ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 車のドアが凍結して開かず、遅刻しかけたので初投稿です。

 日間ランキング効果でUA140000、お気に入り登録が4ケタとなりました。ありがとうございます。なるはやで更新したいなぁと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。



セッションその14-7

「「「「「オ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァァァァァァ!!」」」」」」

 

 

 おっと失礼、再開前の音量調整を忘れておりました……こほん。前回、自分を吸血鬼だと思いこんでいた一般屍人(ゾンビ)と戦闘になったところから再開です。

 

 至高神の聖女さんによる情け容赦の無いマジレスによってなけなしの人間性(ヒューマニティ)を失い、身も心も亡者へと堕した屑冒険者(福本モブ)の成れの果てである新鮮な屍人(フレッシュゾンビ)たち。彼らの叫び声に釣られて集まって来た熟成された屍人(ノーマルゾンビ)とともに一行を十重二十重と包囲しようとしています。通常であれば食欲に支配された彼らが狙うのは血の通った温かな肉を持つ生者。それが柔らかければなおヨシ!という感じで、至高神の聖女さんと元女武闘家さんが狙われる筈なのですが……。

 

 

「あの屑ども、どうみても私たちを見てるわよねぇ……」

 

「ええ。もしかしたら吸血鬼に対する羨望と嫉妬の感情が残っているのでしょうか?」

 

 

 女魔法使いさんと剣の乙女さんが呟くように、新鮮な屍人(フレッシュゾンビ)たちの赤く蕩けた瞳は2人に狙いを定め、その魅力的な肢体を貪らんと今にも跳びかかって来そうです。……どちらも死体なだけに。

 

 

「こいつら以外はそっちの女2人を狙ってくるでしょうから、まず相棒の護りを最優先に考えなさい。噛みつきだけじゃなくて、爪にも毒がある可能性があるから攻撃を喰らうんじゃないわよ?」

 

「わ、わかった!」

 

「アンタも気を付けなさいよ!」

 

 

 眼前の屍人(ゾンビ)の群れから目を逸らさぬまま、半ば巻き込まれた状況の元冒険者の2人に声を掛ける女魔法使いさん。太陽の直剣を構える姿がなかなか様になっている相棒を何処か懐かしそうに見た後に、元女武闘家さんが竜革の手袋に包まれた拳を構え、屍人(ゾンビ)たちの動きを注視しています。

 

 

「――え、でもそれじゃお二人が……むぎゅっ!?」

 

「フフ、心配してくださってありがとうございます。でも大丈夫ですよ、思いっきりやっちゃってください」

 

「……ぷぁっ。うう……判りました。……ってちょっと、ナニ鼻の下伸ばしてんのよ!!」

 

「グワーッ!」

 

 

 おや、大人形態な剣の乙女さんのほうは何事か至高神の聖女さんに伝え、むぎゅっとその顔をたわわに埋もれさせて反論を封じ込めているみたいです。しばらく手足をジタバタさせていた至高神の聖女さんですが、たわわから顔を大きく息継ぎをした後に仕方なさそうに頷いてますね。

 

 ……あ、横で鼻を抑えていた聖騎士君の鎧の隙間から天秤剣の柄を捻じ込んで悶絶させています。同じ神殿の先輩後輩による濃厚な百合を目撃してしまったのですから仕方ありませんね。崩れ落ちた聖騎士君が粉砕剣1/6(カシナート)を杖代わりに立ち上がるのをジト目で見た後、至高神の聖女さんが奇跡を乞い願う詠唱を始めました……!

 

 

「裁きの(つかさ)、天秤の君、剣の君よ、光あれ!」

 

 

 聖女さんからの真摯な祈りを受け取り、ハッスルした至高神さんがみょんみょんみょんと奇跡パワーを四方世界へと送信。包み込むように握られていた彼女の手が咲く花の如くふわりと開かれ、そこから放たれた聖光(ホーリーライト)が辺りを眩く照らし出します!

