その神殿は太陽神を祀ったものだから、お友達の小さな吸血鬼くんに力を借りるといい』

 

『彼女らへの報酬も一緒に手に入るだろう。キミたちの冒険を楽しみに見守っているよ』

 

『たしかこういう時の応援は……イザユケー! ボウケンシャー! だったかな?』

 

『追伸、高所恐怖症だったら覚悟しておきたまえ♪』

 

 


 

 

「なんというか、個性的なお姉さんだったみたいね……」

 

「ああ、我が姉ながら正直奇人変人の類だと思う。家から勘当されて尚自分の研究に没頭し、そのまま魔術師になったくらいだからな……」

 

 

 だから私が家督を継ぐ羽目になったんだ、と溜息まじりに零す女騎士さん。まぁ長姉が軍のバリキャリでその下が魔術オタクときたら、末っ子の女騎士さんに掛かる期待は重くなりますよねぇ。

 

 

「だが、どっちの姉も冗談は言っても嘘は決して付かん。この地図に載っている神殿に宝物があるというのは確かだろう」

 

 

 自信に満ちた表情で頷く女騎士さん……おや? ゴブスレさんと鉱人道士さんが地図を覗き込んで首を傾げてますね。もしかして知っている場所なんでしょうか。

 

 

「のうかみきり丸、この場所は確か……」

 

「ああ。()()小鬼聖騎士(パラディン)が拠点を設けていた山に近い」

 

 

 え、そうなんですか? 2人の言葉に釣られるように地図を覗き込む女魔法使いちゃんと叢雲狩人さんも、そういえばそうかもと同意してますね。山間にあった神殿は太陽神さんを祀るものでは無かったですし、もっと見つかりにくい場所に作られていたんでしょうか? みんなの反応を見ていた女騎士さんが、おゆはんに夢中になっていた吸血鬼君主ちゃんへと顔を向けました。

 

 

「下の姉が君を指名したのは太陽神の神官であることと、もう一つ理由がある。恐らく君……いや、君の一党の協力が無ければ神殿に辿り着くことは不可能だろう」

 

「むぐ……。えっと、そのしんでんはどこにあるの? ひょっとしてダンジョンのなかとか?」

 

 

 吸血鬼君主ちゃんの問いに首を横に振り、目の前に上向きに指をピッと差し出す女騎士さん。反射的に差し出された先っぽを咥える吸血鬼君主ちゃんを苦笑しながら引き剥がし、一行に伝えた神殿の場所は……。

 

 

 

 

 

「空だ」

 

 

「ふぇ?」

 

 

「その太陽神を祀る神殿……『浮遊神殿(フロートテンプル)』は、雲よりも遥かに高い場所を飛んでいるらしい」

 

 

 

 

 

 

「私と相棒をその神殿まで送り届け、共に調査に付き合って貰いたい。それが今回君たちへ依頼したい冒険だ。……ついでに子どもを預かってくれると助かる

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 




 ショートセッションが続く予定なので失踪します。

 お気に入り登録に感想や評価、誠にありがとうございます。

 読み終わった際にお時間がありましたら、一言ご感想を頂けると執筆の励みになります。

 お読みいただきありがとうございました。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。