ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 短い自宅警備期間だったので初投稿です。




セッションその14 りざると その2

 前回、吸血鬼君主ちゃんたちが女魔法使いちゃんのケアに向けて決意を新たにしたところから再開です。

 

 

 全ての組が合流したところで辺境のギルドへと帰還した一行。≪転移≫の門を抜けた先では前兆を察知して、受付嬢さんと監督官さんが一行を待っていてくれました。

 

 

「みなさん、おかえりなさい!」

 

「うんうん、みんな無事に戻って来てくれた……みたいだね!」

 

 

 両手を合わせ花が咲くような笑みを浮かべる受付嬢さん。一瞬硬直した隣の監督官さんもでしたが、それを隠すように笑っていますね。吸血鬼侍ちゃんと女魔法使いちゃんに紹介されて元冒険者夫婦が再会の挨拶する姿を眺めていた彼女の背中に、小さく軽い何かがおぶさって来ました。

 

 

「おかえり。よく頑張ったねって褒めてあげたいたいところだけど……」

 

「ん。まだおわってないというか、これからがほんばんというか」

 

 

 おひさまの匂いと温かさを首元に感じつつ、囁きに耳を傾ける監督官さん。その視線の先はやっぱり女魔法使いちゃんです。二児を儲けていることを暴露され真っ赤になっている2人を見てからからと笑っていますが、海千山千の冒険者を見てきた監督官さんの目は誤魔化せていないようですね。

 

 

私たち(ギルド)一党(パーティ)の内情に干渉するのはあんまり良くないんだけど、一党(パーティ)の仲間に対しての心のケアっていうのは頭目(リーダー)の大事な仕事だよ? 疎かにしてると心が澱んできちゃうんだ」

 

 

 監督官さんのおっしゃる通り、冒険後のクールダウンはジッサイ大事です。日常と冒険の切り替えが上手くいかなくなると、とんでもない大ポカや致命的な問題が発生したりしますからね。

 

 

 そんな冒険者たちの心の洗濯といえばやはり『飲む』『打つ』『買う』がベターなところ。『飲む』は食事と共にギルド内の酒場で安価に提供されてますし、懐に余裕がある場合はゴブスレさんが女神官ちゃんの後輩を連れ込んだ高級店も選択肢に入るでしょう。

 

 

 『打つ』は仲間内でささやかに賭けるも良し、スリルを求めて賭場に赴くも良しですね。まぁそちらに行く場合は大抵財布の中身をすっからかんにされちゃいますし、それで身代を持ち崩して借金持ちになったり3つ目のお店で働くことになる場合も……。ギャンブルは生活に支障が出ない程度にしましょうね?

 

 

 それで最後の『買う』ですが……まぁ戦闘後の昂りを鎮めたり、或いは冒険前のゲン担ぎに利用する場合が多いですね。所謂『あげまん』なお姉さんは大人気ですし、冒険に失敗して仕方なく働く場合も。ダブル吸血鬼ちゃんたちが動き出してからは無くなりましたが、ゴブリンの被害を受けた女性たちが流れ着く先のひとつでもあるんですよね……。

 

 

「今のあの子にとって食事は娯楽みたいなものだし、賭け事もそんなに好きじゃ無さそうだよね。それに君たち一党(パーティ)の特殊な事情を鑑みると……ねぇ?」

 

 

 一党(パーティ)の爛れた関係を思い返して監督官さんも思わず苦笑い。【辺境最悪】のお披露目の後、ダブル吸血鬼ちゃんたちのラブラブっぷりは辺境の街のみならず王都にも広まっているくらいですし、一時期の森人義姉妹(エロフしまい)の攻勢はギルドの誰もが知っているほど。西方辺境の可憐な花を独占しているスケコマシとして男性冒険者からは嫉妬と畏敬の混ざった複雑な眼で見られています。

 

 

森人(エロフ)の子たちが出産を機に落ち着いたんだから、同じ手を使ってみたらどうかな?」

 

 

 卑猥なハンドサインと共に繰り出された監督官さんの提案に吸血鬼君主ちゃんは渋い顔。ダブル吸血鬼ちゃんが気にしているのはやっぱり……。

 

 

「あんまりけんぞくのかずをふやすと、おうこくのひとたちからこわがられちゃうかもしれない。それに、いまのたちばのままじゃみんなをまもってあげられないの」

 

