ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ 作:夜鳥空
前回、吸血鬼君主ちゃんが姉なのるものと
太陽神さんの≪
まぁいくら吸血鬼君主ちゃんが女の子好きで相手が素晴らしいお山をお持ちであったとしても、あからさまに怪しい人物にそう簡単に懐いたりは……。
>「あったかふわふわ……」
あ、駄目みたいですね(白目)。顔を谷間に埋もれさせ、後頭部を優しく撫でる彼女の攻勢によってあっという間に骨抜きにされちゃってます。こんなところ知り合いに見られたらまた大変なことに……って、おや? 何か白くて毛むくじゃらな物体が2人目掛けて疾風の如き速さで走り寄ってきています。牧場の印を刻んだ首輪を付けたあの独特なシルエットは……。
「ワン!」
元太陽神さんの
「おやワンコくん、久しぶりだねぇ。よ~しよしよし!」
どうやら狼さん、たわわの気配を感じ取って来たみたいですね。片手で吸血鬼君主ちゃんを支えたまま頭を撫でてくる『お姉ちゃん』に対し、千切れんばかりに尻尾を振っています。そんなところまで飼い主……もとい、契約者に似なくていいんですけどねぇ……。
「♪~♪♪~」
そんなこんなで合流した2人と1匹。狼さんに跨った吸血鬼君主ちゃんと手を繋ぎ、祝祭に賑わう街中を楽しそうに見てまわる『お姉ちゃん』。時折立ち止まっては何処か懐かしいものを見る眼差しで商店や路地へと眼を向けています。……おや? 鼻歌交じりで歩く『お姉ちゃん』に吸血鬼君主ちゃんがちょっと驚いた表情を見せていますね。どうしたんでしょうか?
>「そのおうた……」
「……ん? ああこれ? 昔から冒険者が良く冒険の道中で歌ってたんだって。聞いたことあるのかな?」
>「うん、
へぇ、ゴブスレさんがねぇ……。吸血鬼君主ちゃんの言葉を聞いて目を丸くしていた『お姉ちゃん』。やがて肩を震わせ堪え切れないとばかりに笑い出してしまいました。
「――そっか、覚えててくれたんだ。……ねぇ、良かったら一緒に歌ってくれる?」
>「いいよ! ぼくもこのおうた、だいすき!!」
目尻に浮かんだ雫を指で払い、ニッコリと笑う『お姉ちゃん』。彼女の誘いに応じた吸血鬼君主ちゃんが透明感のあるソプラノで旋律を紡ぎ、それに合わせるように響く柔らかなアルトとともに街中へと広がっていきます……。
知らないとこ目指して歩いて行こう
さぁ 冒険だ
昨日より今日が好き新しいから
ワクワクするこの気持ちなんだろう
さぁ 冒険だ
足を止め、不意に聞こえてきた歌声の出処を探し辺りを見回す街の人々。視線を向けた先には、大きな白い犬に跨った
うれしいこと探して歩いて行こう
さぁ 冒険だ
それは、冒険者であれば誰もが知っているもの。未知を求め、誰も見たことの無い景色に恋焦がれる者の心情を表した歌。2人の声に釣られ、人々の中からも小さく、でも確かに歌声が上がり始めました……。
そうだつまんない
犬に道をきけば
どこへでも行ける
犬扱いに不満の唸り声を上げる狼さんを慌てて宥める吸血鬼君主ちゃん。その様子を見ているみんなの顔に笑顔の花が咲いていきます……。
悲しいこと忘れて歩いて行こう
さぁ 冒険だ
うっすら浮かんだ涙を拭っているのは、おそらく冒険で仲間を失った人ですかね。冒険者を続けているのか、あるいは引退し別の道を歩んでいるのか。……声を張り上げ歌う姿からはどちらなのかの判断は出来ませんが、背後に佇む半透明の人影がそれを苦笑ながら眺めているのは、きっと今日が万聖節だからでしょう。
辺り一帯に響き渡るような声で終わりを迎えた冒険の歌。いつの間にか増えていた歌声にビックリしているうちに、2人と1匹は集まってきた人たちにもみくちゃにされちゃってますね。暫くは開放してもらえそうにありませんし、ちょっと出店のほうに視点を切り替えてみましょうか!
