ゴブリンスレイヤー モンスター種族PC実況プレイ   作:夜鳥空

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 GWなのにお出掛けする気力が湧かないので初投稿です。




セッションその15ー3

 前回、喪女の抱える怨念の恐ろしさを知ったところから再開です。

 

 

 さて、吸血鬼君主ちゃんが信奉する太陽神さん直々のおもてなし依頼という、どう考えても裏が有るとしか思えない存在である『お姉ちゃん』。2人と1匹が連れ立って姿を現した際、一党(パーティ)みんな警戒心を隠せない状態でしたが……。

 

 

「うわ、可愛い~! みんな()()()()()()()だし、それを衣装がさらに魅力的にしてるね~!!」

 

「へ? も、勿論よ! 貴女、なかなか良いセンスしてるじゃない!!」

 

 

 持たざる者のいじらしい乙女心を驚異的な観察眼で見出し……。

 

 

「うま~! 素材の鮮度も抜群だし、調理の仕方も最高!! ……ひょっとしてこれは森人(エルフ)風の味付けを只人(ヒューム)向けにアレンジしてるのかな?」

 

「お気に召して頂けたようで何よりですわ。ささ、お代わりは如何ですか?」

 

 

 お母(半森人夫人)さんから教わった味付けを褒められて上機嫌な令嬢剣士さんを陥落させ……。

 

 

「ふはははは! さぁうさぎちゃんたち、このニンジンが欲しくば可愛いポーズを見せるのだ~!!」

 

「「「せ~のっ、しゃい☆」」」

 

 

 持参した人参で兎人(ササカ)のおちびちゃんたちを手玉に取り……。

 

 

「ふへへ……なんだってこう、ちっちゃな子って可愛いのかしらね~!」

 

 

 あれよあれよという間に場の空気を制圧し、現在は両手に星風長女ちゃんと叢雲次女ちゃんを抱え、膝上に若草三女ちゃんを乗せてニッコリご満悦。クソマンチ師匠(万知神さん)との邂逅以来盤外(こちら)からの干渉にピリピリしていた女魔法使いちゃんでしたが、『お姉ちゃん』の言動に毒気を抜かれてしまい、たわわを机の天板に預けた脱力した姿勢で対面の椅子に座っちゃってます。……この圧倒的コミュ力、死灰神さんにも見習って貰いたいくらいですねぇ。

 

 

「ふわふわ~♪」

 

「パパのにおい~♪」

 

 

 おっぱいソムリエな星風長女ちゃんとパパ大好きな叢雲次女ちゃんは『お姉ちゃん』のたわわの虜となっており、女魔法使いちゃんの隣で机に頬杖を突く妖精弓手ちゃんにジト目で睨まれてもどこ吹く風といった様子。膝上で大人しくしている若草三女ちゃんは――。

 

 

「……♪」

 

 

 ――『お姉ちゃん』の緑色の瞳を通して覚知神さんを感じ取り、順調に啓蒙を上昇させているみたいです。あ、ちょっとダメですって覚知神さん!? 勝手にそんなもの(秘儀『夜空の瞳』)授けたらまた万知神さんに怒られちゃいますよ!?

 

 

「ハァ……まぁ、そっちのおっぱい姉は良いとして……」

 

 

 吸い付いたようにたわわから離れようとしない愛娘たちを溜息まじりに眺めていた妖精弓手ちゃんが向き直った先には、背もたれの無い椅子に座らされた吸血鬼君主ちゃんと、彼女を背後からハグし動きを封じている妖術師さん、そして、吸血鬼君主ちゃんの足元に齧り付く様に身体を寄せる2人の小さな淑女の姿。只人(ヒューム)の子どもほどの背丈にも拘わらず、2人の背から放たれているオーラは常人とは思えない熱気を帯びています……。

 

 


 

 

「うわ、すっごいすべすべ。それに想像以上に柔らかい……」

 

 

 真っ赤な顔で指先をあてがい、なんども往復させる圃人の少女剣士ちゃん。最初はぎこちなかった動きが躊躇いを無くすとともに滑らかになり、徐々にねちっこいものへと変貌しています。

 

 

「フフフ、でもこのくびれたところから上の部分は、とっても硬いですね……」

 

