ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 釣りキチ三平を読み返していたので初投稿です。




セッションその13 いんたーみっしょん その3

 前回、女騎士さんから『浮遊神殿(フロートテンプル)』探索の同行を依頼されたところから再開です。

 

 

 ギルドの酒場で依頼を引き受け、翌日を準備に費やし出発となった2日後の早朝。牧場の入り口には朝早くから冒険に出発する面子とそれを見送りに来たみんなで賑わっていますね。普通の馬車サイズに大きくなった使徒(ファミリア)ワートホグ(イボイノシシ)君に令嬢剣士さんが車体を繋ぎ、参加者が次々に車内へと乗り込んで行ってます。

 

 

 最初から空を飛んでいくという案もあったのですが、急ぐものでもありませんし、到着までに消耗してしまっては万一の時大変だろうということで、以前訪れた温泉のある村まではゆっくりと陸路で向かうことにしたみたいです。

 

 

 今回の冒険に赴くメンバーは、まず依頼人であり主役でもある重戦士さんと女騎士さん。久々の冒険ということで2人とも気合十分、若草祖母さんの抱く愛娘に手を振って出発の挨拶をしていますね。

 

 次に『浮遊神殿(フロートテンプル)』まで飛行可能なメンバーの選出でしたが、まず女魔法使いちゃんが不参加を表明。二重存在(ドッペルゲンガー)との戦いで壊してしまった爆発金槌の修理がまだなので今回はパスとのこと。何やら鉱人道士さんや武具店の店主(じいじ)と悪い顔で話し合っていたのが気になる所ではあります。

 

 

 野良魔神退治で疲労が残っている吸血鬼侍ちゃんも今回は見送り。本人は参加したがっていましたが、若草知恵者ちゃんが寝台(ベッド)で説得し首を縦に振らせたそうです。また、ダブル吸血鬼ちゃんは互いの身体を≪邪な土≫として設定しているため、何らかの拍子に2人同時に肉体が滅びちゃうと復活出来なくなっちゃう可能性があるそうです。そのため、余程のことが無い限り2人一緒に危険な場所に赴くのは避けたほうが良いとのこと。残念ですが安全マージンは重要ですからね。

 

 

 というわけで、必然的に吸血鬼君主ちゃん、剣の乙女ちゃん、令嬢剣士さんの3人が飛行ユニットとして参加。太陽神さんの信徒である吸血鬼君主ちゃんは猛烈に行きたいアピールをしていましたし、四方世界基準では恐らく最高峰の実力者である剣の乙女ちゃんも空飛ぶ神殿に興味があるようで参加を表明。また、令嬢剣士さんはかつての仲間たちに挨拶と報告がしたいということで参加を熱望していましたので、居残りの2人も参加枠を譲ったのかもしれません。

 

 

 残る枠はあと一つ。面子から考えれば斥候が必要なので、妖精弓手ちゃんか叢雲狩人さんのどちらかが来てくれると嬉しいというところ。出産を終え身軽になった2000歳児が「ぜったい冒険行きたいー!」とジタバタ騒いでいた為、苦笑しつつも大人の対応で叢雲狩人さんが参加を辞退し最後の枠は妖精弓手ちゃんとなりました。

 

 

 久しぶりのまともな冒険にテンションの上がった妖精弓手ちゃん。ウキウキしながら高高度での防寒・防風用の上着を汚部屋から引っ張り出していたのですが……。

 

 

 

 

 

 

「わ゙だじも゙ぼ゙ゔげん゙じだがっ゙だの゙に゙ぃ゙ぃ゙ぃ゙!! ……へぷちっ!