「はい、鯰と
「こちら食べ歩き用の
「「「ありがとうございました~!」」」
おお、出店は大人気ですね! 叢雲狩人さんと闇人女医さん、それにおちびちゃんたちがホールスタッフ。令嬢剣士さんと白兎猟兵ちゃん、それに妖術師さんがキッチンスタッフを務め、剣の乙女ちゃんと若草祖母さんがお持ち帰りのお客さんを捌いているみたいです。普段あまり目にすることの無い
エプロンで強調されたたわわやふわふわスカートから覗く白い肌にムラっときて不埒なことを考える者もいたようですが、常駐していた英霊さんが即座にアームロック、詰め所へと連行していったそうです。その容赦ないやり方と、牙を剥く笑みを伴う「おちびちゃんたち以外、私たちみんな
「わ~い! いただきま~す!!」
「うふふ……ゆ~っくり味わって飲んでていいんですよぉ……」
あ、ちなみに女性客がおちびちゃんを抱き上げるのは彼女たちが嫌がらなければセーフらしく、自分が食べるものと一緒に人参ジュースを注文して、美味しそうにコップを傾ける四女ちゃんを膝上に抱えたちょっと放送出来ない顔の受付嬢さんががが。きっと疲れているんですね(白目)。
さて、残りの面子は何処に……と。お、いました!
「ん~……ちゅ~……」
「ふふ、金床でも気にせず飲んでくれる良い子ねぇ。……誰かさんとは違って」
「んふ~! あったかふわふわ~!!」
「うひゃひゃ!? くすぐったいってば~」
ふわふわの毛に覆われた白兎四女ちゃんにおっぱいを飲ませている妖精弓手ちゃん。満足したのか吸い口から唇を離した四女ちゃんの背中を摩り、けぷっと空気が出るのを見て満足そうに笑っています。ダブル吸血鬼ちゃんや子どもたちがいっぱいちゅーちゅーしてもなお透明感のある吸い口を服で覆いながら半目で睨む先では、少女剣士ちゃんの小柄な体格に似使わぬ立派なモノに顔を埋めてご満悦な星風長女ちゃんがママに向かって会心のドヤ顔。その金床はパパたちがこよなく愛している素晴らしいモノなんだけどなぁ……。
その隣では少女巫術師さんがテーブルに腰掛けている若草三女ちゃんと見つめ合い、そっと人差し指を差し出していますね。若草三女ちゃんも同じように指を近付かせ、やがて互いの指先が触れ合い、2人の顔に笑みが……って、それコミュニケーションなんですか???
「まったく! そのたわわ好き、いったい誰に似たのかしらね?」
「いや、あのエロガキとお姫様の両方でしょ。
「あ~む……ちゅ~……」
ぷんすこしている2000歳児にツッコミを入れつつ、固い頭部を噛み千切ったカミキリムシの幼虫を叢雲次女ちゃんに差し出す女魔法使いちゃん。叢雲次女ちゃんが美味しそうに中身を吸いだしたのを確認すると、残った皮を自分の口に放り込んでいますね。餌をせがむ雛鳥のように口を開けている叢雲次女ちゃんを見た少女剣士ちゃんが、そういえば、と女魔法使いちゃんに声を掛けています。
「みんなもしかしてもう乳離れしたんですか?」
「そうね、うさちゃん以外はみんな……あぁ、一番デカい2人がまだ飲んでるわよ」
「あはは……」
女魔法使いちゃんのあんまりな言い方に圃人コンビも思わず苦笑い。同じように若草三女ちゃんの口元へ幼虫を運んでいた少女巫術師さんがふと気付いたように呟きます。
「でも、随分と早い気がしますね。普通1年ちょっとは母乳を求めると思ってましたけど。それになんだか成長も早いような……」
……はい、良いところに気が付きましたね。3人が産まれたのは今年の初夏。まだ生後半年くらいのはずなのに、3人ともハイハイはおろか1人で立ち上がって走り回っています。ママたちの種族である
「その、ね? 私たち眷属の母乳がこの子たちの成長を促進させちゃったみたいなのよ……」
「「……え?」」
――妖精弓手ちゃん目配せした後、バツが悪そうな女魔法使いちゃんの口から零れた答えに目を白黒させる2人。まぁ、そんな顔になりますよねぇ……。
「んじゃまずはおさらい。なんで
「ハイッ! 生きてくために必要だからですっ!!」
「いや、もう死んでるでしょ。……『存在を維持するため』、とか?」
「ん~、まぁそんなところね。良い機会だし2人にも知っておいてもらおうかしらね」
お腹がいっぱいになって舟を漕ぎ始めた子どもたちをベビーカーに移した後、妖精弓手ちゃんが店のほうから持って来た飲み物で気持ちを切り替えた2人たちに吸血鬼について問いかける女魔法使いちゃん。少女剣士ちゃんのとんちんかんな回答に額を抑えている巫術師さんの答えが適当でしょうか。視聴神のみなさんは既にご存知かもしれませんが、女魔法使いちゃんによる
「
眼鏡をクイっと上げて知性をアピールする女教師スタイルな女魔法使いちゃんの言葉にコクコクと頷く圃人コンビ。その隣では妖精弓手ちゃんも同じように頷いてますが……もしかして知らなかったんですかねぇ?