 

 行為に夢中になっている彼女と頬がくっついてしまいそうな距離で、妖艶に微笑む少女巫術師さん。相棒の撫でるすぐ傍に小さな手を添え、曲面に沿って何度も擦り上げています。張り出した部分に刺激が与えられる度ビクンと身体を跳ねさせる吸血鬼君主ちゃんを見る目はまごうこと無き肉食獣のものですね……。

 

 

「ん、やあぁ……。みんながみてるのに……っ」

 

 

 普段は布地に覆われ、厳重に秘匿されている部分を公衆の面前で暴かれ、羞恥心と刺激のダブルパンチに自らの指を噛み締め、必死に耐えようとしています。なんとか身を捩って2人の容赦無い攻めから逃れようと頑張りますが……。

 

 

「うう……ごめんね師匠、今の私はあの子に逆らえない……」

 

 

 吸血鬼君主ちゃんの動きを封じるように、より一層身体を密着させる妖術師さん。その柔らかな感触と、万が一にも3人に怪我を負わせるわけにはいかないので、吸血鬼君主ちゃんも力尽くで拘束を解くことは出来ないみたいです。やがてその身体はフルフルと震え始め、小さく可愛らしい口の端から雫が垂れて来ました。食事の手が止まってしまったお客さんたちの注目を集める中、限界を迎えた吸血鬼君主ちゃんの顎は上向きに仰け反り、不要な筈の空気を求めるように舌が口外へと突き出され――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんで3人掛かりでシルマリルのブーツを脱がせて足を撫でまわしてるの???」

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!?」

 

 

 ――我慢の限界を超えた吸血鬼君主ちゃんの笑い声が、店中に響き渡るのでした……。

 

 


 

 

「あ~くすぐったかった!」

 

 

 スッキリした顔で椅子に腰掛け、生足をプラプラさせている吸血鬼君主ちゃん。その足元ではズッコケ3人組が正座させられていますね。いや~良いイベントだったわ~と食事を再開する神経の図太いお客さんたちへと頭を下げるホールスタッフを横目に、吸血鬼君主ちゃんをあすなろ抱きした妖精弓手ちゃんが呆れた様子で3人を見下ろしています。

 

 

「……で? シルマリルにどうしてもお願いしたかった事っていうのが、コレ?」

 

 

 うん、まぁ、そりゃ想い人が公衆の面前で辱め(意味浅)を受けたら怒りますよねぇ。震える長耳をシュッと後ろに絞り、頬をヒクつかせても輝きを失わぬ美貌の妖精弓手ちゃんを見て生命の危険を感じた3人が慌てて弁明を始めています。

 

 

「えっと、私たち圃人(レーア)って靴を履く習慣が無くって、いつも裸足じゃないですか。だから足の裏ってカチコチなんですよ、ホラ!」

 

 

 そう言いながら見事なY字開脚を披露し、足裏を見せる少女剣士ちゃん。たしかにその可愛らしい見た目からは想像も出来ない程頑丈そうな足裏です。

 

 

「里を出て都会を訪れ、そこで靴の存在を知り御洒落の一環として履く者もいますけど、そのころには既に足裏は頑丈になっているのです」

 

 

 妖術師さんの膝上に腰掛け、同じように足裏を見せる少女巫術師さん。……雑に扱われても抵抗しない辺り、妖術師さんってばよっぽど彼女が怖かったんですかねぇ。

 

 

「だから、只人(ヒューム)みたいにぷにぷにな足裏の圃人なんて、今まで一度も見たことが無かったんです。でも、訓練場で汗を流すためにみんなで水浴びをしている時に……」

 

「あ、だからぼくたちのあしもとをじ~っとみてたんだ~」

 

 

 ポン、と合点がいったように手を叩く吸血鬼君主ちゃん。どうやら訓練後のシャワーの時に視線を感じていたみたいですね。健康優良な男子諸君の覗きだったら容赦無く殲滅していたんでしょうけど、まさか内部犯によるものだったとは……。

 

 