 

「いやぁ申し訳ないねぇ妹姫(いもひめ)様。妹姫様の代わりにめいっぱい空の旅を満喫してくるよ」

 

 

 真夏だというのに防寒用のセーターを着込み、真っ赤な顔で鼻水を垂らしている妖精弓手ちゃん。彼女からの恨みがましい視線を涼やかに受け流しながら、荷台の上から手を差し伸べる吸血鬼君主ちゃんの手を取って叢雲狩人さんが車内へと消えて行きました。悲しみで崩れ落ちる2000歳児を、赤ちゃんたちから遠ざけるように女魔法使いちゃんが首根っこを掴んで確保していますね。

 

 

「いくら夏だからって、素っ裸で布団も掛けずに腹を出して寝てたら、そりゃ風邪ひいてもおかしくないでしょうよ……。いいからさっさと家に戻って布団に入る。赤ちゃんたちにうつさないように暫く隔離部屋よ」

 

「ゔあ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ん゙……」

 

 

 あー、妊娠している間はお腹を冷やしたらダメだからとパジャマと妊婦帯を装備するようみんなから口酸っぱく言われてたのが、普段マッパで寝てる妖精弓手ちゃんにとってはストレスだったのかもしれませんね。やっとそれから解放されて文字通り産まれたままの姿で気持ちよく寝たら身体が対応しきれずに風邪をひいてしまったと。

 

 

 まぁ運が悪かったとしか言えませんけど、これを機にちゃんと寝巻を着る習慣を付けてみても良いんじゃないでしょうか。……吸血鬼君主ちゃんは着衣or半脱ぎのほうがそそられるみたいですし(謎)。

 

 

 

「では仲間を借り受ける。ちゃんと返すから心配するな!」

 

「いってきま~す!」

 

「はい、この()はしっかりとお預かり致しました。皆さま、良き冒険を」

 

「いってらっしゃ~い!」

 

 

 使徒(ファミリア)に牽引されゆっくりと動き出した馬車。その後方から手を振る女騎士に対して、若草祖母さんが抱きかかえた娘さんと一緒に手を振っています。ダブル吸血鬼ちゃんもハグからのほっぺすりすりを行った後、馬車の幌の上に吸血鬼君主ちゃんが飛び乗ってますね。冒険者たちの乗った馬車が丘の向こうに消えるまで、ダブル吸血鬼ちゃんはお互い一生懸命両手をブンブン振っているのでした……。

 

 


 

 

 さて、冒険組を送り出した後の一行ですが……。お、赤ちゃんたちや預かっている娘さんに風邪を移しては事だということで個室に隔離された妖精弓手ちゃん。寝台(ベッド)でうんうん唸っている彼女の部屋に吸血鬼侍ちゃんと女魔法使いちゃんが訪れてますね。2人ともアンデッドなので毒病気無効ですし、病原菌も寄り付かないそうです。屍者(ゾンビ)食屍鬼(グール)のイメージで病気の塊と思われがちなアンデッドですが、知識神さん曰くあれは周囲の環境が原因であって、きちんと衛生に気を使っていれば代謝が無い分普通の人よりも清潔なんだとか。

 

 

 余談ですが、吸血鬼君主ちゃんの眷属となった3人が一番驚いたのは、食事を行ってもトイレに行かなくて良くなったことだったみたいです。自前の魔力で体内に取り込んだ食物を完全に分解し魔力に還元することで、排泄が不要になるんだとか。消費と還元がほぼトントンなので生命維持には使えませんが、食事によるリラックス効果は期待できるそうです。ダブル吸血鬼ちゃんもごはん食べるの大好きですし、人と交流する時に食卓を囲めるのは良いことですもんね!

 

 

 ……いちいちトイレに気を使わなくて良いということで、女性冒険者たちから凄い目で見られていたのは内緒です。男女混成パーティでは気を使う事ですし、排泄時は入浴時と同じくらい無防備になっちゃいますからねぇ。

 

 

 

「ざむ゙い゙……あ゙だま゙お゙も゙い゙…………へぷちっ!