「体内に取り込んだ血液は吸血鬼の意思で生命力にも魔力にも変換出来るの。不死に等しい再生力や、後天的に修得する呪文行使能力はその産物ね」
「先生、黒いほうの先輩はちょっとしんどそうですけど、白いほうの先輩は平気な顔で日光浴してます! っていうか、吸血鬼って日光を浴びると滅びるんじゃないんですか?」
「ん~、色々端折って説明すると、日光が平気なのは親であるあの子が
そうそう、太陽神さんの寵愛を受けた吸血鬼君主ちゃんは日光を天敵とせず、むしろ活力に変換出来る非常にレアな存在です。魂が繋がっている吸血鬼侍ちゃんも間接的にその恩恵に預かり、本来は弱点である日光をある程度克服しているわけですね。
「オマケにシルマリルってば、ちっちゃな太陽を身体の中に持っているんだもの。……あれ? それなら別に血やおっぱいを吸わなくても良いんじゃない?」
もしかしておやつ感覚で吸ってたワケ?と首を傾げる妖精弓手ちゃん。恥ずかしながら私実況神も同じ疑問を抱いていたんですが、吸血鬼君主ちゃんの新しい身体……ヒヒイロカネ製の太陽炉を考案した万知神さんと覚知神さん、そして実際に設計に携わった鍛冶神さんにその理由を教えて頂きました。
「あの子の身体を『炉』に例えると、体内の太陽の欠片は『炉心』で、そこから放出される力は身体能力や魔力を増幅させる『薪』。体外から摂取する血や母乳はその膨大な力を受け止めている『炉』を安定させ、また修理・維持するための『修復材』って感じらしいわ。日光も『修復材』扱いだけど、それだけじゃ戦闘なんかで出力を上げた『炉』の修復が間に合わないんだって」
だからみんなからちゅーちゅーしてるのよ、と続ける女魔法使いちゃんの言葉にほえ~と頷く3人。最初に聞いたときは正直驚きましたね、そんなに高度かつ繊細な構成だったとは思いませんでしたので。
「それとさっき意味がないって言ったけど、動物や異種族の血も『薪』としては使えるし、吸い尽くした相手の知識や記憶は奪えるから完全に無意味ってわけじゃないみたい。迂闊に吸い過ぎると自分の記憶と混じり合って危ないからあの2人しかやらないけどね」
ほほう、
「……『炉』で生み出され、あの子の体内に蓄えられた『薪』は魂や肉体の繋がりを通じてもう1人のあの子や私たちに供給され、その恩恵を受けることが出来るの。一度繋がりを設ければ何もしなくても少しずつ供給されるけど、
「も、もしかしてそれが……!」
真っ赤な顔で身を乗り出し、続きを促す少女剣士ちゃん。その隣では少女巫術師さんがゴクリと生唾を飲み込んでいます。艶やかな笑みを浮かべた女魔法使いちゃんが、ほっそりとした指先で自らの下腹部に触れながら告げるのは……。
「あの子たちに直接『薪』……
「へぇ、そうなの。ぜんぜん気付かなかったわ」
「「ええ……?」」
2000歳児ェ……。まぁしかし、ダブル吸血鬼侍ちゃん
「あれ? でもそれなら眷属の皆さんを、その、『ちゅーちゅー』するのは無意味なんじゃ……」
「ああ、あの子の身体は一種の『
「そういう意味ではヘルルインは燃費が悪いのよねぇ。身体の維持をぜーんぶ『ちゅーちゅー』に依存してるんだから……にしても」
少女巫術師さんの疑問にさらりと答える女魔法使いちゃん。なるほど、それなら頻繁にちゅーちゅーしている意味が……って、妖精弓手ちゃんが悪い顔してますねぇ。席から立ったと思えばスルリと女魔法使いちゃんの背後に回り込み、両の手で彼女のたわわを持ち上げながらそっと耳元に口を近付け……。
「――それだけが理由じゃないでしょ? ちゃんと本音で話しなさいな」