 

 ですよねぇ。今はまだ金髪の陛下の特別な友人ということで存在が許容されていますけど、むやみに眷属を増やしてしまったり、陛下が代替わりした時に王国に対する脅威として見られるのは十分に考えられます。王国の統治基盤に組み込まれるのが一番安定ではあるのですが、冒険者という立場ではちょっと不足していますね。……おや? そんなふうに監督官さんの背中で俯いている吸血鬼君主ちゃんに迫るあの特徴的な猫耳フードは……。

 

 

「話は聞かせてもらったのです」

 

「ひゃん!?」

 

 

 敏感なうなじを舐め上げられ、ビックリして手を離してしまった吸血鬼君主ちゃんをキャプチャーし、豊満な胸元に抱きかかえたのは賢者ちゃん。どうやら支部長さんへの報告は終わったみたいですね。この後元童貞コンビと一緒に陛下へ顛末の報告をしに向かうということで、このギルドで別れる予定だったんですが……。

 

 

「貴女の眷属をあの状態で放置しておくのは不味いのです。切り札を一枚あげるので、さっさと押し倒して解決するのです」

 

 

 そう言いながら吸血鬼君主ちゃんのちょっぴり尖った耳に唇を寄せ、何事か呟く賢者ちゃん。吸血鬼君主ちゃんとさり気なく耳を寄せていた監督官さんの表情が大きく変わっていきます。

 

 

「――なので、貴方の心配は近々解消されるのです」

 

「ほほう、そんな状況になってたんだ!」

 

「……ほんとに、しんぱいしなくていいの?」

 

 

 賢者ちゃんの言葉が未だ信じられないようで、不安げに彼女の顔を見上げる吸血鬼君主ちゃん。その不安を拭い去るように優しく頬を撫で、私は必要の無い嘘は付かないのですと笑う賢者ちゃん。喜びで緩む顔を隠すようにたわわに顔を埋めた吸血鬼君主ちゃんの「ありがとう」という声は、顔を見合わせて笑う出来るオンナ2人にしか聞こえなかったみたいですね。

 

 

「シルマリル~! そろそろ帰るわよ~!!」

 

「ほら、呼んでいるのです。……頑張るのですよ」

 

 

 吸血鬼君主ちゃんを探しに来た妖精弓手ちゃんに手渡し、頭を撫でながら激励の言葉を送る賢者ちゃん。満面の笑みで返事をする吸血鬼君主ちゃんを見て、妖精弓手ちゃんが3人で何を話していたのか聞いているみたいです。牧場へと向かう一行のところへ歩み去っていく後姿を見ながら、見送る2人が感慨深げに呟くのは……。

 

 

 

 

 

 

「王国とその周辺地域における、邪教の信徒の一斉消滅……ねぇ。これで砂漠の国の併合も前倒しになるのかな?」

 

「未だ混沌の勢力は活動しているので油断は出来ないのですが、上手くいけば爵位授与が早まるかもしれないのです。そうすれば、あの恐ろしくも愛らしい血族(かぞく)が安心して暮らせるようになるのです」

 

 

 

 

 

 



 

「……はい、契約内容に不備はありませんね。それでは此方に署名をお願い致します、オルクボルグ様」

 

「――ああ」

 

 

 若草祖母さんが差し出す上質な羊皮紙を受け取り、ぎこちない手つきでサインをするゴブスレさん。普段の彼からは想像も出来ない姿を見て、傍の牛飼若奥さんが肩を震わせています。2枚の羊皮紙にそれぞれ自分の名前を書くと、その片方を机の対面に座る元青年剣士君へと差し出しました。

 

 

「これで契約は完了だ。住居は戦友が用意する手筈になっているから心配はいらん」

 

「つぎのあんそくびにむかえにいくから、おひっこしのじゅんびをしておいてね!」

 

「ああ! よろしくたの……痛ってぇ!?」

 

「雇い主様に対する礼儀を弁えなさいっての! ……コホン、これからよろしくお願い致します」

 

 

 ぺしりとケツを叩かれて悲鳴を上げる元青年剣士君を横目で睨んで黙らせつつ、深々と頭を下げる元女武闘家ちゃん。テンパった牛飼若奥さんが「こちらこそ!」と頭を下げてしまい、雇用契約を生暖かく見守っていた一同が堪え切れずに笑いだしてしまってますね。

 



 

 

 

 

 

 

 さて、ギルドで勇者ちゃん一行&元童貞コンビと別れ、牧場に凱旋した一行。冒険前に子どもを預けていた槍ニキたちも一緒です。牧場の外縁で畑の手入れをしていたおちびさんたちが一行の帰還を報せてまわり、みんなでお出迎えしてくれました!