 でも、なんでダブル吸血鬼ちゃんの足裏は柔らかいでしょうか? ……ふむ、太陽神さんと万知神さんに確認したところ、『死の迷宮』で吸血鬼にされた時期が非常に早く、足裏の皮膚が分厚くなりかけていたのを身体が傷と判断して再生させてしまったとのことです。

 

 そう言われてみれば、圃人コンビと比較しても吸血鬼君主ちゃんのほうが頭半分くらい背が低いですし、体型もちょっぴり子どもっぽいような。となれば、身体がまだしっかりと出来上がっていないほど幼い時に吸血鬼に成ったということですか……。

 

 

「その辺で勘弁してあげたら? どうせソイツも怒ってないんだし」

 

 

 なんとも怒り難い理由に味わい深い表情となっていた妖精弓手ちゃんに助け舟を出す女魔法使いちゃん。彼女の言う通り、くすぐり地獄に落とされていた筈の吸血鬼君主ちゃんはケロっとした顔をしています。シルマリル、怒ってないの?という問い掛けに首を振り、妖精弓手ちゃんの胸元から抜け出し椅子から降りる吸血鬼君主ちゃん。気まずげに顔色を窺っている3人へと邪気の無い笑みを向けて……。

 

 

「ん、ちょっとはずかしかったけど、おこってないよ。だって、たいせつなかぞくとともだちだもん!」

 

「し、師匠……っ!」

 

 

 イイハナシダナー。滂沱の涙を流しながら跳び付いて来た妖術師さんの頭をよしよしと撫でつつ頬擦りをする吸血鬼君主ちゃん。まったくシルマリルは甘いんだからと呟く妖精弓手ちゃんの長耳も定位置に戻っていますね。……お、テーブル席で推移を見守っていた女魔法使いちゃんが立ち上がり、吸血鬼の膂力を駆使して圃人コンビをひょいっと持ち上げ、吸血鬼君主ちゃんの眼前に並べました。アワアワしている2人の間に顔を近付け、悪魔のように囁くのは……。

 

 

「あの子が許しても、あの子を愛する者が許すかどうかは別の話よねぇ。罰として、ここであの子に()()()して頂戴? ……初めてを貰って欲しいって、ね?」

 

「「……はい」」

 

 

 ……女魔法使いちゃん、怖ッ!?

 

 

 

「えっと、ふたりのこと、ぼくもあのこもだいすきだよ。だから、ぼくたちをえらんでくれたのはうれしいし、おねがいはきいてあげたいんだけど……」

 

 

 そう言いながら上目遣いで見る先は、一党(パーティ)のオカンである女魔法使いちゃん。そして、妖精弓手ちゃんと令嬢剣士さんです。他の女性陣は一歩引いた場所から3人の返答を見守っていますね。

 

 


 

 

 さて、様々な出自、境遇を持つ一党(パーティ)の女性たちですが、ダブル吸血鬼ちゃんの想いはどうであれ表向きには正式な配偶者というものが存在します。銀等級冒険者であり、秩序の勢力に与する強大な吸血鬼(ヴァンパイア)。まだ公表されてはいませんが、近々『死の迷宮』を抱える廃都市一帯を領地として貴族に叙される予定の2人はハイリスクではあるものの超有望株です。

 

 そんな2人を取り込むべく子や孫を送り込もうとする者は後を絶たず、軍人や官僚、果ては反王派であった斜陽の貴族などからも大量の釣書が届き、銀等級に昇格した直後は大変だったみたいです。……なんせ滅ぼされない限り永遠に存在し続けるわけですからね。家の存続を第一に考える貴族としては喉から手が出るほど欲しい存在でしょう。

 

 ダブル吸血鬼ちゃんの性癖を理由に「是非嫁に来てくれ!」という男性からのお誘いは丁重にお断りしたものの、「娘婿に!」や「孫娘でどうだ!?」という非常に断りづらいものまで送られてくる始末。困り果てた一行が偶々王都に戻ってきていた半森人局長さんに相談したところ……。

 

 

「あら、簡単なことです。他の家が文句を言えない程の相手を正妻としてしまえば良いのですよ。他の方々は側室、乱暴な言い方をすればお妾さんということで……」

 

 

