ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 寒くてお出掛けする気力が湧かないので初投稿です。

 ※2/3修正 吸血鬼侍ちゃんの信仰する神様を間違えるという盛大なガバをやらかしたため、前任の実況神は≪幻想≫さんと≪真実≫さんによってZAPされました。次の実況神はきっとうまくやるでしょう。




セッションその14-8

 ふーむ……。やはりPCの人数が多いと、多()数実況による切り抜き配信でも時間が掛かるのは仕方ないですかね。

 

 とはいえ、各()の推しの活躍する姿が見られるのがこの物語(キャンペーン)の醍醐味である以上、そこを疎かにするわけにもいきませんし。

 

 今後はセッションで取り上げる人数を絞り込んだうえで、セッション自体の数を増やすことで平等に機会を用意して……。

 

 ん? ああ、貴方ですか。私がセッション進行に腐心しているのがそんなに不思議ですか?

 

 無貌の神や覚知神もそうですが、こう見えて我々はセッションの円滑な進行を第一に考えているのですよ。

 

 GM神にセッションのネタとなる駒やシナリオフックを提供し、推しが登場しやすい環境を構築する。所謂win-winの関係というヤツです。貴方のように、あたら自分の意見を主張し他()の推しを下げるような言動をしているのとは違うのです。

 

 ・・・・・・おや、反論してこない? 存外、無貌の神による仕置きは効いていると見えますね。

 

 ですが同情はしませんよ。貴方が行っていたことは、盤外(サークル)に対する迷惑行為なのですから。

 

 ――ほら、見えますか? そろそろ貴方が創り上げた駒が出て来ますよ。

 

 ……その設定と性能に関しては、一定以上の魅力を感じますからね、貴方の駒は。

 

 


 

 

 まるでSRPGの部隊分割進行みたいな実況プレイ、始まります。

 

 ……だいぶセッションが長くなって来ましたので、リフレッシュを兼ねて挿入してみましたいつもの挨拶。ここからの実況は万知神がお送りしていきますので、どうぞ宜しくお願い致します。

 

 

 

 さて、砦防衛と鉱山調査に一区切りが付き、次なるミッションは軍勢召喚儀式阻止。廃都市から湧き出る死の軍勢(デスアーミー)を止めるべく、私の推しである吸血鬼侍ちゃんと、王国の最も新しき英雄(ヒーロー)こと辺境三勇士が担当する作戦で御座います。

 

 賢者ちゃんが王国中に構築した≪転移≫の鏡ネットワークを活用し、目的地である廃都市に一番近い転送場所へと送り出された4人。王国目指して無言の進軍を続ける骨人(スケルトン)を主とする軍勢を避けつつ、地下水脈を用いて内部へと侵入。下水に潜るのを涙目になって嫌がる吸血鬼侍ちゃんをゴブスレさんが無言で拘束し、ドブ川ダイビングするという面白珍百景もありましたが、無事都市内部の地下構造へと到達することが出来ました。

 

 水中呼吸の指輪を付け、見通しの効かぬ汚水の中を水底を蹴って進む3人のHFO+放心状態のだっこ(吸血鬼侍)ちゃん。やがて水深が浅くなり、川に迷い込んだ海獣のようにのそっと水面から顔を覗かせた一行の目に飛び込んで来たのは……。

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「crrrooooooooww!」」」」」

 

「「「「「crrrooooooooww!!」」」」」

 

「「「「「crrrooooooooww!!!」」」」」

 

 

「うおおおお!? 死ぬ死ぬ死ぬ!?!?」

 

 

「だぁ~!? (クセ)ェ嘴で(つつ)くんじゃ……って、あ、オイテメェら、見てないで早く助けろ!!」

 

 

 

 腐肉をたんまりと喰らい丸々と太った鴉の群れに囲まれ、今まさに追加のおやつになろうとしている元童貞、現生身童貞の2人の慌てふためく姿でした……。

 

 

 

 