 

 

「わわ、お客さんがいっぱいだ! よし、冒険の成功を祝ってご馳走を作るから、みんな手伝ってくれるかな?」

 

「「「「「「「かしこまりました、おくさま!!」」」」」」」

 

 

 一行の明るい顔を見て冒険が成功したことを察した牛飼若奥さんが腕まくりをしつつ号令をかけると、一斉に動き出すおちびさんたち。そのパートナーである元冒険者の女性たちも食材の調達や調理の準備に取り掛かっています。……コホン、お、向こうから保育園で使われるような車輪付きの大型荷車(キャリーワゴン)に子どもたちを乗せて向かってくるのは只人寮母さんと若草祖母さん、白兎猟兵ちゃんです。それに加え、モフモフの毛並みに子どもたちをしがみ付かせて笑っている白兎猟兵ちゃんのお父さんたちも一緒ですね!

 

 

「ほらみんな、パパとママが帰って来たよ~!」

 

「「お帰りなさいませ、皆様」」

 

「子どもたちはみんな元気が有り余ってるよ~。おかげで腰が……アイテテ」

 

「もうすぐおじいちゃんになるんだから、お父さんもおじさんたちも無理しちゃだめですよぅ」

 

 

 あらら……。歴戦の陸軍特殊部隊群(グリーンベレー)でも子供たちの無尽蔵のスタミナには勝てなかったみたいですね。腰に手を当てているお父さんたちを白兎猟兵ちゃんがからかっています。只人寮母さんによって荷車(ワゴン)から1人ずつママのところへ帰った子どもたち。やっぱりママが大好きなんでしょうね、みんな満面の笑みで……おんやぁ? そうでもない子が何人か……。

 

 

「うー……」

 

「なぁ~によその目は? ママの金床じゃ不満?」

 

「うぅー……!」

 

「まったく、誰に似たのかしら! ……ていっ!」

 

「あぅー♪」

 

「あ、あらあら……。おっぱいはしっかり飲んでくれますのに……」

 

 

 不満げに見上げて来る我が子……星風長女ちゃんを剣の乙女ちゃんの胸元に押し付け、ジト目で睨む妖精弓手ちゃん。大好きなたわわに星風長女ちゃんは満足そうに頬擦りしていますね。剣の乙女ちゃんも複雑な笑みを浮かべていますが、星風長女ちゃんもちゃんと自分のお母さんは妖精弓手ちゃんだと認識はしているみたいです。

 

 

「やぁー!」

 

「お、おや? 何がそんなに気に入らないんだい?」

 

 

 その向こうでは叢雲狩人さんがジタバタと暴れる愛娘……叢雲次女ちゃんを宥めるのに難儀している様子。髪の毛を引っ張ったりはしないようですが、頬擦りしようとするママをノーサンキューとばかりにちっちゃなおててで押し退けようとしていますね。ママに似てクリっと大きな瞳が見つめているのは、様子を見にやって来たダブル吸血鬼ちゃんです。

 

 

「ぱぁぱ! ぱぁぱ!!」

 

「あぁはいはい、パパが良かったんだね。……で。君はどっちのパパにするのかな?」

 

 

 しゃがみ込んでダブル吸血鬼ちゃんに高さを合わせ、横に並んだ2人の前に叢雲次女ちゃんを差し出す叢雲狩人さん。左右に首を振って何事か思案する素振りを見せる叢雲次女ちゃんが取った行動は……。

 

 

 

「ぱぁぱ♪ ぱぁぱ♪」

 

「「えへへ……!」」

 

「……まさか両方1人占めとはね。我が子ながら将来が恐ろしいよ」

 

「まぁ、特殊過ぎる私たちの血族(かぞく)関係を鑑みれば悪い話ではありませんわね」

 

 