 

 

 頭から毛布を被りガタガタ震えている妖精弓手ちゃん。力無く寝台(ベッド)から突き出た手がワキワキと湯たんぽ(吸血鬼君主ちゃん)を探して彷徨っていますが、残念ながら先程出発してしまいました。何とかは風邪をひかないとか夏風邪は何とかがひくとか言われてますけど、罹患している当人はひたすら身を震わせるばかり。風邪を一発で治すような奇跡は無いですし、あっても急患に備えてみだりに奇跡を乱発するわけにもいきません。精々強壮の水薬(スタミナポーション)を呑ませるくらいですが、高価なために一般の人には手が届きません。身体を暖かくして体力を温存しつつ、消化の良い食べ物をとるのが関の山でしょうか。

 

 

「まぁ死ぬようなモンじゃないし、2~3日寝てれば熱も下がるでしょ。あんまり薬に頼るのも良くないし、ゆっくり寝てなさいな」

 

「なにかほしいものある? たべたいものとか、してほしいことでもいいよ?」

 

 

 女魔法使いちゃんが妖精弓手ちゃんの額に手を当てながら優しく安静にしているよう告げる傍で、何かしてあげたそうに顔を覗き込む吸血鬼侍ちゃん。吸血鬼特有のヒヤッとした手の感触にうっすらと目を開けた妖精弓手ちゃんが、間近にある吸血鬼侍ちゃんの瞳を見つめながら呟きました……。

 

 

「――が食べたい……」

 

「ふぇ? なにがたべたいの?」

 

喇蛄(ザリガニ)の茹でたのが食べたいなぁ……。むか~しね、あに様とねえ様と3人で川遊びをしている時に、侍女の1人がいっぱい捕まえて来てくれて。ただ塩茹でにしただけなのに、す~っごく美味しかったの……」

 

 

 懐かしいなぁ……と呟く妖精弓手ちゃん。いつもの快活さが息を潜め、儚さと可憐さが前面に押し出された憂い顔に思わず見惚れてしまう吸血鬼2人。熱によって上気し、潤んだ瞳の破壊力は普段見慣れている2人であっても生唾を飲み込んでしまうほど魅力的なようです。呆けたように妖精弓手ちゃんの顔を見つめていた吸血鬼侍ちゃんがハッと我に返り、宙を彷徨っていた彼女の手を握って大きく頷きました!

 

 

「わかった! すぐにかってくるね!!」

 

「え。いや、ちょっと待ちなさいって……」

 

 

 女魔法使いちゃんの静止の声も届かず、矢のような速さで部屋を飛び出して行った吸血鬼侍ちゃん。間も無く窓の外に辺境の街へと飛んでいく小さな姿が見え、力無く伸ばした手を下ろしながら女魔法使いちゃんが溜息を吐いてます。恐らく彼女にはこの先の結末が予測出来ているのでしょう。そっと妖精弓手ちゃんの頬を撫で、部屋からリビングに向かって歩き出しました……。

 

 

 

 

 

 

「どこにもうってなかった……」

 

「そりゃそうよ。只人(ヒューム)の食卓には滅多に出ないし、新鮮なものなんて早々手に入らないわ」

 

 

 お、午前の仕事を終え、牧場の母屋の軒先でランチタイムを楽しんでいた一行。涙でちょっとしょっぱくなった牛飼若奥さん謹製の夏野菜スープを啜りながら入手出来なかったとションボリしている吸血鬼侍ちゃんを女魔法使いちゃんが慰めています。以前収穫祭で屋台が出ていたこともありましたが、あれは例外的なものであり、只人(ヒューム)の普段の食卓に登場することは無い、一種の珍味的な扱いですからねぇ。

 

 

森人(エルフ)の集落でなら手に入る可能性はありますが、それも確実とは言えませんし……」

 

「えう……」

 

 

 妹姫さまのおねだりを叶えて差し上げたいのは山々なのですが……と申し訳なさそうに頭を下げる若草知恵者ちゃんの言葉に、ますます肩を落とす吸血鬼侍ちゃん。何か別のもので都合をつけるしかないのかと考えていた一行ですが、そこに救世主が現れました! 今まで無言でスープを口に運んでいたある人物が、意を決したように口を開いたのです。その人物とは……。

 

 

 

 

 

 

「あー、横から口を挟むようですまないが、もしかして喇蛄(ザリガニ)を捕まえたいのかな? ……それだったら、力になれるかもしれない」

 

「……ふぇ?」

 

「……え? お義父さん?」

 

 

 ……恥ずかしそうにポリポリと頬を掻きながら仏頂面を貫き通そうとして失敗している、牧場夫婦のお義父さんです!!