 これにはダブル吸血鬼ちゃん激おこ。「「みんなだいすきだから、じゅんばんなんてきめられない!!」」と陛下と宰相の前で大暴れ。銀髪侍女さんと銀毛犬娘ちゃんに制圧され、ふかふかの絨毯に組み伏せられた2人の傍にしゃがみ込んだ半森人局長さんがゆっくりと口を開きました……。

 

 

「納得がいかなくても、これは王国……ひいては秩序の勢力として生きるために必要なこと。あなた方一党(パーティ)は王国にとって妙薬にも劇毒にも成り得る存在、王国を揺るがす要因を孕んだまま放置するわけにはいかないのです。それが、上に立つ者の義務ですので」

 

 

 子どもに語り聞かせるように説き伏せられ、涙目となった2人。一党(パーティ)みんなで話し合い、出した結論が『妖精弓手ちゃんを吸血鬼君主ちゃんの、令嬢剣士さんを吸血鬼侍ちゃんの正妻として陛下に認めてもらう』ことでした。

 

 

 

「今の私は"至高神の大司教"ではなく、1人の"吸血鬼希少種(デイライトウォーカー)の眷属"ですから」

 

 

 もっとも2人と早く出会い、長い間想いを積み重ねていた剣の乙女ちゃん。至高神の聖女ちゃんを後継者に指名し、表向きは隠遁している彼女を大っぴらに表舞台に登場させるのは不味いですし、彼女自身がそれを望まないため誰よりも先に辞退してくれました。

 

 

 

「田舎者の獣人(パットフット)が正妻じゃあ納得出来ないお貴族様もいらっしゃるでしょうし、なによりぼかぁみなさんのなかでいっとう早く喜びの野に旅立っちゃいますからねぇ。そこでまた後妻さん争いが起きるのも面倒でしょう?」

 

 

 眷属化を望まず、定められた時間を共に歩むことを決めている白兎猟兵ちゃん。まだ膨らむ前のおなかをさすりながら、ぼかぁ旦那さまと命を次に繋げたらそれで幸せですよぅと笑う姿からは「生きること」に全力な兎人(ササカ)の力強さを感じました。

 

 

 

「いやぁ、妹姫(いもひめ)様を差し置いて正妻というのは流石にねぇ……」

 

(わたくし)の心と身体は既に満たされておりますので、これより先は私たち血族(かぞく)全員が幸せになる道を探していきたいと考えております」

 

「――そんなわけで妹姫(いもひめ)様。変に気を遣わず、最良の選択をしてくれたまえよ」

 

 

 

「ゴメンって言ったら2人を……みんなを侮辱することになる。だから、ありがとう」

 

 

 子を宿したおなかに手を当て、優しく微笑む森人(エルフ)の義姉妹。眦からボロボロと雫を零しながら妖精弓手ちゃんが眉を立てた笑みを返しています。上の森人(ハイエルフ)の姫君であれば外野を黙らせるのに十分すぎるでしょう。多種族の融和という観点から見ても文句の付けようのない選択です。

 

 

 

「んじゃ、もう1人は後輩で決まりね」

 

「んなっ!? ……どういうことですの?」

 

 

 摘まみ上げた吸血鬼侍ちゃんを令嬢剣士さんの胸元に押し付けながら涼やかに笑う女魔法使いちゃん。咄嗟に受け取ってしまった令嬢剣士さんが戸惑いの声を上げるのを見て、やれやれと首を振りながらその理由を説明し始めました。

 

 

「――自分を客観的に見てみなさいな。混沌の勢力蔓延る遺跡から莫大な財宝を発見し、それを元手に冒険者ギルドという組織の改革に着手。チンピラ同然の下級冒険者を即戦力に鍛え上げ、同時に福利厚生の改善に成功した敏腕経営者。腐りきった王国の汚物(貴族)を華麗に切除し、苦しめられていた民を解放した開明派の貴族。オマケに自らも眷属と成って"吸血鬼希少種(デイライトウォーカー)"を秩序側に迎え入れた立役者にして、ただ1人きりの真なる栄纏神の神官。……貴女は、冒険者の憧れる英雄にして伝説に足を踏み入れた存在なのよ?」

 

 