 

 

「「「「「オ゙ア゙ア゙ァァ!?!?」」」」」」

 

 

 アンデッドの身では抵抗すら許されない聖なる光に灼かれ、身悶える屍人(ゾンビ)たち。耐久力の落ちていたものから次々に崩れていきますが、素早く効果範囲から逃れた対象もいるようです。まだ鮮度を保っている元屑冒険者(福本モブ)たちですね。そしてアンデッドは味方陣営にもいるわけで……。

 

 

「あー……日光と違って普通に痛いわねぇ……」

 

「ええ、まぁ。自ら望んでこの身体に成ったとはいえ、至高神様の加護で傷付くのはなかなか心にくるものが……」

 

「あの、やっぱりやめましょうよ……」

 

 

 ぷしゅーと背中から白煙を上げる吸血鬼な2人。心配そうに声をかける至高神の聖女さんにいいから気にしないでと後ろ手を振りつつ、半壊した建物の影から此方を窺う新鮮な屍人(フレッシュゾンビ)から目を離していません。

 

 

「逃がすと面倒だから此処で狩るわ。ちょっと離れるけど、不意打ちには気を付けてね」

 

「なまじ知性の残滓があると何をするか判りませんものね。全て始末しておきましょう」

 

 

 そう言うや否や新鮮な屍人(フレッシュゾンビ)が隠れた建物へと突っ込む女魔法使いさん。外套を翻すが如く自らの翼を掴み、鋭利な(ふち)を刃のように振るい――。

 

 

「ギャアッ!?」

 

 

 ――崩れかけていた建物の基部ごと、隙を窺っていた屍人(ゾンビ)を慈悲も無く両断していきます。幸運にも初撃から逃れることに成功したうちの一体……おや、あれは節穴斥候だったものですね、が頭上から女魔法使いさんを押し倒さんと跳びかかりますが、その腹部を血の色に染まった銃弾が貫きました。

 

 

「がああああ!? がああああ!?」

 

 

 バランスを崩し地上へ落下した元節穴斥候。地面に強く打ち付けられ、大穴の開いた腹部を抑え膝立ちになったところで、何者かが間近で自分を見下ろしていることに気付き怯えたように血の混じった奇声を発しています。そっと伸びて来た白い繊手が喚き散らす彼の頭頂部と顎下に添えられ……。

 

 

屍人(ゾンビ)を完全に殺しきるには、やはり頭部を潰すのが一番でしょうか」

 

 

 グシャリ、と熟れた果実を潰すように弾ける頭部。既に凝固しかけていたのか血が周囲に飛び散ることも無く、汚れたのは実行者である剣の乙女さんの両手くらいでしょうか。血痕は染み抜きしにくいわよ?という女魔法使いさんからの指摘に対し「魔力で編んでいるので一旦解除して着直せば無くなりますわ」と微笑んでいますね。ちょっと便利で羨ましいです。

 

 

 立て続けに仲間(仲間とはいってない)を滅ぼされた元屑冒険者(福本モブ)たちですが……おやおや、2人の強さに委縮してしまい誰が突っ込むのか無言で牽制しあっているみたいです。散々兵士たちを強化されたステで蹂躙していたというのに、逆の立場になった途端この体たらく。そんな連中を見ている女魔法使いさんの目に冷ややかな光が灯っています。

 

 

「……ねぇ、こんなに隙を晒して談笑しているのに、()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「人の身を捨て強くなったのでしょう? 自分たちを馬鹿にした女をわからせる絶好の機会ではありませんか」

 

 

 2人の冷たい視線を受けてもなお唸り声を上げるばかりの屍人(ゾンビ)たち。そんな彼らに対し、淡々と言葉を紡ぐ2人の口調には徐々に熱いものが含まれていきますね。

 

 

「あの子は1人ぼっちでアンデッドに成り、何度も何度も滅ぼされていました。それでも決して諦めず、光を求めて戦い続けたのです」

 