 

 

 みんなの視線を一身に浴び、ちょっと引き気味なお義父さん。ですが気を入れ直し、期待と不安の眼差しで見つめてくる吸血鬼侍ちゃんの前にしゃがみ込んで視線を合わせ、ゆっくりと頭を撫でています。

 

 

「いくつか準備が必要になるが、それを手伝ってくれるのなら明日捕まえに行こうか」

 

「ほんと!? ……あ、でもはたけやうしさんのおせわが……」

 

 

 お義父さんの言葉に一瞬目を輝かせた吸血鬼侍ちゃん。ですが毎日忙しく働いている姿を思い出し再びシュンとしちゃいました。喜怒哀楽をハッキリと表す吸血鬼侍ちゃんに苦笑を浮かべながら、事態の推移を見守っていた兎人(ササカ)のおちびちゃんたちと女性冒険者たちを指し示しました。

 

 

「みんなしっかりと仕事を覚えてくれている。1日くらい私が居なくても大丈夫だよ」

 

「ありがとう! えへへ……」

 

「ぬおっ!? ……その、なんだ。君も家庭を持つ身なのだから、みだりに抱き着いたりするのは良くないのでは?」

 

 

 嬉しさのあまりお父さんの首筋に抱き着いちゃった吸血鬼侍ちゃんを慌てて引き剥がすお義父さん。周囲の女性陣達を窺いながらやんわりと諭そうと試みてますが、女性たちの目は娘と戯れる不器用な父親を生暖かく見つめるソレそのものです。オホンと咳払いをして場を仕切り直すと、みんなに明日の準備を割り振り始めました。

 

 

「君たちは蚯蚓(ミミズ)を集めて来てくれるかい? 畑ではなく必ず森で捕まえて来てくれ。落ち葉や枯草の下にいると思うから。決して1人にはならず、必ず冒険者のお姉さんたちと一緒に行動するように、いいね?」

 

「「「はい! だんなさまのおとうさま!!」」」

 

 

まずはおちびちゃんたちに木製の蓋付き容器を幾つか手渡し、餌となるミミズを集めるよう頼んでますね。牧場の畑にも沢山いますけど、彼らは畑を豊かにしてくれる頼もしい存在なので、森で採取するよう念押しをしているんですね。そんなミミズを大量に食べてしまうモグラは農家の嫌われ者なので、牧場でも狼さんが見回りをして、見つけ次第頭からボリボリするのが日課になっています。

 

 

「君たち2人は丘向こうの竹林から竹を取って来て欲しい。手で握れるくらいの太さのものを2本と、ちょうど君の背丈くらいの細いものを人数分だ」

 

「は~い!」

 

「わかりました。義父さん」

 

 

 続いて吸血鬼侍ちゃんとゴブスレさんに、恐らく竿にするのであろう竹を取ってくるよう頼むお義父さん。元気よく返事する吸血鬼侍ちゃんの横で、今まで見たことの無いほど明るい表情のお義父さんに目を丸くしていたゴブスレさんでしたが、深く頷きを返し吸血鬼侍ちゃんに抱えられて竹林へと飛んでいきました。

 

 

「それと……確か古くなった甘藷(サツマイモ)があった筈だ。お前はあれを茹でておいてくれるか? 私は仕掛けの準備をしておく」

 

「はーい! ……ふふっ、お義父さんが釣りに行くなんて何年振りだろうね!」

 

 

 牛飼若奥さんに準備を頼みつつ、楽し気な雰囲気を纏いながら納屋へと姿を消すお義父さんを、何処か嬉しそうな表情で見る牛飼若奥さん。彼女の口ぶりから察するに、もしかしてお義父さんって釣り好きだったんでしょうか? 妖精弓手ちゃんのおねだりから始まったお話が、なんだか面白い方向に動き出しましたね!