 うーんこの属性山盛り。こうやって列挙されるとなかなかに壮観ですねぇ。理性ではそれを判っていたのでしょう、反論せずに口を噤んでしまった令嬢剣士さんをそっと抱きしめ、それに……と女魔法使いちゃんが言葉を続けます。

 

 

「もしこの子たちが闇に堕ちた時、私が正妻だったらウチのバカ()と顔を合わせるのすっごく気まずいでしょ? 見事私たち全員を滅ぼした後に『お前も姉と同じように吸血鬼と内通していたのだろう? この裏切り者め!!』な~んてことになったら後味悪いし」

 

「いや、それは正妻であろうとなかろうと関係ないのでは? そもそも私たち全員を滅ぼせるとは思いませんが……」

 

「まぁ、後は素直に貴族の御令嬢である貴女のほうが俸給魔術師(ウェッジメイジ)の娘である私よりも周りを黙らせやすいし」

 

 

 ああ、以前そんなこと言ってましたね。たしかに同じ宮廷勤めとはいえ貴族位の有無は大きいでしょう。()()、両方の面で詰められた令嬢剣士さんが諦めたように溜息を吐き、お山をポフポフしていた吸血鬼侍ちゃんを抱え直しました。

 

 

「――判りました。皆さんの期待に応えるよう、そして血族(かぞく)全員が安心して暮らせるよう、誠心誠意努めさせて頂きますわ!」

 

 


 

 

 ……とまぁ、そんな感じにセッション間で行われていた正妻会議。後発組である妖術師さんや闇人女医さんもそれは了承済ですし、公の場以外では決して不公平な扱いはしないし、他のみんなを「2号さん」呼ばわりする輩はその場でダブル吸血鬼ちゃんがグーパンで黙らせてやると約束したみたいです。

 

 実際、貴族同士の顔繋ぎの場であるパーティー会場で、酒に酔った貴族のボンボンが「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」などと口走り、プッツンしたダブル吸血鬼ちゃんが即座に手袋を顔面にシュート。翌朝宿泊していた令嬢剣士さんの実家に蒼白を通り越して亡者みたいな顔のボンボンが猿轡をかまされた状態で一族郎党によって引きずり出され「どうかこの馬鹿の首ひとつで! 根切りだけはご勘弁を!!」という一幕があったようです。

 

 ぷんすこしているダブル吸血鬼ちゃんをなんとか宥め、令嬢剣士さんの実家に有利な商取引を行うことで手打ちとなった騒動でしたが、その後表立ってそういうことを口にする輩はいなくなったみたいです。……裏でコッソリ金髪の陛下が「あ奴らなら例え相手が余であったとしても何ら躊躇うことなく決闘を申し込んで来たであろう。卿らも心に留め置くがいい」と噂を流してくれていたのは内緒ですよ?

 

 

「……その様子ですと、既にお二方はお認めになったようですわね」

 

 

 ……おっと、回想シーン(ホワンホワンホワン)している間に話が進みそうになっていますね! 女魔法使いちゃんと妖精弓手ちゃんの態度から2人の出した答えを察した令嬢剣士さんが、まったく……と言った様子で眉間に手を当てています。不安げに見上げる吸血鬼君主ちゃんに近付き、しゃがみ込んで視線を合わせ、紡いだ答えは……。

 

 

(わたくし)が反対するわけありませんわ。互いを想い尊重し合っているのなら、是非とも彼女たちの願いに応えてあげてくださいませ。それが訓練場の教官として彼女たちを見てきた先達としての、そして1人の女としての私の答えですの」

 

「ん、ありがとう! ……ごめんね?」

 

 

 謝らないでくださいなと言いながら、むぎゅっと吸血鬼君主ちゃんを抱きしめ、苦笑する令嬢剣士さん。他の面々も「まぁ、そうなるな」といった表情ですね。一歩間違えれば修羅場ってたであろう店内には、固唾を呑んで見守っていたお客さんたちからの盛大な拍手が沸き上がっています。その中には周りの真似をして拍手をするちっちゃな森人(エルフ)3人娘を膝上に「わかりみが深い」という表情で深く頷く『お姉ちゃん』の姿もありますね。

 

 

「うんうん、2人とも愛されてるんだねぇ。お姉ちゃんも鼻が高いなぁ~!」

 