 

「こ、これまでで一番死ぬかと思った……」

 

「だいじょうぶ? はい、これおみず」

 

 

 吸血鬼侍ちゃんの血刀と松明の炎で2人から引き剥がされ、槍ニキの愛槍で纏めて串刺しにされた鴉を横目にどっかりと座り込む少年魔術師君。吸血鬼侍ちゃんが差し出した水筒を黙って受け取り、薄められた葡萄酒をがぶ飲みしています。不良闇人さんもケツを高く持ち上げたうつぶせ状態でコヒュー、コヒューと荒い息。周囲の警戒に赴いていたゴブスレさんと重戦士さんが戻ってきて、その隣に腰を下ろしていますね。

 

 

「どうやらさっきの鴉共がここいらを縄張りにしていたみてぇだな。他に邪魔してきそうなヤツは見当たらなかったぜ」

 

「……何故襲われていた。それに妻と子は一緒ではないのか?」

 

 

 とりあえずの安全が確保出来たところで、疑問を投げかけるゴブスレさん。騎士位の叙勲式のときに彼の傍らに浮かんでいた火の妖精?(K子さん)ちっちゃな火の妖精?(娘さん)が見えないのが気になっているみたいです。……そういえば少年魔術師君のパートナー(事実上の妻)である女幽鬼(レイス)さんと2人の愛娘ちゃんの姿も確認出来ません。あの子たちがいれば先程の碌に飛べない鴉なんてあっというまに焼き鳥か干し肉だと思うのですが。

 

 

「あー……。アイツらは今消えちまってるんだ。ちょっと訳アリでな」

 

 

 何やら気まずそうに目を逸らす不良闇人さん。ゴブスレさんに視線を向けられた少年魔術師君も同じような反応ですね。契約が切れてしまった等の問題ならもっと深刻な顔をするでしょうし、他の事情があるのでしょうか。

 

 

「ふんふん。へぇ~、なるほどな~……」

 

「――ん? あ、オイクソチビ、まさかテメェ!?」

 

 

 おや、吸血鬼侍ちゃんが虚空に向かって何事か話しかけたり頷いたりしていますね。それを見た不良闇人さんが血相を変えています。ありがとね~と手を振って見えない彼女たちに礼を言った後、脂汗を浮かべる2人の傍へと歩み寄り、怪訝な顔をしている金等級3人に告げた彼女たち不在の理由は……。

 

 

 

 

 

 

「えっとね、『あざとい猫耳パーカーを被った卑しい女(賢者ちゃん)無駄な脂肪(羨ましいたわわ)に見惚れて鼻の下を伸ばすなんてサイテー! 娘と一緒に実家(アストラル界)に帰らせていただきます!!』だって」

 

 

「「「・・・・・・」」」

 

 

 困惑、呆れ、戸惑い。辺境三勇士から三者三様の目で見つめられ頬をヒクつかせる旦那2人(おっぱい星人)。場の沈黙に耐えかねたのか勢い良く立ち上がり、その心情を叫び始めます。

 

 

「仕方無ェだろ!? あんなデカいモンぶら下げて『先行組、よろしくお願いするのです』って前屈みになったら、嫌でも目に入って来るっつーの!!」

 

「姉さんより小さいとはいえ、身長を考慮したら互角以上の戦闘力! 気にするなってほうが無理な話じゃんか!!」

 

 

 ああ、賢者ちゃんが依頼主だったんですか。それで挨拶の時にむぎゅっと寄せられたたわわを思わずチラ見(ガン見)してしまい、奥さんの怒りを買ってしまったと。妖精弓手ちゃんに匹敵する火の妖精?(K子さん)は兎も角、女幽鬼(レイス)さんはそこそこのモノをお持ちなんですが、相手が悪すぎましたね……。あと少年魔術師君は相変わらず業が深いですね。

 

 

「いや、胸の大きさなんて人それぞれ好みがあるだろ……」

 