 

 


 

 

「さて、全員竿は持ったかな」

 

 

 日が変わって翌日。牧場から少し離れたところにある小川のほとりに集まったのは、全部で4人と1匹と二柱。一行のリーダーであるお義父さんの声に全員手に持った竿を高く掲げています。トレードマークのとんがり帽子を麦わら帽子に変えた女魔法使いちゃんに、同じく麦わら帽子と若草祖母さんが縫ってくれた白いワンピース姿の吸血鬼侍ちゃん。誰かが川に落ちた時の救助に役立つだろうと水中呼吸の指輪を付けたゴブスレさんも竜革鎧に麦わら帽子というシュールな姿です。

 

 

 その横には器用に竿を口にくわえた狼さんと、初めての釣りに興奮して鎧の隙間から光が漏れている英霊さんの姿が。彼らが付いて来たいとジェスチャーで伝えてきたときに全く動じてなかったあたり、お義父さんには筋金入りの釣りキチ疑惑が浮上してまいりました。

 

 

 

「へぇ……単純な作りだけど、これで本当に釣れるのかしら?」

 

「まぁ試してみるといい。そうだね……あそこの岸際、流れの緩やかなところに落としてみなさい」

 

「は~い。……ていっ」

 

 

 細くしなやかな1m程の青竹の先に糸を結わえ付け、重りと針を付けただけの簡単な仕掛けにみんな興味津々です。針にミミズを付けた吸血鬼侍ちゃんがお義父さんに言われた場所に仕掛けを振りこみ、重りが着底してから待つことしばし……。

 

 

「あ!? なんかピクピクしてる!」

 

「まだ鋏で餌を抑え込んだだけだよ。もう少し待って、しっかり餌を口に運ぶまで我慢するんだ」

 

 

 竿先に感じる感触に慌ててアワセを入れようとする吸血鬼侍ちゃんでしたが、お義父さんの言葉にじっと我慢。やがて竿先に感じるピクピクという当たりがグイッと引っ張るようなものに変わったところで……。

 

 

「さぁ、ゆっくりと引っ張り上げるんだ。勢いを付けてしまうとせっかくかかった針が外れてしまうからね」

 

「あわわ……そ~っと……!」

 

 

 ビクン、ビクンと後ろに向けて逃げようとするザリガニの力に思わず一気に引き上げたくなるところですが、その誘惑に耐えてそっと岸へと引き寄せていく吸血鬼侍ちゃん。水面から赤い姿が離れ、川岸の草むらの上にポトリと着地させることに成功しました!

 

 

「ほわぁ~!」

 

「うん、上手く釣れたじゃないか。みんなも慌てる必要は無い。恐らく何年も釣り人は居なかっただろうし、逃げられてもすぐ他の奴が喰いついてくるからね」

 

「うし、それじゃ私もやってみようかしら……!」

 

 

 両手の鋏を掲げて威嚇するザリガニをひょいと背中側から掴み上げ、持ってきた木桶へと放り込むお義父さん。人数分の木桶を用意したということは、誰が何匹釣り上げたのか一発で判ってしまいますねぇ。みんなそれぞれ竿を手に、ここぞと思うポイントに仕掛けを投入すると……。

 

 

「わ、ほんとに釣れた!」

 

「ワン!」

 

「……驚いたな。こんなに簡単に釣れるとは」

 

「「……!!」」(ジェスチャー:跳ねる歓喜で嬉しさを表現している)

 

 