「いや、どう考えてもアンタあの子たちのお姉ちゃんじゃないでしょ。……で、何? 結局あのエロジジイ(クソマンチ師匠)と同じで私たちにちょっかい出しに来ただけなの?」

 

 

 そろそろ話して貰える? とニッコリ笑顔の女魔法使いちゃん。素敵な笑みの下ではパイルハンマーの撃鉄が引き起こされ、ママの殺気を感じた森人(エルフ)3人娘が若草祖母さんのところへ避難していますね。流石に時間稼ぎも限界と判断したのでしょう、どうどう、落ち着いてと両手を降参のポーズにした『お姉ちゃん』が来訪の理由を話し始めました。

 

 

「んふふ、私が今日この地を訪れた理由は3つ! ひとつ、去年ギリギリで見られなかった可愛い甥っ子と姪っ子の顔を見ること。ふたつ、上司の友人から預かったプレゼントを届けること、そして……」

 

 

 そこまで話すと口を閉じ、女魔法使いちゃんの背後へと視線を向ける『お姉ちゃん』。視線の先には有力者との慣れない話し合いに精神的に疲れたであろう牧場夫婦の姿があります。結婚式の時に新調した蜂蜜色のドレス姿の牛飼若奥さんが明るい笑みとともに一行に手を振り、その隣で竜革鎧(ドラゴンハイド)複合素材鎧(コンポジットアーマー)を合わせ、上から金等級昇格祝いに陛下から下賜されたサーコートを纏ったゴブスレさんが双子を乗せた移動式寝台(ベビーカー)を押しています。……あ、どうやら一行に交じって手を振り返している『お姉ちゃん』に気付いたみたいですね。

 

 

「……嘘、あの人って……っ」

 

 

 信じられないようなものを見たという顔で呆然と立ち尽くす牛飼若奥さん。ゴブスレさんのほうは……うん。兜越しで直接は見えませんが、たぶん宇宙猫みたいな顔してますねこれは……。2人の只ならぬ様子に彼方へと消え去っていた警戒を取り戻した一行が身構えるのも気にせず、『お姉ちゃん』が硬直している2人へと近付いて行きます……。

 

 

「……何故だ」

 

「う~ん0点! もうちょっとみんなに判り易く伝わるようにしよ?」

 

「……どうして此処に居る?」

 

「30点。それじゃ何が知りたいのかみんな誤解しちゃうよ?」

 

「……還ったんじゃ無かったのか? ――()()()

 

「うんうん、そうやって重要な情報を小出しにするの、嫌いじゃないよ! ……あ、もしかしてもう二度と逢えないと思ってた? 残念! 実はちょこちょこお仕事でこっち(四方世界)に来ているのだ!!」

 

「帰れ」

 

 

「うわぁ、オルクボルグを手玉に取ってる。今まで遭遇したことの無い怪物(クリーチャー)ね……」

 

 

 最初のシリアスな雰囲気は何処へやら。見たこともないほど饒舌なゴブスレさんと、まるで漫才をするかのように会話を楽しむ『お姉ちゃん』を見て、今度はこっちで修羅場かと身構えていた面々もぐんにゃりと脱力しちゃってますね。机に突っ伏す妖精弓手ちゃんを余所に、『お姉ちゃん』が誰なのかを察した牛飼若奥さんの瞳からポロポロと涙が零れ始めました。

 

 

「え、なんで、お姉ちゃんが……」

 

「うん、久しぶりだね。……あぁ、実は生きてたなんてワケじゃ無いよ? 私は()()()に死んで、此処に居るのはその残り香みたいなものだから」

 

 

 記憶に残るものよりもずっと小さな身体。見上げるような体格だった筈なのに、今では自分のほうが大きくなっていることに気付いた牛飼若奥さん。グチャグチャになった感情を持て余しただ涙する妹分を、『お姉ちゃん』がちょっと背伸びしながら抱きしめてあげています。やがて落ち着きを取り戻した彼女が泣き止んだところで、一行へと向き直った『お姉ちゃん』が、緑色に変じた瞳を輝かせつつ改めて自らの正体を明かしました……。

 

 

 

 

 

 

「はじめまして! いつも弟が、『ゴブリンスレイヤー』がお世話になってます。私はその子の姉。10年以上前に死んでいて、()()覚知神の使徒(ファミリア)をやってるんだ!!」

 

 

 

 いや、もうちょっと言い方ってもんが……。そういうところほんとゴブスレさんとソックリじゃないですか……!