「惚れた女の大きさが一番好みの大きさって事だろうに……」

 

「胸の大小は乳の出に関係無いと聞く。そんなに拘る必要があるのか?」

 

「ぺったんこでもちゃんとでるよ。いっぱいちゅーちゅーさせてもらった!」

 

 

 それぞれのパートナーを思い浮かべつつ意見を口に出す三勇士+α。しかしその意見には重大な欠点があることには気付いていない様子。わなわなと震え出した2人を怪訝そうに見ていた一行の前で、とうとう生身童貞たちの怒りゲージが振り切れてしまいました……。

 

 

 

 

 

 

 

「「馬鹿野郎! それはお前らのツレがみんなでっかいから言える台詞だッッッ!!」」

 

「お、おう……」

 

「……そうか」

 

「なんか、スマン……」

 

 

 

 ……まぁ、辺境三勇士の奥様方はみんなナイスバディですね。鍛え抜かれた肉体よって支えられた張りのある双丘の持ち主である女騎士さん。可愛い双子ちゃんに加えて、ダブル吸血鬼ちゃんにちゅーちゅーされても型崩れしない魅惑のたわわな牛飼若奥さん。そしてレギュラー勢の中でも剣の乙女ちゃん、女魔法使いさんと肩を並べる最高クラスな魔性のお山の所有者である魔女パイセン。うーん、これは生身童貞たちの叫びを否定出来ません! ……でも姿が見えないとはいえ、妻子が傍に居る状況でそんなこと言ってしまって良いんですか?

 

 

 

「熱ィ!?」

 

「あがが……す、吸い尽くされる……!?」

 

 

 

 ほら、言わんこっちゃありません。虚空より現れたうねるツインテール2本組×2が不良闇人さんの身体中に絡みつき、良い感じに網状の焼き色がつき始めました。石造りの床に崩れ落ちてピクピクと痙攣している少年魔術師君の頭上には、自分そっくりの娘を抱きつつゴミを見るような目で夫を見下ろす半透明の女幽鬼(レイス)さん。いやぁ、どちらも愛が重い……!

 

 


 

 

「そういや、なんでお前さんらが先行組に選ばれたんだ? 腕っぷしには問題無さそうだが、専業の斥候ってわけでも無ェんだろ?」

 

 

 あの後なんとか土下座って奥さんと娘さんに許してもらい、機嫌を直した妻子を左右の肩にしがみ付く様にぶら下げている不良闇人さんに、ふと思い出したように向けられた槍ニキの問い。

 

 

 後発組は伝統と信頼のHFO3人に、侍という名のもっと悍ましい何かと化した吸血鬼侍ちゃんという地獄面子。ゴブスレさんが単独行動のために学んだことがあるとはいえ、本職には程遠い習熟度でしかありません。少年魔術師君は魔術師+「生ける風」を使役するタイプの"昼歩く者(デイウォーカー)"ですし、槍ニキの見立て通り不良闇人さんも斥候役には見えません。賢者ちゃんによる2人のメンバー選出には何か理由があるのでしょうか? 皆からの視線を感じた不良闇人さんが歩みを止め、薄暗い通路の天井を見上げながら口を開きました。

 

 

「……なぁアンタら。この街が昔、何だったかって知ってるか?」

 

「いや、知らん」

 

「テメェは本当にゴブリン以外に興味が無ぇのな!?」

 

「最近はわりかしマトモだったから忘れてたが、お前はそういうヤツだったな……」

 

 

 ドきっぱりと即答するゴブスレさんにツッコミを入れる槍ニキ。その隣で首を傾げている吸血鬼侍ちゃんも知らないみたいですね。

 

 

「まだこの世界で偉大なる魔術師が決闘(デュエル)を繰り広げていた時代。≪死≫を信奉する吸血鬼(ヴァンパイア)がこの街を支配していたらしい。街に閉じ込めた多くの命を生贄とし、外なる世界に至ろうとしていたって聞いたことがある」