「アンタたちは群れているんでしょう? 数を利用して飽和攻撃をしないの? 防衛役(タンク)が攻撃を引き受けている間に背後から致命の一撃は? 手足の1本失ったくらいじゃ死なないんだから、全員同時に捨て身で掛かってきたらどうなの?」

 

吸血鬼(ヴァンパイア)の肉を喰らえば、アンデッドとしての階梯が上がって吸血鬼(ヴァンパイア)へと成れるかもしれませんわ。誰とも知らぬ術者の傀儡から逃れる絶好の機会ですのに……」

 

 

 ほぅ、と熱を帯びた吐息とともに自らの熟れた肢体を抱き締め、挑発するような視線を向ける2人。そして彼らへのトドメとなる言葉が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「私たちを手に入れた、あの子なら出来たわよ?」」

 

 


 

 

「うへぇ、あっちは随分盛り上がってるみたいじゃん……」

 

 

 銃撃と大きな破砕音、そして屍人(ゾンビ)の雄叫びがする方向を眺めながら暢気そうに呟いている聖騎士君。しかし話しながらも油断することは無く、手に握る粉砕剣1/6(カシナート)へ肉片を纏わせながら、次々に屍人(ゾンビ)を腐敗した挽肉(ミンチ)へと加工しています。

 

 ≪聖光(ホーリーライト)≫の輝きに身を焦がされながらも、唯一残った食欲に突き動かされるように生者へと押し寄せる屍人(ゾンビ)たち。それに対し呪文を維持している至高神の聖女さんを護るように3人が囲み、迫る亡者たちを迎撃しています。

 

 

「クソッ、近寄るなっての!?」

 

 

 骨だけになった両足でにじり寄る屍人(ゾンビ)に向かって太陽の直剣で斬りつける元青年剣士君。剣を振り回すのに邪魔する出っ張りは無いので剣を引っ掛ける心配はありませんね。刀身に触れた部分から煙を上げて両断された死体を見て、久々の戦闘にゴクリと生唾を飲み込んでいます。足を止めてしまった彼に別の屍人(ゾンビ)が掴みかかろうとしますが……。

 

 

「ほら、動き回る! 止まってたら複数体に囲まれて餌になるだけよ!!」

 

 

 屍人(ゾンビ)の胸元を貫通したのは竜革の手袋を嵌めた元女武闘家さんの拳です。ブスブスと焦げ跡を残し腕が引き抜かれ、鉤爪のような形の反対の手がその頭を薙ぎ払い、屍人(ゾンビ)の息の根を止めました。熱を帯びる両の手をグーパーしながら歯を見せる笑みを浮かべ、再び構えを取っています。

 

 

「うわ、これめっちゃ便利。ちょっと欲しいかも……!」

 

 

 材料はまだ余っていると思うので作れなくは無さそうですが、いったいナニに使うつもりなのでしょうか? 護身用にしては威力が高すぎると思うのですが……。

 

 

「これで13! 次はどいつだ!!」

 

 

 ふむ、やはりキルスコアは聖騎士君が断トツ一番みたいですね。≪聖光(ホーリーライト)≫で半分以上削れているとはいえ、元冒険者の2人にはまだ人型の敵に対して武器を振るうのに若干の躊躇いが見受けられます。その点ギルドの訓練場で『殺し』の何たるかを学び、また神殿騎士として研鑽を積んで来た聖騎士君は、『敵』に対して躊躇うことの恐ろしさを知っていますので情け容赦ない攻撃が繰り出せているようです。

 

 

「ニク……クワセロォォォ!!」

 

「やば、抜かれた……ッ!?」

 

 

 ……っと、そんな話をしていたら動きがありました! どうやら賢しい新鮮な屍人(フレッシュゾンビ)の一体が吸血鬼組ではなく生身組を狙って迂回してきていたようです。口元から涎を溢れさせ、マシラのように建物の壁を蹴って接近するふとましい影。膨張した筋肉によって半ば弾け飛んだ革鎧を素肌に纏う太め軽戦士の成れの果てですね。