 

 


 

 

「ふーん、つまりオルクボルグとワンコ、それに英霊コンビは去年ソイツに逢ってたのね」

 

 

 ギロリ、という擬音がこの上なくマッチするジト目でねめつけられ、ガクガクと頷く1人と1匹と2柱。戦闘モードに移行しかけた一行を一喝し、事情を話すよう告げたのはまさかの妖精弓手ちゃんでした。剣の乙女ちゃんに叢雲狩人さん、それにこの場には居ませんが若草知恵者ちゃん。覚知神さんから≪託宣(ハンドアウト)≫を受け取り人界に害を成す一番の要因はゴブリンであり、心身に深い傷を負った彼女たちが使徒(ファミリア)である彼女に敵意を持つのは仕方がないのかもしれません。

 

 たどたどしく、でも必死に昨年の邂逅についてついて話し、彼女が決して害悪なだけの存在では無いと判り、みんななんとか矛を収めてくれたようです。流石に叢雲狩人さんの火炎放射器(インフェルノ・ナパーム)は『お姉ちゃん』でもヤバいらしく、覚知神さんがハラハラしながら見守っていました。

 

 

「それじゃあ、さっき言ってた甥っ子と姪っ子って……」

 

「うん、そこで寝てる2人だよ。去年はタッチの差で顔を見られなかったんだ」

 

 

 女魔法使いちゃんの声に頷きを返し、2人を起こさぬようそっと頬を撫でる『お姉ちゃん』。慈しみに満ちたその表情に、剣の乙女ちゃんと叢雲狩人の顔に驚きが溢れています。

 

 

「ワン! ワン! クーン……」

 

「ふんふん……。あのね、おね~さんはわるいひとじゃないって。おおかみさんとおんなじで、ようがあるときにかみさまにからだをかしてあげてるだけ。それいがいはふつうのひととかわらないんだって」

 

「ああ、そう言われればあの時以来あなたも只の犬よねぇ……あ、ゴメン狼だっけ」

 

「フン!」

 

 

 失礼な!と鼻を鳴らす狼さんに慌てて謝罪する女魔法使いちゃん。ほんのり空気が和やかになったところで、双子ちゃんを愛おし気に撫でていた『お姉ちゃん』が満足したように立ち上がり、一行へと向き直りました。

 

 

「うん、めいっぱい堪能した! これでその1は完了。つ~ぎ~は~……コレ!!」

 

 

 鼻歌まじりに鞄に手を突っ込む『お姉ちゃん』、取り出し掲げたるは……何でしょうアレ。片方は画面越しにも判るほどの悍ましい瘴気を纏ってますし、もう片方は……なんか物理的にモザイクが掛かってますね。……ん?≪真実≫さんからメッセージが……なになに、『あまりにも教育的によろしくないので画像処理しています』。あの、いったいナニを送ったんですか嗜虐神さん?

 

 

「「「わわ、まっくら!?」」」

 

「あんなモノ、見ちゃいけませんわ!?」

 

 

 『お姉ちゃん』が取り出したモノを見た瞬間、抜群のコンビネーションで兎人(ササカ)のおちびちゃんたちの視界を塞ぐ女性たち。見るからにヤバいものを持った『お姉ちゃん』が近付くのは、未だに正座の影響で足が痺れ逃げ遅れていた妖術師さんです。

 

 

「はい、貴女にはコレ! 知識神様からのプレゼント♪」

 

「うぇぇ、なんか凄く呪詛みたいなものを感じる……あ、でもなんか凄く親近感が……」

 

 

 笑顔で差し出されたブツを反射的に受け取ってしまった妖術師さん。最初引き攣っていた表情が段々と緩み、炬燵に嵌って動けなくなった蜥蜴僧侶さんみたいな顔になっちゃいました。ふへへ……といつもの笑みを浮かべる彼女の手には一冊の書物。表紙に書かれている題名は……。