 

 

 意外と言っては失礼ですが、こういう逸話や伝説に詳しいですよね重戦士さん。英雄譚が好きだったり自らも英雄になりたいと夢見ていたり。一度は諦めかけていた夢ですが、何の因果か今では王国騎士兼貴族の婿養子というシンデレラファイター! まぁダブル吸血鬼ちゃんたちと関わったのが原因なのは間違いありませんね。

 

 

「陰惨な研究を繰り返し、界渡り(プレインズウォーク)まで後一歩というところで計画を察知した吸血鬼狩人(ヴァンパイアハンター)たちが戦いを挑んだ。多くの犠牲を伴いながらも、最後は狩人(ハンター)たちの頭目(リーダー)がその身と引き換えに吸血鬼(ヴァンパイア)を打倒したって結末らしいが……」

 

「ああ、その狩人(ハンター)の集まりが俺たち"牙狩り"の原型となった集団で、吸血鬼(ヴァンパイア)と相打ちになったのが初代"牙狩り"の狩長なワケよ。……まぁこれも全部が全部真実じゃ無ェんだけどな」

 

「そ~なの?」

 

 

 成程、既に【魔法の時代】には後の"牙狩り"に繋がる集団が形成されていたんですね。重戦士さんの語りに補足を入れつつ語尾を濁す不良闇人さん、吸血鬼侍ちゃんの先を促す視線に目を逸らしながら躊躇いなく幾重にも枝分かれした地下通路を進んでいきます。

 

 

「つまり、吸血鬼(ヴァンパイア)を滅ぼした後にソイツの居城を利用して作られたのがこの街の成り立ちなんだよ。んで、同時に代々の狩長を含む"牙狩り"の戦士たちが眠る墓所が街の地下にある。ソイツを連れて来たのも、ウチの元頭目(リーダー)が一度は仲間たちの眠る地を見ておくべきだって言いだしたからだ」

 

「おまえたちみたいな吸血鬼を討滅してきた偉大な先達だろ? 俺だって敬意を払うさ」

 

 

 吸血鬼侍ちゃんをジト目で睨みつけながら言葉を引き継ぐ少年魔術師君。以前なら「死んだ奴の考えなんて判らないだろ」なんて言いそうでしたが、元"牙狩り"の面々や女幽鬼(レイス)さんと関わる中で死後の存在についても考えるように変化したみたいです。……おや、進むにつれて一行の表情が変わって来てますね。物理的な温度とは異なる精神に作用するような寒さに身震いしながら槍ニキが通路の先を睨んでいます。

 

 

「……この先に、その墓所ってのがあるのか?」

 

「ああ。今まで"牙狩り"が秘匿してきた秘密も、一緒に眠ってるぜ」

 

 

 知らずに済めばどれだけ良かったか、なんて言うなよ? と憐れみにも似た笑みを浮かべる不良闇人さん。秘匿とは甘美なものとは良く言ったもので、人は誰でも隠されたものに惹かれてしまいます。しかし、知らないほうが幸せだったという場合も多いわけでして……。薄汚い水路には似合わぬ重厚な鉄扉を前に一行へと塗り替える不良闇人さん。開けるぞ?という無言の確認に一行が頷きを返すのを確認し、ゆっくりと両開きの扉を解き放った先には……。

 

 

 

 

 

 

「――チッ。人様の墓をこんなに穢しやがって……ッ!」

 

 

 一行の眼前に見えるは元は厳かな空気を纏う広間。装飾の少ない石造りの地下墓地(カタコンベ)の外周には幾重にも重なる輪のように棺が安置され、戦いの中で斃れた"牙狩り"の戦士たちの名前が刻まれています。遺体が回収出来ず空の棺であったとしても、その勇気と栄光を忘れないために抜かすことなく年代順、同じ戦いであれば年齢の若い順に整然と並べられていたのでしょう。

 

 