「……あの子たちに必要とされるのが、求められるのが嬉しいからよ。……悪い?」
とんがり帽子に赤くなった顔を隠し、俯いちゃった女魔法使いちゃん。良く言えましたと言わんばかりに頬擦りをする妖精弓手ちゃんの対面では圃人コンビがキャーキャーと黄色い悲鳴を上げています。いやー、愛されてますねぇ!
「えっと、みなさんの爛れた生活についてはまだまだ聞きたいんですけど、肝心の子どもたちの成長とはどんな関係が?」
一頻り女魔法使いちゃんを弄り倒して満足したのか、ツヤツヤした顔で話を本筋へと戻す少女巫術師さん。ちょっと話に飽きてきたのか、少女剣士ちゃんは万知神さんに向かって『交信』のジェスチャーをしている若草三女ちゃんを興味深そうに眺めています。啓蒙が高まっちゃう~。
「あ~……私たちって分類的にはアンデッドじゃない? その身体から出る母乳って、毒では無いんだけど栄養にもならなくて、『生命力』そのものって感じなのよ。だから、それを摂取した子どもたちは……」
「すくすくと大きくなっちゃった……ってワケですか」
「そ。お腹はふくれるけど栄養にはならないから、私たちのおっぱいもたっくさん飲んでたの」
おかげでヒリヒリしっぱなしよ、と薄い胸元を擦る妖精弓手ちゃん。交代で飲ませているとはいえ、子どもたちみんな良い飲みっぷりでしたもんね。おまけにダブル吸血鬼ちゃんやその眷属にまでちゅーちゅーさせてあげてたんですから、
「そんなにいっぱい吸われて、おっぱいが足りなくなったりしなかったんですか?」
親指をしゃぶりながら夢の世界に旅立っている子どもたちを覗き込みつつ、好奇心の暴走するままに尋ねる少女巫術師さん。その質問は更なる地獄への片道切符なんですよねぇ……。フフンと薄い胸を張り、同性すら魅了する美貌の妖精弓手ちゃんが誇らしげに言い放ったのは……。
「ああ、それは大丈夫」
「シルマリルにちゅーちゅーしてもらって、体内で増幅した後に
「「ほ、ほわぁ~!?」」
思わず口から砂糖を吐き出してしまいそうなほどに駄々甘い夜会話の一端でした……。
「――さて、そろそろ本題に入ろうかしら」
「こ、この流れで言わなきゃダメですかぁ~?」
最後まで起きていた若草三女ちゃんが
「えっとですね。このあいだ訓練場の同期たちとゴブリン駆除の依頼を受けたんです。油断していたわけじゃないんですけど、
いやぁ、体格差は如何ともし難いですねぇと笑う少女剣士ちゃん。悍ましい雄に押し倒された恐怖を身体は覚えているのでしょう。震える小さな手を見た妖精弓手ちゃんが、机の反対側から手を伸ばして彼女を抱き上げ、膝上に乗せてギュッと抱きしめてあげています。
「……そっか、怖かったわよねぇ」
「あはは……。すぐに他の前衛がそいつの首を刎ねてくれましたけど、支えを失って重さの増した死体が全身を圧し潰してきて、それで……」
「泣き出しちゃったこの子を介抱しつつ、巣の中のゴブリンを殲滅するのは骨が折れました~」
頬に手を添えたポーズでその時の苦労をアピールする少女巫術師さんの腰には、圃人用に拵えられた鈍い光を放つ
「――そう、それで、冒険者を続けるのが怖くなった?」
「あ、それは大丈夫です。故郷を飛び出して、痛いのも苦しいのも全部承知の上で冒険者になることを選んだんで。ただ、そのう……」
女魔法使いちゃんの言葉に首を何度も横に振り、必死に否定する少女剣士ちゃん。心配そうに彼女を見る女魔法使いちゃんと妖精弓手ちゃんをよそにあらあらうふふという顔で事態の推移を生暖かく眺めている少女巫術師さんを半目で見た後、両の人差し指をモジモジさせながら少女剣士ちゃんが言葉を続けていきます。