 左右の手をいっぱいに伸ばし、ダブル吸血鬼ちゃんの襟元を握って離さない姿に戦慄を隠せない叢雲狩人さん。その光景を見ていた令嬢剣士さんの言う通り、エルドラージクリーチャー並みにコジレックした一党(パーティ)の状況を考えればむしろ有難いかもしれません。パパが2人いて、ママがいっぱいなんて家族構成、滅多にお目にかかれないでしょうし。

 

 

 

 

 そんな母と子の一幕もありましたが、牛飼若奥さんの音頭で設けられた宴の席は大盛り上がり。新顔である妖術師さんと女闇人さんも初めは場のノリに気圧されていたようですが、若草知恵者ちゃんと一緒に善き死霊術師(ネクロマンサー)として活躍したのをキャスター陣が囃し立てたり、救出された女闇人さんが闇人繁殖者(ブリーダー)被害者である女冒険家に頭を下げたら「え?いや貴女何も悪くないじゃない」と困惑したように言われて宇宙猫みたいな表情になったり、豊穣の霊薬の効果で生まれた3人の娘の存在を知って再起動したりと、2人ともあっという間に馴染んでしまいました。

 

 

 鉱山で合流した際に、たった一度だけ冒険を共にした元青年剣士君と元女武闘家ちゃんの2人を見たゴブスレさん。しっかりと2人のことは覚えていたようで、彼にしては饒舌に「今の暮らしはどうだ」「子どもたちは健康か」と若干早口に会話をしていたのが印象的でした。一般人としての暮らしがどれだけ大変で、どれほど幸福なものなのかを知った彼に女魔法使いちゃんが持ち掛けたのが、冒頭で見た映像の件ですね。

 

 

 

 大事な商売道具である荷馬を失ってしまった元冒険者夫婦。国からの依頼なので幾許かの補償が出る可能性はありますが、それですべてが賄えるとは考えにくいです。若干の蓄えは有るそうですが、2児を抱えた今後の生活を考えると厳しいと言わざるを得ない状況。そこで女魔法使いちゃんが持ち掛けたのが、牧場のスタッフとして彼らを雇うことでした。

 

 

 牛飼若奥さんとゴブスレさん、それにお義父さんの3人で牧場を運営していた頃、街への輸送はおもに当時の牛飼娘さんの担当でした。しかし、業務の拡大と騎士位の授与により、2人は労働者から名実ともに経営者へと転向。牧場で働く人数も増え、若草祖母さんや令嬢剣士さんに雇用主としての契約の仕方や雇用についての勉強もしている最中です。

 

 

 ダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)のお手伝いは土地買収に名前を貸してもらった事への恩返しと冒険の息抜きを兼ねたボランティアみたいなものであり、白兎猟兵ちゃんの家族や砂漠の女冒険者たちの契約は2人の承認を受けて若草祖母さんが代行して行ったものでした。そんな折に持ち掛けられた元冒険者夫婦の雇用は、いわば2人にとってのOJTみたいなものですね。

 

 

 予てから2人で相談しながら作成していた契約内容を元冒険者夫婦に合わせて調整し、賃金や待遇、住居や就業中の子どもの預かりについてまで細かく書かれた契約内容に元青年剣士君は目を回していましたが、隣で読み進めていた元女武闘家ちゃんの表情が徐々に引き攣っていくのが周りで見ていた冒険者たちにも判りました。上から下まで3度読み返した元女武闘家ちゃんが机に契約書を置き、思わずといった表情で口にしたのは……。

 

 

「えっと、怒らないで聞いてね? これって所謂『騙して悪いが』ってヤツ???」

 

「違う」

 

 

 ……そう聞いてしまうほど、四方世界の基準から見れば労働者に優しい内容だったみたいです。

 

 

 

「いやだって、『繁忙期を除き、最低週に1日は完全休み。1日は半日でおしまい』とか『保育所での子供預かりは無料。万一に備え癒しの奇跡が使える神官が常駐しています』とか『就業時の昼食は牧場側で提供』とか、そんな上手い話信じられるわけないじゃない」

 

 

 これじゃ王様か貴族様よ、と心情を吐露するのは無事に契約を終えて胸を撫で下ろしている元女武闘家ちゃん……せっかくなので新しい呼び方を考えてあげましょうか。元青年剣士君もあわせて、視聴神さんたちからの応募をお待ちしています。――ですね。実際の王様や貴族は何時ぞやの貴族の子弟たちのような例外を除けば目を覆いたくなるようなブラック労働なんですが、そこは黙っているのが夢を壊さない優しさでしょう。