 ――しかし、"牙狩り"の誇りとも言える墓所は、本来の様相とは全く異なる姿へと変わり果てていました。

 

 

 乱雑にぶちまけられた棺は内側からこじ開けられたように破損しており、壁面や床はピンク色の臓物にも似たグロテスクな蠢く肉塊に覆われ、まるで巨大な生物の内臓にも見える悍ましき光景。その上を死臭を放つ腐肉によってぎこちなく動く死人が這いずり回り、自壊するのも厭わずに互いを破壊し合っています……。

 

 

 そんな悪夢のような光景の中、ただ一つ生を感じさせる存在がいるのに気付いた一行が駆け寄って行ったのは、怪しく光を放つ魔法陣の中心で人骨を組み合わせて作られた十字架に磔にされている1人の女性の下。褐色の肌に金糸のような髪、既に衣服の体を成していない襤褸布に包まれた蠱惑的な身体……不良闇人さんと同じ、闇人(ダークエルフ)ですね。

 

 

「……うん? なんだ、また冒険者か? 呆れたなものだな、こんな所にまで来ようとは。それに……どうやら同郷の者もいるようだ……」

 

「うっせ、ンなことより降ろすぞ? どう考えたってテメェが亡者召喚儀式の鍵っぽいからな」

 

 

 皮肉気に笑う女闇人さんに悪態を返し、彼女を拘束する骨を睨みつける不良闇人さん。幾本も四肢を貫き絡みつくその有様に眉を顰めながら手を伸ばしたところで……。

 

 

 

私に触るなッッ!! ……あのような化物に成りたくなければな

 

 

 消耗しているとは思えないほどの大声で不良闇人さんを制し、咳き込みながらある一点を見つめる女闇人さん。慌てて手を引っ込めた不良闇人さんと一行が釣られるように見た先には……。

 

 

 

 

 

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙……」

 

「キヒィーヒヒヒ……!」

 

「タスケテ……タスケテ……」

 

 

 

 辛うじて人間()()()頃の面影が残る、子どもが落書きで描いたような崩れかけた半液体の人間(ゼリーマン)。両手の指では足りない数の赤黒いヒトガタの姿に、吸血鬼侍ちゃん以外の皆が声を失っています。

 

 

「オイオイ、なんだよありゃあ……!?」

 

「私を助けようとしてこの身に触れた、勇気か、あるいは下心に溢れた冒険者の末路だよ……。私の身体は腐敗と病気、呪いに塗れている……触れれば貴様らも同様の末路を辿ることになるぞ……」

 

 

 外見だけはマトモなのが悪辣だな、と自嘲気味に笑う女闇人さん。囚われた女性を解放しようとする正義感も、肉欲に突き動かされて彼女の肢体に手を伸ばしたケダモノも同じ結末を迎えるとは実に厭らしい仕掛けです。儀式を邪魔する者を嵌めるにしては随分と凝った罠を用意したみたいですね。

 

 

「私を解放しなければこの儀式は止まらんし、私に触れれば皆あのような姿となる。であれば、残る手段は一つだろう? 苦痛は生を実感させる嗜虐神からの恵みだが、それが悍ましき殺戮の源となっているのならば話は別だ……私を殺すといい」

 

「……テメェ、嗜虐神の……」

 

 

 自分を見つめる一行に疲れた笑みを見せる女闇人さん。その首元に光る聖印(シンボル)を見て、彼女が嗜虐神さんの信徒であると不良闇人さんも気付いたみたいです。ガリガリと乱暴に頭を掻き毟り、舌打ちをしながら懐から取り出した血刀を抜くのを見て一行が色めき立ちました。

 

 

「っておい、何するつもりだよ……!?」

 

「黙ってろ、こりゃあ同郷の誼ってヤツだ。苦痛を尊ぶテメェにゃ悪いが、サクッと決めさせて……!」

 

 