「私を押し倒してきたヤツの獣欲に満ちた瞳を見た瞬間、『こんなクソ野郎に私の純潔を奪われてたまるか!』って思ったんです。その後、宿に戻って
「教官って、
少女剣士ちゃんの言葉を聞いた女魔法使いちゃんの顔がみるみるうちに引き攣っていきますね。まぁあの時の叢雲狩人さん良い感じにタガが外れてましたもんね……。同じ推測に至った妖精弓手ちゃんが、腕の中で顔を真っ赤にしている少女剣士ちゃんとニヤニヤ笑いの少女巫術師さんを交互に見つめています。彼女の視線に気付いた少女巫術師さんが艶やかな笑みを浮かべながら椅子から降りるのを見て、妖精弓手ちゃんの膝上から抜け出しその隣に並んだ少女剣士ちゃん。ギュッと拳を握り覚悟を決めた表情で、その心中を露わにします……。
「そちらの
「私はおひさまの匂いのする
これは、修羅場の予感……ッ!!
「どう? ちょっとは落ち着いた?」
「はい、すみません……」
真っ赤な顔でおめめグルグルだった少女剣士ちゃんをたわわに埋もれさせ、落ち着くまで拘束していた女魔法使いちゃん。胸元から聞こえるくぐもった声に落ち着きの色があるのを確認し、そっと抱きしめていた腕の力を緩めています。暴走状態から復帰し、プルプルと半泣きで震える小さなレディを膝上であやす姿はまさに歴戦のオカンといった風格が漂っていますね。
「貴女の気持ちは理解したわ。ケダモノ共に穢される痛みと辛さはウチの面々が一番良く知ってるもの」
頭を撫でる女魔法使いちゃんの手付きは只管に優しく、少女剣士ちゃんの硬直していた心身を解きほぐしていきます。やがて力の抜けた小さな身体がたわわにもたれかかってきた頃、女魔法使いちゃんがゆっくりと2人に対し問いを投げかけました。
「ひとつ聞いても良い? あの子たちを初めての相手に望んでくれたのは何故? あぁ、そこのお姫様は判らないけど、私としてはこれが浮気だなんて思ってないから安心して頂戴」
「む、私だってそうよ! シルマリルもヘルルインも、無駄に女の子を泣かせるような真似はしないし、させないわ! ゴブリンを相手に戦おうとする仲間のお願いなんだから、叶えてあげて当然じゃない!!」
本当かしら~? という女魔法使いちゃんの視線を跳ね返すように薄い胸を張る妖精弓手ちゃん。既に愛の結晶を育んでいる余裕の表れでしょうか。ああ、でも……と言いながら、上目遣いで不安げに見つめる少女剣士ちゃんに声を掛けています。
「答えたくなければ言わなくて良いけど、他の男じゃダメなの? ほら、いつも一緒にいるあの
「えっと、やっぱり
「……ゴメンなさい、嫌なコト思い出させちゃって」
女魔法使いちゃんの膝上で力無く笑う少女剣士ちゃん。
「まぁ、そういうことならあの子たちが適任かしらね。身長は貴女たちよりもちっちゃいし、近寄られても怖くは無いでしょう。事情を話せば引き受けてくれると思う」
ただ、と言葉を続ける女魔法使いちゃんを真剣な表情で見つめる圃人コンビ。2人の眼差しを受け止めた女魔法使いちゃんが口にするのは、ダブル吸血鬼ちゃんと肌を重ねるということの真なる意味です……。
「あの子たちと交わり、魔力供給を受けるということは、眷属化しやすくなっていくということ。
もとより永遠に等しい寿命を持つ
「もし、王国や秩序の勢力が私たちを『敵』であると認識した時、貴女たちも同類と見做される危険性があるわ。……そんなリスクを背負ってでも、あの子たちを