 

 

「少々甘い箇所もございましたが、そこはおふたりの経営方針ということにしておきましょう。幸い、財布の紐の緩い出資者がすぐ近くにいらっしゃいますので」

 

 

 2人の指導をしていた若草祖母さん的にも及第点といった内容だったみたいですね。若干労働者に甘い内容だとしても、ダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)と懇意にしている間は経営に困ることは無いでしょうし、ゴブリンによって傷付けられた女性たちの救済という側面もありますからね。一般募集を出さない完全縁故採用ですが、甘い汁を狙う第二第三の福本モブや旧王派残党の密偵なんかを弾くには丁度良いかもしれません。

 

 

「ふふ、冒険ではありませんが、またご一緒出来ますね!」

 

「そうね。みんなの大切な子どもを預かるんだもの、あんたも頑張んなさいよ?」

 

 

 元女武闘家ちゃんの手を取って嬉しそうに笑う女神官ちゃん。元女武闘家ちゃんもまんざらでもなさそうですね。歩く速度は違っても、進む方向は同じ幸せの待つ方角。途中で互いが到着するのを待って、一緒に休憩するのもきっと楽しいですよ!

 

 

 

 

 

 

「んじゃそろそろ休ませて貰うか。ガキの面倒見てくれて助かったぜ!」

 

「久しぶりの親子の触れ合いを楽しんでね? 部屋はもう準備してあるから」

 

「いつもすまないな。……オイ、行くぞ! ここで寝るんじゃない!!」

 

「んぁ? あ、ワリィ寝てたか。疲れを抜くのに暫く泊まれるのは有難ぇよなぁ」

 

 

 楽しい宴もそろそろ終幕。只人寮母さんに頭を下げ、金等級2組がお子さんを連れて向かうのは牧場内に設けられたゲストハウスです。療養所で治療を受けている女性の関係者や出産を控えた夫婦、パートナーが冒険に出ている間に子どもと一時滞在するのに使われている施設ですね。子どもを預けて2人そろって冒険に出向くことの多い槍ニキ夫婦にとって貴重な親子のコミュニケーションの場になっているみたいです。

 

 

 ちなみに療養所や保育所の料金ですが、ゴブリンの被害に遭った女性の治療と静養期間の生活費は原則無料、関係者の宿泊と保育所の利用料は等級によって変わるみたいです。白磁や黒曜からは殆ど請求せず、上の等級から割増しで貰うことで調整し、お財布事情が苦しい駆け出しの負担を軽減する仕組みになっているそうです。そうすると中堅以上から不満が出るような気がしますが、ギルドの評価でいうところの社会貢献や人格査定にプラスが貰えるのでそういった声は上がっていないんだとか。

 

 

 また、夫婦の片方、若しくは両方が冒険から帰って来なかった場合、残された者の未来は暗いものになってしまうのが悲しい現実である四方世界。乳飲み子を抱えたまま娼館で働く未亡人や、困窮した神殿や孤児院に放り込まれる幼子は決して珍しいものではありません。劣悪な環境で生活する者が増えれば、それだけ心に闇を抱え、混沌に呑まれる可能性も高くなってしまいます。

 

 

 そういった事態を少しでも減らすため、ゴブスレさんがダブル吸血鬼ちゃん一党(パーティ)と一緒になって各種取り組みを行っているわけですね。これからの目標としては、万が一預かっている子どもが孤児になってしまってもそれを放り出したりせず、基礎的な教育を終えるまでしっかりと育て上げ、その子の能力と志望に沿った職を斡旋できる枠組みを作ろうと動いているようです。商工会ギルドや冒険者ギルドと提携し、積極的に卒業生を採用して貰う流れが出来れば、ほんの僅かずつでも貧困(ラスボス)のHPを削れるかもしれません。

 

 

 残念ながらダブル吸血鬼ちゃんやゴブスレさんが干渉出来るのはあくまで『冒険者』が関われる範囲内のことだけであり、今この瞬間街で貧困に喘いでいる人たちを救済することは出来ません。

 

 