 少年魔術師君の静止の声に耳を貸さず、切先を彼女の首元へと向ける不良闇人さん。辺境三勇士が割って入ろうとしますが、一瞬の差で剣閃が先んじます。血の色の一閃が女闇人の細い首筋へと煌めき……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはダメ。このこにはまだやってもらうことがある」

 

 

 

 ――同じ血の色の刃が甲高い音を響かせて剣閃を遮り、彼女の首が胴と別れを告げるのを妨げました。

 

 

「……何故邪魔をする。私を殺さねば儀式を止めることは不可能なのだぞ? 地べた摺り(ロードランナー)の小娘よ」

 

 

 背後からの疑念の声に答えず、不良闇人さんの剣を弾く吸血鬼侍ちゃん。彼が二撃目を繰り出してこないのを確認し血刀を懐へと納め、くるりと女闇人へ向き直りました。見下ろす小さな小娘に不審そうな目を向けていた女闇人、ですが、吸血鬼侍ちゃんの口から出た言葉は彼女の疑念を振り払って有り余る爆弾です……。

 

 

 

「ぼくのユメをかなえるのに、きみがひつようなの。ぼくたちだけだと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()をみんなのためにつかえないから」

 

「!? 兄を知っているのか!?」

 

 

 『兄』という言葉に激しく動揺する女闇人。同時に辺境三勇士の顔にも緊張が走ります。一行が知る闇人といえば、目の前の2人を除けば後はほんの僅かですからね。

 

 

「その『兄』というのは、まさか」

 

 

 半ば確信を抱きながら問いを発するゴブスレさん。重戦士さんと槍ニキも答えに辿り着いたみたいです。頷きを返す吸血鬼侍ちゃんの口から出た『兄』の正体は勿論……。

 

 

「さばくのまちでみんなにひどいことしてたあのダークエルフ。あのこがちをすったときにとりこんだきおくのなかに、たくさんこのこのすがたがあった」

 

 

 邪神の囁きに唆され、地上へとやって来た闇人繁殖者(ブリーダー)ですね。

 

 


 

 

「そうか、兄はそのようなことを……」

 

 

 辺境三勇士と吸血鬼侍ちゃんから砂漠の国での顛末を聞き、ガクッと項垂れる女闇人さん。どうやら彼女、突然邪神の啓示を受け地下世界から飛び出したお兄さんを追って地上へとやって来たそうです。先々でゴブリン相手に実験を繰り返すお兄さんの痕跡を追っていたものの、途中で件の魔術師に捕まり軍勢召喚儀式の生贄にされてしまったんだとか。初めは闇人繁殖者(ブリーダー)の妹ということで警戒の目を向けていた三勇士も、その不遇さと不運っぷりに今は可哀そうなものを見る眼で彼女を眺めています。

 

 

「まぁ、その、なんだ。アンタの兄貴はクソッタレなのは間違い無ェが、それがアンタの罪だとは言わねぇよ」

 

「だが、私は兄を止められなかった。国から出る前に阻止していれば、砂漠の国も平和だったかもしれん……!」

 

「落ち着け。まだ話は終わっていない」

 

 やはり死んで詫びるしか! とジタバタ身を捩る女闇人さんを宥めつつ、吸血鬼侍ちゃんに話の続きを促すゴブスレさん。慈悲を乞うような女闇人さんの視線を受け止め、吸血鬼侍ちゃんが自身の望みを話し始めました。

 

 

「あのね、おにいさんのけんきゅうはうまくつかえばたくさんのひとのいのちをすくうことができるとおもうの。でも、それにはまほうでもきせきでもない、じゅんすいなちしきとぎじゅつがひつよう。しぎゃくしんのおしえには、いりょうにかんするものがいっぱいあるはず。それをぼくたちにおしえてほしいの!」

 

「……それは、()()()()を含む医療行為のことを言っているのだな?」

 

「既に戦友は他の神殿と協力して、帝王切開の術式を確立させた。俺の妻もそれで双子を出産している」

 

 