 

 元冒険者の2人を頭上を飛び越え、聖騎士君の繰り出した粉砕剣1/6(カシナート)に片腕を持っていかれながらも突き進むのを止めず、一直線に向かう先には≪聖光(ホーリーライト)≫を維持している至高神の聖女さん! 地面スレスレに身体を縮こませ、両足の筋肉が断裂するのも意に介さず高く跳躍。目を閉じて呪文に集中している至高神の聖女さんへと大口を開けたまま落下していきます。勢いそのまま彼女を喰らうつもりなのか、聖騎士君の声にうっすらと目を開けた彼女を丸齧りにせんと、目に獣性を孕み肉欲の突き動かすまま襲い掛かり……。

 

 

 

「 い゙ だ だ゙ ぎ ま゙ ぁ゙ ず 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おなか壊すから、食べちゃダメだからね?」

 

 

 

ごきん

 

 

 

 ――至高神の聖女さんの絶賛成長中な胸元からするりと飛び出し、瞬時に巨大化した至高神の使徒(下水ワニ)の顎に阻まれ、そのまま噛み砕かれてしまいました……。

 

 

「うん、そのままペッてして。……よしよし、良い子だね!」

 

 

 新たな主の言葉に従い、念入りに咀嚼したあとに腐肉を吐き出した白ワニの巨体を優しく撫でる至高神の聖女さん。白く輝く鱗を丁寧に撫でられてワニさんも嬉しそうです。

 

 いつの間にサイズ変更機能追加してたんですか? ……ああ、破壊し、もとい栄纏神さんが羨ましかったんですねわかりますん。でももっと早く追加してあげてたら、剣の乙女さんが喜んだんじゃないんですか?

 

 

「悪い、抑えきれなかった。……怪我なんかしてないよな?」

 

「へーきへーき、この子がしっかり護ってくれたもん。やっぱ私の騎士様はこの子よね~!」

 

 

 おっと、周囲の屍人(ゾンビ)を片付け終えた聖騎士君が息を切らせながら駆け寄ってきました。後ろには同じく息切れ状態の元冒険者の2人も一緒ですね。久方ぶりの生命のやり取りで随分消耗しているみたいです。

 

 不安そうに声を掛ける聖騎士君を揶揄うように白ワニさんに抱き着き、その前途有望なたわわをこれ見よがしに変形させる至高神の聖女さんですが、その頬には一筋の汗が。軽い口調で誤魔化してはいますが、白ワニさんがいなければ危なかったのは間違いありません。聖騎士君に責任を感じさせないよう明るく振る舞う聖女ちゃん尊い……しゅき……。

 

 

 ……ハッ!? 尊死しかけている間に吸血鬼組も決着みたいですね! 先ほどまで響いていた銃声や破砕音が消え、男が喚く声がするばかり。生身の4人も声のするほうへ向かうみたいでなので、一緒にカメラも動かしてみましょうか。

 

 


 

 

「クソ、クソッ! こ、この化け物どもめ!?」

 

 

 女魔法使いさんと剣の乙女さんの前で悪態を吐く1人の男。レンズの割れた眼鏡がずり落ちているのにも気付かず喚きたてているのは眼鏡重戦士だった新鮮な屍人(フレッシュゾンビ)です。眼前の蹂躙劇を見たショックで一時的に人間性を取り戻したのでしょうか? 呼吸不要な身体ならではの連弩(マシンガン)トークを披露して、2人をウンザリとした表情に導くことに成功しています。逃げることも出来ず、勝てそうもない相手の前で彼のような輩がやることと言えば、視聴神の皆様も予想が付きますよね?