自らを包み込むひんやりとした吸血鬼の身体。鼻をくすぐる甘い魔力の芳香と、微かに力の入った腕の震えを感じ取った少女剣士ちゃん。その冷たい肌を温めるように女魔法使いちゃんの手に自分の小さなそれを重ね、きりりとした表情で言い放つのは……。
「もちろん! みなさんがとっても優しいことは、訓練場で指導を受けてた時から誰よりも良く知っているつもりです!! だから……お願いします!!!」
「……ん。ありがとう、あの子たちを好きになってくれて。あ、でも最後に一つだけ」
満足げに微笑んだ後、ゆっくりと少女剣士ちゃんの耳元に口を近付けていく女魔法使いちゃん。柔らかな拘束にわたわたする姿に悪戯っぽい光を瞳に宿しながらそっと囁くのは……。
「あの2人の
「あー……、最初はちょ~~~っとキツいかもねぇ。2人ともめいっぱい優しくしてくれるとは思うけど、頑張ってね?」
「うそ……こんなとこまで……?」
少女剣士ちゃんのおへその上あたりに指を滑らせ、にんまりと微笑む女魔法使いちゃん。愕然とした表情の少女剣士ちゃんが嘘だと言って欲しそうに対面の妖精弓手ちゃんに視線を向けますが、返ってきたのはうんうんと頷く2000歳児の微笑み。ガクガクと震える少女剣士ちゃんを満足げに眺めていた妖精弓手ちゃんがふと気付いたように視線を向けたのは、同じく愉悦顔で
「そういえば、貴女もこの子と同じ考えなの? シルマリルが希望とかなかなか判ってるじゃない!」
「うふふ、その子とおんなじように大切に守ってきた純潔を畜生に奪われる危険性を無くしたいっていうのもあるんですけど……」
小さな身体からは想像も出来ない程のプレッシャーを放ち、とある方向を見つめる少女巫術師さん。その視線の先にいるのはフリルたっぷりの衣装で調理場を目まぐるしく動き回っている1人の女性の姿。まるで大蛇が大きく顎を開き、舌を覗かせているような顔つきで漏らしたのは……。
「同業者が次々と
「ヒエッ……!?」
「どうかなさいましたか?」
「いや、なんか急に寒気が……」
「風邪でしょうか? 最近涼しくなってきましたものね」
……出店の入り口付近では、急にガクガクと震え出した妖術師さんを若草祖母さんと剣の乙女ちゃんが心配そうに見ています。圧倒的なオーラを放つ少女巫術師さんに残りの3人はどう対処するか決めあぐねているみたいですね。コホン、と咳ばらいをした女魔法使いちゃんが、これだけはという感じで今後の流れを話し始めました。
「……今日明日ってのは難しい話だけど、あの2人には伝えておくわ」
「ま、イヤとは言わないでしょうよ、シルマリルもヘルルインも2人のこと大好きだし」
ああ、確かに。辺境の街で数少ない
うふふ……と口から呪詛を垂れ流している少女巫術師さんは暫く放置安定でしょうか。……おや、出店の入り口のほうが騒がしくなってます。どうやら『お姉ちゃん』を連れた吸血鬼君主ちゃんが狼さんと一緒に戻って来たみたいですね。
さて、無事にゲストを迎えられお祭りは更に盛り上げっていくことでしょう! 万知神さんから、街の有力者との会合を終えたゴブスレさん一家が他の金等級家族と一緒に此方へ向かっているとの連絡も入ってきています。はたして『お姉ちゃん』の正体と、その目的はいったい何なのでしょうか? この先も目が離せません!
今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。
GW中に次話を仕上げたいので失踪します。
予想通り通勤時間が長くなり、書くのが遅くなってしまいました。
ゆっくり進行になるかとは思いますが、続きをお待ちいただければ幸いです。
お読みいただきありがとうございました。