 女闇人さんの真剣な問いかけに対し、実体験を以て答えるゴブスレさん。牧場に設立された療養所の話を聞くにつれ、女闇人さんの顔には笑みが浮かんで来ています。

 

 

「……でもよチビ助、あん時兄貴の血を吸ったのは確か……」

 

「うん、ぼくじゃなくてあのこだよ。ちしきとけいけんのきょうゆうのために、ちとまりょくをかいしてたがいのきおくをみせあいっこしてるの。ほかにもいろいろできるけど……それはまだないしょ!」

 

「はは……面白いな貴様ら。小鬼(オルク)を滅ぼすために世界の在り様から変え始めるとは。良いだろう、力を貸す……と言いたいところだが。それには死なずにこの状態から抜け出さねばならん。貴様ら何か策はあるのか?」

 

 

 まぁそこですよね。彼女の協力が得られるとしても、先ずは儀式を止めるのが先決。でも彼女に触れてしまえばその瞬間()()によって死病と腐敗の全盛りが待ち構えています。顔を見合わせる脳筋族を横目に少年魔術師君が溜息を吐きつつニコニコしっぱなしの吸血鬼侍ちゃんの頭を引っ叩き、解決策を提示しました。

 

 

「いいからさっさと降ろしちまえよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「は~い!」

 

 

 

「「「「「……は???」」」」」

 

 

 みんなにちょっと離れるようにお願いし、いそいそと降ろす準備を始める吸血鬼侍ちゃん。影の触手を展開したところで目の前のちっちゃいのの正体が吸血鬼(ヴァンパイア)であると女闇人さんが気付き、驚きの声を上げようとしたところで……。

 

 

「んなッ!? 貴様もしや吸血モガッ!?

 

「ちょっとだけがまんしてね? いっきにぜんぶのほねをひきぬくから」

 

 

 舌を噛まぬよう触手を咥えさせ、四肢に刺さる骨棘から身体を引き剥がすことを告げる吸血鬼侍ちゃん。覚悟を決めた女闇人さんがギュッと目を瞑ったのを確認し、四肢に巻き付けた触手を一気に引っ張り、彼女を悍ましき十字架から奪い返しました!

 

 

「――――――ッ!!」

 

 

 十字架の各所にある棘に残っていた襤褸切れ同然の服を奪われ、生まれたままの姿で解放された女闇人さん。四肢に穿たれたいくつもの穴から鮮血を流しながら落ちて来る彼女を吸血鬼侍ちゃんはしっかりと抱きとめ、男子たちの視線を遮るように布状に変化させた翼で包みました。全身に走る激痛に涙を堪えながら身体を震わせる彼女に優しく微笑み、その傷を癒す奇跡を唱えます……。

 

 

えいちもとめしわがかみよ(叡智求めし我が神よ)ともしびきえんとするがくとに(灯消えんとする学徒に)いまひとたび(今一度)しょをてらすあかりをさずけたまえ(書を照らす灯りを授け給え)

 

 

 暗闇の中で揺れる蝋燭の如き柔らかな光に包まれる女闇人さん。≪治療(リフレッシュ)≫の奇跡によって傷は全て塞がり、艶やかで蠱惑的な肢体が戻ってきました。肌に残る血の跡をペロペロと舐め取る吸血鬼侍ちゃんを呆然と見ていた女闇人ですが、血を舐め取り終えた吸血鬼侍ちゃんが微笑みながら眦に残っていた涙を吸い取ると、耐え切れないとばかりに笑い出しました。

 

 

「ククク……吸血鬼(ヴァンパイア)でありながら癒しの奇跡を乞い願うか。矛盾の塊だな貴様! 先ほど言っていた『夢』とやらも、同様に歪んでいるのだろう?」

 

「うん。ぼくは、ぼくのたいせつなかぞくといっしょに、にんげんのともだちでありつづけたいの。そのために、きみのちからがひつようなの。きみのすべてがほしいの。……ダメ?」

 

 