 

 

「そ、そうだ。俺たちをこんな身体にした奴のことを知りたいんじゃないのか!? もし見逃してくれるんだったら、アイツについての情報を話す!!」

 

 

  こ ん な 身 体先刻まで吸血鬼になったとイキリ散らしていたというのに、まったくもって素晴らしい手のひらの返しっぷりです。きっと新鮮な屍人(フレッシュゾンビ)にされた際に手首に駆動部品(モーター)を組み込まれたのでしょう。その後に続くのは決まりきった文句であるところの『「れは最初から反対していた」「いつらが言い出したこと」「らなかったんだ、こんな目に遭うなんて」「んだことだろう? それよりもこれからのほうが重要じゃないか」』のオアシス構文(変形版)ですね。

 

 

 (彼の主観で)自分がどれほど有用であるかというアピールを終え、必要無い筈の荒い呼吸を繰り返す元眼鏡重戦士。沈黙を続ける2人が悩んでいると考えたのでしょう。ダメ押しとなる一言を口にしてしまいました……。

 

 

 

 

 

 

「な、なぁ、こんなに役に立つんだから、()()()()()()()()()()()()()()? ()()()()じゃなくてもお前たちが血を吸えば、吸われた相手は永遠の生命を……」

 

 

 

 

 

 

 ――瞬間。何か硬いモノが地面に叩きつけられる轟音が響き、砂埃の舞う空間に苦悶の声が零れます。

 

 

「ご゙……お゙あ゙……ッ。い゙、い゙ぎな゙り゙な゙に゙を゙……ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黙れ」

 

 

 

 

 元眼鏡重戦士の顔面を掴み、切れる寸前の理性によって死なないギリギリの力加減で地面に叩きつけた女魔法使いさん。ミシミシと音を立てる頭蓋に悲鳴を漏らしかけた元眼鏡重戦士が瞬時に黙るほどの重圧を身体全体から放ちながら、壊れた自鳴琴(オルゴール)のようにたどたどしく言葉を紡いでいます……。

 

 

「ア、アンタが どんな 糞野郎、でも 元人間として、尊厳を持って 殺してあげようと お、思ってた。それが 人でなくなった わ、私に出来る 僅かばかりの じ、慈悲だから……」

 

 

 彼女の背後から駆け寄って来た剣の乙女さんに指の隙間から助けを乞う視線を向ける元眼鏡重戦士。ですが、彼女の瞳もまたダブル吸血鬼ちゃんを彷彿とさせる攻撃色に彩られています。

 

 

「で、でも アンタは あの子の決意を 願いを ゆ、夢を穢した……ッ。それで 黙っていられる ほど わ、私は 人間出来てない わ……。も、もう 人間じゃ ないけど ね……!」

 

 

 ガラスが罅割れるような笑みを浮かべ、抑えつけていた手を離す女魔法使いさん。その隙を逃さず逃げようと元重戦士が起き上がろうとしますが、人外の膂力によって打ち付けられた頭部は地面へと植え付けられており、どんなに身を捩ろうとも抜け出すことが出来ません。

 

 

「ヒイィッ!? お、おい、お前神官なんだろ!? 目の前で()が殺されようとしているんだ、なんで止めないんだよ!?」

 

 

 自力での脱出は不可能と判断したのでしょう。なんとか助けてもらおうと剣の乙女さんの良心に訴えかけるように悲鳴を上げていますが、それを聞く剣の乙女さんは勿論キョトンとした顔で、まるで彼が何を言っているのか判っていない様子。やがて合点が行ったのか、ポンと手を叩いて返した答えは……。

 

 

 

「不思議なことを言うのですね」

 

 

 

 

 

「この場には人なんて 1 人 も い ま せ ん よ ?