 

 

「その本は『不浄なる暗黒の書(Book of Vile Darkness)』。世間で『悪』とされる、ありとあらゆる知識が収められているの。善を尊び悪を征すのならば、先ずは相手を知らなきゃならない。決して本の悪意に呑まれないよう、注意して読みなさいだって」

 

 

 ああ、追加サプリの中で初めて成人向けのラベルが貼られたっていう……。知識神さんもなかなかに恐ろしいものをプレゼントしたものです。彼女の様子を見る限り本との相性は良さそうですし、もし本の悪意に呑まれそうになっても一党(パーティ)の誰かが引っ叩いて正気に戻してくれるでしょう!

 

 それで、もう一つのモザイクが掛かってるブツは……まぁ、予想通り闇人女医さんのところですね。みんなが頬を引き攣らせている中で、彼女と『お姉ちゃん』だけが期待に満ちた顔をしているのが非常に怖いです。……あ、とうとう映像自体に規制がかけられてしまったので、暫くは音声だけのお送りとなるそうです。

 

 


 

 

「貴女には……はい! 嗜虐神様お手製の……」

 

「んな!? これは……なんと冒涜的な……!」

 

「朝夕の()()が禁止されちゃって、随分溜まってるんじゃない? 鞭打つ代わりに、これを身に着けたらどう?」

 

「ま、まさか……これを着けたまま日常生活を送るのか!?」

 

「想像してみて? 露出皆無ないつもの服装の下に、これを着けている状況を……」

 

「……素晴らしい」

 

「でしょ~? それにほら、貴女の主さまって、動きを妨げたり拘束したりってあんまりしないでしょ?」

 

「うむ、悪鬼共に嬲られたのを想起させぬよう、相手が望まぬ限り絶対にしないと言っていたな」

 

「逆に考えるのよ、自分から着けちゃえばいいやって」

 

「嗜虐神様、有難く頂戴いたします……っ!!」

 

 


 

 

 ……えぇと、途切れ途切れに聞こえていた会話と他のみんなの表情から嗜虐神さんのプレゼントがどんなものであったのか、視聴神のみなさんはなんとなく想像がつきましたでしょうか? あ、嗜虐神さん、≪真実≫さんと≪幻想≫さんからお話しがあるそうなので、セッションが終わったら2人のところへ行ってください。必ず絶対に逃げないでくださいね?

 

 

 ホクホク顔の2人を見て満足げな『お姉ちゃん』。どうやら2つ目の理由とやらも完了したみたいです。急いで2人に冒涜的な神器(アーティファクト)をしまわせた女魔法使いちゃんが、もう限界ギリギリといった表情で切り出しました。

 

 

「これで2つ目も終わり? ゴブリンスレイヤーには悪いけど、さっさと3つ目も終わらせてとっとと帰って頂戴……」

 

「いやぁ、随分と嫌われちゃったみたいだね~。……まぁ3つ目はすぐに終わるから、もうちょっとだけ我慢してくれるかな?」

 

 

 良い感じにSAN値が削れ、啓蒙が高まってきた一行を見回し苦笑する『お姉ちゃん』。視線を向けた(ゴブスレさん)が身構えるのを手振りで落ち着かせ、ゆっくりと告げるのは……。

 

 

 

 

 

 

「3つ目は、退職の報告。今日限りで覚知神様の使徒(ファミリア)の仕事はおしまい! わたし、普通の女の子に戻ります!!」

 

 

 ――魂のあるべき場所、輪廻の輪へと還る、本当にお別れの挨拶でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たっだいま~! ……あれ?」

 

「私が至らぬばかりに皆様にご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ございませんでした。この後の奉納演舞で挽回させて……あの、如何なさいましたか?」

 

 

 

 うわあ、なんだか凄いことになっちゃったぞ(白目)

 

 

 

 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました。

 

 

 




 できればGW中にEDまでもっていきたいので失踪します。


 お気に入り登録や評価、感想ありがとうございます。

 感想欄のコメントからセッションのネタが湧くことも多いので、一言でも構いませんので頂けますと幸いです。


 お読みいただきありがとうございました。

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