 もちろん炊き出しなどを行う神殿に寄進したりはしていますが、明日の生活を劇的に改善させるのは難しいですね。不死であるダブル吸血鬼ちゃんとその眷属、そして彼女たちと添い遂げることが可能な長い寿命を持つ森人(エルフ)にしか出来ないことをやるしかないのです。

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、私たちもお暇させてもらおっか。今回大活躍だった怪異殺し(ガストスレイヤー)ちゃんも寝ちゃってるしね」

 

「そうだな。……また明日、だ。戦友」

 

「「「「「「「おやすみなさ~い!!」」」」」」」

 

「おやすみ~」

 

「またあした、しんゆう!」

 

 

 お、槍ニキたちに続いて牧場夫婦とうさぎさん一家もお帰りみたいですね。スヤァ・・・と寝息を立てている女神官ちゃんをお米様抱っこしたゴブスレさんがペコリと頭を下げるのに合わせて、おちびさんたちが元気に別れの挨拶をしてくれました。

 

 

「いつもの部屋を用意してあるから、じっくり絆を深めてくるといい」

 

「うん、ありがとう! ……はぁ、神殿じゃなかなかイチャつけないのよねぇ」

 

 

 聖騎士君の首根っこを掴んだ至高神の聖女ちゃんが、卑猥なサインを繰り出す叢雲狩人さんに見送られて2階へと消えていくのは最早見慣れた光景ですね。どうしても神殿だと『長と騎士』の関係なのでラブラブ出来ないらしく、今回みたいに外で冒険をした後くらいしか夜会話が出来ないんですね。そのぶん大いに盛り上がるようで、翌日聖騎士君が干からびかけているのは言うまでも無いことです。

 

 

「赤ちゃんの夜泣きが響かぬよう、来客用寝室の防音は完璧です。……3人目に挑戦されても良いのですよ?」

 

 

 寝室へと案内する若草祖母さんが頬に手を添えて微笑むのを見て真っ赤になる元冒険者夫婦。躊躇いがちに握り合う2人の手を見る限り、今夜は盛大に夜戦が行われる事でしょう。

 

 

 

「さて、ちゃっちゃと後片付けをして、私たちも休みま……」

 

 

 うーんと伸びをして首をコキコキと鳴らす女魔法使いちゃんの両肩をガシっと掴む2つの人影。吸血鬼君主ちゃんを小脇に抱えた妖精弓手ちゃんと、エロエロ大司教モードの剣の乙女ちゃんがイイ笑顔で彼女を2階へと引っ張っていってます。不意の誘拐に抵抗する女魔法使いちゃんですが、おっぱいソムリエ(『君』)直伝の合気めいたテクニックで身動きを封じられ、そのまま連行されるばかり。

 

 

「若草ちゃん、うさぎちゃん。悪いけど宴会の後片付けをお願いしても良い? ヘルルインは森人(エロフ)姉と一緒に子どもたちを見ててちょうだい。おっぱい娘は新人2人に血族(かぞく)について話してあげてくれるかしら?」

 

 

 妖精弓手ちゃんの言葉にそれぞれの応答を返す仲間たち。運ばれていく女魔法使いちゃんに敬礼し、後は任せろという強い意志で見送りました。眼前で繰り広げられた壮大な茶番に開いた口が塞がらない様子の妖術師さんの隣では、女闇人さんがマイペースに子どもたちと戯れていますね。

 

 

「ふむふむ、成程。間違い無く森人(エルフ)でありながら、因子の提供者である我が主の特徴を持つ、か。実に興味深いな」

 

「なに、そう遠くないうちに君もご主人様と新たな生命を紡ぐことになるだろうさ。そうだ! せっかくだから両方のご主人様の魔力を一度に注いで貰うってのはカヒュッ

 

「もう、上姉様。はしたないですよ? ……ですが、おふたりが主さまの寵愛を授かることは(わたくし)も嬉しく思います」

 

「ええと、その。頭目(リーダー)とともに永遠の道を歩まれるか、あるいは命を繋ぐ道を選ばれるか。どちらの選択であっても、(わたくし)たちは歓迎いたしますわ!」

 

 

 鮮やかに森人(エロフ)を絞め落とし、嫋やかに微笑む若草知恵者ちゃん。そんな2人をジト目で見ながら胸を張って言い放つ令嬢剣士さんの言葉に、自らの将来を想像したのか妖術師さんが真っ赤になっちゃってます。新たに血族(かぞく)へと迎え入れられる2人がどんな道を選ぶのか、これからが楽しみですね!