 

 

 3人ともアンデッドですから、と微笑む剣の乙女さんを見て、いよいよ絶望顔になった元重戦士。歯の根の噛み合わぬ顔で見上げれば、そこには凄絶な笑みを浮かべた吸血鬼の花嫁(ヴァンパイアブライド)が拳を振り上げる姿。「4人が合流するまで3分ほどですよ」という背後からの言葉に無言の視線にて返事を返し――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迅速かつ鮮やかな、口を利く死体の解体が始まりました。

 

 

 

 

 

 

「―――ッ!? ――――――!?!?」

 

 

 小五月蠅い悲鳴を出さぬよう、最初に顎を砕かれた元重戦士の無言の悲鳴が響く中で行われる解体劇。痛みが無いのが恐怖なのだということを、彼も文字通り身を以て思い知ったわけですね。

 

 

 

 

 

 

胸に突き立てられた貫手によって、そのまま胸骨を引き剥がされ

 

 

褥で想い人の服を脱がすように、肋骨を左右に押し広げられ

 

 

馬乗りになる際に邪魔だからと、両の足を股関節で踏み潰され

 

 

振り払おうとする両の腕を、紙縒りの当たりを狙うように引き抜かれ

 

 

広げられた胸部へと差し込まれた両手で、内臓が一塊にかき回され

 

 

既に鼓動を止めて久しい心臓を、眼前で一息に握りつぶされ

 

 

空洞の奥に鎮座する背骨を、頭部を持ち上げるために折り砕かれ

 

 

 

 

 

 首から下を全て喪い、それでもまだ鮮明に意識を保っている元重戦士だったもの。

 

 

 周りの地面ごと抉り取るように持ち上げられ、恋人に口付けをするように両頬に手を添えられている彼の顔には、自らの()()に受けた恐怖と「何故自分がこんな目に……」という理不尽に対しての絶望が満ち溢れています。肺も無いのにヒューヒューと漏れる息遣いには、微かに「死にたくない」という言葉が含まれていたのかもしれません。そんな彼に平常心を取り戻したのか、攻撃色の薄れた瞳になった女魔法使いさんが微笑みかけ……。

 

 

 

「残念だけど、その願いは聞けないわ」

 

 

 

 

 

 

「だって、私もアンタも、もう死んでいるんだもの」

 

 

 

 一片の慈悲も無く、ぐちゃりという汚らしい響きを以て、死肉を処理するだけの解体劇は幕を下ろしました。

 

 


 

 

「――ご気分は、如何ですか?」

 

「最悪。どんな顔してみんなに、あの子に会えば良いか判んない……」

 

 

 女魔法使いさんの全身に纏わりつく解体の痕跡を≪浄化(ピュアリファイ)≫で消し去り、豊満なたわわに顔を埋めさせるように抱き締めた剣の乙女さん。胸元から顔を上げようとしない女魔法使いさんに対し、クスリと笑いながらその心情を吐露しています。

 

 

「私はスッキリしましたよ。貴女があの子たちのために怒ってくれて。貴女があの子たちを大切に思ってくれているのを改めて知ることが出来て。もし貴女が手を出していなかったら、私がやってましたもの」

 

 

 たぶん、もっとぐちゃぐちゃでしたよ?と笑う声を聞き、ノロノロと顔を上げる女魔法使いさん。彼女の目に映る黄昏色の瞳には、お揃いの狂気の炎がチラついていることでしょう。

 

 

「その怒りがあの子たちの大切なものを害さない限り、私はその感情を全肯定します。そうでなければ、あの子たちと永遠を歩む事なんて出来ませんもの」

 

 

 そう女魔法使いさんに告げながらそっと頬に手を添え、ゆっくりと顔を近付けていく剣の乙女さん。重ねられた唇の隙間から蛇のような舌が入り込み、最初は戸惑っていた女魔法使いさんでしたが、やがて身を委ねるように淫靡なスキンシップを受け入れていきます……。

 

 

「ん……ぷぁ。あのお姫様もそうだけど、最近同性とこういうことするのに抵抗が薄れてきた気がするわね……同じ血族(かぞく)だからかしら」

 