 次々に水面から飛び出てくる赤い姿に驚きの声が続く川岸。ゴブスレさんも自ら釣り上げたザリガニをまじまじと見つめた後、そっと自分の木桶にしまい込んでますね。みんなが釣りだしたのを見て、吸血鬼侍ちゃんも再び竿を振って仕掛けを水の中へと打ち込み始めました。

 

 

 

「いや、ビックリするくらい釣れたわね」

 

「ね~!」

 

 

 最初は釣れる度に一喜一憂していた2人ですが、際限なく釣れてしまうためにちょっと竿を置いて休憩しているみたいですね。早アワセしてしまったり喰いが浅くてバラシてしまうこともありますが、やはり釣り人が居なかったためかすぐに違うヤツが喰ってくるため、まさに一投一匹という有様。狼さんは木桶に釣ったザリガニをしまう際に鼻の頭を鋏で挟まれて不貞寝してますし、英霊さんたちもあまり釣り過ぎても食べ切れないと判断したのかみんなの木桶の水を変えたり槍の穂先に仕掛けを結んで魚狙いに変えたりと別の遊びに切り替えているみたいです。

 

 

 ……そういえばお義父さんの姿が見えませんね。最初はみんなに釣り方を教えたり絡まった仕掛けを解いたりとサポートに回っていましたが、みんなが慣れて来てからは手を出すことも無かったみたいですけど……。あ、居ました! 葦の生い茂る川岸に敷物を敷いて座っています。隣にはゴブスレさんも一緒に並んでますね。

 

 

「正直、意外でした。義父さんにこんな趣味があったとは……」

 

「まぁ、君が牧場に来てからは行く事も無かったからね。……小さい頃は良く妹と一緒に釣りをしていたんだ」

 

 

 穏やかな表情で水面を見つめる2人の傍には長い竹の竿が2本。1本は大きめの針にミミズを房掛けにしたぶっ込み仕掛け。狙いはウナギかはたまたナマズでしょうか? もう1本は茹でた甘藷(サツマイモ)を潰して麺麭(パン)屑と一緒に練り上げた吸い込み仕掛け。こちらは恐らく鯉狙いですね。

 

 

「あの()の母親……私の妹はあまり身体が丈夫でなくてね。あの娘を産んだ後も乳の出が良くなかったんだ。少しでもそれが改善されればと思い、此処で鯉を釣っては妹夫婦のところへ持って行っていたものだよ」

 

 

 過去を懐かしむように言葉を続けるお義父さん。昔から鯉は栄養の豊富な魚と言われてますし、産後の乳の出を良くするという話も広く伝わっています。きっとお義父さんもそれを信じて妹さんに食べてもらうために釣りを続けていたのでしょう。

 

 

「……だが、あの娘が牧場に来てからは、釣りをすることも無くなっていた。あの娘にひもじい思いをさせたく無かったし、嫌でも妹のことを思い出させてしまうからね」

 

「……はい」

 

 

 淡々と語るお義父さんの言葉に頷きを返す事しか出来ないゴブスレさん。しんみりとしてしまった空気を払拭するように、お義父さんが明るい声で続きを話し始めます。

 

 

「だが、それももう大丈夫だろう。みんなの協力で牧場の経営も順調だし、君という後継者も出来た。本当はあの娘が出産した際にも釣りに行くつもりだったんだが、冬は時期が悪くてね……」

 

 

 今もあまり良い時期ではないけれど、竿を出さなきゃ釣れないからね、と笑うお義父さん。それに釣られるようにゴブスレさんも不器用な笑みを浮かべています。はじめはすれ違いの多かった2人ですが、牧場襲撃を機に少しずつ互いを理解しようとした結果、少々ぎこちなさなは残っていますが立派な親子関係を築くことが出来たみたいですね……。こっそりと様子を窺っていたみんなもそんな2人に生暖かい視線を向けています。

 

 

「……もう少し、親子水入らずにしておいてあげましょうか」

 

「そうだね。……あれ?」

 

 

 おや、吸血鬼侍ちゃんが何かを指差しています。ちっちゃな指が指し示しているのは竹竿の1本。竿先が水面に向かって弧を描いています!