 不安そうに胸元から自分を見上げる小さな化物を見て、呆れたように溜息を吐く女闇人さん。そっと頬を撫でながら、吸血鬼らしからぬ情熱的な告白をしてきた吸血鬼侍ちゃんに新たな脅威の接近を継げます。

 

 

「大胆な告白は嬉しいが、まずは当面の問題を片づけたら如何だ? そら、他の連中は気付いているぞ!」

 

「ふぇ?……あ」

 

 

 女闇人さんに夢中になっていた吸血鬼侍ちゃんも、やっと迫る危機に気付いたみたいですね。入り口とは反対側の醜悪な肉塊に覆われた壁面から響いて来る微かな震動。足音と思われるそれは次第に大きくなり、広間全体を震えさせるほどになっていきます。各自が戦闘態勢を取る中、少年魔術師君が顔色の悪い不良闇人さんに気付き、怪訝な顔で声を掛けています。

 

 

「なんだよ元童貞。何時にも増して顔が悪いぞ」

 

「顔色って言えよ元童貞。……最悪の予感が当たっちまったんだよ……」

 

「最悪? なんだそれは」

 

 

 "小鬼殺し"を抜き放ちつつ、反対の手で火炎瓶を構えるゴブスレさんの問い。愛槍の握りを確かめる槍ニキと"黒騎士"の鎧に身を包んだ重戦士さんも不良闇人さんの言葉に耳を傾けています。

 

 

「さっきの街の成り立ちの話だが、多くの犠牲を払って吸血鬼(ヴァンパイア)を倒したってのは嘘だ。実際は吸血鬼(ヴァンパイア)と狩長の一騎討ちで、他の連中は戦いについていけなかったらしい」

 

「あ? んじゃあ犠牲は出なかったってことか?」

 

「いや、犠牲は出た。……一騎討ちの後、()()()()()()()()を滅ぼす戦いでな」

 

 

 槍ニキのツッコミに首を振る不良闇人さん。たしかに、同士討ちに等しい騒ぎで多くの犠牲が出たというのは世に広めたく話ですからね。しかし、血に呑まれたというのは穏やかな話ではありません。

 

 

「初代の狩長は獣人(パットフット)……馬人(セントール)の剣士だったそうだ。月の光を固めた大剣を振るい、数多くの吸血鬼(ヴァンパイア)を討滅した熟達の狩人(ハンター)。その腕前と人柄から狩長として認められたが……狩りの代償で、その身体は次第に獣性に蝕まれていった。この街の吸血鬼(ヴァンパイア)を滅ぼした時に限界を迎え、人間性を喪失した狩長は怖ろしい獣へと変貌しちまった……!」

 

 

 ギリッと不良闇人さんが歯ぎしりをした直後、広間に響く轟音。壁を形成していた石材と肉片が飛び散る中、広間へと現れたのは見上げるほどに大きな巨体です……。歪に生えた蹄を持つ脚に人と馬の特徴を極限まで歪ませて練り上げられたような体躯。肩口から生えた口のような器官の内部には無数の瞳が蠢き、その名の如き醜い顔には白く濁った瞳と乱杭歯が覗く大きく避けた口。

 

 

 背中に括り付けられた大剣のみが、辛うじて目の前の怪物がかつて"英雄"と呼ばれていた存在であることを証明しています。蕩けた瞳孔で一行をねめつけ、ふたつの口から聞くだけで精神を鑢掛けするような咆哮を上げて突進してくるのは……!

 

 

「全員散れ! チビ助はソイツを抱えて離れてろ!!」

 

 

 

 

 

 

――人を救うために戦い、その果てに人でなくなってしまった哀しき英雄、醜い獣です……!!

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 




 あたたかな春が訪れるのを待っているので失踪します。

 評価や感想、お気に入り登録ありがとうございます。読んでくださった方から反応を頂けると、次話へのモチベが良い感じに上がりますね。

 お読みいただきありがとうございました。


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