 

 

 

 さて、2階へと消えた面々の様子ですがどんな感じでしょうか。今回は地母神さんの協力のもとに開発された特製のカメラを使って各部屋の様子を覗いてみましょう! 視聴神のみなさんにお見せ出来るギリギリまでを克明に映し出し、それ以上は即座にシャットアウトしてくれる優れものだそうです。あんまり過激な描写は≪幻想≫さんに真っ赤な顔で×マークを出されちゃいますので。

 

 

 まずは久々の冒険で昂ってしまっていると思われる元冒険者夫婦のお部屋から見てみましょうか。中継を受け取る前に内部の音を確認して……。

 

 

 

「ぐっ、そんな強くしたら……ッ!?」

 

「フン! 宴会中もおっきなお山ばっか見てたクセに。気付かないとでも思ってたの?」

 

「あっあっあっあっ……」

 

 

 

 お、始まってるみたいですね! 寝台(ベッド)に押し倒された元青年剣士君の上に元女武闘家ちゃんが跨り、のっしのっしと動いていらっしゃいます。元青年剣士君も何とか反撃の糸口を探っているようですが、巧みなシフトウェイトと上からの抑え込みに抗えず、悲鳴に似た呻き声を上げるばかり。やがてビクッと震えた後に脱力する彼ですが、そんな相棒に構うこと無く攻め立てる元女武闘家ちゃんのニクショクっぷりが恐ろしいですね……。

 

 

 

「んっんっ……。ほら、私だって結構あるんだよ?」

 

「ちょ、俺だっていっぱいいっぱいなんだから……ッ」

 

 

 お隣の部屋では至高神の聖女ちゃんが最近急激に成長しているたわわを聖騎士君に押し付けていますね。日々の過酷な訓練に加え、禁欲を旨とする生活によって聖騎士君の魔力はたまりにたまってまさに青金玉(ブルーボール)状態。聖女ちゃんの柔らかな肢体と甘い体臭に耐えられるわけもなく……。

 

 

「んっ! もう、こんなにいっぱい……」

 

「わ、悪い。我慢出来なかった……」

 

「まったく! でも、まだまだいけそうね……はむ」

 

 

 いやー、若いってすごいですねぇ。聖女ちゃんの愛情たっぷりなコミュニケーションを受けて尚立ち上がる鋼の意思は、地母神さんと至高神さんが熱っぽい視線で見つめるほどの益荒男ぶり。合間合間に口づけを挟みながらの夜会話は深く静かに盛り上がっているようです。

 

 

 さてさて、それでは本命である吸血鬼君主ちゃんたちの大部屋ですが……あれ? 上手く映像が送られてきませんね。音声は途切れ途切れで入って来ていますけど……。地母神さん、何か四方世界との通信に障害でも起きてますか……って、ち、地母神さん! 鼻から神気が溢れてますよ!? ええと、送受信の装置はこれだから……ええい、このスイッチだ!!

 

 

 

 ふぅ、地母神さんが使い物にならなくなってしまいましたが、何とか映像は受信出来そうですね。経験も知識も豊富と胸を張っていた地母神さんがこんな状態になってしまうなんて、いったいどれほどの光景が広がっているのでしょうか。それではそろそろ……って、覚知神さんが手でバッテンをしてますね。どうやら≪幻想≫さんが期待のあまり熱暴走を起こしてしまったみたいです。

 

 

 視聴神の皆様には申し訳ありませんが、≪幻想≫さんの回復を待って続きをお送りしたいと思います。しっかりとトイレを済ませた後、蝶ネクタイとカフスボタンの正装でお待ち下さいませ。あ、前に新()さんが言ってた通り全裸待機は厳禁です! 全裸なんて非紳士的ですし、なにより≪真理≫さんがそういうのに五月蠅いですからね!!

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 




 ギリギリのラインを探る旅に出かけるので失踪します。


 たくさんの感想ありがとうございます。評価やお気に入り登録も次話のモチベに繋がりますので、よろしければお願いいたします。


 お読みいただきありがとうございました。

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