「うふふ……。み~んな、あの子たちのせいにしておきましょう」

 

 

 2人の間に架かった銀糸をペロリと舌で巻き取りながら淫蕩に微笑む剣の乙女さん。真っ赤な顔になった女魔法使いさんもまんざらでもなさそうですね。2人の情熱的なスキンシップに盤外(こちら)のテンションは右肩上がりです。そしてそれを見ているのは此方だけではなく……。

 

 

「うわぁ、うわぁ……」

 

「先輩、やっぱソッチの気も……」

 

 

 顔を覆う手指の隙間から2人をガン見していた元女武闘家さんが、かつての仲間の艶姿に生唾を飲み込んでいます。その隣でモジモジしている至高神の聖女さんは「自分がもしあの立ち位置だったら……」と半ばトリップしている様子。そしてそのパートナーである男2人は……。

 

 

 

 

 

 

「そうか……百合とは……てぇてぇとは……」

 

「四方世界のすべてが、うん、わかって……きたぜ……」

 

 

 

「「神々と世界と俺たちの関係は、すごく簡単なことなんだ……ははは……」」

 

 

 ……どうやら盤外(こちら)の神気が漏れているのか、世界の真実に近付いてしまっているようです。グルグルおめめにアルカイックスマイルで吸血鬼2人を見つめる背中からは緑色のオーラが立ち昇っていますね……。あ、ようやく生身組が合流して見られていることに気付いた女魔法使いさんが、恥ずかしさと怒りがない交ぜになった真っ赤な顔で男2人を追いかけ始めました。

 

 

「くっ、この、今のは忘れなさい!!」

 

「心配すんなって、あの2人には内緒にしておくからさ!」

 

「たとえ道ならぬ愛だとしても、俺、応援するよ! だって俺たち、仲間じゃないか!!」

 

 

 精神が肉体を凌駕したのか、吸血鬼の身体能力を以てしても補足出来ない速さで逃げる2人を杭打ち機(パイルハンマー)片手に追い回す女魔法使いさん。それを楽しそうに見ていた剣の乙女さんが百合オーラに中てられてポーっとしている女子2人を手招きし、ぽふっとたわわに抱き寄せました。ひんやりとしたやわらかい感触に蕩ける2人に顔を近付け……。

 

 

 

「さて、そろそろこの鉱山を死の渦に陥れた元凶を仕留めに行きましょうか。まだ此処に居た筈の放蕩貴族たちの姿を見てませんので、そちらと一緒に引きこもっているのでしょう。早く片付けて、今後についてお話ししましょう?」

 

 

 ……これはもう消化試合、ナレ死の未来しか見えませんね。区切りも良いところですので、そろそろ別チームへと実況を変わりましょうか。ええと次は……どうやら吸血鬼侍ちゃんと辺境三勇士の廃都市組が現地に到着したみたいです。担当は万知神さんですか、それでは次回より実況を変わらせていただきます。

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 


 

 

 はぁ……やっぱりこの卓は良い……豊富な百合に溢れている……!

 

 定番も、意表を突く組み合わせも、複数でもイケる。嗚呼、創作意欲が湧いてきます……!!

 

 ……うぇ!? い、いえ。ちゃんと担当する神の許可は取りますって。自分の愛し子が無理くりなカップリングに突っ込まれたら、誰だってキレますから!

 

 え、お前の推しである女魔法使いはどうなんだって? そりゃ、アレですよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 せめて、この物語の中では、あの()がずっと笑顔でいられたら良いなって。そう、私は思っています。

 

 ……あ、ちょっと、今笑いましたね!? ふん、≪幻想≫さんに「推しの子を化身(アヴァター)越しにセクハラされた」って言い付けてやりますから!!

 




 次回、歪んだ性癖の爆弾が登場するので失踪します。


 誤字のご報告いつもありがとうございます。見直しても気付かないことが多いので非常に助かっております。

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 お読みいただきありがとうございました。
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