 

 

「む、何かかかったみたいだ! 慌てず慎重にアワセてみたまえ」

 

「はい! ……グッ!?」

 

 

 うわ、竹竿を握っているゴブスレさんが川に引き込まれそうになって二歩三歩と蹈鞴を踏んでいます! 邪魔にならないようもう1本の竿をお義父さんが回収している間にこっそり覗いていたみんなが駆け付け、吸血鬼侍ちゃんがゴブスレさんの腰に抱き着きました。英霊さん二柱は左右から竿に手を伸ばして、糸が限界を迎える前に獲物を引き寄せようと必死に川岸へと寄せています。

 

 

「うわ、おっき……じゃなくて、あんなのどうやって岸に上げるのよ?」

 

「大丈夫だ、そのまま岸まで寄せてくれ……!」

 

 

 困惑の声を上げる女魔法使いちゃんの横で、冷静に指示を出すお義父さん。着ていた上着を脱いで腕に巻き付け、川縁ギリギリまで近寄っていきます。ゴブスレさんたちの竿さばきで獲物が水面に顔を出した瞬間、その腕を大きな口の中へと突っ込みました!

 

 


 

 

「おっきいね~……」

 

「いや大きすぎでしょ。ちょっと隣に並んでみなさいよ?」

 

 

 ゴブスレさんと英霊さんが大の字になって荒い息を吐くそのすぐ横。5フィート近くある大きな鯰が恨めしそうにみんなを睨んでいます。隣に寝転がった吸血鬼侍ちゃんよりも縦横両方大きいと言えば、視聴神さんたちにもそのサイズが判って頂けるでしょうか?

 

 

「これも……食べるのですか?」

 

「そうだね……今回はそうしよう。この大きさならヌシではないだろうし、今は産卵時期でもないからね」

 

 

 この大きさならおちびちゃんたちも満足するだろうと笑うお義父さん。みんなもつられて笑う中、鯰だけが口をパクパクさせています。2~3日生かしたまま泥を吐かせる必要があるので、家畜の洗い場に水を張ってそこで泳がせておくみたいですね。

 

 

「今日釣った喇蛄(ザリガニ)も泥を吐かせたほうが美味しいからね。それまでには森人(エルフ)のお嬢さんの熱も下がっているだろう」

 

 

 きっと驚くだろうと笑うお義父さんに満面の笑みを向ける吸血鬼侍ちゃん。冒険に行けなかった妖精弓手ちゃんも体調と機嫌を復活させてくれること間違いなしです!

 

 

「……ねぇ、たのしかった?」

 

「ああ、心躍る体験だった。……これもまた、冒険なのかもしれんな」

 

「えへへ……じゃあぼうけんはだいせいこう!」

 

 

 そっと吸血鬼侍ちゃんの頭を撫でるゴブスレさんの顔はとても穏やかなもの。それを見ているみんなの顔もほっこりしていますね。さぁ、釣った獲物が弱る前に凱旋です! 牧場で待っているみんなをビックリさせてあげましょう!!

 

 

 

 

 

 

 ……なお、自分が寝込んでいる時に楽しく釣りをしていたことに2000歳児がへそを曲げ、彼女のふてくされた態度を見た女魔法使いちゃんがキレて、吸血鬼侍ちゃんに魔剣を使って無理矢理生命力を補充させたのは叢雲狩人さんには内緒ですよ?

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 





 ああ……次は冒険パートだなので失踪します。

 お気に入り登録に感想や評価、いつも嬉しい限りです。また、誤字の報告もいただき感謝しております。気を抜くとすぐにやってしまうので何とかしたいですね……。

 読み終わった際にお時間がありましたら、一言ご感想を頂けると執筆の励みになります。

 お読みいただきありがとうございました。
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